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水音と吐息を重ねて(此木視点)
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「はぁ……もう深夜なのに、盛り上がっちゃったね……」
ベッドの上でオレを抱きしめながら寝転び、敬久さんはすまなさそうに言った。オレは彼の体温を感じられるこの体勢に心地良くなっていた。
――初めて一緒にシャワーを浴びたのだけれども、お互いに堪らなくなって……色々としてしまったからな……
「僕も……毎回君にやらしいことがしたいわけじゃないから……これに懲りずに、今度は一緒にお風呂に入ってくれたら、嬉しいな……」
オレは顔を上げて身をよじり、彼の腕から抜け出ると唇にそっとキスをした。
「いや……一緒にシャワー浴びたいって誘ったのオレですから。敬久さんが謝る必要は全くないですよ」
「遥君は優しいなあ……」
そう言うと愛しそうに頬を撫でてくれた。
「……それにオレ、二人きりの時になら、あなたに色々されるの、何も問題ないですから」
「はぁ……」
「あっ、でも、オレ、すぐいっぱいいっぱいになるから……手加減しながらでお願いしますね……?」
「遥君はさぁ……」
敬久さんは頬を撫でる手を止め、ため息を吐いた。そして目を細め、オレの頬に指をツンと当てる。
「……前も言ったけれど、僕に何でも許したらダメだからね?」
「どうしてですか? オレはあなたになら、全部……」
「はぁ……僕は君のこと、大事にしたいんだよ……」
「オレは……あなたに、大事にされている自覚はありますよ」
「もう……」
頬肉に指の腹をグイグイと押し当ててくる。
「あんまり、困らせないでよ。最近、君が積極的で……本当、困っているんだから……」
「え、そ、そんなにですか……!?」
それほど困らせていたとは、思ってもいなかった。敬久さんと恋人になれたことに浮かれて、自分の気持ちを押し付け過ぎていたのかもしれない。
「オレが、敬久さんに、自分の気持ちを押し付け過ぎていたんですね。そんなに、困らせていたとは……すみません」
これは反省しなければと思い、オレの頬肉を押す敬久さんの手を握った。
「……いや、違うんだ。今日は君に謝らせてばかりだなあ……僕は本当、言葉が足りなくて……ごめんよ」
敬久さんはオレの握った手をスッと離して、またオレを抱きしめてくれた。
「……僕はいつも、言葉が足らないんだ。ごめんね。僕は人と向き合うのが下手だな……」
いつもより低い声でそう言われた。落ち込んでいるのかもしれない。それなのに、オレはなぜか嬉しいと感じてしまった。
――敬久さんが、自分の弱い所を見せてくれるようになったのは、信頼されているからだろうか。彼はこんな風に落ち込んでいるのに、嬉しいと感じてしまうオレは……嫌な奴だな……
少しだけ自分の考えに嫌悪感を抱き、それをかき消すように彼を抱きしめ返した。
「敬久さんこそ……謝らないでくださいよ。あなたは、いつもオレに、ちゃんと向き合ってくれています。今だって、ちゃんと言葉にしてオレに伝えてくれているじゃないですか……」
「遥君……」
ギュッと抱きしめると、彼の心音が早くなった。
「……いや、待ってください。そもそも、オレは編集なのに……しかも敬久さんの担当なのに……執筆者の気持ちを汲み取れないなんて……向き合うのが下手なのはオレの方なのでは……これは、やっぱり、オレが、あなたを困らせているんじゃないですか……?」
――出会ってから、そこそこの年月が経ち、気心が知れた間柄だったからこそ、奢りがあったのかもしれない……
「……ふっ」
真剣な顔で敬久さんを見つめると、彼は吹き出した。
「ははっ……僕、けっこう、しんみりした気持ちだったんだけれど……やっぱり、君が側にいると……僕を明るい方向に引っ張ってくれるなあ……」
「あの……」
「こんな風にベッドで抱き合いながら、仕事の話しないでくださいよ。此木さん……」
「……ん」
彼は照れたように笑うと、オレにキスをした。
「……ぅんっ」
そのまま舌を這わせたり、唇を吸うようにキスをしてくるので焦ってしまう。
――これは口を開けたら舌が入ってきそうだ……さっき、あんなにしたのに……いや、オレは全然良いけれど……もうこんな時間だし……敬久さんの健康に支障があったらダメだ!
「……はぁっ……も、そんなにしたら……眠れなくなりますよっ」
オレはグイッと彼の顔を押しのけながら言った。
「だよねえ。こういう所に困っているんだ……」
そう言って熱い息を吐いた。
「僕が困っているのは……週末が終わると、君を帰したくなくなるというか、閉じ込めたいというか…………いや、とにかく、そういう気持ちになってしまうから、困るんだ」
オレに対する思いを近距離で囁かれると、どこを見て良いのか分からなくなり目が泳いでしまう。
「だから、あんまり可愛いこと言ったりされたりすると、困ってしまうんだ」
「気をつけます……」
「遥君は気をつけなくて良いよ。寧ろ、僕が甘え過ぎていたら、さっきみたいに叱って欲しいな……」
「わ、分かりました」
――オレは彼になら、割と何をされても良いと思っている所があるから……ちゃんと状況を見極めていかないとな……
オレが真面目な顔で頷いたからか、敬久さんは頬肉をまた指でグイグイと押してきた。それから「頼みますよ。此木さん」と言って困り顔で笑った。
ベッドの上でオレを抱きしめながら寝転び、敬久さんはすまなさそうに言った。オレは彼の体温を感じられるこの体勢に心地良くなっていた。
――初めて一緒にシャワーを浴びたのだけれども、お互いに堪らなくなって……色々としてしまったからな……
「僕も……毎回君にやらしいことがしたいわけじゃないから……これに懲りずに、今度は一緒にお風呂に入ってくれたら、嬉しいな……」
オレは顔を上げて身をよじり、彼の腕から抜け出ると唇にそっとキスをした。
「いや……一緒にシャワー浴びたいって誘ったのオレですから。敬久さんが謝る必要は全くないですよ」
「遥君は優しいなあ……」
そう言うと愛しそうに頬を撫でてくれた。
「……それにオレ、二人きりの時になら、あなたに色々されるの、何も問題ないですから」
「はぁ……」
「あっ、でも、オレ、すぐいっぱいいっぱいになるから……手加減しながらでお願いしますね……?」
「遥君はさぁ……」
敬久さんは頬を撫でる手を止め、ため息を吐いた。そして目を細め、オレの頬に指をツンと当てる。
「……前も言ったけれど、僕に何でも許したらダメだからね?」
「どうしてですか? オレはあなたになら、全部……」
「はぁ……僕は君のこと、大事にしたいんだよ……」
「オレは……あなたに、大事にされている自覚はありますよ」
「もう……」
頬肉に指の腹をグイグイと押し当ててくる。
「あんまり、困らせないでよ。最近、君が積極的で……本当、困っているんだから……」
「え、そ、そんなにですか……!?」
それほど困らせていたとは、思ってもいなかった。敬久さんと恋人になれたことに浮かれて、自分の気持ちを押し付け過ぎていたのかもしれない。
「オレが、敬久さんに、自分の気持ちを押し付け過ぎていたんですね。そんなに、困らせていたとは……すみません」
これは反省しなければと思い、オレの頬肉を押す敬久さんの手を握った。
「……いや、違うんだ。今日は君に謝らせてばかりだなあ……僕は本当、言葉が足りなくて……ごめんよ」
敬久さんはオレの握った手をスッと離して、またオレを抱きしめてくれた。
「……僕はいつも、言葉が足らないんだ。ごめんね。僕は人と向き合うのが下手だな……」
いつもより低い声でそう言われた。落ち込んでいるのかもしれない。それなのに、オレはなぜか嬉しいと感じてしまった。
――敬久さんが、自分の弱い所を見せてくれるようになったのは、信頼されているからだろうか。彼はこんな風に落ち込んでいるのに、嬉しいと感じてしまうオレは……嫌な奴だな……
少しだけ自分の考えに嫌悪感を抱き、それをかき消すように彼を抱きしめ返した。
「敬久さんこそ……謝らないでくださいよ。あなたは、いつもオレに、ちゃんと向き合ってくれています。今だって、ちゃんと言葉にしてオレに伝えてくれているじゃないですか……」
「遥君……」
ギュッと抱きしめると、彼の心音が早くなった。
「……いや、待ってください。そもそも、オレは編集なのに……しかも敬久さんの担当なのに……執筆者の気持ちを汲み取れないなんて……向き合うのが下手なのはオレの方なのでは……これは、やっぱり、オレが、あなたを困らせているんじゃないですか……?」
――出会ってから、そこそこの年月が経ち、気心が知れた間柄だったからこそ、奢りがあったのかもしれない……
「……ふっ」
真剣な顔で敬久さんを見つめると、彼は吹き出した。
「ははっ……僕、けっこう、しんみりした気持ちだったんだけれど……やっぱり、君が側にいると……僕を明るい方向に引っ張ってくれるなあ……」
「あの……」
「こんな風にベッドで抱き合いながら、仕事の話しないでくださいよ。此木さん……」
「……ん」
彼は照れたように笑うと、オレにキスをした。
「……ぅんっ」
そのまま舌を這わせたり、唇を吸うようにキスをしてくるので焦ってしまう。
――これは口を開けたら舌が入ってきそうだ……さっき、あんなにしたのに……いや、オレは全然良いけれど……もうこんな時間だし……敬久さんの健康に支障があったらダメだ!
「……はぁっ……も、そんなにしたら……眠れなくなりますよっ」
オレはグイッと彼の顔を押しのけながら言った。
「だよねえ。こういう所に困っているんだ……」
そう言って熱い息を吐いた。
「僕が困っているのは……週末が終わると、君を帰したくなくなるというか、閉じ込めたいというか…………いや、とにかく、そういう気持ちになってしまうから、困るんだ」
オレに対する思いを近距離で囁かれると、どこを見て良いのか分からなくなり目が泳いでしまう。
「だから、あんまり可愛いこと言ったりされたりすると、困ってしまうんだ」
「気をつけます……」
「遥君は気をつけなくて良いよ。寧ろ、僕が甘え過ぎていたら、さっきみたいに叱って欲しいな……」
「わ、分かりました」
――オレは彼になら、割と何をされても良いと思っている所があるから……ちゃんと状況を見極めていかないとな……
オレが真面目な顔で頷いたからか、敬久さんは頬肉をまた指でグイグイと押してきた。それから「頼みますよ。此木さん」と言って困り顔で笑った。
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