21 / 154
熱を帯びた衝動(此木視点)
5
しおりを挟む
シャワーを浴びていると敬久さんが着替えを出してくれたのでそちらを着ることにした。下着はわざわざ新しい物を出してくれたようで、パッケージに入った状態の物が着替えの服に添えられていた。律儀さに苦笑してしまう。
――これ、敬久さんの服だ。嬉しいな
浮かれながらいそいそと出されたTシャツとスウェットに着替えてリビングに戻った。ソファでは敬久さんがメガネをかけたまま寝転んでウトウトしていた。
「敬久さん、大丈夫ですか? 疲れちゃいましたか?」
少し心配になったので彼の顔を覗き込むように上から見ると手をグイと引っ張られた。
「ううん、大丈夫だよ。君に会ったらホッとしちゃってね……ほら、こっち……」
「……ぅ、狭くないですか」
「遥君が僕にくっついてくれれば大丈夫だよ……」
そのままソファで敬久さんに抱きしめられるような形で横になった。
――こ、これは、中々照れるな……
緊張で呼吸が乱れそうになったので、息を整えた。
「……ふふっ、君が僕の服着ているの何だかドキドキするなあ」
敬久さんはメガネの奥で目を細めながら言った。
「お借りしています……。ていうか、新しい下着までありがとうございます」
「いや、僕のせいで汚しちゃったから……」
少し照れたように言われた。
「……オレも敬久さんの服を着るのドキドキします」
「本当? おじさんの服だから嫌じゃない?」
「おじさんって……。さっきも言っていましたけれど、敬久さんはおじさんじゃないですよ……」
苦笑しながら彼の目を見つめた。彼も穏やかな目で見つめ返してくるので鼓動が早くなる。
「……今日は敬久さん、メガネなんですね」
「うん、パソコン用の……最近かけたままだったから外すの忘れていたよ……度はあんまり入っていないんだけどね」
「似合っていて好きです。時々、かけてくださいよ」
「君は僕を喜ばせるのうまいよね……」
そう言うと髪の毛にチュッと音を立ててキスされた。
「今日、遥君は何時頃までいられるのかな?帰りは僕が車で送っていくから……今日はもう少し側にいて欲しいな」
囁くような甘い声にゾクゾクと背中が震えるのを感じる。
――敬久さんが、オレに甘えてくれている……
喜びで声が裏返りそうになったので、深呼吸してから口を開いた。
「……オレ、先日が休日出勤だったので出張明けは代休取ったんですよ……敬久さんさえ良ければ、今日、このまま泊まって良いですか?」
「そうなんだ。嬉しいな……もちろん、大丈夫だよ」
敬久さんはオレを更にギュッと抱き寄せると、嬉しそうに微笑んだ。
「朝までオレが添い寝しますから……」
「それは楽しみだなあ……」
オレの髪の毛を撫でながら、額や目の端に唇を落としてくる。甘やかな時間に胸がいっぱいになり、されるがままになってしまう。
「……そういえば、敬久さん、夕飯は食べましたか?オレ、何か用意しましょうか? さっきの食材があるので……」
もう八時が過ぎていたので、今更かなと思いながら聞いた。
「……ああ、君に連絡した後に、軽く食べたから大丈夫だよ、ありがとう。君は? 廊下で盛り上がっちゃったから、お腹空いてない?」
「も、盛り上がるって……言い方……」
「我慢している遥君、やらしくて可愛かったよ」
「……ゔ……もう、今、言わないでくださいよ。……えーと、オレも帰りの新幹線で軽食を頂いたので、大丈夫です……」
敬久さんは相変わらずオレをギュウギュウと抱きしめたまま満足そうにしている。
――敬久さんにこんな風にされるのも二週間ぶりだから、ときめきが止まらない……見つめられるだけで心臓がヤバい
「遥君、どうしたの?」
「……いや……会えて嬉しくて……敬久さんのこと好きだなあって、改めて思ったんです」
「僕も君が好きだよ」
口に軽くキスされた。敬久さんの唇の感触が心地良かったので軽く唇を食み、ペロリと舐めた。
「…………はぁ、遥君って清楚に見えるのに、けっこうグイグイ来るよね」
「せ、清楚ですか。男にはあまり使わない表現ですが……オレは好きな人に対しては積極的な所はありますね」
「ふうん……そうなんだ」
敬久さんが目を細めてオレを見つめてきたので、ゾクゾクとしてしまう。
「ごめん、ちょっと嫉妬してしまったかな」
「え、あ、好きな人って敬久さんですからね!?」
「うん、分かっているよ。僕が想像力を働かせ過ぎただけだから」
「何を考えたんですかっ……」
「ふふっ、言わないよ……」
色っぽく笑いながら、ついばむようなキスをされる。そんな風に触れ合っていると、敬久さんの目元が少し眠そうにウトウトし始めた。
「敬久さん、やっぱりもう寝た方が……。ベッド行きますか?」
「誘ってる?」
「違いますって!」
「それは残念だな。眠たいのはあるんだけれど、君とイチャイチャもしたいし……はあ、悩むなあ……」
そんな風に言われると参ってしまうなあと思いながら、彼のメガネに手をかけて外した。
「遥君?」
「仮眠を取るとスッキリしますし、十五分程眠ってみてはどうでしょう。オレが起こしますよ」
「仮眠かあ……そうだね。起きたら君とイチャイチャしたいし、十五分か……やってみるよ」
「……イチャイチャを強調しますね……」
苦笑しながら、彼の腕から抜け出た。上体を起こしてメガネを畳み机の上に置く。それから敬久さんの邪魔にならないように、ソファの端の方に座った。
「今日は欲望に素直になってみようかなって……」
「……ああ、オレが今日言ったこと、実行してくれているんですね。嬉しいです」
確かに玄関でそんな会話をしたなと思い、微笑ましい気持ちになる。
「……遥君は優しいから、僕は付け上がってしまうなあ」
「オレはあなたに振り回されたいんですから、何の問題もないです」
「……はぁ……君のそういう所、ほんと……堪らないな」
敬久さんは照れくさそうに言うと、目を閉じて寝息をたて始めた。
――やっぱり疲れていたんだな。それにしてもオレの前で無防備に寝ている敬久さん、良いな
敬久さんがリビングに移動させてくれた荷物の中から携帯電話を取り出し、タイマーをセットした。
――寝顔撮ったらダメかな。いや、許可もなくダメだ……もう、記憶に焼き付けるしか……
十五分間、そんな風な葛藤に苛まれ悶々としながら敬久さんの寝息を聞いていた。
――これ、敬久さんの服だ。嬉しいな
浮かれながらいそいそと出されたTシャツとスウェットに着替えてリビングに戻った。ソファでは敬久さんがメガネをかけたまま寝転んでウトウトしていた。
「敬久さん、大丈夫ですか? 疲れちゃいましたか?」
少し心配になったので彼の顔を覗き込むように上から見ると手をグイと引っ張られた。
「ううん、大丈夫だよ。君に会ったらホッとしちゃってね……ほら、こっち……」
「……ぅ、狭くないですか」
「遥君が僕にくっついてくれれば大丈夫だよ……」
そのままソファで敬久さんに抱きしめられるような形で横になった。
――こ、これは、中々照れるな……
緊張で呼吸が乱れそうになったので、息を整えた。
「……ふふっ、君が僕の服着ているの何だかドキドキするなあ」
敬久さんはメガネの奥で目を細めながら言った。
「お借りしています……。ていうか、新しい下着までありがとうございます」
「いや、僕のせいで汚しちゃったから……」
少し照れたように言われた。
「……オレも敬久さんの服を着るのドキドキします」
「本当? おじさんの服だから嫌じゃない?」
「おじさんって……。さっきも言っていましたけれど、敬久さんはおじさんじゃないですよ……」
苦笑しながら彼の目を見つめた。彼も穏やかな目で見つめ返してくるので鼓動が早くなる。
「……今日は敬久さん、メガネなんですね」
「うん、パソコン用の……最近かけたままだったから外すの忘れていたよ……度はあんまり入っていないんだけどね」
「似合っていて好きです。時々、かけてくださいよ」
「君は僕を喜ばせるのうまいよね……」
そう言うと髪の毛にチュッと音を立ててキスされた。
「今日、遥君は何時頃までいられるのかな?帰りは僕が車で送っていくから……今日はもう少し側にいて欲しいな」
囁くような甘い声にゾクゾクと背中が震えるのを感じる。
――敬久さんが、オレに甘えてくれている……
喜びで声が裏返りそうになったので、深呼吸してから口を開いた。
「……オレ、先日が休日出勤だったので出張明けは代休取ったんですよ……敬久さんさえ良ければ、今日、このまま泊まって良いですか?」
「そうなんだ。嬉しいな……もちろん、大丈夫だよ」
敬久さんはオレを更にギュッと抱き寄せると、嬉しそうに微笑んだ。
「朝までオレが添い寝しますから……」
「それは楽しみだなあ……」
オレの髪の毛を撫でながら、額や目の端に唇を落としてくる。甘やかな時間に胸がいっぱいになり、されるがままになってしまう。
「……そういえば、敬久さん、夕飯は食べましたか?オレ、何か用意しましょうか? さっきの食材があるので……」
もう八時が過ぎていたので、今更かなと思いながら聞いた。
「……ああ、君に連絡した後に、軽く食べたから大丈夫だよ、ありがとう。君は? 廊下で盛り上がっちゃったから、お腹空いてない?」
「も、盛り上がるって……言い方……」
「我慢している遥君、やらしくて可愛かったよ」
「……ゔ……もう、今、言わないでくださいよ。……えーと、オレも帰りの新幹線で軽食を頂いたので、大丈夫です……」
敬久さんは相変わらずオレをギュウギュウと抱きしめたまま満足そうにしている。
――敬久さんにこんな風にされるのも二週間ぶりだから、ときめきが止まらない……見つめられるだけで心臓がヤバい
「遥君、どうしたの?」
「……いや……会えて嬉しくて……敬久さんのこと好きだなあって、改めて思ったんです」
「僕も君が好きだよ」
口に軽くキスされた。敬久さんの唇の感触が心地良かったので軽く唇を食み、ペロリと舐めた。
「…………はぁ、遥君って清楚に見えるのに、けっこうグイグイ来るよね」
「せ、清楚ですか。男にはあまり使わない表現ですが……オレは好きな人に対しては積極的な所はありますね」
「ふうん……そうなんだ」
敬久さんが目を細めてオレを見つめてきたので、ゾクゾクとしてしまう。
「ごめん、ちょっと嫉妬してしまったかな」
「え、あ、好きな人って敬久さんですからね!?」
「うん、分かっているよ。僕が想像力を働かせ過ぎただけだから」
「何を考えたんですかっ……」
「ふふっ、言わないよ……」
色っぽく笑いながら、ついばむようなキスをされる。そんな風に触れ合っていると、敬久さんの目元が少し眠そうにウトウトし始めた。
「敬久さん、やっぱりもう寝た方が……。ベッド行きますか?」
「誘ってる?」
「違いますって!」
「それは残念だな。眠たいのはあるんだけれど、君とイチャイチャもしたいし……はあ、悩むなあ……」
そんな風に言われると参ってしまうなあと思いながら、彼のメガネに手をかけて外した。
「遥君?」
「仮眠を取るとスッキリしますし、十五分程眠ってみてはどうでしょう。オレが起こしますよ」
「仮眠かあ……そうだね。起きたら君とイチャイチャしたいし、十五分か……やってみるよ」
「……イチャイチャを強調しますね……」
苦笑しながら、彼の腕から抜け出た。上体を起こしてメガネを畳み机の上に置く。それから敬久さんの邪魔にならないように、ソファの端の方に座った。
「今日は欲望に素直になってみようかなって……」
「……ああ、オレが今日言ったこと、実行してくれているんですね。嬉しいです」
確かに玄関でそんな会話をしたなと思い、微笑ましい気持ちになる。
「……遥君は優しいから、僕は付け上がってしまうなあ」
「オレはあなたに振り回されたいんですから、何の問題もないです」
「……はぁ……君のそういう所、ほんと……堪らないな」
敬久さんは照れくさそうに言うと、目を閉じて寝息をたて始めた。
――やっぱり疲れていたんだな。それにしてもオレの前で無防備に寝ている敬久さん、良いな
敬久さんがリビングに移動させてくれた荷物の中から携帯電話を取り出し、タイマーをセットした。
――寝顔撮ったらダメかな。いや、許可もなくダメだ……もう、記憶に焼き付けるしか……
十五分間、そんな風な葛藤に苛まれ悶々としながら敬久さんの寝息を聞いていた。
0
あなたにおすすめの小説
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる