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グランデ・エトワールの視点『招かれざる客』
しおりを挟むレイル様が大変なこんな時に来るとは、奴は悪魔かなんかなのではないだろうか。今、レイル様を一人にするのは危険だ。暗殺者がこの好機を逃す筈がない。早く、奴を屋敷から叩き出して、戻らなければ。歩きつつも速さは駆け足並に急ぐ。そんな競歩並の私の速さに呼吸を乱さずについてこれる彼女には驚愕する。
「エトワール様、申し訳ありません。何度もお断りしたのですが、どうしても領主に合わせろ。さもないと、勝手に探すとおしゃるものですから」
「分かっています。あの方は、以前からうる……いえ、騒々しい方でしたから」
本当に、やかましい男だ。レイル様に何度も断られ、煙たがられてもしつこく纏わり付いてついてくる男。外見は美男子の癖にその性格故、あの綺麗なもの好きのレイル様ですら、食指が動かない厄介な奴。そんな男を今のレイル様に会わせる訳にはいかない。レイ……彼だったら、断りきれずに流され最悪の場合、婚約を推し進められてまうかもしれない。
奴には二人の奥方がいる。可愛い奥方と美しい奥方だ。そんな二人がいるのに、レイル様を三人目にどうだと言う。重婚が許されている為、障害は無いとはいえ、許されるものでは無い。レイル様と同じ領主だとしても、領主同士の結婚。それは、もう領地諸共飲み込まれるのと一緒だ。奴は、レイル様だけで、領地には手を出さないと言うが、周りと渡り合い、牽制しているレイル様が居なくなった途端に、周りから攻め込まれるのが目に見えている。その為、レイル様を領主の座から引きずり下ろすとしても、代わりの領主の事前準備が大事になるのだ。
「そうですね。前にいらした時は、真っ赤な薔薇の花束を持ってきて、素敵でした。それなのに、無理矢理レイル様に口付けを迫って」
「グレア様、言わないで下さい。吐き気がします」
「そうですか。あの時は、随分お笑いになっていましたが」
「あの時と今では、現状が違い過ぎます。今のレイル様は、とても儚い」
そう、落ちゆく木の葉のように、風に連れ去られて仕舞いそうな儚さが彼にはある。
「心配なされずとも、私が陰で見ております」
グレアはこの屋敷で、知らないものはないと言う様に自信ありげ言うのだ。現に、レイル様が発熱した事や態度が変わった事についても私が言う前に知っていた。メイド達の噂で聞いたのかとも思ったが、メイド達が言うには、自分達より前に知っている様だったというのだ。屋敷内の全てを知る彼女、壁や床に何か取り付けているのではないかと疑うほどだ。だとすれば、レイル様を毒殺しようとした人物も知っているのではないのだろうか。
「グレア様は、レイル様に毒を注入した者を知っておられるのですか?」
「いえ、知りません。知って居れば、私もこの世から消されてしまうでしょう」
「そうですね」
「エトワール様、知らぬ方が良い事もあります」
そう言ったグレアは神妙な表情をしていた。胸の内を聞こうと口を開いたが、グレアの手が上がり、もう何も聞くなと先手を打たれてしまった。
「さぁ、エトワール様。いつものレイル様の特技、炸裂ビンタで彼の方を帰す訳には行きません。どう致しますか?」
「そうですね。取り敢えず、私の足蹴りをやるから帰れとでもいいますか」
「それが通じれば、苦労は致しませんね」
「全くです」
グレアと奴への陰口を話しながら、庭から屋敷内へと入った。一階の玄関近くにある応接室、そこが奴専用の応対部屋となっている。すぐに蹴り出せる様にと、レイル様が決めた場所だ。
「着きました。もう部屋へお通ししております。それでは、私はこれで失礼させて頂きます」
「いつも汚れ仕事をして頂き、ありがとうございます」
「エトワール様こそ」
そう言って、グレアは一階の廊下奥へと行ってしまった。これから、面倒な男と一対一で対面しなければならない。上手く、追い出せたらいいのだが……。庭で待つレイル様の元へ早く帰りたいと思ったのは、これが初めてだった。
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