社畜おじさん、仕事を辞めて辻ヒーラーになる。

七渕ハチ

文字の大きさ
122 / 140
第三章後半『攻城戦イベント』

第122話 タルにご用心

しおりを挟む
『青陣営の残党数人が離れていくでござる』

『無事に押し切れましたね』

 スキル範囲増幅剤の効果を感じられる戦いだった。こちらはアイアンクラッドタートルでダメージを軽減し、相手は直後から回復に追われる。先手の状況を作れるのは非常に大きい。

 途中、裏手で戦いを繰り広げていた集団が合流しても、落ち着いて対処できた。後ろにガーディアンが控えると心理的な余裕が生まれる。


《中央下の拠点、煙霧平野の占拠が完了した。続けて中心の古城跡地を占拠後、流れに乗って城攻めを行う。あくまで試験的に、必要なものの確認作業と考えてほしい》


『お! うちのサブマスがやる気だ!』

『まあ、対策を立てるなら早いうちがいいよね』

『すぐ行く?』

『行きたいところですが、貢献ポイントの交換に戻りましょう』

『わかった』

『ポイントは稼げたでござるしね』


《中央三つの拠点を手厚く守り、他は手薄で構わない。我々の城が攻められた場合は本隊を脱落した者に対応願う》


 合流は遅れるが拠点を離れ本陣へと走って戻る。

『ライドが交換品にあったらなー』

『各拠点に転移できるアイテムがあるって、ギルドメンバーが話してたかも?』

『ほう、それはなんとも便利な』

 死なずに移動の手間を省けるのは助かる。採取物を無事に持ち帰れるし、道中でもすぐ救援に向かえた。

『さっき、装備がゴージャスな人もいたっけ』

『忍バージョンがほしいでござる!』

 ゴテゴテ度が増した格好で足軽に侍っぽさが出ていた。残念ながら忍者の方向性は見当たらなかったので、種類は限られそうだ。

『この先、拠点が青になってる』

『我慢しましょう』

『仕方ない』

 中央より本陣側だが、シュヴァルツさんの手薄発言もある。占拠されているからこそ相手がばらけるとも考えられた。

 度々、全体チャットで流れる戦況を横耳に。戦闘を回避して城に到着する。改めて地図で周辺を見ると門が三か所あった。守りは分散されるが、攻める方も主導権を持つとはいえ難しい判断が求められる。単純に大人数が集まると身動きがとりにくい、という運営上の理由かもしれない。

 NPCが店を開く部屋で各々、アイテムを吟味する。素材の納品所も見つけたので全てを預けた。その素材たちは同じ陣営のプレイヤーが自由に使えるようだ。まさに協力プレイでやる気が出る。

 交換品のクエスチョンマークは全てが外れていた。最も高いのは破城槌の設計図で、現在の貢献ポイントでも足りない。おそらく城の扉を打ち破るのに使うのだろう。ポーションなどは複数個欲しいため、温存して交換を目指すにも時間がかかる。それに、そこまで数が必要かは疑問だ。

 みんなのポイントが無駄に消費される事態は避けるべき。特定の場面で活用するものは、シュヴァルツさんに任せるのが一番か。

 他に見て回る中で爆発タルといった変わり種も目を引く。ただのタルなら隠れる場所に使えたが。流れ弾に当たって爆発するのは怖かった。

『色々あるなー』

『あれもこれも交換するのはなしね』

『なんで?』

『死んだらロストするでしょ』

『あ、そっか』

『貢献ポイントは減らなかったし。最低限にしときなよ』

『おっけ』

 確かに、勢いで交換を重ねるのは悪手だ。まずは転移用の……。


【転移コーラ】
『種類』イベント専用アイテム
『説明』占拠中の拠点に移動する
    スパイスの風味が豊かなコーラ
    ぬるい


 なぜか飲み物のコーラ型で予備を含め三つ入手する。何度も使うときは本陣の城に転移すればよかった。

『ここに投擲アイテムがありますよ』

『交換しておきます』

 コヨミさんの前にいるNPCから、いくつか選ぶ。消耗品のおかげかポイントは低めの設定でありがたい。

 さらにポーションの数を悩みつつ、スキル範囲増幅剤もきっと出番が多いはず。最後に防具のアップグレードを行うと貢献ポイントが寂しくなる。また頑張って役立ちつつ地道に増やそう。

『これでみんな装備がかっこよくなった!』

『まだ上のアップグレードがあるんだね』

『忍の装いはありませんでしたが、集団へ紛れる任務と考えましょう』

 徹底した忍者振りはさすが。自分も初心を忘れず、効果範囲を広げた回復魔法も活用して支援だ。


《本陣の城へ、ふたパーティー規模の敵がきてます!》

《了解した。本陣内の戦力で迎え撃ってもらいたい。難しい場合は再度報告を願う》


 準備が済んだところで全体チャットに気になる内容が。

『人が多いし簡単に追い払える?』

『念のため行きましょうか』

『了解』

 交換品目当てのプレイヤーだけで数は足りるけれど、自分たちも出発前に様子を見ておこう。

『パワーアップした力のお披露目だ!』

『ほとんど同じだし、無駄にアイテムを使わないでよ』

 門へ急ぎ横の見張り塔を上る。途中で出られる通路はその真上につながった。

「ここからなら一方的?」

「遠距離持ちの独壇場か」

「相手のも届くし油断は禁物だね」

 すでに十人ほどがいて弓矢を飛ばす。下では盾役が防御に構えて、前衛が大きな扉を攻撃中だった。

『門扉のゲージはまったく減っていないでござるな』

『大人数で力押しが可能だとしても、スペースが問題になりますね』

『交換品にあった破城槌がいる感じ?』

 想定される突破方法以外では厳しい印象だ。

『忍び込むのもありですよ!』

『それはコヨみん含め忍者の専売特許でしょ』

 誰も彼もが門扉を無視できると存在意義がなくなる。一部がかき乱すぐらいでちょうどいい気はした。

「面白いの持ってきたぞ!」

「何それ?」

「タルじゃん」

 味方の一人がタルを担いで現れた。伸びた導火線がバチバチと主張するため、少し心配になる。

「爆発タルってやつか」

「ちょ、ここで爆発させんなよ!」

「任せとけって。おら!」

 そのままタルが放り投げられた。興味に引かれて落ちる先を覗き込む。


――ドオオオン!


 下の相手へ接触するなり激しい音と共に煙が上がる。数人が宙を飛び道を外れて坂を転がっていく。今回ばかりはタルに用心したくなる威力だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...