【完結/R18】恋人として君と過ごす日々

テルマ江

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熱を帯びた衝動(此木視点)

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 シャワーを浴びていると敬久さんが着替えを出してくれたのでそちらを着ることにした。下着はわざわざ新しい物を出してくれたようで、パッケージに入った状態の物が着替えの服に添えられていた。律儀さに苦笑してしまう。

――これ、敬久さんの服だ。嬉しいな

 浮かれながらいそいそと出されたTシャツとスウェットに着替えてリビングに戻った。ソファでは敬久さんがメガネをかけたまま寝転んでウトウトしていた。

「敬久さん、大丈夫ですか? 疲れちゃいましたか?」

 少し心配になったので彼の顔を覗き込むように上から見ると手をグイと引っ張られた。

「ううん、大丈夫だよ。君に会ったらホッとしちゃってね……ほら、こっち……」
「……ぅ、狭くないですか」 
「遥君が僕にくっついてくれれば大丈夫だよ……」

 そのままソファで敬久さんに抱きしめられるような形で横になった。

――こ、これは、中々照れるな……

 緊張で呼吸が乱れそうになったので、息を整えた。

「……ふふっ、君が僕の服着ているの何だかドキドキするなあ」

 敬久さんはメガネの奥で目を細めながら言った。

「お借りしています……。ていうか、新しい下着までありがとうございます」
「いや、僕のせいで汚しちゃったから……」

 少し照れたように言われた。

「……オレも敬久さんの服を着るのドキドキします」
「本当? おじさんの服だから嫌じゃない?」
「おじさんって……。さっきも言っていましたけれど、敬久さんはおじさんじゃないですよ……」

 苦笑しながら彼の目を見つめた。彼も穏やかな目で見つめ返してくるので鼓動が早くなる。

「……今日は敬久さん、メガネなんですね」
「うん、パソコン用の……最近かけたままだったから外すの忘れていたよ……度はあんまり入っていないんだけどね」
「似合っていて好きです。時々、かけてくださいよ」
「君は僕を喜ばせるのうまいよね……」

 そう言うと髪の毛にチュッと音を立ててキスされた。

「今日、遥君は何時頃までいられるのかな?帰りは僕が車で送っていくから……今日はもう少し側にいて欲しいな」

 囁くような甘い声にゾクゾクと背中が震えるのを感じる。

――敬久さんが、オレに甘えてくれている……

 喜びで声が裏返りそうになったので、深呼吸してから口を開いた。

「……オレ、先日が休日出勤だったので出張明けは代休取ったんですよ……敬久さんさえ良ければ、今日、このまま泊まって良いですか?」
「そうなんだ。嬉しいな……もちろん、大丈夫だよ」

 敬久さんはオレを更にギュッと抱き寄せると、嬉しそうに微笑んだ。
 
「朝までオレが添い寝しますから……」
「それは楽しみだなあ……」

 オレの髪の毛を撫でながら、額や目の端に唇を落としてくる。甘やかな時間に胸がいっぱいになり、されるがままになってしまう。

「……そういえば、敬久さん、夕飯は食べましたか?オレ、何か用意しましょうか? さっきの食材があるので……」

 もう八時が過ぎていたので、今更かなと思いながら聞いた。

「……ああ、君に連絡した後に、軽く食べたから大丈夫だよ、ありがとう。君は? 廊下で盛り上がっちゃったから、お腹空いてない?」
「も、盛り上がるって……言い方……」
「我慢している遥君、やらしくて可愛かったよ」
「……ゔ……もう、今、言わないでくださいよ。……えーと、オレも帰りの新幹線で軽食を頂いたので、大丈夫です……」

 敬久さんは相変わらずオレをギュウギュウと抱きしめたまま満足そうにしている。

――敬久さんにこんな風にされるのも二週間ぶりだから、ときめきが止まらない……見つめられるだけで心臓がヤバい

「遥君、どうしたの?」
「……いや……会えて嬉しくて……敬久さんのこと好きだなあって、改めて思ったんです」
「僕も君が好きだよ」

 口に軽くキスされた。敬久さんの唇の感触が心地良かったので軽く唇を食み、ペロリと舐めた。

「…………はぁ、遥君って清楚に見えるのに、けっこうグイグイ来るよね」
「せ、清楚ですか。男にはあまり使わない表現ですが……オレは好きな人に対しては積極的な所はありますね」
「ふうん……そうなんだ」

 敬久さんが目を細めてオレを見つめてきたので、ゾクゾクとしてしまう。

「ごめん、ちょっと嫉妬してしまったかな」
「え、あ、好きな人って敬久さんですからね!?」
「うん、分かっているよ。僕が想像力を働かせ過ぎただけだから」
「何を考えたんですかっ……」
「ふふっ、言わないよ……」

 色っぽく笑いながら、ついばむようなキスをされる。そんな風に触れ合っていると、敬久さんの目元が少し眠そうにウトウトし始めた。

「敬久さん、やっぱりもう寝た方が……。ベッド行きますか?」
「誘ってる?」
「違いますって!」
「それは残念だな。眠たいのはあるんだけれど、君とイチャイチャもしたいし……はあ、悩むなあ……」

 そんな風に言われると参ってしまうなあと思いながら、彼のメガネに手をかけて外した。

「遥君?」
「仮眠を取るとスッキリしますし、十五分程眠ってみてはどうでしょう。オレが起こしますよ」
「仮眠かあ……そうだね。起きたら君とイチャイチャしたいし、十五分か……やってみるよ」 
「……イチャイチャを強調しますね……」

 苦笑しながら、彼の腕から抜け出た。上体を起こしてメガネを畳み机の上に置く。それから敬久さんの邪魔にならないように、ソファの端の方に座った。

「今日は欲望に素直になってみようかなって……」
「……ああ、オレが今日言ったこと、実行してくれているんですね。嬉しいです」

 確かに玄関でそんな会話をしたなと思い、微笑ましい気持ちになる。

「……遥君は優しいから、僕は付け上がってしまうなあ」
「オレはあなたに振り回されたいんですから、何の問題もないです」
「……はぁ……君のそういう所、ほんと……堪らないな」

 敬久さんは照れくさそうに言うと、目を閉じて寝息をたて始めた。

――やっぱり疲れていたんだな。それにしてもオレの前で無防備に寝ている敬久さん、良いな

 敬久さんがリビングに移動させてくれた荷物の中から携帯電話を取り出し、タイマーをセットした。

――寝顔撮ったらダメかな。いや、許可もなくダメだ……もう、記憶に焼き付けるしか……

 十五分間、そんな風な葛藤に苛まれ悶々としながら敬久さんの寝息を聞いていた。

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