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二人しか知らない秘密・中編(此木視点)
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Tシャツとスウェット、フードの付いた上着に着替えてリビングに行くと、敬久さんが掃除機をかけていた。彼も部屋着に着替えており、オレを見ると微笑んでくれた。
「掃除、手伝いますよ」
「大丈夫、軽く掃除機かけているだけだから。もう少ししたら終わるから、座って待っててよ」
「はい……」
彼の穏やかな顔を見ていると、自分の煩悩を思い出して申し訳なくなった。オレがソファに座ると敬久さんは掃除機をかけながら廊下に出て行った。一通り掃除機をかけて回っているようだ。
「ふぅ……」
テレビは点いたままになっていたので、昼過ぎの旅番組のようなものをぼんやりと観ることにした。頭にはあまり入っては来なかったけれど、京都の特集だったのでいつかの出張を思い出した。
――旅行も、いつか二人で行ってみたいな。京都とかじゃなくても、手軽な近場に一泊二日くらいで
先のことを考えると頬が緩んでいくのを感じた。またニヤついた顔をしている気がする。
――恋人と旅行か……そんなことはしたことがないから、何もかも未知数だな……
これまでの経験で旅行といえば、家族旅行か大学の卒業旅行くらいしか思い出がない。自分の趣味がアウトドアではないからかもしれない。
――敬久さんはアウトドアな趣味が多いよな。キャンプとかドライブとか……あと、フットサルもか……いや、あれは付き合いで好きではないんだったかな?
知人からのフットサルの誘いをいつも断っていると聞いたことがある。ただ、たまにタブレット端末でサッカーの試合を観ているので、観戦するのは好きなのだろう。
――オレ達、特に趣味は合わないからなあ
オレは水泳をしたり、本屋を見に行くのが好きだけれど、敬久さんの趣味の範囲と被ってはいない。オレの水泳はストレス発散も兼ねているので、一緒に楽しめるようなアクティビティに昇華できる気がしないし、本屋に敬久さんと行くと大体別行動になる。そもそも本屋に行く理由の半分は仕事だ。
――オレも敬久さんみたいに、二人で楽しめる趣味があったら良いのにな
そんな風なことを考えながら、ポケットに入れていた携帯電話を取り出し旅行について検索をした。検索すればする程、二人で旅行する夢が広がっていった。
「お待たせ、遥君」
一人でニヤついていると、敬久さんがリビングに入って来た。オレは慌てて表情を引き締め、携帯電話を机に置いた。
「敬久さん、お帰りなさい」
「うん、ただいま。はぁ……喉乾いちゃったなあ。空気がちょっと乾燥しているよね……」
彼はそう言いながらキッチンに入って行った。
「遥君はお茶とコーヒー、どっちが良い?」
「ありがとうございます。お茶をお願いします」
「僕もお茶にしようかな……」
敬久さんはキッチンでお茶を淹れはじめた。後ろ姿がこちらから見えるので、つい凝視してしまう。カメラ機能で撮影しようかと携帯電話に手を伸ばした。
――敬久さんの後ろ姿良いな……オレにお茶を淹れてくれているのも嬉しい……
撮影の許可を取るため声をかけようとして、ハッと気づいて手を止めた。
――許可を取れば、敬久さんのこの自然な後ろ姿が失われる気がする。やはり、目と心にこの瞬間を刻みつけておこう……
オレが一人で葛藤しながら、後ろ姿に熱い視線を送っていると、敬久さんが右肩をポリポリと掻いた。
――乾燥していると言っていたから、肌が痒いのかな。加湿器、後でスイッチを入れて……あ、いや、待てよ……右肩は……
心と目に焼きつけるつもりだったのに、狼狽えて目をそらしてしまった。右肩は昨日、オレが噛みついた場所だ。
「掃除、手伝いますよ」
「大丈夫、軽く掃除機かけているだけだから。もう少ししたら終わるから、座って待っててよ」
「はい……」
彼の穏やかな顔を見ていると、自分の煩悩を思い出して申し訳なくなった。オレがソファに座ると敬久さんは掃除機をかけながら廊下に出て行った。一通り掃除機をかけて回っているようだ。
「ふぅ……」
テレビは点いたままになっていたので、昼過ぎの旅番組のようなものをぼんやりと観ることにした。頭にはあまり入っては来なかったけれど、京都の特集だったのでいつかの出張を思い出した。
――旅行も、いつか二人で行ってみたいな。京都とかじゃなくても、手軽な近場に一泊二日くらいで
先のことを考えると頬が緩んでいくのを感じた。またニヤついた顔をしている気がする。
――恋人と旅行か……そんなことはしたことがないから、何もかも未知数だな……
これまでの経験で旅行といえば、家族旅行か大学の卒業旅行くらいしか思い出がない。自分の趣味がアウトドアではないからかもしれない。
――敬久さんはアウトドアな趣味が多いよな。キャンプとかドライブとか……あと、フットサルもか……いや、あれは付き合いで好きではないんだったかな?
知人からのフットサルの誘いをいつも断っていると聞いたことがある。ただ、たまにタブレット端末でサッカーの試合を観ているので、観戦するのは好きなのだろう。
――オレ達、特に趣味は合わないからなあ
オレは水泳をしたり、本屋を見に行くのが好きだけれど、敬久さんの趣味の範囲と被ってはいない。オレの水泳はストレス発散も兼ねているので、一緒に楽しめるようなアクティビティに昇華できる気がしないし、本屋に敬久さんと行くと大体別行動になる。そもそも本屋に行く理由の半分は仕事だ。
――オレも敬久さんみたいに、二人で楽しめる趣味があったら良いのにな
そんな風なことを考えながら、ポケットに入れていた携帯電話を取り出し旅行について検索をした。検索すればする程、二人で旅行する夢が広がっていった。
「お待たせ、遥君」
一人でニヤついていると、敬久さんがリビングに入って来た。オレは慌てて表情を引き締め、携帯電話を机に置いた。
「敬久さん、お帰りなさい」
「うん、ただいま。はぁ……喉乾いちゃったなあ。空気がちょっと乾燥しているよね……」
彼はそう言いながらキッチンに入って行った。
「遥君はお茶とコーヒー、どっちが良い?」
「ありがとうございます。お茶をお願いします」
「僕もお茶にしようかな……」
敬久さんはキッチンでお茶を淹れはじめた。後ろ姿がこちらから見えるので、つい凝視してしまう。カメラ機能で撮影しようかと携帯電話に手を伸ばした。
――敬久さんの後ろ姿良いな……オレにお茶を淹れてくれているのも嬉しい……
撮影の許可を取るため声をかけようとして、ハッと気づいて手を止めた。
――許可を取れば、敬久さんのこの自然な後ろ姿が失われる気がする。やはり、目と心にこの瞬間を刻みつけておこう……
オレが一人で葛藤しながら、後ろ姿に熱い視線を送っていると、敬久さんが右肩をポリポリと掻いた。
――乾燥していると言っていたから、肌が痒いのかな。加湿器、後でスイッチを入れて……あ、いや、待てよ……右肩は……
心と目に焼きつけるつもりだったのに、狼狽えて目をそらしてしまった。右肩は昨日、オレが噛みついた場所だ。
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