僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ

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一緒にランチ 002

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「そう言えば、ミアの出身は?」

 僕の沈黙の所為で気まずい雰囲気になりかけたので、慌てて当たり障りのない話を振ってみる。

「んー……カザスの西の方よ」
「えらくザックリだな」
「まあ、言ってもわかんないようなとこよ。何にもない街」

 ミアは半分程空いた皿にカチカチとフォークを突き立てながら、つまらなそうに言う。
 エーラ王国の国土は馬鹿みたいに広く、大きく五つの地方に分かれている……僕らがいるのはフェスタ地方、そこからさらに何百という地域に分かれ、ここら一帯はカザス地域と呼ばれている。
 正直、行政に関わる人物ですら地理を正確に把握できてはいないだろう……僕が元いた世界で例えるなら、国連加盟国を全て合わせてフェスタ地方と同等、くらいの規模感だ。
 言ってもわからないというのは、だから誇張でもないのだろう。
 訊いておいてなんだが、僕もほとんど地名を知らないし(おい)。

「いつ頃から旅をしてるんだ?」
「んー……正確には覚えてないけど、四年は経ってるかしら。アルカを拠点にしたのは一カ月前かな? 大体、同じ街には長くて三カ月くらいしか滞在しないのよね」
「そりゃまた、旅から旅への大移動って感じだな」

 一人旅を始めたばかりの僕からすれば、大先輩である。
 つーか、まだ二日しか経っていない。
 ちょっとした小旅行くらいのものだ。

「僕、ぶっちゃけ旅って慣れてなくてさ。何か気を付けておくことってある?」
「そうねー。私も一人で動いたことしかないから、仲間がいる状態でってなると難しいけど……」

 ミアはうーんと腕を組み、やがてポンと手を叩いた。

「あ、野宿をする時の注意点ならあるわ」
「へー。そういうの、是非先に聞いておきたいな」
「自慰行為をする時はお互いタイミングに気を付けましょう」
「さらっととんでもないことを言うなや!」

 しかも互いにって、前提がきちんとしてて逆に生々し過ぎる!

「別に茶化したいわけじゃないのよ。仲間だからって越えちゃいけない一線があるって話」
「この話題を出すことで既に一線は踏み越えている!」

 わざわざ議題にする必要あるか?
 暗黙の了解でそっとしておこうよ?

「そんなに騒ぐことないでしょ。それとも何、もしかしてイチカって童貞?」
「ど、童貞じゃない!」

 わかりやすく狼狽してしまった。
 いや、別に嘘ではないのだ……高野一夏は童貞じゃなかったので、何も間違っていない。
 例えイチカ・シリルに転生してからそういう行為がなかったとしても、僕の魂は脱童貞なのだ。

「なーんか嘘っぽいわね。私の中の童貞レーダーが反応してるわ」
「なんだよその世界一くだらない機能……」

 もっと便利なものを身につけてくれ。
 頼むから。

「じゃあ訊くけど、経験人数は何人?」
「……四人です」
「男は経験人数を五人盛るという研究結果があるわ」
「どこの研究だよ」

 ただまあ、少しだけ信憑性があるのが腹立つ。
 実際、経験人数は盛ってしまったし(おい)。

「もしその研究が事実だとしたら、僕、経験人数マイナス一人になっちゃうじゃないか」
「確かにそうね。つまちイチカは、既存の童貞の概念を超越した童貞、童貞の中の童貞、ネオ童貞ってわけ」
「一文の中に童貞を五つも入れるな」

 言いたいだけじゃねえか。
 早口言葉でも作る気だろうか。

「で、ネオ童貞のイチカは……」
「普通の童貞にしてくださいお願いします」
「あなたが違うって言うから、呼び方を変えてあげたんじゃない」
「頭にネオが付くくらいなら、ない方がマシだ」

 ひょうきん過ぎるだろ、ネオ童貞。
 僕はそんなおもしろ人間じゃない。

「童貞のイチカは、自慰行為という言葉に過剰反応してるのよ。もっとラフに考えましょう、ラフに」
「お前は新手のZ世代かよ」

 性にあけっぴろげな若者か。
 まあ、あんまりそういう話をタブー視し過ぎるのも教育上良くないらしいけど……って、何を心配しているんだ。
 僕こそ、新手のコメンテーターかもしれない。

「……僕のことを童貞童貞って弄るけど、そっちはどうなんだ、ミア」
「私? 普通の処女よ」
「ブッ」

 飲みかけの水を吹いてしまった。

「実はさっきからずっと、心の中で恥ずかしい恥ずかしいと思いながらこの話をしていたわ」
「どういうプレイなんだよ、それ……」

 恥ずかしいならやめようよ。
 誰も得しないよ。

「出会ったばかりの男女が仲良くなるには下ネタが手っ取り早いって研究があるのよ」
「お前の読んでる論文、今度じっくり読ませてくれ」

 第三者による精査が必要である。
 これ以上変な知識を身につけないでほしい。
 ……まあ、僕と仲良くなろうとしていたというのなら、素直に嬉しいけれど。

「……急にニヤニヤしないでよ」

 照れくさそうに言うミアの頬が、薄っすら赤らんだ。

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