【完結/R18】恋人として君と過ごす日々

テルマ江

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熱帯夜を君と・後編(此木視点)

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 横になってオレの髪を撫でる彼は穏やかな表情でクスクスと笑った。

「どうしたんですか?」
「いや、今日は色々な君が見れて楽しかったなって」
「……オレ、そんなに、その……色々していましたっけ?」

 自分でも情けない声を出して聞き返してしまった。聞き返してはいたが、自分がやったことについては大体覚えている。

――彼への欲望のタガが外れて、心の中がだだ漏れになるんだろうな……煩悩だ……

 興奮すると割とあられもないことを言ったりやったりしている自覚はあった。

「そうだね。具体的に言った方が良いかなぁ……」

 敬久さんはオレの髪の毛をいじくりながら目を細める。彼の穏やかな表情の中にオレをからかおうとするニュアンスが読み取れる。
 
――敬久さんが目を細めると目つきが意外に鋭いのが良く分かってドキドキしてしまうな……いや、ときめいている場合では……一体何を言われるんだ……

「まず『休憩しませんか』って君の口から言われたのにはドキッとしたなぁ……。あとはホテルに着いた時に手を繋いでくれたのが嬉しかったし、パネル操作に少し戸惑いながらも率先して部屋を選んでくれた所はかっこいいなって思ったよ。エレベーターでも誰かとすれ違わないか震えながら部屋まで手を繋いでくれて可愛かったし、後は部屋に着いた時にキスしてくれたこととバスローブ姿にグッと来て……」
「すみません……もう……もう十分です。全部、覚えていますから……」

 改めて自分の行動を語られると羞恥を覚える。恐らくこれ以上聞くと彼との行為の内容に及ぶなと思ったので話しを遮った。

「君の積極的な所好きだよ」

 額にチュッと音を立ててキスしながら言われ、顔が熱くなる。

「……もう……照れさせないでくださいよ……はぁ……熱い……」

 バスローブの胸元を少しだけ開けると、敬久さんが鎖骨の辺りを指でスッとなぞってきた。驚いて体がビクッと反応してしまう。

「ぅあっ」
「遥君って、照れるとこの辺りも赤くなるよね」

 オレの反応を楽しんでいるのかスッスッと指でなぞり続ける。

「んん……そうですね……オレも普段はこんなに赤面しないのですが……」

 普段は落ち着いた人間を装っているので、こんな風になることはほとんどない。敬久さんと色々する時はいつも化けの皮が剥がれてしまう。

「あなたの前だと、オレの化けの皮が剥がれてしまうんですよ……あと敬久さんは、たまにわざとオレが照れるようなこと言っていませんか……?」
「ははっ、やっぱり分かっちゃうよね」

 以前から気になっていたことを問うと、悪びれた様子もなく返された。

「……もう……あんまりからかわないでくださいよ。オレ、常にいっぱいいっぱいなんですって」
「君のそういう所もっと見たいんだ」

 またギュウギュウと抱きしめられる。オレも彼の背中に手を回し、お互いに抱きしめ合うような格好になった。

「はぁ……さっき、君に乗られてそのまま搾り取られるのも良いなって思ったんだけれど、君を前にすると触りたい……」
「……し、搾り……いや……触るのは二人の時なら……いつでも触って大丈夫ですから」

 あの体勢で敬久さんと最後までしたかった気持ちがないわけではなかった。けれども彼がオレに触りたいと思ったり欲情してくれる方が嬉しい。

「敬久さんに嬉しくなって欲しいんですから、オレは……」
「君は本当に、僕を甘やかすから心配になるなぁ……」
「ははっ、このくらい全然ですからね……あ、でも」

 ハッとして顔を上げ、敬久さんの目を見た。敬久さんはきょとんとした顔で「どうしたの」と聞いてくる。

「仕事中と外では……触るのダメですから……」
「……僕、君にダメって言われるの好きだな」
「この『ダメ』は本当にダメな時のヤツですっ!」
「ふ……ははっ……良い時の『ダメ』もあるからね……」
「……そ、それは……その……」

 敬久さんは堪えながら言ったけれど、ほとんど笑っていた。オレはいたたまれなくなったので、彼の背中から腕を離してバスローブの袖で顔を覆った。

「……顔、隠してもここが赤いよ。遥君……」

 今度は胸元を指でなぞられる。

「あっ……」
「ごめんね。からかい過ぎちゃったかな。顔見せてよ」
「…………謝らないでくださいよ」

 顔から腕を退けると敬久さんの顔が近くに来て、唇をそっと重ねられた。

「……ん」
「はぁ……最近、もっと君の色々な姿が見たくてね。僕はすごく貪欲になってしまっているなあ……」
「……貪欲ですか」

 照れたような困ったようなどちらとも取れる表情で言われ、こちらが戸惑ってしまう。そのまま軽く身を起こして、オレの上に覆いかぶさるような姿勢になった。

「…………ねえ、もっとキスして良い?」

 また彼の目に欲望がチラチラと滲んでいるように見える。そんな目で見られると参ってしまうなと思いながら、敬久さんの顔を引き寄せた。

「……休憩の範囲内でならお好きになさってください……」
「嬉しいな……今度は遥君がゆっくり寝ていてね……」

 目を瞑ると、唇を優しく重ねてくる。そんなに優しくしなくても良いのになと思ってしまうくらいに焦れったくて、もどかしくて、甘かった。敬久さんの言う貪欲がどのくらいのものか分からなかったけれど、彼に欲しがられるのは喜びしかない。
 重なった唇から彼の吐息を吸い込むと、更に熱に浮かされていくようだった。

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