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大地VS拓也 撃ち破る声
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海斗が広場の中に入って行く。続いて大地と一緒に広場へ足を踏み入れた。そこは、海斗の言っていた通りの少し広めの空間が広がっていた。だとしてもテニスコート一面分位の広さはある。
自ら、大地の背中から降りようとした。それに気付いた大地がしゃがんでくれる。両足を地面につけた。石畳の床は裸足には冷たく、身震いがした。
「拓也兄さんが一人か。と言うことは、この先に他の面々が居るのって事か」
海斗が拓也と対峙している。大地が行きたそうにしているのに行こうとしない。俺を一人にしたくないのだろうか。
「そうだ。ふわふわちゃん。ここで大人しく俺について来てくれれば、双子には手は出さないって良太が言っているが、どうする」
拓也の射る様な視線が恐怖心を煽る。二人に手を出さない? 本当だろうか。そうならば、ついて行くのが良いのかも知れない。
「あきくん、俺達を信じてね」
隣にいた筈の大地が俺の前に立った。拓也の視線を遮る様に。その背中と声が俺の揺らぐ心を立ち直らせてくれた。
「連れて行かせはしない。奪われる位なら、刃向かうまでだ」
「だと思ったよ。それなら、武術タイマンでの一本勝負だ。勝った方がふわふわちゃんを貰うってことで」
沈黙が広がった。海斗は何を考えているのだろうか。
「……分かった」
「海斗! 二人でやった方が確実だろ!」
大地の言う通りだ。多勢に無勢。卑怯だが、確実な方法だろう。
「大地落ち着けって、この先、他の面子がいるのなら体力温存するべきだろ」
この先に、まだ誰かいるかも知れない。そうだった。その事が頭から抜けていた。海斗と大地は、四人を相手に大丈夫なのだろうか。
「そうだけど。……それなら、俺が行くよ」
「良いのか」
「海斗は拳よりも刀だろ。それに、俺負けないから」
大地が俺の方に振り向いた。優しい微笑みを浮かべ、俺の額にキスが落とされる。
「あきくんの為なら、俺本気出せそうだ」
そう呟いた大地が海斗と入れ替わり、拓也と対峙した。大地と拓也、互いにスラックスのポケットから何かを取り出し両手に嵌めた。それは格闘技用の五本指のグローブの様だ。
海斗が走って俺の側に来た。
「あきちゃん、危ないから壁際まで下がろう」
真剣な表情の海斗の言うことだ。本当に危ないのかも知れない。俺達は壁際まで下がった。
大地と拓也が構えをとって、睨み合っている。
「ガキ以来だな、大地とやるの。あの時は、なんで喧嘩になったんだっけな」
「拓也兄さんが、俺達を置いて聖司兄さん達を追いかけて行くって言ったからだろ!」
それをきっかけに、大地の右ハイキックが拓也の頭部を目掛けて繰り出される。その蹴りを右腕でガードした拓也が少し申し訳なさそうな表情をした。
「そうだったな」
「なんで、俺達を置いていなくなった! ただでさえ、辛い毎日だったのに!!」
右足を瞬時に戻した大地の右フックが拓也に襲いかかる。それを避けた拓也が大地から距離をとった。
「すまないと思っている。だが、聖司の兄貴だけではもう抑えられない所まで来ていたんだ」
「どう言う事だよ」
「俺が居ても、時間を稼ぐ事しかできなかった。このままだと、俺達は破滅する」
「だからって、他人を犠牲にして良いなんておかしいよ」
「お前が俺だったら、愛か、家族か。どっち取ったんだろうな」
「そんなの決まってる!」
大地が駆け出し、右左と拳を繰り出す。わざとなのか、防御に徹している拓也。
「そうか……本気でかかって来いよ。今度こそ伸してやる」
その言葉を機に、拓也の反撃が始まった。
二人の打ち合いに衝撃がここまで、伝わってくる。次第に大地が押されている様に見える。このままだと大地が死んじゃう。俺が行ければ良いのだが、動きづらい身体ではどうにもならない。
「海斗!」
「あきちゃん、心配いらないよ。大地は拓也兄さんより強いから」
「え?」
「俺達の中で三番目の強さを持ってるからな」
「そうなのか?」
「大地の事だ。どうすれば、拓也兄さんを戦意喪失できるか考えて動いてるんだろう」
「戦意喪失……」
それができれば、無駄な争いをしなくても良い。しかし、どうすれば。あの時、拓也はなんて言っていたっけ。快楽に呑まれていたから、記憶が定かではないか確か……。
「海斗、うまく行くか分からない。だけど、良い作戦があるんだ」
「は?」
「海斗は俺を守ってくれるんだよな?」
「まぁな。何をする気だ」
「ありがとう! 見ててくれ」
大地が拓也のハイキックを食い、よろめいた。ギリギリの所でガードし防いだが辛そうだ。
拓也が勝利を確信している。今ならいける!
肺に空気を沢山入れる様に吸い込み、これでもかと言う様に声を張り上げた。
「拓也お兄ちゃん! ありがとう!!」
俺の叫びが広場に響く。段々と反響が治り、沈黙が俺達を包み込んだ。
あれ? 拓也と大地、海斗さえも驚き俺を見ている。なんで、みんな止まってるんだ。ここは拓也だけが動きを止める所だろ。俺変なこと言ったけ?
その沈黙を破ったのは拓也の笑い声だった。
自ら、大地の背中から降りようとした。それに気付いた大地がしゃがんでくれる。両足を地面につけた。石畳の床は裸足には冷たく、身震いがした。
「拓也兄さんが一人か。と言うことは、この先に他の面々が居るのって事か」
海斗が拓也と対峙している。大地が行きたそうにしているのに行こうとしない。俺を一人にしたくないのだろうか。
「そうだ。ふわふわちゃん。ここで大人しく俺について来てくれれば、双子には手は出さないって良太が言っているが、どうする」
拓也の射る様な視線が恐怖心を煽る。二人に手を出さない? 本当だろうか。そうならば、ついて行くのが良いのかも知れない。
「あきくん、俺達を信じてね」
隣にいた筈の大地が俺の前に立った。拓也の視線を遮る様に。その背中と声が俺の揺らぐ心を立ち直らせてくれた。
「連れて行かせはしない。奪われる位なら、刃向かうまでだ」
「だと思ったよ。それなら、武術タイマンでの一本勝負だ。勝った方がふわふわちゃんを貰うってことで」
沈黙が広がった。海斗は何を考えているのだろうか。
「……分かった」
「海斗! 二人でやった方が確実だろ!」
大地の言う通りだ。多勢に無勢。卑怯だが、確実な方法だろう。
「大地落ち着けって、この先、他の面子がいるのなら体力温存するべきだろ」
この先に、まだ誰かいるかも知れない。そうだった。その事が頭から抜けていた。海斗と大地は、四人を相手に大丈夫なのだろうか。
「そうだけど。……それなら、俺が行くよ」
「良いのか」
「海斗は拳よりも刀だろ。それに、俺負けないから」
大地が俺の方に振り向いた。優しい微笑みを浮かべ、俺の額にキスが落とされる。
「あきくんの為なら、俺本気出せそうだ」
そう呟いた大地が海斗と入れ替わり、拓也と対峙した。大地と拓也、互いにスラックスのポケットから何かを取り出し両手に嵌めた。それは格闘技用の五本指のグローブの様だ。
海斗が走って俺の側に来た。
「あきちゃん、危ないから壁際まで下がろう」
真剣な表情の海斗の言うことだ。本当に危ないのかも知れない。俺達は壁際まで下がった。
大地と拓也が構えをとって、睨み合っている。
「ガキ以来だな、大地とやるの。あの時は、なんで喧嘩になったんだっけな」
「拓也兄さんが、俺達を置いて聖司兄さん達を追いかけて行くって言ったからだろ!」
それをきっかけに、大地の右ハイキックが拓也の頭部を目掛けて繰り出される。その蹴りを右腕でガードした拓也が少し申し訳なさそうな表情をした。
「そうだったな」
「なんで、俺達を置いていなくなった! ただでさえ、辛い毎日だったのに!!」
右足を瞬時に戻した大地の右フックが拓也に襲いかかる。それを避けた拓也が大地から距離をとった。
「すまないと思っている。だが、聖司の兄貴だけではもう抑えられない所まで来ていたんだ」
「どう言う事だよ」
「俺が居ても、時間を稼ぐ事しかできなかった。このままだと、俺達は破滅する」
「だからって、他人を犠牲にして良いなんておかしいよ」
「お前が俺だったら、愛か、家族か。どっち取ったんだろうな」
「そんなの決まってる!」
大地が駆け出し、右左と拳を繰り出す。わざとなのか、防御に徹している拓也。
「そうか……本気でかかって来いよ。今度こそ伸してやる」
その言葉を機に、拓也の反撃が始まった。
二人の打ち合いに衝撃がここまで、伝わってくる。次第に大地が押されている様に見える。このままだと大地が死んじゃう。俺が行ければ良いのだが、動きづらい身体ではどうにもならない。
「海斗!」
「あきちゃん、心配いらないよ。大地は拓也兄さんより強いから」
「え?」
「俺達の中で三番目の強さを持ってるからな」
「そうなのか?」
「大地の事だ。どうすれば、拓也兄さんを戦意喪失できるか考えて動いてるんだろう」
「戦意喪失……」
それができれば、無駄な争いをしなくても良い。しかし、どうすれば。あの時、拓也はなんて言っていたっけ。快楽に呑まれていたから、記憶が定かではないか確か……。
「海斗、うまく行くか分からない。だけど、良い作戦があるんだ」
「は?」
「海斗は俺を守ってくれるんだよな?」
「まぁな。何をする気だ」
「ありがとう! 見ててくれ」
大地が拓也のハイキックを食い、よろめいた。ギリギリの所でガードし防いだが辛そうだ。
拓也が勝利を確信している。今ならいける!
肺に空気を沢山入れる様に吸い込み、これでもかと言う様に声を張り上げた。
「拓也お兄ちゃん! ありがとう!!」
俺の叫びが広場に響く。段々と反響が治り、沈黙が俺達を包み込んだ。
あれ? 拓也と大地、海斗さえも驚き俺を見ている。なんで、みんな止まってるんだ。ここは拓也だけが動きを止める所だろ。俺変なこと言ったけ?
その沈黙を破ったのは拓也の笑い声だった。
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