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触れたい想い・後編(柊山視点)
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キッチン前の食卓に座り、遥君が作った朝食を食べ始めた。トーストと目玉焼き、そしてローストビーフが入ったサラダに果物が添えられており、思わず感嘆のため息を漏らした。
「朝食も誕生日みたいで嬉しいなあ……」
トーストにバターを塗ったものを見つめながら呟いた。溶けかけたバターが輝いていて、特別な食べ物に見えてくる。
「昨日の残った食材を使っただけですよ……」
遥君は照れたように言い、サラダをモソモソと食べた。
「前も言ったけれど……君がいると、生活が豊かになるよ……」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると、とても嬉しいです。あっ、でも、普段の朝食はもっと簡単ですからね。敬久さんも知っていますよね」
遥君は僕の家に泊まると朝食を作ってくれる。その時も、朝から卵やベーコンを焼いたり、ヨーグルトを付けてくれたりと十分過ぎる程だった。
「あれが……簡単……? 僕からしたら、普段の朝食も、すごいと思っていたんだけれど……」
自分一人の場合は、朝食という概念からほど遠い時間帯に思い出したように食パンをかじったり、ゼリー飲料を啜ったりすることが多かった。
「僕だけだったら、まず作れないから……遥君はすごいよ」
「いや……オレも、一人の時はシリアルとかで済ませますから……」
「僕は、シリアルを買ったことがないなあ……」
「今度、敬久さんの家にもシリアル、置いておきますね……」
遥君は困ったように笑った。僕が食事に関して大雑把な所を、彼には心配され続けている。
「うん……いつも、僕の食生活を気にかけてくれて、ありがとう。僕も……ちゃんと食べてはいるからね……? 作ったりも、多少できるようになったし……」
これ以上食生活の話をすると、更に呆れられる気がしたのでトーストをシャクシャクと食べた。
「今日……そうだ、遥君、どこかに出かけたりするのかな。良かったら、送ろうか」
「もう……話をそらしましたね」
遥君がジトっとした目で見てくる。僕は目をそらして、トーストを咀嚼し続けた。
「……そう、ですね。今日は、特に用事はないです」
遥君は話題に乗ってくれた。内心呆れられているのかもしれないと思い、ドキドキしてしまう。
「水泳は?」
「ああ、最近、仕事が終わってから行くようになって……日曜は混んでますから」
遥君は水泳が趣味なので、たまに泳ぎに行っているようだった。
「仕事終わってからだと、泳ぐのキツかったりしないの?」
「多少キツいこともありますが、仕事終わりに泳ぐと気分がスッキリするんですよ。頻繁には行けないですけれど」
「そうなんだ。遥君は体力があるなあ……」
僕は関心したように頷いて、トーストを食べ終えた。
「敬久さんは、今日は昼頃までいてくれるんですよね……?」
「うん……」
今日は遥君の家に昼頃までいる予定だったけれど、何となく離れがたかった。彼の予定が空いていれば、午後もどこかに誘おうかなと考えていた。
――ずるずると彼の家に居座るのは、申し訳ないしな……午後もデートをすれば、遥君ともう少し一緒にいられる。僕の家に彼が来てくれる日も、このまま遥君を閉じ込めたらどうなるかな、なんて考えてしまうし……僕は本当、重たいな……
「……今日は、雨が降るみたいだよ」
「そうなんですね。じゃあ、オレ、洗濯は止めておこうかな……」
遥君は自分のトーストに手を伸ばしながら言った。
「それで、遥君、良かったらこの後もデートしない?」
自分でも何が「それで」なのかは、分からなかったが、何でもないようなフリをして遥君にデートを申し込んだ。
「……ぅえ? はい、よ、喜んで……」
遥君はトーストを齧りながら目をパチパチさせ、僕の下手くそな誘いをOKしてくれた。
「朝食も誕生日みたいで嬉しいなあ……」
トーストにバターを塗ったものを見つめながら呟いた。溶けかけたバターが輝いていて、特別な食べ物に見えてくる。
「昨日の残った食材を使っただけですよ……」
遥君は照れたように言い、サラダをモソモソと食べた。
「前も言ったけれど……君がいると、生活が豊かになるよ……」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると、とても嬉しいです。あっ、でも、普段の朝食はもっと簡単ですからね。敬久さんも知っていますよね」
遥君は僕の家に泊まると朝食を作ってくれる。その時も、朝から卵やベーコンを焼いたり、ヨーグルトを付けてくれたりと十分過ぎる程だった。
「あれが……簡単……? 僕からしたら、普段の朝食も、すごいと思っていたんだけれど……」
自分一人の場合は、朝食という概念からほど遠い時間帯に思い出したように食パンをかじったり、ゼリー飲料を啜ったりすることが多かった。
「僕だけだったら、まず作れないから……遥君はすごいよ」
「いや……オレも、一人の時はシリアルとかで済ませますから……」
「僕は、シリアルを買ったことがないなあ……」
「今度、敬久さんの家にもシリアル、置いておきますね……」
遥君は困ったように笑った。僕が食事に関して大雑把な所を、彼には心配され続けている。
「うん……いつも、僕の食生活を気にかけてくれて、ありがとう。僕も……ちゃんと食べてはいるからね……? 作ったりも、多少できるようになったし……」
これ以上食生活の話をすると、更に呆れられる気がしたのでトーストをシャクシャクと食べた。
「今日……そうだ、遥君、どこかに出かけたりするのかな。良かったら、送ろうか」
「もう……話をそらしましたね」
遥君がジトっとした目で見てくる。僕は目をそらして、トーストを咀嚼し続けた。
「……そう、ですね。今日は、特に用事はないです」
遥君は話題に乗ってくれた。内心呆れられているのかもしれないと思い、ドキドキしてしまう。
「水泳は?」
「ああ、最近、仕事が終わってから行くようになって……日曜は混んでますから」
遥君は水泳が趣味なので、たまに泳ぎに行っているようだった。
「仕事終わってからだと、泳ぐのキツかったりしないの?」
「多少キツいこともありますが、仕事終わりに泳ぐと気分がスッキリするんですよ。頻繁には行けないですけれど」
「そうなんだ。遥君は体力があるなあ……」
僕は関心したように頷いて、トーストを食べ終えた。
「敬久さんは、今日は昼頃までいてくれるんですよね……?」
「うん……」
今日は遥君の家に昼頃までいる予定だったけれど、何となく離れがたかった。彼の予定が空いていれば、午後もどこかに誘おうかなと考えていた。
――ずるずると彼の家に居座るのは、申し訳ないしな……午後もデートをすれば、遥君ともう少し一緒にいられる。僕の家に彼が来てくれる日も、このまま遥君を閉じ込めたらどうなるかな、なんて考えてしまうし……僕は本当、重たいな……
「……今日は、雨が降るみたいだよ」
「そうなんですね。じゃあ、オレ、洗濯は止めておこうかな……」
遥君は自分のトーストに手を伸ばしながら言った。
「それで、遥君、良かったらこの後もデートしない?」
自分でも何が「それで」なのかは、分からなかったが、何でもないようなフリをして遥君にデートを申し込んだ。
「……ぅえ? はい、よ、喜んで……」
遥君はトーストを齧りながら目をパチパチさせ、僕の下手くそな誘いをOKしてくれた。
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