MARINE CODE

大賀 零

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マリンコード

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 死亡した捜査員の名は滝沢和人。
 年齢28歳。ネットポリスに所属していた若手の刑事だ。
 捜査本部が出来る前からこの事件を担当していたらしく、ハイテク捜査に精通しており、プログラミング知識にかけては庁内でも一、二を争う逸材であったそうだ。
 彼が死亡する前日までにまとめた報告書によると、彼はホワイトアリスの犠牲者達の個人情報をもとに共通項となる幾つかのサイトを見つけ出し、それらを辿ってウィルスの情報を探ろうとしていたようだ。
「―――とはいえ、実際にはそれ程の成果は出ていません。被害者達は10代後半から30代前半までの若年層が大半ですが、彼らの多くが共通して行くサイトというのは全国的に見ても人が集まり易い有名サイト―――-交流掲示板とか検索サイトとかですが――――が殆どで、特筆する程不審なものは見つからなかったようなんです。ちなみに、被害者達の地域や趣味、職業などにも目立った共通点は見られませんでした。せいぜい人口密集地に多く発生しているというくらいのものです」
 助手席の甲斐はそう言いながら報告書の入った赤ファイルをパラパラとめくっていく。
 資料室にまとめて保管されていた滝沢の報告書は結構な量があったが、甲斐はその殆どに既に目を通しているようだ。相変わらずの優等生ぶりだな。
「無差別に被害が出ているってことか」
 サイドミラーを横目にハンドルを切りながら、桐生が問う。
「そう考えて問題ないと思います。被害発生状況にはこれといって規則性が見られません」
「被害者達がウィルスに出会った場所ってのもバラバラなのか?」
「はい。中にはネットじゃなく、オンラインゲームの最中に被害に遭った人もいますから。複数の人間が一遍に被害に遭ったという話も今のところ無いようです。以上のことから推察するに、ウィルスは何処か特定のサイトで遭遇率が上がるような待ち伏せタイプではなくて、ユーザーのコンピューターに直接乗り込んでくる襲撃タイプなんだと思われます。電脳ネットにつながっている状態でさえあれば、誰でも被害の対象になり得るわけです」
 甲斐はファイルを閉じながら淀みなく答える。流石に当初から捜査本部に居ただけあって、捜査内容を熟知している。大したものだ。
「課長から先輩を手伝うように言われてるんですよ」
 昨日本庁で課長の話を聞き終わり部屋を出た時に、甲斐は待ち構えていたかのように桐生の側にやってきてそう言った。実質は桐生が暴走しないよう手綱を握る役どころなのだろう。つくづく信用されていないのが良く分かる。
 それでなくとも死亡した捜査員の業務を引き継ぐなんて、普通なら誰もやりたがらない。
 そういう仕事を押し付けられる辺り、自分が上からどのような役回りを望まれているかが窺えるというものだ。そんな事を思いながら窓の外の風景に目をやり、今日何回目かの溜息をつく。
 課長の言葉が甦る。
 殉職した捜査員の後を継いで、ウィルスを流している犯人を捕まえろ。
 犯人。事件の主謀者。
 本当にそんなものがいるんだろうか。
 一連の事件を起こしているのは、未だその正体さえ分からない謎のコンピューターウィルスである。犯行に際し、声明も要求も無い。そもそもその目的が分からない。
 ウィルスをばら撒き、多くの人間を眠りにつかせる。その行動に一体どれ程の意味があるというのか。
 それとも意味など最初から無いのか?考えることすら無駄に思えてくる。
 生身の人間を相手にしているのかどうかさえ確信が持てなかった。実感がわいてこない。
 犯人。捕まえるべき犯罪者。そいつがもし、いたとして。
 本当にそいつを捕まえさえすれば、この事件は終わるのか?ウィルスが綺麗さっぱり消えてなくなるのか?犯人もウィルスも所詮オリジナルなんてなくて、大量にコピーの利くようなシロモノなんじゃあないのか?
 戦場でも体験したことのない、実体の無い存在を相手にするという奇妙な感覚に桐生は強い違和感を覚えた。
「先輩?」
 気が付くと、甲斐が不思議そうな顔でこちらを覗きこんでいる。
「どうしたんです?考え事ですか」
「いや…何でもない。報告書の内容は大体分かった。後で本庁に戻ったら、遺品の方も調べてみるとしよう」
 桐生はそう言うと車を駐車場へと向けた。

 病院内は患者達の話し声で意外ににぎやかだった。
 体の半分を機械化して以来こういった場所とは無縁だったこともあって、予想外の明るい雰囲気に桐生は少々面食らってしまう。
「ねぇちょっと、少し寒いんだけど。空調弱めてよ」
「腹減ったなぁ、メシまだぁー?」
「この間言ってた映画、もう最ッ高でさぁ」
「本当?私の見たのなんかさぁー…」
 末期患者が多く収容されているというこの病棟でも、患者達はベッドから起きることなくモニター画面を通じて会話を楽しんでいる。
 例え実際の体は自由が利かず呼吸器をつけたまま眠っていたとしても、頭部に取り付けられた機器へとつながれたモニターがその患者の顔を映し出し、意志の疎通を可能にさせる。
 各々のモニターに映し出された各人の顔が、自由が利かない肉体に代わってお互いに笑顔を交わし、会話を楽しむ役割を担うのである。
「今はこうしてベッドに寝たきりの患者であっても、ソウルゲートシステムのお陰で電脳ネット上から日常会話ができるようになっているんですよ。この病院もご多分に漏れず患者へのネット環境は充実してますからね。重病患者でも意思の疎通が出来るよう、設備が整っているわけです」
 案内役の若い医師が、病院の設備について二人に解説を入れる。
 ソウルゲートシステムの恩恵がこうして生活の様々なところに行き届いているお陰で、病状に関わり無く自由に意思の疎通が出来る。それ自体はとても素晴らしいことだ。だが、それは見方を変えるとそれだけ多くの人間の頭脳が無防備にもネット空間にさらされているということに他ならない。
 セキュリティプログラムやファイアーウォールだって絶対に信頼出来るとは限らない。ましてや凶悪なウィルスによる被害が急増している現状を思うと、桐生の目には尚更これらの設備が危ういものとしてしか映らなかった。
「刑事さん、あそこです」
 前を歩いていた医師が二人に声を掛ける。
 その指差す先にガラス越しに見える会議室くらいの部屋には、カプセル型のベッドがひしめきあうように並べられていた。
 1列に5台がぎゅう詰めにされ、それが何列も縦に長く並んでいる中で、全てのベッドに人が横たわっていた。人々の顔は皆一様に生気が失われ、横に設置された心電図等の計器が見えなければ死んでいるのではないかと思えるほどだ。
全員が『ホワイトアリス』に遭遇し、深い眠りについた被害者達である。若い医師が説明を加える。
「彼らは意識を完全に失った状態で眠り続けています。昏睡が深すぎてソウルゲートシステムにつなげても反応が無いんですよ」
 ソウルゲートシステムによって電脳ログインしている人間の身体状況は、夢を見ているレム睡眠の状態に近いという。睡眠が余りに深くなると、人間は夢を見られない。
 どの患者も見た感じ血色はよろしくないが、特に目立った外傷はなく、身体的にも異常は見られないという。
「だから逆に、昏睡の原因が何なのか分からないのです。電脳ネットをしていて生じる不具合というと我々がまず最初に思いつくのは電脳失踪です。電脳失踪の類であれば、ユーザーの接続履歴を辿ることで再接続を行い、回復させることは出来ます。ですが今回のケースはそれとも違う。こんな事は初めてですよ。このままですと、現状では回復の見込みはありません」
 電脳失踪というのは仮想空間にログインしたユーザーにしばしば起こる接続事故のことであり、ログアウトした筈なのに意識がネット上に残っているかのような、心神喪失の状態に陥る現象だ。ひどいケースになると、バイザーをはずそうがマシンの電源を切ろうが、意識が戻らないこともあるという。
 こうなってしまうと投薬やカウンセリングでどうにかなる問題でもない。
 しかしこうしたケースについては、症状が現れる直前に電脳ネットのどのアドレスにアクセスしていたかが分かれば、そこに改めてログインさせることで病状が回復することが研究で分かっている。意識の痕跡のようなものが上手くつながるのだという話らしいが、詳しいことはまだ分かっていない。
 恐らくは被害者達に対して、これに準じた治療法をもう試したのだろう。その結果を踏まえて違うケースだと言っているわけだ。
 頭を抱える医師を尻目に、桐生と甲斐は並べられたベッドを見渡す。
 被害者は老若男女入り乱れており、中には小学生くらいの少年少女も混じっていた。皆、息もしていないのではないかと思うぐらい安らかに眠っている。
「これだけの人数が被害に遭ってる状況を見ると…課長の言うとおり早急な解決が必要だと痛感しますね」
 甲斐はそう言って桐生の方を見たが、桐生は答えずに無言で患者達のベッドを眺めていた。
 一人の患者がしきりに口を動かすのが目に付いたからである。
 恐らく無意識にだろうが、その患者は陸揚げされた魚のように、口をぱくぱくと開閉させていた。注意深くその動きを追っていく内、その口がある単語を繰り返し唱えていることに気付く。
『白い―――少女』。
 意識が無い筈のその患者は、繰り返しその言葉を呟くように口を動かし続けるのだった。

「あ」
 案内をしてくれた医師と別れた後、病棟のエレベーターを待っていると、甲斐が何かを思い出したように病棟の方を振り返った。
「そういえば―――この病院、滝沢さんの遺族の方が入院してますね」
「何?」
 桐生は不意を突かれた。滝沢の遺族。死んだ彼の家族構成など、考えてもいなかった。
「親御さんか」
「いえ。確か妹さんがここに入院してたはずですよ」
「妹?滝沢に妹がいたのか」
「ええ。というか、唯一の肉親ですよ。何でも滝沢さんは早くに両親を亡くしていたらしいので」
 そいつはまた。
 そんな重い境遇だとは知らなかったな。
 悪いのか、と桐生は尋ねた。無論その妹の病状のことである。
「余り…良くないと聞いたことがあります。現代医学では手の施しようのない病気で、余命幾ばくもないと」
 末期患者も多く収容されるという病棟だ。言わずもがなと言ったところか。
 見に行きましょうか、と甲斐が病棟の方に向き直る。正直余り気が進まなかったが、桐生が逡巡してる間に、甲斐はもう病棟の方に向かって歩き始めていた。
 先程も通った、割ににぎやかな病棟の中ほどで歩を止める。
 甲斐が指差した名札には、『滝沢 舞』と書かれていた。
 開かれた戸口から病室を覗くと、奥の方に眠っている少女が見えた。
 年の頃は10代半ば、といったところだろうか。長い黒髪で隠されて、顔はよく見えない。寝巻きから覗く肌は驚くほど白く、寝巻きの淡い色も相まって、艶めかしい黒髪の美しさをより際立たせていた。口には呼吸器がつけられ、心なしか体につながっている機器も他の患者より大仰に見えた。
 兄が持ってきたものなのだろうか、脇の花瓶の花は、もう萎れかけていた。
「会っていきますか?ネットにつなげているようですし、会話は出来ると思いますが」
 彼女の頭にもネット用の機器は備え付けられていた。横に設置された会話用ディスプレイはオフになっていたが、ぐっすり眠っているのか、それとも意図的に切っているのかは分からない。桐生は不意に目を逸らす。それ以上直視する気になれなかった。
「いや…やめとこう」
 一刻も早くその場を離れたい一心で桐生はそう告げた。
「何か手掛かりが拾えるかも知れませんよ」
 甲斐はあくまで冷静に、正論だけを言う。きっとこういう奴の方が、刑事には向いているのだろうな。桐生は少しイラつきを覚えた。
「馬鹿言え。まがりなりにも刑事が、家族とはいえ部外者に捜査情報を流したりするもんかよ。…お悔やみはまた改めて言いに来る。兎に角今日はもう帰るぞ」
 今会って何を話すというのか。不治の病に侵されて緩慢に死を待つだけの彼女にとって、唯一の肉親である兄は心のよりどころであったはずだ。それを失った今、彼女にかけてやれる言葉など見つかる筈もない。
 甲斐の方を振り返り、その鼻先を指差してもう一度念を押す。
「帰るぞ。滝沢の遺品から、手掛かりを探し出す」

 警視庁・第3情報処理室の部屋の隅に、滝沢が失踪直前まで使用してたというパソコン一式は片付けられていた。失踪直前に滝沢自身が破壊したらしく、モニターは真っ二つに割れ、マシンも上からハンマーで叩いたかのように頭からへこんでおり、そのせいでいたるところから操作盤やスイッチが飛び出ていた。
 課長はハードディスク内のデータを復旧すると言っていたが、素人目に見てもとてもムリだと桐生は思った。
 乱雑に置かれたマウスやキーボードと共に、箱に詰められたデータディスクやら電子メディアの類が上積みされている。恐らく使用されていたときのままなのだろう。
「滝沢は、何を思ってこんなことをしたんだろうな」
 桐生は甲斐に尋ねた。
「ウィルスに遭遇した時点で危険を感じた…もしくは被害が拡散するのを防ごうとしたのではないでしょうか。万一別の人までウィルス被害にあうような事態があってはならないと」
 模範解答だ、と桐生は思った。
 しかし、実際滝沢はウィルスの被害に遭い、錯乱した挙句にその身を投げることとなった。
ささやかな抵抗は功を奏することなく終わったわけだ。いや、ひょっとしたら錯乱した上での行動として、マシンを破壊していったのかもしれない。
 マシンに直結しているソウルゲートシステムのシミュレーターもそのままにされており、こちらには目立った損傷は見られなかった。桐生は機器の周辺を注意深く見渡す。
 ふと、シミュレーター内に、空のメディアケースが一つ置かれているのが目に留まった。ケース自体は新品だが、中に入っていた電子メディアが見当たらない。箱にまとめられていた他のメディアがどれもきちんとケース内に収まってるせいもあって、やけにその空のケースだけが目立っていた。
 ここに来る前に滝沢が死亡時に持っていた遺品も見てきたが、そちらにも電子メディアは見られなかった。
 だとすると…?
 不意に桐生がマシン本体のカバーに手を掛けてはずそうとし出したので、慌てて甲斐が静止する。
「先輩、ダメですよ。解析班の人に任せましょう!」
 コンピューターに詳しいわけでもなく、ただでさえ加減を知らない桐生のこと、重要な証拠品をこれ以上壊されたりしたらたまったものではない。
「課長は俺に、遺品をもとに捜査を引き継げと言ったんだからな。どうしようと俺に任せるってことだろ」
 桐生は意に介した様子もなく力任せにマシンカバーをはずす。バキッと嫌な音がして派手に何かの部品が飛んだが、甲斐は見なかったことにした。
 はたして、ドライブ内に小さな電子メディアが入ってるのが確認出来た。ドライブは普段はマシン内部に収納されている為、電源を入れないと中にメディアが入っているかどうかは分からない。最初に壊れたマシンを発見した署員はそこまで気が回らなかったのだろう。
 ひしゃげたコンピューターに収納されていたにも関わらず電子メディアは無事だった。その表面にはラベルが貼り付けてあり、こう記されていた。
『マリンコード  2XXX.02.17.23.56.20』
「マリンコードを探せ」
 忘れかけていた課長の言葉が再び頭の中に響き渡る。
 マリンコードを探せ。それが鍵になる。そう言われた―――これが。
 これが事件の重要な手掛かりだというのか?
「先輩、どうしたんです?」
 不審に思った甲斐が、桐生の手元を覗き込む。桐生は黙ってメディアを手渡した。
甲斐は受け取ったメディアを見つめてしばらく唸っていたが、やがて思い出したように言った。
「マリンコード…ひょっとしてマリーナに会うためのパスコードですかね?」
「マリーナ?」
 甲斐はもともとパソコンに対する知識は生半可なものではなく、情報処理の資格も幾つか持っている才媛だ。ネットに関する情報も、大概のものはどこからか拾ってきてしまう。
「世界的に有名なハッカーですよ。ネット上のあらゆるデータに精通し、どんな強固なセキュリティでもたちどころに破ってしまう凄腕らしいです。私も噂でしか聞いたことないんですけど、報酬次第でネット上の様々なデータの収集・改竄・消去を手がけるとか何とか」
「ハッカーだぁ?」
「ひょっとしたら、滝沢さんが独自に情報屋として雇っていたのかもしれませんね」
「こっちの数字は何だ?」
「年月日と…時刻みたいですね。今日の夜11時…」
「その時間に会う約束でもしたってのか」
「いや、多分このパスコードの有効期限だと思いますよ。秒単位で使用期限を決めているっていうのを何処かで聞いたことがあります」
 職業上、捜査員がそれぞれ独自の情報屋を雇うのは別段珍しいことではない。しかし…ハッカーだと?
 ハッカーはこのネット全盛の時代にあって、脚光を浴びたものの代表格と言えるだろう。
 ソウルゲートシステムが確立し、仮想現実が普及した現代において、ネットの世界に手を加えることの出来るプログラマー―――ハッカーという人種の影響力は格段に大きかった。
 しかしコンピューターの扱いに高い技術を持つハッカー達の中には、悪質なウィルスを作成したり、不正アクセスやデータ改竄を繰り返す不逞の輩も少なからず見受けられた。本来ならそうした連中はクラッカーと呼ばれ、プログラミング技術者の中でも高い技術を持つ者に与えられる、敬称としてのハッカーとは区別されてしかるべきものなのだが、今日ではそうした区別も曖昧になっているのが現状だ。
 一般人にとってハッカーと言えば、コンピューターを使いネットから良からぬことをする連中というネガティブなイメージだけが強く浮かぶものらしい。桐生もご多分に漏れず、ハッカーという言葉に対し、何よりも先に得体の知れない胡散臭さを感じてしまうのだった。
 ハッカーねぇ…。漠然としたイメージでしか知らない単語に、桐生は本能的に嫌悪感を露にする。
「信用できるのか?そんな奴が」
「さあ…名前は有名なんですけど、なにぶん噂でしか知らないもんで」
でも一応向こうもプロでしょうからねえと甲斐は苦しいフォローを入れた。
「胡散臭えな」
 偏見と言われればそれまでだが、得体の知れない連中であることは間違いなかろう。
課長がこのパスコードの存在を知っていたということは、大元はそっちなのか?滝沢にこの情報屋を紹介した?いや、単に滝沢の方から課長へ報告があっただけなのかも知れないが…。
「ネット上のセキュリティを破り、データの改竄や消去を行う……ってのは、俺達が追ってる犯人そのままじゃねえか」
「それはそうですけど……警察が情報屋を使うのは至極普通のことじゃないですか。ネットポリスの刑事が情報屋としてハッカーを使うのだって、そう珍しいことじゃないですよ。聞いたこと無いですか?国内じゃないですけど、不正アクセスで逮捕された犯人が、釈放後にセキュリティ強化の責任者として企業や警察にスカウトされたっていう話」
 昔お前の口から聞いたような気はするが。
 桐生とて過去に捜査一課を歴任してきた手前、情報屋の重要性は承知しているつもりだ。
だが頭では分かっている筈なのにいざ未知の領域に触れると、人間とは懐疑的になってしまうものなのだな。桐生は自嘲気味にそう考えた。
 とはいえ。
 この情報屋――――マリーナか。
 気に入らんが、会ってみる必要はありそうだ。
 滝沢が死んだ今、彼がこの情報屋を使って何を探ろうとしていたのかは重要な手がかりとなるだろう。となれば、こちらとしても当然知っておかなければならない。この手のことは報告書を見たところで、どうせ分かりゃしないんだろうからな。
 甲斐が言うには、マリーナを呼び出す為のサイトは電脳ネット上のサイバーシティ内に存在しているという。そこは表向きはただの検索サイトなのだが、マリンコードを打ち込んだときのみマリーナの部屋へ転送してくれるのだそうだ。
 ご丁寧なことに使用期限を秒単位で刻んでいるこのコードは、折角手に入れても1分後には使えないなんてこともままあるらしい。意地の悪い話だ。
「よし――――早速そこに行くぞ。甲斐、案内を頼む」
 桐生は思い切りよく手を打ってからそう言った。
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