GOD HAND

げろしゃぶ

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第一章・覚醒

第五話 ~Sea of blood~ ②

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「ぼくがやろう。武器を使う敵は久しぶりだしね」

 フワさんが一歩前に出て、剣を構える。あの構えは……確か八相の構え。

「かっこつけやがってよ……無様に殺してやるぜ!」

 タケミナが剣先をこちらに向けると、糸がついているかのように床に散らばった銃弾が周囲に浮かぶ。

「てめえだけじゃねえ。後ろのガキ共もだ!」

 剣を横薙ぎすると、周囲に浮かぶ銃弾が飛来してきた。しかしそれをフワさんが手に持つ剣で打ち落とす。

「これで終わりかな?」
「終わらねえに決まってんだろ!むしろ今ので死ななくてよかったぜ!」

 叫びながら向かってくるタケミナ。

「直にぶった斬らなきゃおさまんねえよ!この怒りはなあ!!」
「二人とも、もっと下がって」

 剣と剣がぶつかる。それと同時に、打ち落とした銃弾が再び浮かび上がった。

「タマが!」
「何かあると思ったけど……こういうことか」
「その何かでてめえは死ぬんだよ!」
「厄介だね。……ハアッ!」

 タケミナを弾き返し、距離を置いた。フワさんも何かしそうだ。

「チッ……食らえ!」

 タケミナがまるで指揮をするように剣を振る。すると浮いている銃弾がフワさんに向かって飛んでいく!三階でのことを思い出し、俺は思わず目を閉じてしまう。

 凄まじい金属音が事務所に鳴り響く。目を開けると、フワさんは無傷、逆に何発か弾き返したようで、タケミナは脚と肩から血を流している。

「あぶないあぶない。ここまで厄介なESP持ちだとは思わなかったけど、用意してきててよかった。これからは本気出すよ」

 フワさんの足元を見ると、剣が四本刺さっている。こんなものあったか?

宮本流剣術・五業剣みやもとりゅうけんじゅつ・ごぎょうけん、免許皆伝・不破九郎人。参る」

 目つきが変わり、声が重くなる。



 戦闘は屋外に移動し、二人の剣士が斬りあっている。しかし、タケミナは怪我をしているためか、フワさんのほうが優勢だ。

 独特な剣術だ。五本の剣を振り回し、投げ飛ばし、蹴り飛ばし、剣を持って飛び回る。背後から飛んでくる銃弾も見えてるかのように打ち落とす。

「ハアッ!クソッタレ!どうなってんだよその動きはよお!」
「見切られないことを目的とした技だよ」

 一際大きな金属音。空中で回転する三本の剣、そして両手に持った二本の剣でガードを崩した音だ。

 倒れ込むタケミナ、そして周りに突き刺さった三本の剣。

 勝負アリだ。事務所から出てきたヤクザ達も戦意を喪失しているみたいだ。


「きみのESP、変わってるね。もう勝てないってことは分かっただろうし、教えてくれないかな?」
「ハア?」
「教えてくれたら逃がしてあげるよ。上にも逃げられたって報告する。でも教えないなら、もっと酷いことが待ってる。どうする?」

 なんだそれ!?ここまでやっておいてコイツを逃がすのか!?

「嘘だろ。てめえ、オレ達より腐った目してやがる」
「心外だな」
「いいだろう、冥土の土産に教えてやらァ」

 ESPの説明を聞くと、磁力を操っていると思っていたがそうではなく、触れた鉄を自在に操作できるらしい。後でまとめておこう。

「ありがとう。きみの言う通り、ぼくは嘘をついた。きみを捕縛するよ」

 タケミナは頭に変なものを被せられ、大人しく捕まる。これで終わりなのか?隣ではハヅキが端末を取り出し、誰かと喋っている。

「任務完了。ターゲットは捕縛。ESP能力は説明を受け、実際に戦闘で使ったものと同じだと確認しました。ではこれから座標を送ります」

 言い終わるとハヅキはこっちを向いた。

「おいカイ、コイツが連行されたら帰るぞ。忘れ物はないか?小便チビっちまったか?」

 んなわけあるか!

「ところで連行ってよ、ここに警察でも来るのかよ?」
「NSFの本部がスイスにあるのは知ってるよな?そこにテレポートのESP能力を持ってる奴がいる。世界のどこかにあるらしい『新人類』専門のムショに、アホ共をテレポートしてもらうことを連行って呼んでるんだ」
「どこかってどこだよ」
「さあな、末端の俺には教えてもらえない重要機密だからな」

 話してる間に、タケミナがいないことに気付く。

「おい、ヤツがいない!」
「あ~、フワさん、送られましたか?」
「うん。任務完了。じゃあ帰るよ。乗って乗って。」

 ふと後ろを見ると、ヤクザ達がどこにもいない。

「彼らは事務所に戻ったよ。彼らのことが気になるかい?でもこの後のことはぼく達は関与できない。そういうルールだからね」

『任務中、私達は目的達成まではどの様な手段を用いても構わない。そして目的を達成したならばすぐに帰投し、その後の事は一切関与しない。いいな?』

 司令官さんの言葉が頭によぎる。それを了承して参加したんだ。守らないといけないな。

 大きな青い光が光った。それを背後に、俺達は血の海と化した戦場を後にする。

 こうして、俺のたった10分の初任務が終わった。



 数日後、新聞の地元欄に小さく『暴力団組員多数死亡、内輪揉めか?』と見出しがあった。俺達のことは一切書かれていない。

 社会の影で暗躍し、闇の正義を実行する。それはとても血なまぐさく、誰にも褒められることのない、汚い仕事だ。

 それでも、俺達はやらなければならない。普通の人間では対応できない『新人類』、人型の殺戮兵器を相手にできるのは、同じ『新人類』しかいないからだ。


To be continued…
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