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6.魂は正しい器に
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ジルリアの前に仁王立ちになったデーティアはジルリアを糾弾した。
「あんたね!ジャンヌの死の時に、なんで魔法や呪いを疑わなかったんだい!?だいたい三人の女が揃って流産して、それをジャンヌのせいにしたことがおかしいだろう!?そもそもいきなり三人が同時に王太子の子を身籠ったって、おかしいだろう!?」
国王ジルリアはたじたじとなって言い訳をする。
「しかしあの時、フィリップが肯定したので…」
「その前には身に覚えがないって言ってたんだろう?対面した途端に認めるのもおかしい。ジャンヌが正しかったんじゃないのかい?」
デーティアはジルリアを問い詰める。
「なんでその時にあたしを呼ばなかったんだい!?」
「大伯母上は面倒ごとがお嫌いではないですか」
「お黙り!!」
デーティアは厳しく叱責した。
「そんな時こそ国王の真価が問われるんだよ!まったく!甘っちょろいったらないよ!」
喧々とデーティアはジルリアを責め立てた。
「あんたはフィリパの加護に加えてあたしの加護もついているから、手を出せなかったんだろうよ。そのとばっちりと相まって、ジャンヌは死んだ、いや、殺されたんだ」
愕然とするジルリア。
「こぼれたミルクは元に戻らないって言っただろ。済んだことは取り返せない。ここからはあたしが出張るよ。西の離宮だったね」
「細かい打ち合わせは明日ね。いいかい?先走るんじゃないよ?どっかりかまえておいで」
デーティアは釘を刺した。
******
まずはこの国で一番地位の高い女、王太子妃シャロンからだ。
ジルリアに手を回してもらって、化粧品と薬草茶を売る信用のおける魔女としてシャロンの元へ行く。
王太子妃は息子の病のため気落ちしており、国王が「気散じに」と紹介した形を取った。
控えの間には、シャロンの生家からついて来た侍女のソフィーとメイドのマリアがいた。
デーティアは軽くフードを後ろにずらして、片目をつぶるとソフィーは頷き、マリアは廊下に出て見張りに当たった。
察しのいい熟練した優秀な侍女達だ。
デーティアは白猫のジルを抱いて、シャロンと王子のジルリアのいる部屋に入った。
シャロンは白猫のジルを見て、はっと身じろぎした。
母親の勘っていうのは偉大だね。
デーティアは感心する。
白猫のジルに息子の気配を感じたようだ。
デーティアは部屋の中に結界を張った。
元から部屋には王子ジルリアの奇行に怯えて侍女のソフィーとメイドのマリア以外は、呼ばなければ寄り付かなくなっていたのは好都合だったが、念のためだ。
「シャロン、元気だったかい…なんて聞くまでもないね。辛かったろう」
「あなたは…」
驚くシャロン。次いで涙がこぼれる。
「婆が来たから大丈夫だよ。全く…」
デーティアはシャロンの涙をハンカチで拭いながら言う。
「あんたはわかったみたいだね。この猫の中にジルリアの魂があるんだよ。子供の中には猫の魂がね」
デーティアは猫のジルと人間のジルを並べて、かけられた姿替えの魔法と封印を解いた。
まったく…
デーティアはむかっ腹を立てた。
お粗末な魔法だよ。こんなものに宮廷魔導士が気づかないなんて質が落ちたものだね。
王子ジルリアと白猫ジルの魂が、正当な持ち主の元に戻った。
真っ白で長い毛並みの金目銀目の猫と、淡い金髪にロイヤル・パープルの瞳の男の子。
「ははえー」
王子ジルリアが片言でシャロンを呼ぶ。
「母ですよ!ジルリア!!」
シャロンはジルリアをひしと抱きしめた。
二歳ならばもっと言葉を話せるだろうが、一年以上猫でいたのだから仕方がない。
デーティアが白猫ジルを抱き上げると
「ぐなぁー」
と高い声で鳴いた。
「おまえさんの鳴き声を初めて聞いたよ」
デーティアはジルを撫でた。
「ばぁー」
ジルリアがデーティアを呼ぶ。
「ごあん」
デーティアは笑った。
「シャロン、ジルリアはお腹が空いたってさ。この子の好物を知っているかい?」
「ミルクはよく飲みましたが…」
「それは猫の好みだよ」
デーティアは笑って言った。
「鶏肉とマッシュポテトだよ」
ジルリアに向かって甘やかすように言う。
「人間に戻ったからね。バターと塩を入れたマッシュポテトが食べられるよ。チキンスープもね」
デーティアは侍女とメイドを呼び入れた。
2人はしばらく居室のドアに触ることもできず、声も聞こえなかったので心配していた。
かいつまんで行く立てを話すと、二人は涙を流して喜んだ。
メイドに王子ジルリアと猫のジルの食事の指示をして持ってこさせる。
白猫のジルは床に置いたお盆で食べさせる。
茹でた鶏肉だ。
ジルリアには鶏肉がたっぷり入ったスープとマッシュポテト。
椅子に座って食事を前にしたジルリアは嬉しそうにデーティアを見た。
「ばぁ、あーん」
口を開けて待つジルリアにデーティアはくすくす笑い、シャロンは驚いた顔をした。
「ちょっと、甘やかし過ぎたね。でもジルリアに皿から直接食べさせるに忍びなくてね。こうやって食べさせていたのさ」
慣れた手つきでマッシュポテトとチキンスープを、スプーンでジルリアの口に運ぶ。
「しばらくはジルリアの様子を見せないことだね。見つかったらまた呪いをかけられるだろうよ」
ジルリアの食事が終わって、デーティアとシャロンは話し合う。
「この部屋にはあんたとソフィーとマリアだけしか入れない事。それと…」
デーティアはシャロンをためすがめつ検分した。
疲れ切っているね。
「まずは今日はゆっくりお休み。肌と髪の艶を戻して、以前より美しくなるんだ。そしてね…」
デーティアが女達の懐に潜り込む算段を始めた。
「あんたね!ジャンヌの死の時に、なんで魔法や呪いを疑わなかったんだい!?だいたい三人の女が揃って流産して、それをジャンヌのせいにしたことがおかしいだろう!?そもそもいきなり三人が同時に王太子の子を身籠ったって、おかしいだろう!?」
国王ジルリアはたじたじとなって言い訳をする。
「しかしあの時、フィリップが肯定したので…」
「その前には身に覚えがないって言ってたんだろう?対面した途端に認めるのもおかしい。ジャンヌが正しかったんじゃないのかい?」
デーティアはジルリアを問い詰める。
「なんでその時にあたしを呼ばなかったんだい!?」
「大伯母上は面倒ごとがお嫌いではないですか」
「お黙り!!」
デーティアは厳しく叱責した。
「そんな時こそ国王の真価が問われるんだよ!まったく!甘っちょろいったらないよ!」
喧々とデーティアはジルリアを責め立てた。
「あんたはフィリパの加護に加えてあたしの加護もついているから、手を出せなかったんだろうよ。そのとばっちりと相まって、ジャンヌは死んだ、いや、殺されたんだ」
愕然とするジルリア。
「こぼれたミルクは元に戻らないって言っただろ。済んだことは取り返せない。ここからはあたしが出張るよ。西の離宮だったね」
「細かい打ち合わせは明日ね。いいかい?先走るんじゃないよ?どっかりかまえておいで」
デーティアは釘を刺した。
******
まずはこの国で一番地位の高い女、王太子妃シャロンからだ。
ジルリアに手を回してもらって、化粧品と薬草茶を売る信用のおける魔女としてシャロンの元へ行く。
王太子妃は息子の病のため気落ちしており、国王が「気散じに」と紹介した形を取った。
控えの間には、シャロンの生家からついて来た侍女のソフィーとメイドのマリアがいた。
デーティアは軽くフードを後ろにずらして、片目をつぶるとソフィーは頷き、マリアは廊下に出て見張りに当たった。
察しのいい熟練した優秀な侍女達だ。
デーティアは白猫のジルを抱いて、シャロンと王子のジルリアのいる部屋に入った。
シャロンは白猫のジルを見て、はっと身じろぎした。
母親の勘っていうのは偉大だね。
デーティアは感心する。
白猫のジルに息子の気配を感じたようだ。
デーティアは部屋の中に結界を張った。
元から部屋には王子ジルリアの奇行に怯えて侍女のソフィーとメイドのマリア以外は、呼ばなければ寄り付かなくなっていたのは好都合だったが、念のためだ。
「シャロン、元気だったかい…なんて聞くまでもないね。辛かったろう」
「あなたは…」
驚くシャロン。次いで涙がこぼれる。
「婆が来たから大丈夫だよ。全く…」
デーティアはシャロンの涙をハンカチで拭いながら言う。
「あんたはわかったみたいだね。この猫の中にジルリアの魂があるんだよ。子供の中には猫の魂がね」
デーティアは猫のジルと人間のジルを並べて、かけられた姿替えの魔法と封印を解いた。
まったく…
デーティアはむかっ腹を立てた。
お粗末な魔法だよ。こんなものに宮廷魔導士が気づかないなんて質が落ちたものだね。
王子ジルリアと白猫ジルの魂が、正当な持ち主の元に戻った。
真っ白で長い毛並みの金目銀目の猫と、淡い金髪にロイヤル・パープルの瞳の男の子。
「ははえー」
王子ジルリアが片言でシャロンを呼ぶ。
「母ですよ!ジルリア!!」
シャロンはジルリアをひしと抱きしめた。
二歳ならばもっと言葉を話せるだろうが、一年以上猫でいたのだから仕方がない。
デーティアが白猫ジルを抱き上げると
「ぐなぁー」
と高い声で鳴いた。
「おまえさんの鳴き声を初めて聞いたよ」
デーティアはジルを撫でた。
「ばぁー」
ジルリアがデーティアを呼ぶ。
「ごあん」
デーティアは笑った。
「シャロン、ジルリアはお腹が空いたってさ。この子の好物を知っているかい?」
「ミルクはよく飲みましたが…」
「それは猫の好みだよ」
デーティアは笑って言った。
「鶏肉とマッシュポテトだよ」
ジルリアに向かって甘やかすように言う。
「人間に戻ったからね。バターと塩を入れたマッシュポテトが食べられるよ。チキンスープもね」
デーティアは侍女とメイドを呼び入れた。
2人はしばらく居室のドアに触ることもできず、声も聞こえなかったので心配していた。
かいつまんで行く立てを話すと、二人は涙を流して喜んだ。
メイドに王子ジルリアと猫のジルの食事の指示をして持ってこさせる。
白猫のジルは床に置いたお盆で食べさせる。
茹でた鶏肉だ。
ジルリアには鶏肉がたっぷり入ったスープとマッシュポテト。
椅子に座って食事を前にしたジルリアは嬉しそうにデーティアを見た。
「ばぁ、あーん」
口を開けて待つジルリアにデーティアはくすくす笑い、シャロンは驚いた顔をした。
「ちょっと、甘やかし過ぎたね。でもジルリアに皿から直接食べさせるに忍びなくてね。こうやって食べさせていたのさ」
慣れた手つきでマッシュポテトとチキンスープを、スプーンでジルリアの口に運ぶ。
「しばらくはジルリアの様子を見せないことだね。見つかったらまた呪いをかけられるだろうよ」
ジルリアの食事が終わって、デーティアとシャロンは話し合う。
「この部屋にはあんたとソフィーとマリアだけしか入れない事。それと…」
デーティアはシャロンをためすがめつ検分した。
疲れ切っているね。
「まずは今日はゆっくりお休み。肌と髪の艶を戻して、以前より美しくなるんだ。そしてね…」
デーティアが女達の懐に潜り込む算段を始めた。
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