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君との温かい食卓・後編(柊山視点)
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朝食は昨日の残りのチーズを使ったピザトーストにインスタントのカップスープを添え、ヨーグルトとコーヒーを出した。
ピザトースト以外は出来合いの物だけれど、僕にしては頑張ったメニューだ。目玉焼きなども付けたかったけれど、焦がさないで済むという保証がなかったので諦めた。
「美味しいです」
遥君は食卓の向かいの席に座り、嬉しそうに微笑んでピザトーストを食べている。僕はカップスープを飲みながら、彼の嬉しそうな顔は相変わらず可愛いなと見つめた。
「遥君に手伝ってもらったからね」
僕が普通に食パンを焼こうとしていると、遥君が具材をのせることを提案してくれたのだった。
「君と料理するのって楽しいから好きだな」
料理は相変わらず得意ではないけれど、回数をこなすことによってコツらしきものが何となく分かるようになった。食材を組み合わせることで味や食感が変化するのは作っていて楽しい。遥君と一緒だからか余計にそう感じる。
「……オレも好きです」
遥君はピザトーストを持ったままモゴモゴと言った。
「今の好きには料理だけじゃなくて、僕に対しての好きも含まれていたよね?」
「…………分かったなら……聞かないでくださいよ」
からかうように言うと、遥君は目を細めてピザトーストを齧った。
「ごめんごめん。君の表情がくるくる変わるの好きだから……見たくなってつい……あ、今の好きは恋人として好きって意味と……」
「……そんなに……からかわないでくださいよ……」
彼は赤い顔のままピザトーストを黙々と食べ終え、カップスープをこくこくと飲んだ。自分でもからかい過ぎたかなと反省した。
――僕はどうにも子どもっぽい所があるから、やり過ぎて呆れられないように気をつけないと
しばらく遥君の顔色を窺いながら、僕もピザトーストを食べた。自分で作ったとは思えないほど美味しかった。
「足りなかったらまだ焼くから言ってね」
「大丈夫です。お腹いっぱいというか……胸がいっぱいで……」
遥君はまた僕の方を見てくれたのでほっとした。
「今日は朝から良いスタートが切れたので、頑張れます……」
「そう、それは良かった」
僕はまた彼をからかいたくなったけれど何とか踏み止まった。
「そうだ、今日は駅まで見送りするからね」
「……あなたにそんなにしてもらえて、嬉しいです」
「本当は車で会社まで送りたいんだけど」
「……今は本当、交通量が多いからダメですよ」
そこだけはきっぱりと断わられた。出版社周辺はオフィス街なのもあり、繁忙期は交通量がどうしても多くなる。
「うん、分かったよ。遥君も気をつけてね。道路も電車も人が多いし……」
「ありがとうございます。敬久さんも風邪引かないでくださいね?」
心配そうな目で見つめられた。僕の生活は彼が側にいるようになってだいぶ改善された。けれど、まだまだ様々なことを疎かにして生きている。
「うん、温かくするし、食事も食べるし……夜は寝るよ……いや、最近は僕も割と……前よりはマシっていうか、ちゃんとしているからね……?」
最後の方は言い訳のようになってしまった。
「……遥君も外に出る時は暖かくして行ってね」
僕の生活習慣に関する話を続けると彼に呆れられそうな気がしたので、内心焦りながら話題を変えた。
「今日も寒いですからね」
「うん、遥君は薄着だから……君こそ風邪引かないでね」
室内は暖かいけれど、遥君はワイシャツ一枚なので寒そうにも見える。
「今日は上にジャケットか何か着るの?」
「はい、羽織る物をもう一枚着ます。その上から更にコートを着ていたら……ちょっと熱いんですけどね……こっちに丁度良いの置いていたかな……厚過ぎないくらいで……職場に着て行けるような……」
遥君は少し考える風にしながら「後で探して来ます」と言った。彼は体温が高いので悩ましいようだ。
「ああ、じゃあ、僕のカーディガンを貸すから、着て行ったら良いよ」
僕の家に三週間ぶりに来たので、彼の着替えの予備に丁度良い服が無いのかもしれない。コーヒーを啜りながら、何気なく言った。
「……え」
僕の言葉を聞いた遥君の動きがピタリと止まった。
「どうしたの?」
「……だって……ク、クリスマスに恋人の服を着て出勤だなんて……そんなことをオレがしても……良いんでしょうか? いや……でも、敬久さんの服を着て……出勤してみたいです。オレはどうすれば……」
遥君はしどろもどろになり、ブツブツと呟いた。それからハッと僕を見つめ、困惑と嬉しさが混じった表情になった。
――クリスマスに恋人の家に泊まったアピールみたいになってしまうのかな? でも、僕達服のサイズはほとんど一緒だから、言わなかったら分からないだろうし……良いんじゃないかな
何気なく言ったけれど、遥君が僕の服を着て仕事に行くというのは良いものだなと感じた。
「言わなかったら分からないし、良いと思うよ。それに……」
「それに……?」
「僕の服を着て仕事に行く遥君を見てみたいな……」
自分で言いながら照れてしまった。落ち着きを取り戻そうとコーヒーを啜った。
ピザトースト以外は出来合いの物だけれど、僕にしては頑張ったメニューだ。目玉焼きなども付けたかったけれど、焦がさないで済むという保証がなかったので諦めた。
「美味しいです」
遥君は食卓の向かいの席に座り、嬉しそうに微笑んでピザトーストを食べている。僕はカップスープを飲みながら、彼の嬉しそうな顔は相変わらず可愛いなと見つめた。
「遥君に手伝ってもらったからね」
僕が普通に食パンを焼こうとしていると、遥君が具材をのせることを提案してくれたのだった。
「君と料理するのって楽しいから好きだな」
料理は相変わらず得意ではないけれど、回数をこなすことによってコツらしきものが何となく分かるようになった。食材を組み合わせることで味や食感が変化するのは作っていて楽しい。遥君と一緒だからか余計にそう感じる。
「……オレも好きです」
遥君はピザトーストを持ったままモゴモゴと言った。
「今の好きには料理だけじゃなくて、僕に対しての好きも含まれていたよね?」
「…………分かったなら……聞かないでくださいよ」
からかうように言うと、遥君は目を細めてピザトーストを齧った。
「ごめんごめん。君の表情がくるくる変わるの好きだから……見たくなってつい……あ、今の好きは恋人として好きって意味と……」
「……そんなに……からかわないでくださいよ……」
彼は赤い顔のままピザトーストを黙々と食べ終え、カップスープをこくこくと飲んだ。自分でもからかい過ぎたかなと反省した。
――僕はどうにも子どもっぽい所があるから、やり過ぎて呆れられないように気をつけないと
しばらく遥君の顔色を窺いながら、僕もピザトーストを食べた。自分で作ったとは思えないほど美味しかった。
「足りなかったらまだ焼くから言ってね」
「大丈夫です。お腹いっぱいというか……胸がいっぱいで……」
遥君はまた僕の方を見てくれたのでほっとした。
「今日は朝から良いスタートが切れたので、頑張れます……」
「そう、それは良かった」
僕はまた彼をからかいたくなったけれど何とか踏み止まった。
「そうだ、今日は駅まで見送りするからね」
「……あなたにそんなにしてもらえて、嬉しいです」
「本当は車で会社まで送りたいんだけど」
「……今は本当、交通量が多いからダメですよ」
そこだけはきっぱりと断わられた。出版社周辺はオフィス街なのもあり、繁忙期は交通量がどうしても多くなる。
「うん、分かったよ。遥君も気をつけてね。道路も電車も人が多いし……」
「ありがとうございます。敬久さんも風邪引かないでくださいね?」
心配そうな目で見つめられた。僕の生活は彼が側にいるようになってだいぶ改善された。けれど、まだまだ様々なことを疎かにして生きている。
「うん、温かくするし、食事も食べるし……夜は寝るよ……いや、最近は僕も割と……前よりはマシっていうか、ちゃんとしているからね……?」
最後の方は言い訳のようになってしまった。
「……遥君も外に出る時は暖かくして行ってね」
僕の生活習慣に関する話を続けると彼に呆れられそうな気がしたので、内心焦りながら話題を変えた。
「今日も寒いですからね」
「うん、遥君は薄着だから……君こそ風邪引かないでね」
室内は暖かいけれど、遥君はワイシャツ一枚なので寒そうにも見える。
「今日は上にジャケットか何か着るの?」
「はい、羽織る物をもう一枚着ます。その上から更にコートを着ていたら……ちょっと熱いんですけどね……こっちに丁度良いの置いていたかな……厚過ぎないくらいで……職場に着て行けるような……」
遥君は少し考える風にしながら「後で探して来ます」と言った。彼は体温が高いので悩ましいようだ。
「ああ、じゃあ、僕のカーディガンを貸すから、着て行ったら良いよ」
僕の家に三週間ぶりに来たので、彼の着替えの予備に丁度良い服が無いのかもしれない。コーヒーを啜りながら、何気なく言った。
「……え」
僕の言葉を聞いた遥君の動きがピタリと止まった。
「どうしたの?」
「……だって……ク、クリスマスに恋人の服を着て出勤だなんて……そんなことをオレがしても……良いんでしょうか? いや……でも、敬久さんの服を着て……出勤してみたいです。オレはどうすれば……」
遥君はしどろもどろになり、ブツブツと呟いた。それからハッと僕を見つめ、困惑と嬉しさが混じった表情になった。
――クリスマスに恋人の家に泊まったアピールみたいになってしまうのかな? でも、僕達服のサイズはほとんど一緒だから、言わなかったら分からないだろうし……良いんじゃないかな
何気なく言ったけれど、遥君が僕の服を着て仕事に行くというのは良いものだなと感じた。
「言わなかったら分からないし、良いと思うよ。それに……」
「それに……?」
「僕の服を着て仕事に行く遥君を見てみたいな……」
自分で言いながら照れてしまった。落ち着きを取り戻そうとコーヒーを啜った。
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