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キャロルの行く先は?≪最終話≫
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キャロルは心の底から姉よりも上の結婚をするために、浮名を流しているわけではなかった。
初恋が破れた傷心が癒えぬまま、姉が、今まで散々比べられた姉が初恋の相手と結婚してしまった。
結婚式を見れば諦めもついたのかもしれない。しかし、結婚式に参加は許されず、今でもシェリルとエルネストが結婚した実感があまりなくふわふわしている。
そのやり切れなさから、他人を傷つけたい、幸せな二人を壊したいという、漠然とした衝動に動かされているのだ。
「たった二年早く生まれただけで、褒められて、欲しいものは全部手に入れて、さぞお幸せでしょうね!!」
キャロルの悪態は止まらない。
「あたしがどんなに惨めだったか、考えたこともなかったんでしょう!?」
「キャロル!甘えるのもいい加減にしなさい!」
シェリルが厳しく咎めた。
「あなたはわたくしが欲しいものを全部手に入れたと言うけれど、それをあなたはいつも欲しがって大抵のものは手に入れていたじゃない。褒められなかったのは、あなたが努力を放棄したせいよ。本当はわかっているのでしょう?」
キャロルはぐっと言葉に詰まった。
「わたくしもセシリーお義姉様も、小さい頃から努力をしてきたのよ。努力もせずに褒められない讃えられないと泣き言を言うのはもうおやめなさい!」
「そうですよ、キャロル」
母が窘め始める。
「甘やかしたわたくし達もいけないのは重々承知しています。でも十五歳の時からあなたがやってきたことは、恥です。淑女の行いではありません。わたくし達は何度も諭して機会をあげました。それでもあなたは道を誤ったまま、とうとうあんなことをしでかしたではありませんませんか」
それまで黙っていた父が有無を言わせない口調で告げた。
「お前は修道院に封じる。出発は十日後だ。準備はこちらでする。それまで部屋にいるように」
キャロルは今度は厳重に見張りをつけられた。
部屋の中にはメイドが三人、部屋の外には屈強な使用人が二人、交代で見張った。
出発の日、キャロルは紺色の地味なドレスを着せられ、トランク一つを積んだ馬車に見張りのメイド達と共に乗せられた。馬車の周りを、馬に乗ったアンダーン伯爵家の護衛が六人で囲んでいる。
キャロルは泣くまいと唇を噛み締めていた。
馬車が街道に差し掛かると、周りが騒がしくなった。
と、馬車が止まり、誰かが鍵を開けてドアを開けた。
ブランドン・リプセットだった。
ブランドンは黙ってキャロルを抱き上げると、自分の馬車へ乗り込んだ。馬車はすぐに発進した。
「なんなの!?ブランドン!!」
ブランドンは厳しい顔で告げた。
「アンダーン伯爵から許可をもらったよ。今日、これから君は私と結婚するんだ」
突然のことにキャロルは言葉を失った。
そして泣いた。
「君が私と結婚したくないのは知っている。でもこれは決定なんだ。諦めてくれ」
キャロルはしゃくりあげながら言った。
「いやよ」
「それは通らない」
「いや!!」
キャロルは泣きながら言った。
「結婚式に白いドレスもヴェールもオレンジの花もないなんいや!!」
ブランドンは驚いた。
「じゃあ、結婚はいやじゃないの?」
「惨めな結婚式なんていや!出席者もフラワーガールもいない結婚式なんて」
ブランドンはキャロルを少し強く抱き寄せて言った。
「全部あるよ。準備していたんだ」
「いや!」
更に言い募るキャロルにブランドンは聞く。
「あとは何が欲しいの?」
キャロルは泣きながら言う。
「あたしを愛していない人との結婚はいや!あたしは愛されたいの!」
ブランドンは笑った。
「愛しているよ」
それでもキャロルはしゃくりあげながら言い募った。
「とうの立った行き遅れの花嫁なんていやよ!」
ブランドンはさらに笑った。
「大丈夫。私には君は初めて会った十六歳のままだから」
馬車は結婚式の準備のために、リプセット子爵家へ邁進して行った。
キャロルはブランドンの腕の中で泣きじゃくっていた。
そんなキャロルをブランドンは抱きしめた。
初恋が破れた傷心が癒えぬまま、姉が、今まで散々比べられた姉が初恋の相手と結婚してしまった。
結婚式を見れば諦めもついたのかもしれない。しかし、結婚式に参加は許されず、今でもシェリルとエルネストが結婚した実感があまりなくふわふわしている。
そのやり切れなさから、他人を傷つけたい、幸せな二人を壊したいという、漠然とした衝動に動かされているのだ。
「たった二年早く生まれただけで、褒められて、欲しいものは全部手に入れて、さぞお幸せでしょうね!!」
キャロルの悪態は止まらない。
「あたしがどんなに惨めだったか、考えたこともなかったんでしょう!?」
「キャロル!甘えるのもいい加減にしなさい!」
シェリルが厳しく咎めた。
「あなたはわたくしが欲しいものを全部手に入れたと言うけれど、それをあなたはいつも欲しがって大抵のものは手に入れていたじゃない。褒められなかったのは、あなたが努力を放棄したせいよ。本当はわかっているのでしょう?」
キャロルはぐっと言葉に詰まった。
「わたくしもセシリーお義姉様も、小さい頃から努力をしてきたのよ。努力もせずに褒められない讃えられないと泣き言を言うのはもうおやめなさい!」
「そうですよ、キャロル」
母が窘め始める。
「甘やかしたわたくし達もいけないのは重々承知しています。でも十五歳の時からあなたがやってきたことは、恥です。淑女の行いではありません。わたくし達は何度も諭して機会をあげました。それでもあなたは道を誤ったまま、とうとうあんなことをしでかしたではありませんませんか」
それまで黙っていた父が有無を言わせない口調で告げた。
「お前は修道院に封じる。出発は十日後だ。準備はこちらでする。それまで部屋にいるように」
キャロルは今度は厳重に見張りをつけられた。
部屋の中にはメイドが三人、部屋の外には屈強な使用人が二人、交代で見張った。
出発の日、キャロルは紺色の地味なドレスを着せられ、トランク一つを積んだ馬車に見張りのメイド達と共に乗せられた。馬車の周りを、馬に乗ったアンダーン伯爵家の護衛が六人で囲んでいる。
キャロルは泣くまいと唇を噛み締めていた。
馬車が街道に差し掛かると、周りが騒がしくなった。
と、馬車が止まり、誰かが鍵を開けてドアを開けた。
ブランドン・リプセットだった。
ブランドンは黙ってキャロルを抱き上げると、自分の馬車へ乗り込んだ。馬車はすぐに発進した。
「なんなの!?ブランドン!!」
ブランドンは厳しい顔で告げた。
「アンダーン伯爵から許可をもらったよ。今日、これから君は私と結婚するんだ」
突然のことにキャロルは言葉を失った。
そして泣いた。
「君が私と結婚したくないのは知っている。でもこれは決定なんだ。諦めてくれ」
キャロルはしゃくりあげながら言った。
「いやよ」
「それは通らない」
「いや!!」
キャロルは泣きながら言った。
「結婚式に白いドレスもヴェールもオレンジの花もないなんいや!!」
ブランドンは驚いた。
「じゃあ、結婚はいやじゃないの?」
「惨めな結婚式なんていや!出席者もフラワーガールもいない結婚式なんて」
ブランドンはキャロルを少し強く抱き寄せて言った。
「全部あるよ。準備していたんだ」
「いや!」
更に言い募るキャロルにブランドンは聞く。
「あとは何が欲しいの?」
キャロルは泣きながら言う。
「あたしを愛していない人との結婚はいや!あたしは愛されたいの!」
ブランドンは笑った。
「愛しているよ」
それでもキャロルはしゃくりあげながら言い募った。
「とうの立った行き遅れの花嫁なんていやよ!」
ブランドンはさらに笑った。
「大丈夫。私には君は初めて会った十六歳のままだから」
馬車は結婚式の準備のために、リプセット子爵家へ邁進して行った。
キャロルはブランドンの腕の中で泣きじゃくっていた。
そんなキャロルをブランドンは抱きしめた。
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