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熱帯夜を君と・前編(柊山視点)
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「今日は気晴らしになりましたか? オレが着いて来ちゃって良かったのかなって思っていて」
「ふふっ、君を誘ったの僕だよ」
「それはそうですが……」
「一人でドライブだと車の運転で気晴らししていたから、誰かと一緒なのは新鮮だよ」
「なら良かったです……」
「君こそ、仕事終わりで疲れていないかな?」
遥君は体力に自信はあると常々言っていたけれど、無理をさせていないか心配になる。
「オレは大丈夫です。敬久さんとドライブに行けるのが嬉しかったので、疲れは回復しました」
「君がそう思ってくれるなんて僕も嬉しいな」
明るい声色にホッとする。
「そうだ。遥君、もうすぐ誕生日だよね。八月の三十日」
「覚えていてくれたんですね……」
三十日が遥君の誕生日なので、どのように過ごそうかとここ最近ずっと考えていた。彼も八月はお盆前後の調整や出版のフェアなどでバタバタしそうだと言っていたので予定が合わないかもしれない。
「平日だから君の都合はどうかなと思っていてね」
「敬久さんがそんな風に考えてくれるだけで嬉しいですよ。オレ、二十五歳辺りから自分の誕生日を忘れ始めていましたし……」
「……ああ、うん、そういうのは僕も分かるなあ」
「それに敬久さんの都合もありますし、翌月に持ち越して頂いて大丈夫ですよ」
「僕は調整可能だから気にしなくて大丈夫だよ。付き合い始めて半年が経つし、初めての君の誕生日だから当日に会いたくてさ……」
「……そんな風に、あなたに言われると……照れます」
恐らく赤くなっているのであろう遥君がモゴモゴと呟いた。
「三十日は……では、仕事が終わりましたら敬久さんの家に行って良いですか?さすがに日付が変わる前には寄れますので」
「僕の家で良いの? どこか外で食事でもと思っていたんだけれど……」
「オレにとって、あなたの生活する場所にいるのって……かなり特別なことなんですよ……だから、そこで一緒に過ごせたら幸せだなって」
「……遥君」
胸が温かくなるような言葉にじんときてしまう。顔が見れないのが本当に残念だった。
「ねえ、帰ったらイチャイチャしようね」
「……ぅ……はい」
自分でも彼に対して欲望と好意を明け透けにぶつけ過ぎだなと思い、少しだけ自省した。
「ふふっ……」
「……どうしたんですか?」
「いや、イチャイチャって言ったらさ、さっき公園のこと思い出して」
先程、夜景スポットの公園でのことを思い出した。人で賑わっていて、中でも腕を組んだり手を繋いだりしている恋人らしき組み合わせが多かった。
「僕も君と手を繋ごうとしたら、すごい勢いで距離を取られたなあって」
自分達も恋人同士であるし特に問題ないと思い、夜景を楽しそうに見る遥君の無防備な手に指が触れた時だった。『なっ』という小さな驚きの声と共に1メートル程離れられた。
「……あ、あれは」
「おじさんと手を繋ぐのは嫌なのかなって、ちょっとショックだったなあ」
「そ、そうじゃないですっ……オレ、外で手を繋ぐとか慣れていなくて……人目もありますしっ」
からかうような声色で言うと、遥君がボソボソと蚊の鳴くような声で反論してきた。
「ごめんごめん。遥君、人がいる所でそういうの好きじゃなかったよね。君に少しでも触れていたくてさ……」
「……そ、そうなんですか」
からかい過ぎたかなと思い素直に謝ることにした。遥君はもう少し僕を叱っても良いのになと図々しく考えながら苦笑する。
「うん、君に触れないのは寂しいからね。早く家に着かないかな。あ、有料道路の方が多少早かったかな……」
頭の中でルートを確認していると、また遥君がボソボソと喋りはじめた。先程より小さい声なのでよく聞こえない。
「遥君、ごめんね。何て言ったのかな? ちょっと声が小さくて……」
聞き返すと、遥君が息を深く吸い込んでから口を開いた。
「……外じゃなければ触っても良いですし……家まで時間かかりそうでしたら、どこかで休憩しませんか……?」
危うく脇見運転をする所だった。
「ふふっ、君を誘ったの僕だよ」
「それはそうですが……」
「一人でドライブだと車の運転で気晴らししていたから、誰かと一緒なのは新鮮だよ」
「なら良かったです……」
「君こそ、仕事終わりで疲れていないかな?」
遥君は体力に自信はあると常々言っていたけれど、無理をさせていないか心配になる。
「オレは大丈夫です。敬久さんとドライブに行けるのが嬉しかったので、疲れは回復しました」
「君がそう思ってくれるなんて僕も嬉しいな」
明るい声色にホッとする。
「そうだ。遥君、もうすぐ誕生日だよね。八月の三十日」
「覚えていてくれたんですね……」
三十日が遥君の誕生日なので、どのように過ごそうかとここ最近ずっと考えていた。彼も八月はお盆前後の調整や出版のフェアなどでバタバタしそうだと言っていたので予定が合わないかもしれない。
「平日だから君の都合はどうかなと思っていてね」
「敬久さんがそんな風に考えてくれるだけで嬉しいですよ。オレ、二十五歳辺りから自分の誕生日を忘れ始めていましたし……」
「……ああ、うん、そういうのは僕も分かるなあ」
「それに敬久さんの都合もありますし、翌月に持ち越して頂いて大丈夫ですよ」
「僕は調整可能だから気にしなくて大丈夫だよ。付き合い始めて半年が経つし、初めての君の誕生日だから当日に会いたくてさ……」
「……そんな風に、あなたに言われると……照れます」
恐らく赤くなっているのであろう遥君がモゴモゴと呟いた。
「三十日は……では、仕事が終わりましたら敬久さんの家に行って良いですか?さすがに日付が変わる前には寄れますので」
「僕の家で良いの? どこか外で食事でもと思っていたんだけれど……」
「オレにとって、あなたの生活する場所にいるのって……かなり特別なことなんですよ……だから、そこで一緒に過ごせたら幸せだなって」
「……遥君」
胸が温かくなるような言葉にじんときてしまう。顔が見れないのが本当に残念だった。
「ねえ、帰ったらイチャイチャしようね」
「……ぅ……はい」
自分でも彼に対して欲望と好意を明け透けにぶつけ過ぎだなと思い、少しだけ自省した。
「ふふっ……」
「……どうしたんですか?」
「いや、イチャイチャって言ったらさ、さっき公園のこと思い出して」
先程、夜景スポットの公園でのことを思い出した。人で賑わっていて、中でも腕を組んだり手を繋いだりしている恋人らしき組み合わせが多かった。
「僕も君と手を繋ごうとしたら、すごい勢いで距離を取られたなあって」
自分達も恋人同士であるし特に問題ないと思い、夜景を楽しそうに見る遥君の無防備な手に指が触れた時だった。『なっ』という小さな驚きの声と共に1メートル程離れられた。
「……あ、あれは」
「おじさんと手を繋ぐのは嫌なのかなって、ちょっとショックだったなあ」
「そ、そうじゃないですっ……オレ、外で手を繋ぐとか慣れていなくて……人目もありますしっ」
からかうような声色で言うと、遥君がボソボソと蚊の鳴くような声で反論してきた。
「ごめんごめん。遥君、人がいる所でそういうの好きじゃなかったよね。君に少しでも触れていたくてさ……」
「……そ、そうなんですか」
からかい過ぎたかなと思い素直に謝ることにした。遥君はもう少し僕を叱っても良いのになと図々しく考えながら苦笑する。
「うん、君に触れないのは寂しいからね。早く家に着かないかな。あ、有料道路の方が多少早かったかな……」
頭の中でルートを確認していると、また遥君がボソボソと喋りはじめた。先程より小さい声なのでよく聞こえない。
「遥君、ごめんね。何て言ったのかな? ちょっと声が小さくて……」
聞き返すと、遥君が息を深く吸い込んでから口を開いた。
「……外じゃなければ触っても良いですし……家まで時間かかりそうでしたら、どこかで休憩しませんか……?」
危うく脇見運転をする所だった。
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