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17.決着とこれから
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オリヴィア・バッケスとスティンキー・ガールズが拘束されたことは、またたくまに広まっていった。学園でも様々な噂が囁かれた。
バッケス辺境伯領が制圧されたこと、ブラッツ・バッケスも拘束されたこと、カークス商会が閉鎖され商会長のアレン・カークスも拘束され、件の香水の売り手だったことも広まった。
まず公式に発表されたのは、件の香水に中毒性と毒性があったため、売っていた者と使用していた者を罰する旨だ。
オリヴィア・バッケス、ブラッツ・バッケス、アレン・カークス、ミランダ・アリスターは牢に繋がれた。
スティンキー・ガールズは、中毒性と毒性を知らずに使っていたが、明らかにその効能を意図的に使用した罪で、一年間の修道院行きと、親達には罰金が申し渡された。
その後、カークス商会とミランダ・アリスターとオリヴィア・バッケスは危険な品物を売った罪、ブラッツ・バッケスとカークス商会は密貿易で、それぞれ処罰された。
アレン・カークスは商業権剥奪の上、生涯牢で過ごすことになった。ブラッツ・バッケスは領地没収の上貴族籍剥奪、生涯入牢。ミランダ・アリスターとオリヴィア・バッケスは、修道院で生涯幽閉されることになった。
王太后は公式には病気療養のため、東の離宮に入った。そこへ幽閉される。
そして過去の事件、クローディア・オールディスとブラッツ・バッケスの婚約破棄の折、クローデイアがオリヴィアを虐待したという事実は、まったくのでっち上げだと公式に訂正された。件の香水に迷ったブラッツ・バッケスがオリヴィアの言うがままになってしまったのであって、虐待の事実はないと。
オリヴィア・バッケスの香水は取り締まられ、全てが破棄された。
すると、社交界では混乱が起きた。
香水の魅惑から覚めた人々が、婚約破棄や離縁を申し出てきたのだ。
収穫祭後の晩秋から冬にかけての社交界では、一部そんな人々の冷え冷えとした空気が漂っていた。
それでもオリヴィア・バッケスを嫌っていた大部分の者達は、ほっと胸を撫で下ろす思いだった。
「ああ、もうあの臭い香水をかがなくてもいいのね」
「幸せな二人をかき回す者もいなくなったことですしね」
などなど…
そんな中、ステファニー・マッカリスターがアレクサに尋ねた。
「クローディアはまだ外へ出ないの?すべての疑いが晴れたのに」
不満そうだ。
「叔母は…」
アレクサはためらいながら説明した。
「すっかり尻込みしています。十五年も外に出なかったので、怖いのだと思います」
「まあ!アレクサ、どうかあなたの家でお茶会を開いてちょうだい。小さなものがいいの。そこへ招待して。そしてこっそりわたくしをクローデイアの部屋へ連れて行って」
お茶会当日、ステファニー・マッカリスターはかなり早く到着した。いくつもの大小の箱を使用人に運ばせていた。
「さ、アレクサ、クローデイアの部屋に連れて行って」
母はアレクサに頷いた。
「マッカリスター夫人のおっしゃる通りになさい」
アレクサはクローディア叔母の部屋のドアをノックした。
「はい」
クローディアが返事をすると、ステファニー・マッカリスターは遠慮なくドアを開けて入って行った。
「クローディア!!」
ステファニー・マッカリスターはクローディアを抱きしめた。
「ずっと会いたかったのよ!会ってくれないなんて、あなた、ひどいわ!」
「ステファニー…」
クローディアはどぎまぎしていた。
「わたくしに関わると、色々と障りがあったから…」
「もうなくなったでしょ!なのに、まだ閉じこもっているなんて」
「わたくし、もうこの生活以外のことは忘れてしまったの」
「だめよ。思い出させてあげるわ」
ステファニー・マッカリスターは、使用人達を呼んだ。彼らの持ってきた箱には、ドレスや小物が入っていた。
「さ、これを着てお茶会に出るのよ。大丈夫、身内だけと変わらないわ」
ステファニー・マッカリスターは、有無を言わせずクローディアを着替えさせて、お茶会へ引っ張り出した。
ティーガウンに着替えたクローディア叔母は美しかった。
クリーム色のサテンに、結い上げた蜂蜜色の髪が映えている。
クローディアとアレクサはよく似ていた。
お茶会に引っ張り出されたクローディアは、意外にも楽しんでいる自分に気づいた。外にいたのは敵ではなく味方だったのだと気づいた。
そこへ家令がやってきて来客を告げたが、返事を待たずにドアが開き、アレックスが入ってきた。アレックスは真っすぐにクローデイアの元へ早足で近づいた。
二人は見つめ合った。
「あなたのために全てを成し遂げました」
クローディアに手を差し出すアレックス。
クローデイアの目から涙が一筋零れ落ちた。クローディアはアレックスに手を差し出した。
それは長年凍らせていた愛が溶け、燃えていた恋が実った瞬間だった。
そしてクローデイアを抱き上げると、踵を返した。
皆があっけに取られている中、母コートニーだけが涼しい顔でお茶を飲んでいた。
「わたくしがお呼びしましたのよ。クローデイアには勢いが必要ですからね。この十五年間ずっと求婚されていたのですよ」
クローディアはそのまま、オールディス侯爵家に帰ってこなかった。
クローデイアとアレックスは十五年超しの思いを実らせた。クローディアはアレックスの正妃となったのだ。
「アレックス叔父上は、この上もなく幸せそうだよ」
「ええ、叔母の幸せそうな顔が見られて嬉しいわ」
二人の披露の夜会は盛大だった。そこでジェイムズ王子とアレクサは、二人を祝福した。
「アレクサ、婚約者のことなんだけど…」
ジェイムズ王子は切り出した。
「君となら幸せになれると確信している。受けてもらえないかな」
「あら、だめよ」
即座に答えるアレクサ。
「ジムスとレキシーならうまくいくわ。でもジェイムズ王子とではだめ。わたくしは動物医になるのですもの」
「次期王太子ではだめってこと?」
「その通りよ」
ジェイムズ王子はジムスの顔でにやっと笑った。
「王位を継ぐのは僕でなくてもいいんだ。弟が二人いるしね。知ってる?」
アレクサを見ながら続ける。
「将来、元のバッケス辺境伯領は王族が治めることになったんだ。僕がそこの領主になったら考えてくれる?」
アレクサは笑い声をあげた。
「動物医の妻が満足するほどの動物がいたらね」
バッケス辺境伯領が制圧されたこと、ブラッツ・バッケスも拘束されたこと、カークス商会が閉鎖され商会長のアレン・カークスも拘束され、件の香水の売り手だったことも広まった。
まず公式に発表されたのは、件の香水に中毒性と毒性があったため、売っていた者と使用していた者を罰する旨だ。
オリヴィア・バッケス、ブラッツ・バッケス、アレン・カークス、ミランダ・アリスターは牢に繋がれた。
スティンキー・ガールズは、中毒性と毒性を知らずに使っていたが、明らかにその効能を意図的に使用した罪で、一年間の修道院行きと、親達には罰金が申し渡された。
その後、カークス商会とミランダ・アリスターとオリヴィア・バッケスは危険な品物を売った罪、ブラッツ・バッケスとカークス商会は密貿易で、それぞれ処罰された。
アレン・カークスは商業権剥奪の上、生涯牢で過ごすことになった。ブラッツ・バッケスは領地没収の上貴族籍剥奪、生涯入牢。ミランダ・アリスターとオリヴィア・バッケスは、修道院で生涯幽閉されることになった。
王太后は公式には病気療養のため、東の離宮に入った。そこへ幽閉される。
そして過去の事件、クローディア・オールディスとブラッツ・バッケスの婚約破棄の折、クローデイアがオリヴィアを虐待したという事実は、まったくのでっち上げだと公式に訂正された。件の香水に迷ったブラッツ・バッケスがオリヴィアの言うがままになってしまったのであって、虐待の事実はないと。
オリヴィア・バッケスの香水は取り締まられ、全てが破棄された。
すると、社交界では混乱が起きた。
香水の魅惑から覚めた人々が、婚約破棄や離縁を申し出てきたのだ。
収穫祭後の晩秋から冬にかけての社交界では、一部そんな人々の冷え冷えとした空気が漂っていた。
それでもオリヴィア・バッケスを嫌っていた大部分の者達は、ほっと胸を撫で下ろす思いだった。
「ああ、もうあの臭い香水をかがなくてもいいのね」
「幸せな二人をかき回す者もいなくなったことですしね」
などなど…
そんな中、ステファニー・マッカリスターがアレクサに尋ねた。
「クローディアはまだ外へ出ないの?すべての疑いが晴れたのに」
不満そうだ。
「叔母は…」
アレクサはためらいながら説明した。
「すっかり尻込みしています。十五年も外に出なかったので、怖いのだと思います」
「まあ!アレクサ、どうかあなたの家でお茶会を開いてちょうだい。小さなものがいいの。そこへ招待して。そしてこっそりわたくしをクローデイアの部屋へ連れて行って」
お茶会当日、ステファニー・マッカリスターはかなり早く到着した。いくつもの大小の箱を使用人に運ばせていた。
「さ、アレクサ、クローデイアの部屋に連れて行って」
母はアレクサに頷いた。
「マッカリスター夫人のおっしゃる通りになさい」
アレクサはクローディア叔母の部屋のドアをノックした。
「はい」
クローディアが返事をすると、ステファニー・マッカリスターは遠慮なくドアを開けて入って行った。
「クローディア!!」
ステファニー・マッカリスターはクローディアを抱きしめた。
「ずっと会いたかったのよ!会ってくれないなんて、あなた、ひどいわ!」
「ステファニー…」
クローディアはどぎまぎしていた。
「わたくしに関わると、色々と障りがあったから…」
「もうなくなったでしょ!なのに、まだ閉じこもっているなんて」
「わたくし、もうこの生活以外のことは忘れてしまったの」
「だめよ。思い出させてあげるわ」
ステファニー・マッカリスターは、使用人達を呼んだ。彼らの持ってきた箱には、ドレスや小物が入っていた。
「さ、これを着てお茶会に出るのよ。大丈夫、身内だけと変わらないわ」
ステファニー・マッカリスターは、有無を言わせずクローディアを着替えさせて、お茶会へ引っ張り出した。
ティーガウンに着替えたクローディア叔母は美しかった。
クリーム色のサテンに、結い上げた蜂蜜色の髪が映えている。
クローディアとアレクサはよく似ていた。
お茶会に引っ張り出されたクローディアは、意外にも楽しんでいる自分に気づいた。外にいたのは敵ではなく味方だったのだと気づいた。
そこへ家令がやってきて来客を告げたが、返事を待たずにドアが開き、アレックスが入ってきた。アレックスは真っすぐにクローデイアの元へ早足で近づいた。
二人は見つめ合った。
「あなたのために全てを成し遂げました」
クローディアに手を差し出すアレックス。
クローデイアの目から涙が一筋零れ落ちた。クローディアはアレックスに手を差し出した。
それは長年凍らせていた愛が溶け、燃えていた恋が実った瞬間だった。
そしてクローデイアを抱き上げると、踵を返した。
皆があっけに取られている中、母コートニーだけが涼しい顔でお茶を飲んでいた。
「わたくしがお呼びしましたのよ。クローデイアには勢いが必要ですからね。この十五年間ずっと求婚されていたのですよ」
クローディアはそのまま、オールディス侯爵家に帰ってこなかった。
クローデイアとアレックスは十五年超しの思いを実らせた。クローディアはアレックスの正妃となったのだ。
「アレックス叔父上は、この上もなく幸せそうだよ」
「ええ、叔母の幸せそうな顔が見られて嬉しいわ」
二人の披露の夜会は盛大だった。そこでジェイムズ王子とアレクサは、二人を祝福した。
「アレクサ、婚約者のことなんだけど…」
ジェイムズ王子は切り出した。
「君となら幸せになれると確信している。受けてもらえないかな」
「あら、だめよ」
即座に答えるアレクサ。
「ジムスとレキシーならうまくいくわ。でもジェイムズ王子とではだめ。わたくしは動物医になるのですもの」
「次期王太子ではだめってこと?」
「その通りよ」
ジェイムズ王子はジムスの顔でにやっと笑った。
「王位を継ぐのは僕でなくてもいいんだ。弟が二人いるしね。知ってる?」
アレクサを見ながら続ける。
「将来、元のバッケス辺境伯領は王族が治めることになったんだ。僕がそこの領主になったら考えてくれる?」
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