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楯築神社
しおりを挟む「オヤジっ!!村が大変な事になってるのに、ドコ行ってたんだよ!!」
鬼が村を襲った日の夜
沙流と乾がオヤジに『会いたい』と言われて家によんだんだけど、
オヤジが村の一大事に居なかった事が、オレとしてはとてつもなくムカついている。
「…俺だって
…女木に鬼が来るって分かってたら、麓
の街まで出掛けたりしない。」
とオヤジは日本酒を飲み始めた。
「…自分がもう少し早く、
鬼の気を察知出来ていれば、女木村は最小限の被害で、済んでいたと思います。」そう言って、乾はオヤジに頭を下げた。
「…頭を上げてくれ、乾くん。」
「…村の皆さんを危険な目に遭わせてしまったのは、事実ですから。」
明らかにオヤジと乾はギクシャクしてる。
なにか昔にあったのか、昼間もオヤジを知ってるみたいな話振りだったし。
それにしても、さっきから思っていたが、乾は真面目でカタイ。
沙流の師匠なら、もう少し明るいヤツでもいいのに。
「ってか、本当に太郎さんに会うのも久しぶりですよね? 相変わらず、太郎さんの作る料理ウマイですよね!!」
昼間の凛々しさは、ドコへ行ったのか
明るくて少しヌケてる性格の沙流は、オヤジの作った夕飯をこれでもかと、頬張っている。
「…沙流。お前変わらないな。」
「そうですか?
太郎さん!この炒めもの、箸止まらない位ウマイです!」
「その炒めもの、作ったのオヤジじゃなくて、オレなんだけど。」
「…えっ?これ、料理の腕がイマイチだった桃希さんが作ったんですか」
コイツ…昔のオレをどう思ってたんだよ。
「お前、昼間もどさくさに紛れて『口が悪い』って言ってたろ!」
と昔と変わらずギャーギャー騒いでいると、
「楽しんで居るところ、悪いんだけど桃希くんと沙流。」
「はい?」オレと沙流は話しかけてきた乾の方を向いた。
「もし、二人ともがそれぞれ"自分が自分でなかったら"どうする??」オヤジから受け取った日本酒を傾けながら、乾が聞いてきた。
「俺は、そういう難しいこと考えるの苦手ですけど、"悩む"んじゃないですかね?」と炒めものを頬張りながら、答えてる沙流は、本当に凛々しさはゼロだ。
「なるほどね。桃希くんは?」
「オレは…よく分かんないっすね。そうなってみたら、分かるんじゃないですかね。」
オレも沙流ほどじゃないが、そういう難しいことは、考えるのが苦手だ。
「ちなみに、太郎さんは??」
「…えっ!?俺か?…俺は"受け入れて生きていく"かな。」なんで、乾はオヤジに聞いたんだろう?
「そーいえば、オヤジ。師匠の所って山の中だけど、大丈夫かって知ってる?」
「さぁ?俺は芽木に戻って来てから、山の方には行ってないからな。」
と、夕飯を食べながら興味なさそうに答えた。
「ちょっと、気になるからオレ、師匠の所行ってくる!」そういってオレは家を飛び出した。
小さな山の上にある楯築神社
ここに居るのが、オレの剣術の師匠である住職
木崎葵
さん
「よかった…稽古場に灯りがついてる!」
神社の境内にある師匠の稽古場の灯りを確認すると稽古場の戸を開けた。
「師匠っ!」
オレが声をかけると、休憩中の師匠がこちらを振り向いた。
「…桃希か。よくやった様だね。」
「昼間の話ですか?…沙流と乾が
あらかた片付けてくれたので…」
師匠の前となると、なんだかオーラというか、凄みを感じて流石のオレも敬語になる。
「桃希と、一緒に鬼を倒したのは、沙流くんと乾くんって言うのか。
今度お礼をしなくては。」
「沙流は、オレの後輩なんですよ。前、話したじゃないですか?あの、ヌケてる後輩です。」オレはニコリと笑った。
「…あぁ。あの子か、なるほどね。」
と師匠は、青黒い髪をかき上げて笑った。
「…ところで。今日来たのは、鬼の襲撃で神社とオレが心配になって来てくれたのかな?」
「はい。神社も見たところ無事みたいでよかったです。師匠も平気そうだし。」
「あぁ。至って問題はないよ。暗くなる前に早く山を降りた方がいい。また、鬼が出てくるかも、しれないからね?」師匠は立ち上がって、刀を鞘から抜いた。
「稽古まだやるんですか?
気を付けて村まで降りてきて下さい。」
とオレは稽古場の戸に手をかけた。
「自分の身を守れるだけの力は持っているから、大丈夫だよ。」
「…桃希。オレから1つ質問。」
「なんですか?」
「"桃希が、自分の知らない運命を背負って居たらどうする?"」
乾といい、師匠といいなんで難しい事質問してくるんだろう?
「そんな質問さっきもされましたよ…。『"自分が自分でなかったら"どうする?"』って。」
「で、なんて答えたんだ?」
「"なってみたら、分かるんじゃないですかね。"って。答えましたけど?」
「…なるほど。引き止めて悪かった。
…気をつけて帰るように。」
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