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13.友情のありがたさ
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「わたくし達は、こんなことで屈しません!」
イザドラ様は私を抱き起し、凛とした声で言った。
「女なんて、モノにしてしまえば言うことを聞くようになるんだ」
そう嘯くレオン・アランナの顔は、いやになるほど記憶の中の国王に似ていた。
思わず私は叫んでいた。その声は自分でも驚くほどしわがれていた。
「母はわたくしを産んでも、国王に屈しなかったわ!!」
不幸を告げるカラスのようにしわがれた声で、さらに言い募る。
「たとえお前に汚されても、決してお前の言う通りにはならない!」
レオン・アランナは怯んだ。
「災いあれ!レオン・アランナ!お前はもうおしまいだ!!」
逆上したレオン・アランナが私達に拳を固めて向かってきた。
とっさに私達はお互いを庇おうとした。固く抱きしめ合って目を閉じた。
しかし、レオン・アランナの拳は私達を襲わなかった。
目を開けると、ホールは人でいっぱいになっていた。
私達はアナベル達を始め、多くの女生徒に囲まれていて、その隙間から男子生徒や警備に固められて泣き声を上げるレオン・アランナらしき姿が見えた。
ホールには続々と人が集まってきた。
その中を、レオン・アランナは拘束されて警備に連れ去られていった。
私とイザドラ様は、さらに固くおたがいを抱きしめ合っていた。その周りを守るように女生徒達が取り囲み、アナベルとエラとフィオナは、私達に抱きついた。
誰かが私達にショールを巻き付けてくれた。
アナベル達に抱きかかえられるように、私達は医務室へ連れていかれた。
女性の医師が呼ばれ、私達の傷の具合を診てくれた。
イザドラ様の顔には、すでにところどころ青紫色の痣が浮き出ていた。幸いにも、他に傷はないようだ。
助手がイザドラ様の顔の痣に薬を塗りガーゼを当てている間に、私も診察された。
「女の子の顔になんてことを!」
医師は憤慨していた。
「あなたもこんなに痣が出来て…口の中は切れているわ。しばらくは染みるわよ」
それから胸元を見て、
「指の後がこんなにくっきりと…許せないわ。短剣でつけられた傷は浅いわ。すぐ治るでしょう」
助手や胸元を手当てしてくれ、首に包帯が巻かれる。
「傷ではないけれど、痣が消えるまで巻いていた方がいいわ。ご家族はさぞ驚くでしょうね」
と言って、こめかみを押さえる医師。
ほどなく医務室の入り口が騒がしくなった。
「ご家族がいらしたようだわ。先に怪我の説明をしてきますから、ここにいてくださいね」
医師は言いおいて席を立った。
ほどなくレンネップ公爵夫妻と、私の母と祖父母がやってきて、それぞれを抱きしめた。しばらくは無事を喜んでいたが、レンネップ公爵がいち早くこちらに気づいた。
「サーシャ・バーレク、この度は誠に申し訳なかった」
「公爵が謝ることはなにもございません」
私は言ったが、その声はしわがれてかすれて小さかった。
「まあ」
とレンネップ公爵夫人が声をあげた。
「今度という今度は、レオンめを断罪する!」
レンネップ公爵は強い口調で言った。
「レオン・アランナはすでにティーブリー牢獄に投獄されました」
いつの間にか医務室に入ってきたか、学長が静かに告げた。
「これから傷害と不敬罪で裁かれます」
私達は家に戻って行った。
翌日、私はイザドラ様に、花束を添えてお見舞い状を送った。入れ違うようにイザドラ様から花束とお見舞い状が届いた。
「イザドラ様はお優しい方ね」
母は花を生けながら言った。
私はまだ声が出ず、こくこくと頷いた。
アナベルとエラとフィオナは、繁くお見舞いに来た。
また級友や、今まで知らなかった上級生や下級生からもお見舞い状が届いた。
私はなんと恵まれているのだろうと、ありがたく思った。
それからは展開が早かった。
裁判はあっという間に結審した。
前回のことといい、今回も証言者があまりにも多かったのだ。
レオン・アランナは西北の山脈の中にある修道院に送られ、罪人として繋がれ苦役に就くことになった。そこで監視のもと十年をすごし、改心が認められなかった場合はさらに十年繋がれる。
たとえ改心したとしても、レオン・アランナの未来は暗いものとなった。
アランナ子爵家では、レオンを正式な手続きで縁切りした。
これでレオンは身元引受人のいない流民扱いとなった。
それでもアランナ子爵家は監督不行き届きで罰金を科せられ、私とイザドラ様に支払われた。
「これでは持参金には十分すぎる額がたまってしまったな」
と祖父は苦笑いした。
私は相変わらず
「結婚なんかしません!」
と怒りたかったが、声が出なかった。ただ国を横に振った。
私の声はしばらく戻らず、回復には結局冬季休暇いっぱいかかってしまった。
切り傷はすぐ癒えたが、首についた忌々しいレオン・アランナの手形がなかなか消えず、新学期にはハイネックのドレスにスカーフを首に巻いて登校した。
「あの時、まるで災いを司るカラスの女神がレオン・アランナを呪っているように聞こえたわ」
フィオナが言う。
ちょうどホールのドアを開けようとしたところで、聞こえたそうだ。
「その呪いは発動したわね」
アナベルが真剣な顔で言う。
「自業自得だわ」
日頃穏やかなエラが憤然としたよう言い切る。
「もうこれで終わったのよね?」
私は少し弱弱しく言ってしまった。
優しい友達に囲まれて、少し甘えていたのだ。
「当たり前じゃない!」
皆は言い切った。
「本当にありがとう。なにもかもあなた達のおかげよ」
私達は抱き合って、涙と笑いを共にした。
イザドラ様は私を抱き起し、凛とした声で言った。
「女なんて、モノにしてしまえば言うことを聞くようになるんだ」
そう嘯くレオン・アランナの顔は、いやになるほど記憶の中の国王に似ていた。
思わず私は叫んでいた。その声は自分でも驚くほどしわがれていた。
「母はわたくしを産んでも、国王に屈しなかったわ!!」
不幸を告げるカラスのようにしわがれた声で、さらに言い募る。
「たとえお前に汚されても、決してお前の言う通りにはならない!」
レオン・アランナは怯んだ。
「災いあれ!レオン・アランナ!お前はもうおしまいだ!!」
逆上したレオン・アランナが私達に拳を固めて向かってきた。
とっさに私達はお互いを庇おうとした。固く抱きしめ合って目を閉じた。
しかし、レオン・アランナの拳は私達を襲わなかった。
目を開けると、ホールは人でいっぱいになっていた。
私達はアナベル達を始め、多くの女生徒に囲まれていて、その隙間から男子生徒や警備に固められて泣き声を上げるレオン・アランナらしき姿が見えた。
ホールには続々と人が集まってきた。
その中を、レオン・アランナは拘束されて警備に連れ去られていった。
私とイザドラ様は、さらに固くおたがいを抱きしめ合っていた。その周りを守るように女生徒達が取り囲み、アナベルとエラとフィオナは、私達に抱きついた。
誰かが私達にショールを巻き付けてくれた。
アナベル達に抱きかかえられるように、私達は医務室へ連れていかれた。
女性の医師が呼ばれ、私達の傷の具合を診てくれた。
イザドラ様の顔には、すでにところどころ青紫色の痣が浮き出ていた。幸いにも、他に傷はないようだ。
助手がイザドラ様の顔の痣に薬を塗りガーゼを当てている間に、私も診察された。
「女の子の顔になんてことを!」
医師は憤慨していた。
「あなたもこんなに痣が出来て…口の中は切れているわ。しばらくは染みるわよ」
それから胸元を見て、
「指の後がこんなにくっきりと…許せないわ。短剣でつけられた傷は浅いわ。すぐ治るでしょう」
助手や胸元を手当てしてくれ、首に包帯が巻かれる。
「傷ではないけれど、痣が消えるまで巻いていた方がいいわ。ご家族はさぞ驚くでしょうね」
と言って、こめかみを押さえる医師。
ほどなく医務室の入り口が騒がしくなった。
「ご家族がいらしたようだわ。先に怪我の説明をしてきますから、ここにいてくださいね」
医師は言いおいて席を立った。
ほどなくレンネップ公爵夫妻と、私の母と祖父母がやってきて、それぞれを抱きしめた。しばらくは無事を喜んでいたが、レンネップ公爵がいち早くこちらに気づいた。
「サーシャ・バーレク、この度は誠に申し訳なかった」
「公爵が謝ることはなにもございません」
私は言ったが、その声はしわがれてかすれて小さかった。
「まあ」
とレンネップ公爵夫人が声をあげた。
「今度という今度は、レオンめを断罪する!」
レンネップ公爵は強い口調で言った。
「レオン・アランナはすでにティーブリー牢獄に投獄されました」
いつの間にか医務室に入ってきたか、学長が静かに告げた。
「これから傷害と不敬罪で裁かれます」
私達は家に戻って行った。
翌日、私はイザドラ様に、花束を添えてお見舞い状を送った。入れ違うようにイザドラ様から花束とお見舞い状が届いた。
「イザドラ様はお優しい方ね」
母は花を生けながら言った。
私はまだ声が出ず、こくこくと頷いた。
アナベルとエラとフィオナは、繁くお見舞いに来た。
また級友や、今まで知らなかった上級生や下級生からもお見舞い状が届いた。
私はなんと恵まれているのだろうと、ありがたく思った。
それからは展開が早かった。
裁判はあっという間に結審した。
前回のことといい、今回も証言者があまりにも多かったのだ。
レオン・アランナは西北の山脈の中にある修道院に送られ、罪人として繋がれ苦役に就くことになった。そこで監視のもと十年をすごし、改心が認められなかった場合はさらに十年繋がれる。
たとえ改心したとしても、レオン・アランナの未来は暗いものとなった。
アランナ子爵家では、レオンを正式な手続きで縁切りした。
これでレオンは身元引受人のいない流民扱いとなった。
それでもアランナ子爵家は監督不行き届きで罰金を科せられ、私とイザドラ様に支払われた。
「これでは持参金には十分すぎる額がたまってしまったな」
と祖父は苦笑いした。
私は相変わらず
「結婚なんかしません!」
と怒りたかったが、声が出なかった。ただ国を横に振った。
私の声はしばらく戻らず、回復には結局冬季休暇いっぱいかかってしまった。
切り傷はすぐ癒えたが、首についた忌々しいレオン・アランナの手形がなかなか消えず、新学期にはハイネックのドレスにスカーフを首に巻いて登校した。
「あの時、まるで災いを司るカラスの女神がレオン・アランナを呪っているように聞こえたわ」
フィオナが言う。
ちょうどホールのドアを開けようとしたところで、聞こえたそうだ。
「その呪いは発動したわね」
アナベルが真剣な顔で言う。
「自業自得だわ」
日頃穏やかなエラが憤然としたよう言い切る。
「もうこれで終わったのよね?」
私は少し弱弱しく言ってしまった。
優しい友達に囲まれて、少し甘えていたのだ。
「当たり前じゃない!」
皆は言い切った。
「本当にありがとう。なにもかもあなた達のおかげよ」
私達は抱き合って、涙と笑いを共にした。
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