妖怪たちに愛されすぎる優しい和菓子職人

及川証 (アカシ)

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父の日プレゼント―和人編小話―

76.地獄産まれ、現世で悩む

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 吉兵衛はスーパーのカゴを手に持ち野菜コーナーを歩いていた。

「人参とこんにゃく。それと―――」

 顔を上げた途端吉兵衛は固まってしまった。
 見たことのある横顔に思わず声をかける。

「和人?」

 野菜を睨みつけていた青年――和人はパッと顔を上げた。

「吉兵衛!よかった、会えた」

 心底安堵した表情で吉兵衛を見る和人に吉兵衛は少し困惑する。

「どうしたんだい、こんなところで……」

「実は父上にプレゼントを渡そうと思って――」

「ああ、それで―――それで……何故じゃが芋を……」

 先程和人が見ていた物、じゃが芋に視線を向けた吉兵衛は和人に聞く。

「何かの置物だと思って」

「置物に使うのはおやめ。芽が出るからね」

 「植物なのかコレ」とバラ売りにされているじゃが芋を和人はまじまじと見る。

「やっぱり吉兵衛のところに来てよかった。場所までは大雑把にしかわからなくて諦めかけてたんだけど」

 「父上、植物育てる暇はあまりなさそうだし」とじゃが芋を元の位置に戻す和人に吉兵衛は言った。

「スーパーのじゃが芋を育てるってのは聞いたことないね」

 「それ食べ物だからね」と吉兵衛の説明に和人はじゃが芋を二度見した。

 ―――

「プレゼントねえ……」

 吉兵衛は和人を自宅に招きソファに座らせ自分は買ったものを冷蔵庫にしまいながら話に耳を傾ける。

「こちらの世界には父の日というものがあるでしょ?参考にしたくてね」

「私もおっとさんにプレゼントは贈ったことはないね……」

 「そっか」と少し肩を落とし和人は言う。

「プレゼント初めてもらったんだ。父上から凄く嬉しくて、どうにかプレゼントのお返しを形に残るもので返したいんだ」

「そうだったのかい―――じゃあ一緒に探そうじゃないか」

 「いいの?」と聞く和人に吉兵衛はうなずく。

「父の日は過ぎちまったけどね。1回くらいはやろうと思ったんだよ。日ごろの感謝を込めたもん貰うのって嬉しいもんだからね。もちろんおっかさんにもやるつもりだよ」

 「お前さんは他にやる人はいるのかい?」と和人に聞くと顎に手を当て悩む様子を見せる。

「我は父上の血で生まれたから親は父上一人なんだ。日ごろの感謝を表すのであればもう一人いる」

 「誰だい?」と吉兵衛は聞いた。

「傀北だよ」

 傀北。イザそうで白蜘蛛にけちょんけちょんにやられた姿が吉兵衛の記憶であり、あまりいいイメージのない人物。

「傀北はあの一件以来我を気にかけてくれるようになってね。我のこと、気づいてやれなかったのに悔いていたから」

「そうかい」

(根はいい奴だったんだね)

 それなら和人が安心だと満足げに吉兵衛はうなずく。

「ところでどうするんだい?1回帰るのかい」

 2人は窓を見ると日が傾き薄暗くなっていた。
 その空に和人は思い出したように言う。

「そっか、こっちでは夜ってのがあったね。店が閉まる時間」

「プレゼント買うなら明日にした方がいいね」

「そう――だね……」

 なにか言いづらそうにこちらを見る和人に察した吉兵衛は笑みを浮かべ、答えた。

「ウチに泊まるかい?」






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