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雨宿り
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急な雨に驚きながら閉じた店先に避難した。周囲の店も閉まっていて、人っ子一人歩いていなかった。セーラー服は肩のあたりが冷たく、スカートも濡れて重くなってしまった。しばらくここで雨宿りしよう。ため息をつきながら周囲を見渡した。
子どもの頃よく家族でお出かけに来たこの商店街も、十年経てばシャッター街だ。開いてるお店は寂れた八百屋とタバコ屋だけで、おばあさんが細々と続けていた婦人服屋もつい先日に畳まれてしまった。変化を寂しいとも思わなかった。私も成長するように、この街も成長していくんだ。今はまだその途中だから、大きなショッピングモールがぽつんと立つ周りに個人商店の死骸が転がっている。でもそのうち高速道路が拡がって、道も綺麗に舗装されて、田畑は埋め立てられて駐車場になるだろう。そうして街は古い景色を灰色に塗りつぶして、便利な時代を言い訳に誰もが花の名前も忘れていくのだ。
帰り道になんとなく寄り道したのが悪かった。お昼まではお天気で、友達とアイスを食べて解散したあと、なんとなく昔よく来ていた辺りを彷徨いたくなったのだ。通学路と離れたこの辺には、小学生の頃以来来ていなかった。もっとも小学生の頃だって、あまり遠くに行っちゃいけなかったので仕方なくこの商店街に友達と遊びに来ていただけだったが。その頃にはすでにシャッターがちらほら下り始めていて、思春期に入るぐらいにはそれも当然だと思った。でも今雨の中で昔のことを思い出していると、両親と手を繋いだ五歳の私がどこかから現れそうだった。満面の笑みで楽しげに、無邪気に左右に話しかける私が。もう二度と有り得ない景色だ。店は次々更地になって行くし、両親はもう離婚したし、私も大きくなったから。
「どうも」
突然声をかけられて少し驚いた。振り向くと同じく雨に降られたらしい男性が立っていた。ベージュのジャケットは肩の毛羽に雫が止まり、黒のスキニーパンツは濡れていっそう色が濃くなっていた。私は会釈だけして横目で彼の顔を盗み見た。どこかで見かけた顔だ。おそらく初対面だが、顔だけは何故か知っている。それも頻繁に視界に入っている気がする。でも名前は知らないし、どこで見かけたかも今は思い出せない。雨が弱まるまでに思い出せるといいのだけど。
そういえば、どことなくお父さんに似てるのかな。もういなくなった父に想いを馳せる。私が小学二年生の時に父は出て行った。お母さんには別の男の人がいた。職場の後輩だと言っていたその人は、父もいる時に家に遊びに来て夕飯を一緒に食べたりもしていた。いつからだろう、父がいない時間に母がその人を連れてくるようになったのは。学校から帰るとうちから出てくるその人に会ったこともあった。学校へ行く途中にその人とすれ違うこともあった。一番多かったのはお昼間だろう、一度だけ半日授業だった私は友達もろとも家から追い出されたことがあった。子どもが友達を家に呼ぶのと、大人が呼ぶことでは何か大きな違いがあった。大人のお客さんが来たら子どもは部屋に行くか家から出て行くしかなかった。私は公園に行く道中、友達にごめんごめんと謝ったのをよく覚えている。あの人よく遊びに来るの、お母さんのお仕事先の人なの、うっかり口を滑らせると翌日には父兄の間に広まっていた。それが契機となったかはよく分からないが、それからすぐ両親が離婚した。私はお父さんと一緒にいたかったが、お父さんは私とお母さんを置いて出て行った。例の男の人ももう来なくなった。お母さんはそこからずっと働き詰めだった。家に帰っても誰もいないんだから、家になんて帰らなくていいと思うようになった。お母さんは私の学校の様子になんてまるで関心がないから、何をしてもいいと思うようになった。そうして中学頃まで私はろくに授業に出ず家にも帰らなかった。
雨足はまだまだ強かった。息は白くなり、鼻の頭が冷たかった。隣の男性は何も言わず気配すらしなかった。私と同じようにぼんやり考えごとでもしているのだろう。
お父さんは一度も会いに来なかった。そもそも出て行く時に会いに来るとも言わなかった。前の晩はいつも通りに穏やかに笑って、ソファに腰掛けてテレビに夢中な私を見ていた。お母さんとも世間話なんかして、お風呂から上がるとソファで寝ていた。それでお父さんおやすみと声をかけると、寝ぼけた声でおやすみと返ってきた。翌朝起きるとお父さんはスーツケースを押して玄関で靴を履いていた。出張かと思った私は特に何も聞かず、いってらっしゃいと声をかけた。お父さんは振り向きもせずに出て行った。聞こえなかったのかと思いリビングに行くとお母さんが泣いていた。お父さんは二度と帰って来ないと聞かされた。そうかついにそうなったのか、幼い私は頭のどこかでそう思った。いつかはそうなるだろうと予感めいたものはずっとあった。私の平和な世界は、あったかいおうちはもう二度と戻って来ないのだと思った。でもお母さんが泣いている手前泣くわけにはいかず、難しいことは分からない子どものふりをした。私が泣いて心を痛めたら、お母さんがもっと悲しくなると思ったからだ。今でもその判断は間違っていなかったと思う。母にもちろん非があるがそんなことは関係なく、子どもは産まれたときから母親という絶対的な存在を喜ばせるために生きるものだ。あの時の私は母を傷つける方が怖かったのだ。
歳をとるにつれて、母がしたことの見当がついた。そして母を憎む気持ちも出てきた。それで中学生の私は荒れに荒れて、大人はみんな汚い、女も男も頭の中では性器に血を巡らしている、とお手本のような反抗意識を以って好き勝手に方々に迷惑をかけた。その考えは正直今でもあまり変わっていないけれど、それが人に迷惑をかけていい理由にならないことは分かっている。それを教えてくれたのはハシモトさんだ。
中二の冬、コンビニで万引きしたのが見つかりバックヤードに連れて行かれた。私を捕まえたのはアルバイトの大学生で、名札にはハシモトと書いてあった。ハシモトさんは警察と学校に連絡すると告げた後、念のために何故万引きしたのかを聞いてきた。浅はかな私はチャンスだと思った。じゃあ私の胸を触らせてやるから、あんたが望むならその先だってしていいから、今日は見逃して欲しいと言った。ハシモトさんは苦笑いしながら私を見て、胸を触ったところで万引きした事実はなくならないだろ、と言った。そんなん関係ない、あんた男でしょ、触りたいんでしょ、そういきがる私をハシモトさんは静かに諭した。それとこれとは別の話だ、お会計のかわりに胸触ることなんて無いだろ、それに身体を差し出せば何してもいいわけじゃないんだぞ。話を上手く飲み込めない私にハシモトさんは続けた。触りたいと思う人が触るから価値が生まれるんだ、俺はお前のような子どもの身体を触りたいと思っていないから、俺にとってお前の身体には何の価値もない、俺にとってお前は女でもなんでもないただの万引き犯なんだよ。そこで私は一気に恥ずかしくなった。自分の浅はかさや下品さを思い知らされた気分だった。結局ハシモトさんは学校と警察に連絡して、私は迎えに来たほとんど初対面の担任にこっ酷く叱られた。こんな時だって仕事中のお母さんとは連絡がつかなかった。お前はどうやら芯から腐っているわけでもなさそうだから、勉強して高校なり大学なり良い所に行きなさい、その方が大人への反抗になる。担任に連れられて店を出る私にハシモトさんはそう言った。どういう意味かと聞き返すと、それは自分で分かるようにならなきゃいけないと言われた。それきりそのコンビニには行かなかった。
ハシモトさんの言葉の意味は今だって分かっていないけれど、なんだか全てを見透かされたような気分で、ここらが潮時だと思った。こんなことしても大人はずっと悪いままだし、お母さんは私に興味はないままだ。私は心から悪いことが好きな訳でもない、悪そうな友達とつるんでいきがっていただけなんだ。いい加減こんなことやめよう、自然にそう思えた。それからもともと勉強が得意だった私は地元の進学校に入り、大学受験に向けて勉強の日々を送っている。
そうだ、ハシモトさんだ。
思わず隣を見ると、男性の姿はもうなかった。さっきの男性は間違いなくハシモトさんだ。顔も声も雰囲気もそうだ。ようやく謎が解けた。もっと早く気がついていれば、声をかけられたのに。お陰でまともになれましたと感謝を伝えられたのに。遠くまで目を凝らしたがハシモトさんは見当たらなかった。気づけば雨はずいぶん弱まっていた。これくらいなら早足で帰れる。
帰る途中で団地の入り口の掲示板に目を止めた。白黒の指名手配犯の顔写真が貼ってあった。さっきの男性だった。
子どもの頃よく家族でお出かけに来たこの商店街も、十年経てばシャッター街だ。開いてるお店は寂れた八百屋とタバコ屋だけで、おばあさんが細々と続けていた婦人服屋もつい先日に畳まれてしまった。変化を寂しいとも思わなかった。私も成長するように、この街も成長していくんだ。今はまだその途中だから、大きなショッピングモールがぽつんと立つ周りに個人商店の死骸が転がっている。でもそのうち高速道路が拡がって、道も綺麗に舗装されて、田畑は埋め立てられて駐車場になるだろう。そうして街は古い景色を灰色に塗りつぶして、便利な時代を言い訳に誰もが花の名前も忘れていくのだ。
帰り道になんとなく寄り道したのが悪かった。お昼まではお天気で、友達とアイスを食べて解散したあと、なんとなく昔よく来ていた辺りを彷徨いたくなったのだ。通学路と離れたこの辺には、小学生の頃以来来ていなかった。もっとも小学生の頃だって、あまり遠くに行っちゃいけなかったので仕方なくこの商店街に友達と遊びに来ていただけだったが。その頃にはすでにシャッターがちらほら下り始めていて、思春期に入るぐらいにはそれも当然だと思った。でも今雨の中で昔のことを思い出していると、両親と手を繋いだ五歳の私がどこかから現れそうだった。満面の笑みで楽しげに、無邪気に左右に話しかける私が。もう二度と有り得ない景色だ。店は次々更地になって行くし、両親はもう離婚したし、私も大きくなったから。
「どうも」
突然声をかけられて少し驚いた。振り向くと同じく雨に降られたらしい男性が立っていた。ベージュのジャケットは肩の毛羽に雫が止まり、黒のスキニーパンツは濡れていっそう色が濃くなっていた。私は会釈だけして横目で彼の顔を盗み見た。どこかで見かけた顔だ。おそらく初対面だが、顔だけは何故か知っている。それも頻繁に視界に入っている気がする。でも名前は知らないし、どこで見かけたかも今は思い出せない。雨が弱まるまでに思い出せるといいのだけど。
そういえば、どことなくお父さんに似てるのかな。もういなくなった父に想いを馳せる。私が小学二年生の時に父は出て行った。お母さんには別の男の人がいた。職場の後輩だと言っていたその人は、父もいる時に家に遊びに来て夕飯を一緒に食べたりもしていた。いつからだろう、父がいない時間に母がその人を連れてくるようになったのは。学校から帰るとうちから出てくるその人に会ったこともあった。学校へ行く途中にその人とすれ違うこともあった。一番多かったのはお昼間だろう、一度だけ半日授業だった私は友達もろとも家から追い出されたことがあった。子どもが友達を家に呼ぶのと、大人が呼ぶことでは何か大きな違いがあった。大人のお客さんが来たら子どもは部屋に行くか家から出て行くしかなかった。私は公園に行く道中、友達にごめんごめんと謝ったのをよく覚えている。あの人よく遊びに来るの、お母さんのお仕事先の人なの、うっかり口を滑らせると翌日には父兄の間に広まっていた。それが契機となったかはよく分からないが、それからすぐ両親が離婚した。私はお父さんと一緒にいたかったが、お父さんは私とお母さんを置いて出て行った。例の男の人ももう来なくなった。お母さんはそこからずっと働き詰めだった。家に帰っても誰もいないんだから、家になんて帰らなくていいと思うようになった。お母さんは私の学校の様子になんてまるで関心がないから、何をしてもいいと思うようになった。そうして中学頃まで私はろくに授業に出ず家にも帰らなかった。
雨足はまだまだ強かった。息は白くなり、鼻の頭が冷たかった。隣の男性は何も言わず気配すらしなかった。私と同じようにぼんやり考えごとでもしているのだろう。
お父さんは一度も会いに来なかった。そもそも出て行く時に会いに来るとも言わなかった。前の晩はいつも通りに穏やかに笑って、ソファに腰掛けてテレビに夢中な私を見ていた。お母さんとも世間話なんかして、お風呂から上がるとソファで寝ていた。それでお父さんおやすみと声をかけると、寝ぼけた声でおやすみと返ってきた。翌朝起きるとお父さんはスーツケースを押して玄関で靴を履いていた。出張かと思った私は特に何も聞かず、いってらっしゃいと声をかけた。お父さんは振り向きもせずに出て行った。聞こえなかったのかと思いリビングに行くとお母さんが泣いていた。お父さんは二度と帰って来ないと聞かされた。そうかついにそうなったのか、幼い私は頭のどこかでそう思った。いつかはそうなるだろうと予感めいたものはずっとあった。私の平和な世界は、あったかいおうちはもう二度と戻って来ないのだと思った。でもお母さんが泣いている手前泣くわけにはいかず、難しいことは分からない子どものふりをした。私が泣いて心を痛めたら、お母さんがもっと悲しくなると思ったからだ。今でもその判断は間違っていなかったと思う。母にもちろん非があるがそんなことは関係なく、子どもは産まれたときから母親という絶対的な存在を喜ばせるために生きるものだ。あの時の私は母を傷つける方が怖かったのだ。
歳をとるにつれて、母がしたことの見当がついた。そして母を憎む気持ちも出てきた。それで中学生の私は荒れに荒れて、大人はみんな汚い、女も男も頭の中では性器に血を巡らしている、とお手本のような反抗意識を以って好き勝手に方々に迷惑をかけた。その考えは正直今でもあまり変わっていないけれど、それが人に迷惑をかけていい理由にならないことは分かっている。それを教えてくれたのはハシモトさんだ。
中二の冬、コンビニで万引きしたのが見つかりバックヤードに連れて行かれた。私を捕まえたのはアルバイトの大学生で、名札にはハシモトと書いてあった。ハシモトさんは警察と学校に連絡すると告げた後、念のために何故万引きしたのかを聞いてきた。浅はかな私はチャンスだと思った。じゃあ私の胸を触らせてやるから、あんたが望むならその先だってしていいから、今日は見逃して欲しいと言った。ハシモトさんは苦笑いしながら私を見て、胸を触ったところで万引きした事実はなくならないだろ、と言った。そんなん関係ない、あんた男でしょ、触りたいんでしょ、そういきがる私をハシモトさんは静かに諭した。それとこれとは別の話だ、お会計のかわりに胸触ることなんて無いだろ、それに身体を差し出せば何してもいいわけじゃないんだぞ。話を上手く飲み込めない私にハシモトさんは続けた。触りたいと思う人が触るから価値が生まれるんだ、俺はお前のような子どもの身体を触りたいと思っていないから、俺にとってお前の身体には何の価値もない、俺にとってお前は女でもなんでもないただの万引き犯なんだよ。そこで私は一気に恥ずかしくなった。自分の浅はかさや下品さを思い知らされた気分だった。結局ハシモトさんは学校と警察に連絡して、私は迎えに来たほとんど初対面の担任にこっ酷く叱られた。こんな時だって仕事中のお母さんとは連絡がつかなかった。お前はどうやら芯から腐っているわけでもなさそうだから、勉強して高校なり大学なり良い所に行きなさい、その方が大人への反抗になる。担任に連れられて店を出る私にハシモトさんはそう言った。どういう意味かと聞き返すと、それは自分で分かるようにならなきゃいけないと言われた。それきりそのコンビニには行かなかった。
ハシモトさんの言葉の意味は今だって分かっていないけれど、なんだか全てを見透かされたような気分で、ここらが潮時だと思った。こんなことしても大人はずっと悪いままだし、お母さんは私に興味はないままだ。私は心から悪いことが好きな訳でもない、悪そうな友達とつるんでいきがっていただけなんだ。いい加減こんなことやめよう、自然にそう思えた。それからもともと勉強が得意だった私は地元の進学校に入り、大学受験に向けて勉強の日々を送っている。
そうだ、ハシモトさんだ。
思わず隣を見ると、男性の姿はもうなかった。さっきの男性は間違いなくハシモトさんだ。顔も声も雰囲気もそうだ。ようやく謎が解けた。もっと早く気がついていれば、声をかけられたのに。お陰でまともになれましたと感謝を伝えられたのに。遠くまで目を凝らしたがハシモトさんは見当たらなかった。気づけば雨はずいぶん弱まっていた。これくらいなら早足で帰れる。
帰る途中で団地の入り口の掲示板に目を止めた。白黒の指名手配犯の顔写真が貼ってあった。さっきの男性だった。
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