【完結/R18】恋人として君と過ごす日々

テルマ江

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君との温かい食卓・後編(柊山視点)

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 二十五日の朝は目が覚めると遥君が隣にいなかった。彼の職場までは僕の家から電車で一時間程かかるので、もう出かけたのかなと慌ててベッドから体を起こした。

 寝ぼけた頭でサイドボードの時計を見ると、まだ朝の六時過ぎだ。

――流石に早過ぎるから身支度をしているのかな? 僕も起こしてくれて良かったのに……

 昨日は遥君の胸に抱かれて眠った。それなのに彼がベッドから抜け出たことに気づけなかった。

――遥君、どうやって抜け出たんだろう

 首を傾げながら遥君が寝ていた辺りを見ると、枕が縦になっていた。枕を身代わりにして抜け出たのだろうか。真面目な顔をした遥君が慎重に枕と入れ替わる姿を想像し、ふふっと笑ってしまった。

――今度入れ替わる所を再現してもらおう

 僕が枕を元の位置に戻していると、寝室のドアが開いて遥君が入って来た。彼はストライプのワイシャツにスラックスを履いている。予想通り身支度を整えていたようだ。

「起こしちゃいましたか……? おはようございます」

 遥君は気まずそうに笑いながら声をかけてくれた。

「おはよう、ううん、さっき起きたんだ」

 僕は首を振って枕を撫でた。

「枕と入れ替わったの気づかなくて、朝から笑っちゃった。遥君は器用だね」
「どうすれば敬久さんが起きないか試行錯誤しました……」

 遥君は照れながら言った。僕は「今度どうやったか見せてね」と笑った。

「遥君、だいぶ早起きしたんだね」
「余裕を持っておこうと思って……」

 遥君は僕の側まで来るとベッドに腰かけた。

「僕は君が起きた時のアラームにも気づかなかったよ」
「ああ、オレ、アラームをバイブレーション機能だけにしていたので」
「そうなんだ。気を遣わせちゃったなあ……」

 僕が寝ていたので音を切っていたのだろう。何だか申し訳なくなってしまった。

「朝食は食べた?」
「いえ、まだです。七時くらいになったらあなたと食べようかなって。それまで敬久さんの寝顔を眺めようかと思っていたんですが……」

 そう言いながら手を伸ばして僕の髪を撫でた。

「ふふっ、寝癖がついてます。まだ寝ていても良かったのに」
「うん……」

 微笑む遥君は朝から清潔な色気を纏っている。僕が顔をジッと見つめると彼は首を傾げた。

「寝ます? 添い寝しますよ」
「……いや、君の服が皺になっちゃうし、大丈夫だよ」
「そうですか?」

 魅力的な提案だったけれど、出勤前の遥君に色々したくなってはいけないので堪えた。

「じゃあ朝ごはん早めに食べましょうか」
「うん、今日は僕が作るから。任せてよ」
「えっ」

 僕を撫でる手がピタリと止まった。

「い、良いんでしょうか……? 昨日はホットワインを作ってもらったのに……早速、そんなにしてもらって……またクリスマスプレゼントを貰ったような気分なんですけど……」

 遥君は頬を赤く染めた。昨日は『お腹が空いたら僕が何か作る』と彼に言ったので提案してみたのだけれど、こんな風に素直に喜んでもらえると嬉しくなる。

「簡単なものしか作れないけれど、頑張るよ」
「オ、オレも手伝いますから……!」

 遥君は顔を近づけるとチュッと音を立ててキスをしてくれた。

「……あなたとクリスマスを過ごせて、すごく幸せです」

 遥君は泣きそうな声でそう言った。僕とこういう風に過ごすことが、彼の中で当たり前になって欲しいなと願いながらまた唇をそっと重ねた。

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