過去から来た忍者を拾ったら、料理上手すぎる完璧奥さんでした

及川証 (アカシ)

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飛んでみて

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「内臓がふわっとした」

 大翔の率直な感想に皆(そうだろうな)と思う。

「吐き気とかはしてない?」

 元気よく「うん!」と言う大翔。

 どうやら秋人の心配は不要だったようで大人たちはほっと息を吐く。

 尋常じゃないほどの雪白脚力。本当に「跳ぶ」というより「飛ぶ」の方が正しいと思えるほどだった。

「他の会社やマンションから苦情くるかな?来ないでほしいな」

 顔色青く言う田中部長に雪白は言う。

「大丈夫です!誰も見てないタイミングで移動しましたので!」

「君、本当に人間?」

 もはやパルクールとも言えない離れ業に田中部長はかなり疲れたのだろう「げっそり」とした表情で言う。

「楽しかった?大翔君」

 田中部長を無視し秋人は大翔に感想を聞くと「うん!」と満面の笑みで答えた。

「大翔っ!!」

 「パタパタ」と駆け寄ってくる若い女性は大翔を抱きしめる。

「急に飛び出してっ!心配するじゃないっ」

 母親なのであろう女性は大翔の目を見る。

 額には汗がにじみ、探して回ったのだと予想がつく。

「ごめんなさい」

 子供心に悪いことをしたが少し不満そうな謝罪に母親はため息を吐く。

 それは「安堵」と「呆れ」であった。

「申し訳ございませんうちの子が……その……特に忍者さん。なんでも通報されて警察に連れて行かれたとか」

 心底申し訳なさそうに腰低くいう女性に雪白は両手のひらを横に振る。

「大丈夫です!こういう時のための典秀君ですから!」

「少しは自重しろ馬鹿野郎」

 ため息を吐きながら典秀は雪白を親指で指さす。

「バスと並走する時点で不審者ですから。学校に落ち度はありませんよ」

 にこやかに言いつつ雪白に刺さる言葉を吐く典秀。

「バスと並走って……お前の嫁さんすげえな。他に何ができるんだ?」

 興味本位で聞く遠藤に「料理と家事全般」と躊躇いもなく言う秋人。

「いや、聞いてんのはそれじゃねえよ?」

 言葉の意味が分からない秋人は首をかしげる。

「何でまたこんな事したの」

 優しく問いただす母に大翔はうつむきながら重い口を開く。

「だってお父さんとお話ししたかったんだもん」

 その言葉に男性陣は息を呑んだ。

「あの……大翔君のお父さんは、もう……」

 田中部長が悲しそうな表情で言うと母親は笑いながら言う。

「いいえ、仕事で外国に行ってるだけです。国際電話高くてたまにしか連絡出来なくて」

 「お父さんとお話しするよりも叫ぶので大変だった!」と大翔の屈託のない笑みに男性陣は「ガクッ」と前のめりになった。

「――――……」

「えっ?」

 笑い声の中、雪白だけがふと後ろを見る。

何かを聞いたような、聞き間違いのような気配がしたからだ。

「雪白、どうしたの?」

「いいえ、何も!」

 気のせいと思いつつ雪白は秋人に視線を戻すのだった。


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