【完結/R18/短編】恋人として君と続いていく日々

テルマ江

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「――ええ、最近は労働環境も色々言われますからね」

 懇親会会場は立食形式で中々に広い会場だった。流石に敬久さんとは会場では別行動となり、久しぶりに会った教授とその教授に連れられて来たキラキラした目をした学生達と談笑――とまではいかないが、中々シビアな話で盛り上がっていた。

(就職活動ってオレは思い出すだけで、胃が裏返るような気分がするのに、この学生達は今からそれを味わうのか……)

 エントリーシートやら履歴書やら、今はPCで作成するのかもしれないが事務作業だけでもけっこうな量になる上に、自分でスケジュール管理をして面接やら説明会に足を運ぶというのは学生には中々荷が重いことだと感じる。

(しかも断わられることもあるし、一次面接で通っても二次面接だ入社試験だのを今からこのキラキラした目の学生達が経験するのか……今のこの時間だけでも出来る限りの応援はしよう)

 この出版社希望の学生達の中には、もしかしたら将来一緒に働く人材がいるかもしれない。

(オレは入社した当初は営業にいて、最初から希望通りの部署に入れなかったこととか話した方が良いのだろうか? いや、ネガキャンになる可能性があるな……若い芽を摘みたくないから塩梅が難しい)

 学生達も遠慮がちに尋ねてくるが、けっこうしっかりとした下調べをしているようだった。オレが学生だった時はこんなにちゃんとしていただろうかと妙なノスタルジーを感じた。

(普段、大学生くらいの年代と話す機会が無いから新鮮に感じるな)

 オレは様子見しながらしばらくの間質問に答えていると教授が「此木君も色々な人と話して来るかい?」と言ってくれたので、質疑応答の時間は一段落した。学生達は会釈をして去って行き、教授とオレがその場に残された。

「今日は規模が普段より大き目ですから、色々な業種の人が来ているんですよ」

 オレが現役学生だった時から白髪が増えている以外あまり変わっていない教授はにこやかに言った。

「講堂ではなくて、ホテルの宴会場で開催するなんて珍しいですね」
「ええ、最近はずっとこういった催しは大学のホールを使っていたんですが、学生側から要望が積もりに積もっていたらしくて……」
「ああ、そういったことなのですか」

 オレの卒業した大学はまあまあ歴史があるせいか、ホールなどの建物はだいぶ年季が入っている。オレが在学していた頃から改修工事などが行われていないのならば、あのホールで華やかな懇親会などを行っても盛り上がりには欠けそうだ。

「学生の方はきっと喜んでいるんじゃないでしょうか。私も昔参加した懇親会は運良くホテルが会場で――今となっては良い思い出ですし」

 オレは敬久さんを思い浮かべながらそう言った。

「ありましたねえ。懐かしい。今日みたいに柊山君も来ていて此木君を紹介しましたね」

 教授は懐かしそうに言うと会場を見渡し、敬久さんが学生や年かさのスーツ姿の男性や女性達数人に囲まれている姿を見つけると「相変わらず柊山君はモテていますね」と楽しそうに言った。

「卒業生も普通に彼のファンみたいですね」
「柊山先生は顔出しもしていますし、社交的ですから」

 教授はうんうんと頷きながら「それに柊山君は格好良いですし」と言った。

(確かに敬久さんは格好良い。細身でスラッとしていて立ち振る舞いに余裕があるし、整っていて穏やかな顔立ちだけれど目は意外と鋭くてキリッとしていて、そこがギャップで……)

 危うく教授相手に惚気そうになり「担当編集としては喜ばしい限りです」と当たり障りのない返事をした。

「あの時に出会った二人が今は一緒に仕事をしているのは縁を感じますねえ」

 教授が何気なく言った言葉にオレは「全くです」と心の底から同意した。

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