【完結/R18】恋人として君と過ごす日々

テルマ江

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君との温かい食卓・前編(柊山視点)

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 十二月は印刷所や出版社が年末年始を迎えるので、僕は〆切に追われていた。遥君も同僚がインフルエンザでダウンし、部署内で仕事を分担しては慌ただしくしているとのことだった。メッセージアプリのやりとりはあったけれど、もう三週間は顔を見ていない。せめてクリスマスは顔を見たいとお互いに思っていたので、何とか予定を合わせてイブの夜に遥君が僕の家に来てくれることになった。

 僕が彼の家に行くと言うと、十二月は人も交通量も多いからダメだと念を押すように言われた。相変わらず僕のことばかり優先してくれるので、気遣いに感謝しながらも無理をさせてはいないかと心配になる。

『お疲れ様です。本日は二十一時を過ぎそうなので、食事や寝る準備を済ませておいてください。しばらく会っていなかったので体調を崩していないか心配です。久しぶりに会えるのを楽しみにしています』

 夕方に彼から携帯電話のメッセージが届いていた。彼の業務連絡のような堅苦しい文章は見る度に楽しい気持ちになる。もうすぐ仕事納めなのに平日はずっとバタバタとしているようだ。

 僕の方はといえば、今日は朝から夜まで執筆をしており食事をまともに摂っていなかった。慌てて遥君が冷凍庫に入れてくれている冷凍食品のパスタを食べて、イブらしくないなあと苦笑した。

――それにしてもクリスマスイブなのに、家で良かったのだろうか

 僕は食事も寝る準備も済ませたので、ソファに座って彼を待つことにした。彼を出迎える時に寝間着なのも何だかなと思い、服装だけは外に出かけられる様なきちんとした格好になった。

 待つ間、テレビを何となく点けてはいたけれど、イルミネーションやクリスマスグルメといった特集ばかりだ。

――やっぱりどこかに泊まりに行ったり、食事に出かけたりしたかったな。でもクリスマスイブとはいえ、普通に平日で……お互い仕事もあるしなあ……

 遥君は何かイベントがある度に、僕の家で過ごしたいと言う。一緒に過ごせることが幸せだと毎回笑顔で言ってくれた。彼の笑顔を思い出すと愛しさで胸が苦しくなる。

――早く会いたいな。また僕の前で笑って欲しい

 以前海に行った時に彼に『愛してる』と伝えた。重たかったかなと言った後に不安になったけれど、彼は涙をポロリと流した後に盛大に照れながらも笑ってくれた。

――遥君の笑顔は可愛いしキレイだ……あの笑顔を僕だけが独り占めしたい……僕の生活の中に彼がいない日々は、もう考えることが出来ない……

 聖なる夜に薄暗いことを考える自分に呆れて、机の上にある小さなクリスマスツリーを見た。卓上サイズのそれは真っ白でLEDがキラキラと光っていて可愛らしい。ショッピングモールで見かけて何となく手に取ったけれど、買って良かったなと思った。

――クリスマスツリーがあるだけでそれっぽくなるな

 彼が来たらホットワインを作って、会えなかった間のことを語り合いながら穏やかに過ごしたい。

――多少イチャイチャもしたいな……いや、僕は何を考えているんだ……遥君は明日も朝から仕事なのに……

 自分の欲望が頭の中に入り込んで来たので、慌てて考えを振り払った。

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