色づく世界の端っこで

星夜るな

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第一章

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「それは、日伊野先輩が見たという声は、人前に立つと、どうしても出すことができないし、小さい声になってしまうしで、無理だと思います。では、今度こそ帰るので失礼しました。」
「あっ。星井くん。ちょっと待‥。」
日伊野先輩の声を聞きながら、軽音部のドアを開け、早歩きで出ていった。残された日伊野、夏海、香山、和中はどうしたものか。という表情で仲野は、やれやれという顔で見送ったのであった。が、当の本人は気づかなかった。次の日、(夏海くんにあっても話しかけられなかった。諦めてくれて良かったな。)と思っていた。さらに二日後いつものように、弁当を食べ、何をしょうかと考えていると、ふと、歌いたくなった。だから、音楽室に行こうと歩き出した。そして音楽室に入り、この前のように、歌った。(久しぶりに歌うとストレスが抜けていく気がするな。)といい気持ちに浸っていると、僕の周りから、ガタガタ、ドン、シャー、キィー、ゴンという音が聞こえた。すると、ガタガタと音がなった場所からは、夏海くんが、シャーと音がなった場所からは、仲野先生が。キィーというところからは和中先輩が。ドンというところからは香山先輩が。ゴンといいところからは、日伊野先輩が出てきた。しかし、(ゴン。という音はおかしくないか。ぶつけたんだろう。若干、日伊野先輩の顔の眉毛が歪んでるように見える。)
先輩たちには、僕が、無表情で固まっているように見えるだろう。沈黙の十秒。それを打ち破ったのは、仲野先生だった。
「驚かせてすみません。これには訳がありまして…。」
(いやいや、訳がありまして…。じゃないだろう。何で先生も隠れてるんだ。)
「実は、星井くんが、帰ったあと。星井くんの声を聴いてみようということになりましてそれでこの三日間隠れていたんですよ。日伊野くんが言っていたように、稀にない歌声でびっくりしていまして。これで、実感しましたね。君が必要だと。」
にこっと微笑んだ。(うん?にこじゃないだろう。)そう思っていると、和中先輩が、
「仲野先生の言うとおりやな。星井くんが人前で本領発揮できんくても、これからできるようになればいいんや。頑張ろうな。」
香山先輩は
「そうです。人には、できることとできないことがあるからそれをできるにしていけばいいんですよ。これからよろしくおねがいしますよ。」
「では、そういうことで決まりだね。」
「そうですね!佐久先輩やりましたね。」
と夏海くんとはしゃいでいる。どうしょうと思っていると、仲野先生が、
「では、私は、これで。入部届出しときますね。」
(入部届?!)
「あの。僕、入部届け書いてないんですけど。というか、承諾してませんが。」
というと、勝ち誇ったというより、黒い笑顔を見せた。
「もちろん。書いてますよ。今朝、プリントに不具合があったとして、名前書いたでしょう。それの下に入部届けを置いといたんですよ。」
と。
「それは、だめなんじゃないですか。」
「大丈夫ですよ。バレませんから。」
「そんなことじゃ。僕は。」
「星井くんが彼らを必要としていなくても、彼らは星井くんを必要としていますから。私も入れて、五対一でこっちが有利ですから。」
といった。(そんなことが…。)どうやら僕は軽音部入部決定のようです。…
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