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アラームが鳴っている。
(抑制剤、飲まなきゃ)
深い眠りから目が覚めた。目を開けるとイケメンのドアップ。
「沢渡さん!」
驚いて起き上がる。足腰の違和感。優斗も起き上がる。蓮も優斗も全裸だった。
「優斗、でしょ」
優斗は抑制剤と水の入ったコップを手渡す。蓮は抑制剤を飲んだ。
ーーゆうと、と発音してみると、何度も自分の口でその名前を呼んだことを思い出す。
(そうだ……僕、優斗と……したんだ)
ところどころ記憶が飛んでいるが、キスしたりセックスしたことは覚えていた。抑制剤が効いてきて頭もはっきりしてくる。
「何日、経ったの?」
「俺がここに来て3日。これ4回目の抑制剤」
(3日間、あんな甘い時間を過ごしたんだ)
蓮は赤くなった。
ギュルルル……
蓮のお腹が鳴った。
「蓮、お腹すいたでしょ。ヒート中、何も食べてくれないんだもの。水分は飲んでくれるから、ジュースは飲ませてたけど。ちょっとこれ小腹に入れて。まず、お風呂入ろう」
優斗がシリアルバーとオレンジジュースを渡してくれたので食べ始める。空腹だったので、すぐ食べ終わり、ベッドから降りようとしたが足腰が動かない。お姫様抱っこされて1階の浴室に降りる。
「お父さんは?」
2人とも全裸なので柊里の目が気になる。
「桐生先生は気を遣ってホテルに泊まってくれてる。心配しているだろうから、一段落したら電話しよう」
浴室に入るとイスに蓮を座らせ、お湯を浴槽に溜め始めた。
「洗ってあげる」
優斗は蓮の髪にシャワーをかけ濡らす。シャンプーを泡立て全体をざっくり洗い、またシャワーで流す。もう一度シャンプーを泡立て2度洗いする。今度は頭皮をマッサージしてくれる。
(気持ちいい)
「痒いでしょ。時々、体は拭いてたんだけどね……。お客様、痒い所はございませんか?」
美容師さんのように言ってくれる。
「ないです」
「じゃ、流しますよ」
シャワーでシャンプーの泡をすっかり洗い流してくれる。その後、コンディショナーも付けてくれた。スポンジをボディソープで泡立て、体もごしごし洗ってくれる。時々、びくっと感じてしまうけど、優斗は洗いに専念してくれた。洗いあがるとちょうどお湯も溜まっていた。また、お姫様抱っこされ湯舟につかる。
「ちょっと待ってて、洗ってくるから」
優斗は洗い場に戻り、自分を洗い出す。蓮は浴槽から優斗の後ろ姿を眺めた。
筋肉の付いた均整のとれた体。カッコいい。うっとりする。
それに比べて自分は、と自分の胸に目を落とした。赤い虫刺されの痕のようなものがたくさん胸に付いていた。
(なんだろう。湿疹かな。痒くはないな)
「お待たせ」
全裸の優斗がこちらに向かってくる。カッコ良すぎて正視できなかった。目を少し伏せると優斗は蓮を抱え上げ、後ろから抱くように浴槽に入った。
「あー、いい気持ち」
優斗はふーっと一息ついた。優斗に背後からすっぽり包まれて蓮は幸せな気持ちになった。
「体、大丈夫」
優斗が蓮を労わる。
「筋肉痛は少しあるけど、体の中はすっきり爽やかでいい気分です。ヒートの時って1週間はもやもやしているので4日目でこんなにすっきりしているのは初めてです」
「それは良かった」
優斗が蓮の頭にキスをする。蓮は振り向く。
「沢渡さんは……」
優斗は蓮の唇に指を当てる。
「優斗、でしょ」
「ゆうとは……」
蓮は自信なくなり前を向く。
「優斗はどうだった? 僕は男だから胸もぺったんこだし、ちんちんも付いてるし……」
蓮は言いながら泣きそうだった。自分みたいな男性オメガ、優斗のようなカッコいいアルファに釣り合わないのではないか。優斗は蓮をぎゅっと抱きしめる。
「夢のようだったよ」
蓮の耳に囁く。
「蓮は普段から可愛いんだけど、ヒートの時は色っぽくて。優しくしなくちゃと思うんだけど、どんどん煽られて余裕なくなって夢中でしてた。ちょっと荒かったかも。ごめん。いい匂いだし、どこ舐めても甘いし、蓮の中は気持ちいいし、止められなくて。時々、蓮が気を失ったようにして寝ちゃうからびっくりして止める感じで。俺、がっつきすぎだよな」
優斗は蓮のうなじのチョーカーを撫ぜる。
「ここを噛んで蓮を自分のものにしたくて堪らなかった。誰にも取られたくなくて。代わりにこんなにキスマーク付けて。独占欲強すぎだよね。蓮こそ引いたんじゃない?」
(これは湿疹じゃなくてキスマークなんだ)
蓮の白い胸に散らばる赤い痕は確かにびっしりと付いていたが、それが優斗の独占欲と思うと嬉しかった。
「ううん、嬉しい。良かった。幻滅されなくて」
優斗は蓮を抱き締め続けた。
お風呂からお姫様抱っこで上がり、バスタオルで体を拭いてもらいTシャツと短パンを穿いた。優斗には蓮の服で大き目の物を貸したが、ぴたぴただったので2人で笑った。代わりばんこにドライヤーでお互いの髪を乾かす。お互いの髪が乾いたらキッチンに移動した。
蓮は立てないので優斗に冷凍庫を見てもらう。冷凍ピザと冷凍チャーハンをチンしてもらう。ジュースを飲みながらもくもくと食べた。食後のアイスも食べて満腹になった。
またお姫様抱っこでベッドに戻って2人でごろごろする。柊里に電話してヒートが早めに終わったと報告した。蓮の元気な声に安心したようで、明日の朝ホテルチェックアウトして帰ると柊里も言った。
優斗は祖父の調子が悪いので北海道に帰省したと周囲の人には言ってたらしい。回復したので戻ってきたと友人にメッセージして明日から大学行くよと笑った。
夕方には歩けるようになった。家政婦さんが来るとはいえ、体液の汚れのひどいシーツなどは恥ずかしいので洗濯機を回した。冷凍庫を物色したら牛肉を発見したのでステーキにした。ありあわせの野菜をソテーし付け合わせにした。ご飯を炊き、乾燥わかめと油揚げで簡単に味噌汁を作り夕食にした。その間、優斗も掃除機をかけたり、洗面所や風呂場の掃除をしてくれた。新婚さんのように過ごして蓮は幸せだった。優斗も何気ない日常生活が蓮と過ごすだけでこんなに楽しくなるなんて、と感心していた。
(抑制剤、飲まなきゃ)
深い眠りから目が覚めた。目を開けるとイケメンのドアップ。
「沢渡さん!」
驚いて起き上がる。足腰の違和感。優斗も起き上がる。蓮も優斗も全裸だった。
「優斗、でしょ」
優斗は抑制剤と水の入ったコップを手渡す。蓮は抑制剤を飲んだ。
ーーゆうと、と発音してみると、何度も自分の口でその名前を呼んだことを思い出す。
(そうだ……僕、優斗と……したんだ)
ところどころ記憶が飛んでいるが、キスしたりセックスしたことは覚えていた。抑制剤が効いてきて頭もはっきりしてくる。
「何日、経ったの?」
「俺がここに来て3日。これ4回目の抑制剤」
(3日間、あんな甘い時間を過ごしたんだ)
蓮は赤くなった。
ギュルルル……
蓮のお腹が鳴った。
「蓮、お腹すいたでしょ。ヒート中、何も食べてくれないんだもの。水分は飲んでくれるから、ジュースは飲ませてたけど。ちょっとこれ小腹に入れて。まず、お風呂入ろう」
優斗がシリアルバーとオレンジジュースを渡してくれたので食べ始める。空腹だったので、すぐ食べ終わり、ベッドから降りようとしたが足腰が動かない。お姫様抱っこされて1階の浴室に降りる。
「お父さんは?」
2人とも全裸なので柊里の目が気になる。
「桐生先生は気を遣ってホテルに泊まってくれてる。心配しているだろうから、一段落したら電話しよう」
浴室に入るとイスに蓮を座らせ、お湯を浴槽に溜め始めた。
「洗ってあげる」
優斗は蓮の髪にシャワーをかけ濡らす。シャンプーを泡立て全体をざっくり洗い、またシャワーで流す。もう一度シャンプーを泡立て2度洗いする。今度は頭皮をマッサージしてくれる。
(気持ちいい)
「痒いでしょ。時々、体は拭いてたんだけどね……。お客様、痒い所はございませんか?」
美容師さんのように言ってくれる。
「ないです」
「じゃ、流しますよ」
シャワーでシャンプーの泡をすっかり洗い流してくれる。その後、コンディショナーも付けてくれた。スポンジをボディソープで泡立て、体もごしごし洗ってくれる。時々、びくっと感じてしまうけど、優斗は洗いに専念してくれた。洗いあがるとちょうどお湯も溜まっていた。また、お姫様抱っこされ湯舟につかる。
「ちょっと待ってて、洗ってくるから」
優斗は洗い場に戻り、自分を洗い出す。蓮は浴槽から優斗の後ろ姿を眺めた。
筋肉の付いた均整のとれた体。カッコいい。うっとりする。
それに比べて自分は、と自分の胸に目を落とした。赤い虫刺されの痕のようなものがたくさん胸に付いていた。
(なんだろう。湿疹かな。痒くはないな)
「お待たせ」
全裸の優斗がこちらに向かってくる。カッコ良すぎて正視できなかった。目を少し伏せると優斗は蓮を抱え上げ、後ろから抱くように浴槽に入った。
「あー、いい気持ち」
優斗はふーっと一息ついた。優斗に背後からすっぽり包まれて蓮は幸せな気持ちになった。
「体、大丈夫」
優斗が蓮を労わる。
「筋肉痛は少しあるけど、体の中はすっきり爽やかでいい気分です。ヒートの時って1週間はもやもやしているので4日目でこんなにすっきりしているのは初めてです」
「それは良かった」
優斗が蓮の頭にキスをする。蓮は振り向く。
「沢渡さんは……」
優斗は蓮の唇に指を当てる。
「優斗、でしょ」
「ゆうとは……」
蓮は自信なくなり前を向く。
「優斗はどうだった? 僕は男だから胸もぺったんこだし、ちんちんも付いてるし……」
蓮は言いながら泣きそうだった。自分みたいな男性オメガ、優斗のようなカッコいいアルファに釣り合わないのではないか。優斗は蓮をぎゅっと抱きしめる。
「夢のようだったよ」
蓮の耳に囁く。
「蓮は普段から可愛いんだけど、ヒートの時は色っぽくて。優しくしなくちゃと思うんだけど、どんどん煽られて余裕なくなって夢中でしてた。ちょっと荒かったかも。ごめん。いい匂いだし、どこ舐めても甘いし、蓮の中は気持ちいいし、止められなくて。時々、蓮が気を失ったようにして寝ちゃうからびっくりして止める感じで。俺、がっつきすぎだよな」
優斗は蓮のうなじのチョーカーを撫ぜる。
「ここを噛んで蓮を自分のものにしたくて堪らなかった。誰にも取られたくなくて。代わりにこんなにキスマーク付けて。独占欲強すぎだよね。蓮こそ引いたんじゃない?」
(これは湿疹じゃなくてキスマークなんだ)
蓮の白い胸に散らばる赤い痕は確かにびっしりと付いていたが、それが優斗の独占欲と思うと嬉しかった。
「ううん、嬉しい。良かった。幻滅されなくて」
優斗は蓮を抱き締め続けた。
お風呂からお姫様抱っこで上がり、バスタオルで体を拭いてもらいTシャツと短パンを穿いた。優斗には蓮の服で大き目の物を貸したが、ぴたぴただったので2人で笑った。代わりばんこにドライヤーでお互いの髪を乾かす。お互いの髪が乾いたらキッチンに移動した。
蓮は立てないので優斗に冷凍庫を見てもらう。冷凍ピザと冷凍チャーハンをチンしてもらう。ジュースを飲みながらもくもくと食べた。食後のアイスも食べて満腹になった。
またお姫様抱っこでベッドに戻って2人でごろごろする。柊里に電話してヒートが早めに終わったと報告した。蓮の元気な声に安心したようで、明日の朝ホテルチェックアウトして帰ると柊里も言った。
優斗は祖父の調子が悪いので北海道に帰省したと周囲の人には言ってたらしい。回復したので戻ってきたと友人にメッセージして明日から大学行くよと笑った。
夕方には歩けるようになった。家政婦さんが来るとはいえ、体液の汚れのひどいシーツなどは恥ずかしいので洗濯機を回した。冷凍庫を物色したら牛肉を発見したのでステーキにした。ありあわせの野菜をソテーし付け合わせにした。ご飯を炊き、乾燥わかめと油揚げで簡単に味噌汁を作り夕食にした。その間、優斗も掃除機をかけたり、洗面所や風呂場の掃除をしてくれた。新婚さんのように過ごして蓮は幸せだった。優斗も何気ない日常生活が蓮と過ごすだけでこんなに楽しくなるなんて、と感心していた。
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