死にゲーの世界のキャラに憑依したと思ったら、BL版の世界でした。 ~最悪領主になりきろうとしたが、日本人気質の所為でばれそうです~

番傘と折りたたみ傘

文字の大きさ
52 / 98
1

キエナ・ビートルとの接触

しおりを挟む
 調理室から、大きなカゴを両手に抱えて庭へ急いで戻ろうとしていた。二種類の料理をしていた為、軽く一、二時間掛かってしまった。グランデが庭に居たらどうしよう。絶対、凍らされる!!

 焦りとカゴの中の料理が傾いてしまわないかと、注意が散漫になって居たせいだろう。勢い良く、何かにぶつかった。

「わぁ!!」

 それは、柔らかくもがっしりとしていたらしく、反動を受けたのは俺だけだった。尻餅をつくという恐怖よりも、料理が崩れてしまうという恐怖が優った。グランデへのご機嫌取りの料理が!! と思ったのは墓場まで持っていくつもりだ。

「大丈夫ですか!?」

 ぶつかった相手にがっしりと腕を腰に回されて、抱き止められていた。料理も床に落とさずに済んだ。

「すみませ……!!」

 驚いた。なんで、キエナ・ビートルがレイルの屋敷にいるんだ! キエナ・ビートルは、レイルに片想いをしている男だった。確か、グランデ・ライトルートで主人公を撲殺しようとし、失敗したレイルは領地を追放されてしまう。それを意気揚々とキエナが迎え入れた。その後、敵国侵略され敵国捕虜エンドとなるんだ。それはそれは、死を受け入れたくなる程の最低最悪のエンドだ。キエナに性奴隷並の扱いを受け、敵国が侵略した時は、敵国に許しを乞う為の貢物として、捧げられ捕虜となる。捕虜にされてからも輪姦され、心が壊れたレイルはその後、娼館に売られて、誰だか分からない人から病気をうつされてしまう。しかし、それでも娼館のオーナーに客を取らされ続ける。そんなある時、客から暴力を受けてやっと死を迎えられた。そのエンドを見た妹も流石に可哀想だと言っていたっけ。いや、妹の事よりもこの状況は最悪だ。もしかして、このまま敵国捕虜エンドに行くって事ないよな。絶対嫌だ!!

「あれ? レイ! 来てくれたんだね」

 奴の左手が伸びてきて、頬を摩られ、顎先を摘まれる。親指に唇をなぞられる度にゾワゾワした何かが湧き上がってくる。近づく奴の顔にこのまま流されるのは危険だと判断したのに、体が動かない。不安で呼吸が荒くなってく、乱れていく脈に、このままだと過呼吸を起こしてしまいそうだと思った。

「やっぱり僕達は、繋がる運命なんだね。心も体も」

「そんな馬鹿げた運命、私が細切れに断ち切ってあげます」

「いや、俺が引き裂いてやる」

 何かに引っ張られ、気がついた時にはライトの腕の中だった。見上げると、綺麗な蒼と視線がぶつかった。少し口角が上がり、目尻が下がったライトの表情はとても穏やかだった。そんな表情は反則だ。未だに呼吸や脈も荒いのに、感じていた不安がなくなった。ただ、頬が熱くなっていく。

「ライト、その……ありがとう」

「おう。レイル様、大丈夫だったか? 顔が真っ赤だぞ」

「だ、大丈夫だ」

くそ、レイルの身体の所為だ。絶対そうに違いない!

「ライト、レイル様を離しなさい。困っているじゃないですか」

その声の方を見ると、グランデが俺を隠す様に、キエナの前に立ち塞がっていた。その後ろ姿は、とても凛々しく逞しい。くそ、カッコイイ……胸が苦しい。

「ぐ、グランデ。その……」

「レイ~。邪魔者は下げさせて、二人で話をしようよ」

 謝りたかったのに、キエナの野郎邪魔してきやがった。睨みつけてやろうと思ったのに、グランデの背中が広すぎてキエナが見えない。

「大変、申し訳ありません。当主は急用が入りましたので、速やかにお帰り下さい」

「ぐ!! わかった。日を改めてまた来る」

 何が起こったのか知りたくて、ライトの腕の中から抜け出し、グランデの背から少しだけ顔出して覗きみる。キエナの表情が、強張り真っ青になっていた。グランデの表情は見えない為、何が起きているのか分からないが、これはまずい気がする。グランデに押し出される様に、キエナは屋敷を出て行った。取り敢えず、敵国捕虜エンドには行かないで済んだようだ。最悪のエンドを回避して良かったと思った俺は甘かった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

処理中です...