30 / 154
明晰夢とその顛末・前編(柊山視点)
3
しおりを挟む
――あんな夢を見たから体が反応していたらどうしようかと思っていたけれど……大丈夫だった……本当に良かった……
先程タオルケットを捲った時に体が普段通りの状態だったことに心底ホッとした。
――多分、最近暑くて夏バテ気味だったから、おかしな夢を見るんだ……
横向きになり、遥君の寝顔を見つめる。穏やかな顔で寝息を立てる姿に心が安らいだ。上半身が裸なので呼吸とともに胸が上下しているのがよく分かる。
――遥君は胸にしなやかな筋肉がついていて腹筋も薄っすら割れているし……見るたびに思うけれどキレイな体つきだな。水泳をやっているから体にも気を遣っているのかな……
ぼんやりと彼の体を見つめながら感心していると、彼の目が薄っすらと開いた。
「……ぅ……」
「…………あ……その……」
恋人とはいえ無遠慮に体を見つめていたので、少し慌ててしまった。僕がぐだぐだと仰向けになったり横向きになったりしていたので、彼を起こしてしまったようだ。
「……ぅ……朝……?」
眠たそうな目が閉じかけ、言葉遣いがふわふわとしているので寝ぼけているようだ。
「……遥君、まだ時間じゃないから……大丈夫だよ」
少しだけ彼に体を寄せ、できるだけ小さな声で囁くようにして言った。
「…はぃ……」
遥君は小さな声で返事をしてうとうとし始めた。寝ぼけているのが可愛いなと思ったので顔を寄せ軽く唇を合わせる。夢の中でキスできなかったのが心残りだったのかもしれない。
「……も……朝は……だめ……」
彼は身をよじり僕の唇にゆるゆると手を伸ばして指でなぞった。その指を少しだけ食むと彼はにこにこと笑った。
「……ふ……魚みたい……かわい……」
口調がいつもより砕けている上に不意打ちの笑顔に胸がドキドキとしてしまう。遥君はそのまま僕の頭を胸にギュッと抱き寄せると、抱え込むように丸まって眠り始めた。
――遥君は……こういうことを無邪気にやってくるから油断できないな……いや、全部わざとだったらどうしよう……
胸の先端が顔に密着していて悶々としてしまうけれど、遥君の温かな肌に包まれるのは心地良かった。彼の肌は健康的で触るとサラサラとしていてとても落ち着く。
――遥君が、こんなに側にいてくれて僕は幸せだな……
彼の寝息を聞きながら目を閉じる。今度こそは良い夢が見られそうな気がした。
先程タオルケットを捲った時に体が普段通りの状態だったことに心底ホッとした。
――多分、最近暑くて夏バテ気味だったから、おかしな夢を見るんだ……
横向きになり、遥君の寝顔を見つめる。穏やかな顔で寝息を立てる姿に心が安らいだ。上半身が裸なので呼吸とともに胸が上下しているのがよく分かる。
――遥君は胸にしなやかな筋肉がついていて腹筋も薄っすら割れているし……見るたびに思うけれどキレイな体つきだな。水泳をやっているから体にも気を遣っているのかな……
ぼんやりと彼の体を見つめながら感心していると、彼の目が薄っすらと開いた。
「……ぅ……」
「…………あ……その……」
恋人とはいえ無遠慮に体を見つめていたので、少し慌ててしまった。僕がぐだぐだと仰向けになったり横向きになったりしていたので、彼を起こしてしまったようだ。
「……ぅ……朝……?」
眠たそうな目が閉じかけ、言葉遣いがふわふわとしているので寝ぼけているようだ。
「……遥君、まだ時間じゃないから……大丈夫だよ」
少しだけ彼に体を寄せ、できるだけ小さな声で囁くようにして言った。
「…はぃ……」
遥君は小さな声で返事をしてうとうとし始めた。寝ぼけているのが可愛いなと思ったので顔を寄せ軽く唇を合わせる。夢の中でキスできなかったのが心残りだったのかもしれない。
「……も……朝は……だめ……」
彼は身をよじり僕の唇にゆるゆると手を伸ばして指でなぞった。その指を少しだけ食むと彼はにこにこと笑った。
「……ふ……魚みたい……かわい……」
口調がいつもより砕けている上に不意打ちの笑顔に胸がドキドキとしてしまう。遥君はそのまま僕の頭を胸にギュッと抱き寄せると、抱え込むように丸まって眠り始めた。
――遥君は……こういうことを無邪気にやってくるから油断できないな……いや、全部わざとだったらどうしよう……
胸の先端が顔に密着していて悶々としてしまうけれど、遥君の温かな肌に包まれるのは心地良かった。彼の肌は健康的で触るとサラサラとしていてとても落ち着く。
――遥君が、こんなに側にいてくれて僕は幸せだな……
彼の寝息を聞きながら目を閉じる。今度こそは良い夢が見られそうな気がした。
0
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる