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水音と吐息を重ねて(此木視点)
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朝、敬久さんが物置部屋からカメラを発掘してきた。試しに撮ってみようということになり、朝食を済ませてから近隣にある大きな公園に二人で来ていた。
「二年くらい前のデジタルカメラだけれど、十分キレイに撮れるね」
敬久さんは小さな三脚が入ったバッグを肩にかけて、先程からオレにレンズを向けてくる。
「いや……オレばかり撮られましても……」
並んで歩きながらパシャパシャと撮られるので、照れてしまう。昨日ケーキを食べている敬久さんを撮り続けた手前、あまり強くは言えない。
「ははっ、ごめんね。設定とか色々試したかったんだ。君の写真も沢山撮れるし、良いかなって」
敬久さんは弾んだ声で言った。
「……もう」
赤面しているのがバレないように。顔をそらし周囲を見渡した。日曜日の公園は多くの人で賑わっている。小さな屋台も出ており、何かイベントをやっているのかもしれない。カメラを下げている人もチラホラ見かけるので、公園自体がフォトスポットになっているようだ。
「オレもあなたの写真、撮ってみて良いですか?」
「君が撮ってくれるなら、被写体になるのも悪くないかな」
オレも高解像度の敬久さんの画像データが欲しかったので、頼んでみることした。彼は嬉しそうな顔でカメラをオレに渡してくる。
「じゃあ、シャッタースピードとかの設定は今のままで大丈夫だから、このボタンを……」
オレがカメラを持つと、顔を近づけて機能の説明をしてくれた。
――顔が近い……外だから恥ずかしいけれど、教えてくれている時の顔がかっこいいな
見つめていると、ときめきで胸が苦しくなってきたので説明に集中した。
「なるほど……細かい設定が、こんなにあるんですね」
「僕も全部把握しているわけじゃないけれど、自分で調整できるのは面白いよね」
敬久さんはこういったものがけっこう好きなようで、楽しそうだった。
――キャンプ道具についても、面白い使い方がないかをよく調べているし、本当、好奇心が旺盛な人だ
そういう所が素敵だなと内心ニヤついてしまう。顔に出さないように何とか真面目な顔で説明を聞き終わった。
「じゃあ、撮ってみますね。そこの池を背景にして……」
はにかむ敬久さんをパシャパシャと何枚も撮り、液晶画面に彼のデータが蓄積されていく。
――携帯電話のカメラ機能も手軽で良かったけれど、こういうのも良いな。データをもらったらデジタルフォトフレームに入れよう
「遥君、僕はもう良いから……」
撮られてばかりで気まずくなったようで、敬久さんがレンズから目を離した。
「あっちの芝生、行ってみようよ。ゆっくりできるし、噴水も見れるよ」
「良いですね。行きましょうか」
オレはカメラを敬久さんに渡し、芝生の方まで二人して歩いて行った。
芝生は池の周囲にあり、寝転んで寛ぐ人や走り回る子どもがいて穏やかな雰囲気だ。敬久さんがバッグからレジャーシートを取り出し、芝生に敷いた。
「座ってよ。遥君」
「はい、ありがとうございます」
オレがレジャーシートに腰を下ろすと、敬久さんはすぐ隣に座った。
「……敬久さん、少々、近いかなと、思うんですが」
レジャーシート自体はこじんまりしていたけれど、けして狭いわけではなかった。それなのに、敬久さんはかなり距離を詰めてきている気がする。
「そうかなあ。周りの寛いでいる人達も、このぐらいの距離じゃないかな?」
「……そう、ですかね」
「うん、そうだよ」
敬久さんはニコニコとした笑顔で言い切り、バッグから持ち運びできるタイプのタンブラーを二つ取り出し、片方を渡してくれた。
「コーヒー淹れて来たんだ。噴水でも見ながら飲もうよ」
「わあ、ありがとうございます」
――写真を撮るだけだと思っていたのに……これはデートだな……日曜の朝からこんな風に公園デートをするとは、思っていなかった
嬉しさで頬が緩んでしまいそうになる。公園の噴水を見ながら、熱いコーヒーを飲み、隣には敬久さんがいる。彼は目が合うと微笑んでくれた。
――し、幸せだ……
穏やかな時間を二人で共有していることに、幸せを感じる。
「二人の写真をどこで撮ろうか、悩んでいるんだ」
「そうなんですか?」
敬久さんはバッグの中の三脚を触りながら言った。今の寛いでいる感じを撮るのかと思っていたけれど、芝生は三脚使用が禁止なのだそうだ。
「芝生に来たのは、ただ君と並んで座りたかっただけだよ」
「そう、ですか……」
「今日、君が帰るから、少しでも長く過ごしたいなって」
「昼までは、いますから……」
「うん……」
敬久さんは頬を赤らめて、コーヒーを啜った。
「……敬久さんって、照れている所、可愛いですよね」
「いや、可愛くはないでしょ。君の方が可愛いから……」
彼は赤い顔のまま、目を細めて言った。
「オレ、あなたの可愛い所も好きなんです……」
コーヒーをレジャーシートの上に置き、カメラを手に取ると彼を撮影した。
「こんな顔、撮らないでよ」
敬久さんはレンズの前に手をかざした。
「ふふっ……色々と撮ってみましょうよ。昼まで、まだまだ時間ありますし。オレもあなたのこと、このカメラで沢山撮ってみたいです」
「……やっぱり、君の方が可愛いよ」
彼はレンズの前にかざした手を伸ばしてきた。そしてシャッターを押すオレの指を撫でて「帰したくなくなるなあ」とボソッと呟いた。
「二年くらい前のデジタルカメラだけれど、十分キレイに撮れるね」
敬久さんは小さな三脚が入ったバッグを肩にかけて、先程からオレにレンズを向けてくる。
「いや……オレばかり撮られましても……」
並んで歩きながらパシャパシャと撮られるので、照れてしまう。昨日ケーキを食べている敬久さんを撮り続けた手前、あまり強くは言えない。
「ははっ、ごめんね。設定とか色々試したかったんだ。君の写真も沢山撮れるし、良いかなって」
敬久さんは弾んだ声で言った。
「……もう」
赤面しているのがバレないように。顔をそらし周囲を見渡した。日曜日の公園は多くの人で賑わっている。小さな屋台も出ており、何かイベントをやっているのかもしれない。カメラを下げている人もチラホラ見かけるので、公園自体がフォトスポットになっているようだ。
「オレもあなたの写真、撮ってみて良いですか?」
「君が撮ってくれるなら、被写体になるのも悪くないかな」
オレも高解像度の敬久さんの画像データが欲しかったので、頼んでみることした。彼は嬉しそうな顔でカメラをオレに渡してくる。
「じゃあ、シャッタースピードとかの設定は今のままで大丈夫だから、このボタンを……」
オレがカメラを持つと、顔を近づけて機能の説明をしてくれた。
――顔が近い……外だから恥ずかしいけれど、教えてくれている時の顔がかっこいいな
見つめていると、ときめきで胸が苦しくなってきたので説明に集中した。
「なるほど……細かい設定が、こんなにあるんですね」
「僕も全部把握しているわけじゃないけれど、自分で調整できるのは面白いよね」
敬久さんはこういったものがけっこう好きなようで、楽しそうだった。
――キャンプ道具についても、面白い使い方がないかをよく調べているし、本当、好奇心が旺盛な人だ
そういう所が素敵だなと内心ニヤついてしまう。顔に出さないように何とか真面目な顔で説明を聞き終わった。
「じゃあ、撮ってみますね。そこの池を背景にして……」
はにかむ敬久さんをパシャパシャと何枚も撮り、液晶画面に彼のデータが蓄積されていく。
――携帯電話のカメラ機能も手軽で良かったけれど、こういうのも良いな。データをもらったらデジタルフォトフレームに入れよう
「遥君、僕はもう良いから……」
撮られてばかりで気まずくなったようで、敬久さんがレンズから目を離した。
「あっちの芝生、行ってみようよ。ゆっくりできるし、噴水も見れるよ」
「良いですね。行きましょうか」
オレはカメラを敬久さんに渡し、芝生の方まで二人して歩いて行った。
芝生は池の周囲にあり、寝転んで寛ぐ人や走り回る子どもがいて穏やかな雰囲気だ。敬久さんがバッグからレジャーシートを取り出し、芝生に敷いた。
「座ってよ。遥君」
「はい、ありがとうございます」
オレがレジャーシートに腰を下ろすと、敬久さんはすぐ隣に座った。
「……敬久さん、少々、近いかなと、思うんですが」
レジャーシート自体はこじんまりしていたけれど、けして狭いわけではなかった。それなのに、敬久さんはかなり距離を詰めてきている気がする。
「そうかなあ。周りの寛いでいる人達も、このぐらいの距離じゃないかな?」
「……そう、ですかね」
「うん、そうだよ」
敬久さんはニコニコとした笑顔で言い切り、バッグから持ち運びできるタイプのタンブラーを二つ取り出し、片方を渡してくれた。
「コーヒー淹れて来たんだ。噴水でも見ながら飲もうよ」
「わあ、ありがとうございます」
――写真を撮るだけだと思っていたのに……これはデートだな……日曜の朝からこんな風に公園デートをするとは、思っていなかった
嬉しさで頬が緩んでしまいそうになる。公園の噴水を見ながら、熱いコーヒーを飲み、隣には敬久さんがいる。彼は目が合うと微笑んでくれた。
――し、幸せだ……
穏やかな時間を二人で共有していることに、幸せを感じる。
「二人の写真をどこで撮ろうか、悩んでいるんだ」
「そうなんですか?」
敬久さんはバッグの中の三脚を触りながら言った。今の寛いでいる感じを撮るのかと思っていたけれど、芝生は三脚使用が禁止なのだそうだ。
「芝生に来たのは、ただ君と並んで座りたかっただけだよ」
「そう、ですか……」
「今日、君が帰るから、少しでも長く過ごしたいなって」
「昼までは、いますから……」
「うん……」
敬久さんは頬を赤らめて、コーヒーを啜った。
「……敬久さんって、照れている所、可愛いですよね」
「いや、可愛くはないでしょ。君の方が可愛いから……」
彼は赤い顔のまま、目を細めて言った。
「オレ、あなたの可愛い所も好きなんです……」
コーヒーをレジャーシートの上に置き、カメラを手に取ると彼を撮影した。
「こんな顔、撮らないでよ」
敬久さんはレンズの前に手をかざした。
「ふふっ……色々と撮ってみましょうよ。昼まで、まだまだ時間ありますし。オレもあなたのこと、このカメラで沢山撮ってみたいです」
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