【完結/R18】恋人として君と過ごす日々

テルマ江

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君との週末(柊山視点)

※2

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――ピンポーン

 チャイムが鳴った。玄関の扉を開けると、リュックを背負いスーパーの袋を持った私服姿の遥君がいた。いつもはオフィスカジュアルといった服装なので新鮮に感じる。

「先生、本日はお招き頂きありがとうござ……オレ、堅苦しいですかね……?」

 照れたように挨拶して遥君は笑った。

「ふふ。ようこそ、遥君。買い物してきてくれたの?一緒に行ったのに」
「いえ、来る途中のついででしたので」

 表情もいつもより柔らかく感じた。彼はお邪魔しますというと靴を脱いで部屋に上がる。

「後で台所お借りしますね」
「何でも好きに使ってよ。といっても必要最低限のものしかないけれどね」

 食生活に関しては遥君には呆れられたことしかない。台所のあるリビングに案内しがてら、スーパーの袋が重そうだったので、奪い取るように受け取る。リビングに着くと中身を冷蔵庫にしまう。空っぽに近い冷蔵庫の中身を見られると、また呆れられるのではないかと思いながら手早く作業をこなす。

「遥君、上着はそこのハンガーにかけると良いよ。荷物はどこでも好きな所に置いてね」
「ありがとうございます」

 はにかんだような表情でそう言いながら、部屋を見回していた。

「何か珍しい?」

 遥君を恋人として部屋に招いたことはなかったけれども、仕事では何度か招いたことがある。

「あ、いや、感慨深くなって……」

 照れたようにそういうとリュックをソファの側の床に置き、上着を脱いでハンガーに掛けた。

「……ふっ」

 遥君は乙女のような一面があるなと思わず笑みがこぼれた。

「先生、そちら手伝います。オレが買ってきたんですし、先生にそんなこと……」
「そんなに気を遣わなくて良いから、座っていてよ。すぐ飲み物も用意するから、コーヒーで良いかな?」

 冷蔵庫に野菜やら卵やらを詰めながら言った。この冷蔵庫にこんなに食材があるのは新鮮に感じる。遥君はこちらを気にしつつもソファの端の方に座った。

「コーヒーメーカー、前のが古くなってお湯しか出なくなったから新しいのにしたんだ。最近のは色々機能がついていて面白いね」

 カップにコーヒーを注ぎながら言った。

「そういえば、前にあったのと違いますね」
「うん、前のは本当……コーヒーだと思って飲んだらお湯だったから……ああいうのは、びっくりするよね」

 そんな風な話をすると彼はくすくすと笑った。自分の分のコーヒーもトレイに載せると遥君の方に持って行く。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 僕は隣に座ると彼の顔を見た。

「先生、どうしました?」
「遥君にお願いがあるんだ」
「夕食のことですか?」

 きょとんとした顔で問われた。上着を脱いだ遥君は仕事の時には見ないようなゆったりとした黒い長袖のTシャツを着ている。

「……今日、君を呼んだのには理由があってね。僕達は恋人という関係になったのに、あまり恋人らしいことをしていないなと思ったんだよ。だから今日は君と、存分に恋人らしいことをしようと思って」
「なっ……」

 僕が早口でそう言うと、遥君は目を白黒させながらしどろもどろと口を開く。

「……恋人らしいというのは照れますが、オレは先生に気持ちを受け入れてもらっただけで、その十分過ぎる程、嬉しいです……すみません、ちょっと洗面所借りて良いですか……? 顔を洗ってきます……」

 そう言ってすくっと立ち上がるとどこかぎこちない動作で洗面所に向かった。

――そうか、最初抱かれたいと言っていたからそういうことも込みだと思っていたけれど、一緒に居られれば良いといった感じなのだろうか?

 少しだけ気の抜けたような気持ちになったが、そういうのも彼らしい気がした。

――じゃあ、準備した『あれ』は使う機会はなさそうだな

 沁々とした気持ちでコーヒーを飲んだ。少し残念な気もする。

「失礼しました」

 遥君がそう言いながら戻ってくると、僕の隣に座った。さっきより少し距離が近い。耳が赤いのが見える。

「ここ濡れてるよ」

 彼の髪の毛についていた水滴を払おうと手を伸ばす。すると遥君はその手を掴んだ。

「先生」
「遥君?」
「さっきは、オレ、気持ちを受け入れてもらっただけで十分なんて、言いましたけど……本当は、今日、先生に抱いてもらえるんじゃないかって思って……家で準備してから来ました……」
「……準備?」

 掴まれた手が丁度遥君の横顔の辺りだったので頬を撫でた。彼の体がビクッと震える。見つめ返される熱っぽい瞳に自分の中からゾワゾワとした感情が立ち上ってくるのを感じる。

「……その、体の……抱かれる、準備です」

 顔を赤くして恥ずかしげに言った。可愛いなと思ったので掴まれていない方の手を遥君の腰にまわすと自分の方にぐいっと引き寄せた。

「遥君、今からイチャイチャしようか」
「宣言するのはやめてください……」

 遥君は赤い顔だがどこか嬉しそうだった。僕の手を離すと、背中に腕をまわしてきた。

「……先生」
 
 僕の肩に顔を埋めながら呟く。遥君の頭を撫でると温かい気持ちになる。無防備な彼の耳や首筋をなぞるように撫でると少しだけ体が跳ねた。

「遥君、顔見せてよ」

 そう言うと、名残惜しそうに離れながら顔を向けてきた。遥君の熱を帯びた端整な顔はだいぶそそるものがある。耳を撫でる度に甘い息を吐き出している。

「……気持ちいいのかな?可愛いね」

 彼の頬や目蓋に唇を落としながら『可愛い』は怒るかもしれないなと苦笑した。そして焦らすように耳を撫でた。

「……ん……オレも先生に触って良いですか?」
 
  堪えるような甘い声でそう言ってきた。

「……うん、良いよ」

 そう返すと、僕の頬を撫でながら唇を重ねてきた。唇を軽く舐めたり、食んだりと何度も重ねられた。遥君が時折吐き出す甘い吐息をもっと聞きたくなり、少し開いた唇に舌を入れるとおずおずと彼もそれに応える。

「……はっ……はぁ」

 わざと音をたてるように口内をかき回すと、遥君の吐息は切羽詰まったようになった。

「……はぁ……あっ……先生……あの」
「……休憩する?」
「……いえ、それは…んっ…大丈夫です。あの、オレ、声抑えた方が……良いですか?」

 そう言う彼の首筋を撫でるとビクビクと体が震える。

「気にしなくて大丈夫だよ、壁は薄くないから」
「いえ、あの……やっぱり男の声なんて、萎えませんか……?」
「……何だ、そんなこと気にしていたんだね」

 彼の耳に唇をつけると軽く噛みついた。

「ひっ……せ、先生?」
「……君とこういうことをしていると思うと、すごく興奮するんだ。だから、もっと声、聞かせてほしいな」

 遥君の返事を聞く前にソファに彼を組み敷く。内側から昂る熱を感じて、自分でも興奮しているのが分かる。

「……せんせ、い」
「遥君、もっと触っても良いかな?」
「はい……んっ……」

 彼の少し開かれた唇に舌を入れる。さっきより激しくお互いの舌を絡め合う。唾液の音が大きくなる。服の上から脇腹や腰を優しくなぞると小さく声を上げた。彼の目が潤んで、身をよじりながらビクビクと体が震えている。

「……触るね」

 シャツの中に手を入れると遥君の健康的な肌が見えた。そのまま胸まで服を捲り上げる。

「……あの、これ……すごく恥ずかしいんですが……」

 僕にされるがままになっていた彼がそう言った。

「少しだけ我慢してね」

 遥君の体は程よく引き締まっていてきれいだった。露出した肌が羞恥からか赤くなっており、胸が呼吸に合わせて上下している。脇腹を撫でながら胸の先端をスッと引っ掻くように触ると遥君が息を吐いて身をよじった。手で捲り上げたシャツを耐えるように掴む。

「……先生、あんまり、そこは……ん……あ……」
  
摘まんだり引っ掻いたりすると、先端は硬くプクリと立ち上がった。

「……遥君って、胸、触られると気持ち良い?」
「……あ、その…………はい」

  恥ずかしいのか、消え入りそうな声で彼は頷いた。何だか意外だなと思いながら立ち上がった胸のそこを口に含む。

「……あぁっ」

  彼が仰け反り、甘い悲鳴を出した。片方は手で摘まみ、もう片方を口に含む。荒い息づかいになった遥君が胸の上で僕の頭をかかえるように抱きしめた。

「……あっ、せ、先生……んんっ」

 普段の清潔な印象しかない彼の嬌声はひどく興奮する。口に含んだ先端を吸い上げると体が跳ねた。吸い上げた先端を口内で軽く食む。

「……ま、待ってください……オレ、こんな……んっ……」

 今度はちろちろと優しく舐めながら、手で摘まんでいる方を少し強く引っ掻く。

「……んんっ!」

 耳元で響く彼の声は熱を帯びていて、体は震えていた。少しやり過ぎたかもしれない。唇を離すと彼の手をほどくように胸から顔を離した。潤んだ目からは涙が溢れていて荒い息の遥君は扇情的だった。彼の涙を指で拭った。

「……せ、せん、せい……どうしました?」
「……いや、ソファで、ここまでするつもりじゃなかったんだけど……」

 年甲斐もなく興奮していたようだった。僕の唾液で濡れた遥君の胸がいやらしくテカテカと光っていた。

――あんまりしつこいと嫌がられるかもしれない

 彼のシャツをそっと下ろす。

「……先生が、オレで興奮してくれて嬉しかったです」

 上体を軽く起こすと僕の頬に手を当てる。

「あの、先生……では、その……続きは寝室でしませんか?」

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