6 / 8
第一章・覚醒
第五話 ~Sea of blood~ ②
しおりを挟む
「ぼくがやろう。武器を使う敵は久しぶりだしね」
フワさんが一歩前に出て、剣を構える。あの構えは……確か八相の構え。
「かっこつけやがってよ……無様に殺してやるぜ!」
タケミナが剣先をこちらに向けると、糸がついているかのように床に散らばった銃弾が周囲に浮かぶ。
「てめえだけじゃねえ。後ろのガキ共もだ!」
剣を横薙ぎすると、周囲に浮かぶ銃弾が飛来してきた。しかしそれをフワさんが手に持つ剣で打ち落とす。
「これで終わりかな?」
「終わらねえに決まってんだろ!むしろ今ので死ななくてよかったぜ!」
叫びながら向かってくるタケミナ。
「直にぶった斬らなきゃおさまんねえよ!この怒りはなあ!!」
「二人とも、もっと下がって」
剣と剣がぶつかる。それと同時に、打ち落とした銃弾が再び浮かび上がった。
「タマが!」
「何かあると思ったけど……こういうことか」
「その何かでてめえは死ぬんだよ!」
「厄介だね。……ハアッ!」
タケミナを弾き返し、距離を置いた。フワさんも何かしそうだ。
「チッ……食らえ!」
タケミナがまるで指揮をするように剣を振る。すると浮いている銃弾がフワさんに向かって飛んでいく!三階でのことを思い出し、俺は思わず目を閉じてしまう。
凄まじい金属音が事務所に鳴り響く。目を開けると、フワさんは無傷、逆に何発か弾き返したようで、タケミナは脚と肩から血を流している。
「あぶないあぶない。ここまで厄介なESP持ちだとは思わなかったけど、用意してきててよかった。これからは本気出すよ」
フワさんの足元を見ると、剣が四本刺さっている。こんなものあったか?
「宮本流剣術・五業剣、免許皆伝・不破九郎人。参る」
目つきが変わり、声が重くなる。
戦闘は屋外に移動し、二人の剣士が斬りあっている。しかし、タケミナは怪我をしているためか、フワさんのほうが優勢だ。
独特な剣術だ。五本の剣を振り回し、投げ飛ばし、蹴り飛ばし、剣を持って飛び回る。背後から飛んでくる銃弾も見えてるかのように打ち落とす。
「ハアッ!クソッタレ!どうなってんだよその動きはよお!」
「見切られないことを目的とした技だよ」
一際大きな金属音。空中で回転する三本の剣、そして両手に持った二本の剣でガードを崩した音だ。
倒れ込むタケミナ、そして周りに突き刺さった三本の剣。
勝負アリだ。事務所から出てきたヤクザ達も戦意を喪失しているみたいだ。
「きみのESP、変わってるね。もう勝てないってことは分かっただろうし、教えてくれないかな?」
「ハア?」
「教えてくれたら逃がしてあげるよ。上にも逃げられたって報告する。でも教えないなら、もっと酷いことが待ってる。どうする?」
なんだそれ!?ここまでやっておいてコイツを逃がすのか!?
「嘘だろ。てめえ、オレ達より腐った目してやがる」
「心外だな」
「いいだろう、冥土の土産に教えてやらァ」
ESPの説明を聞くと、磁力を操っていると思っていたがそうではなく、触れた鉄を自在に操作できるらしい。後でまとめておこう。
「ありがとう。きみの言う通り、ぼくは嘘をついた。きみを捕縛するよ」
タケミナは頭に変なものを被せられ、大人しく捕まる。これで終わりなのか?隣ではハヅキが端末を取り出し、誰かと喋っている。
「任務完了。ターゲットは捕縛。ESP能力は説明を受け、実際に戦闘で使ったものと同じだと確認しました。ではこれから座標を送ります」
言い終わるとハヅキはこっちを向いた。
「おいカイ、コイツが連行されたら帰るぞ。忘れ物はないか?小便チビっちまったか?」
んなわけあるか!
「ところで連行ってよ、ここに警察でも来るのかよ?」
「NSFの本部がスイスにあるのは知ってるよな?そこにテレポートのESP能力を持ってる奴がいる。世界のどこかにあるらしい『新人類』専門のムショに、アホ共をテレポートしてもらうことを連行って呼んでるんだ」
「どこかってどこだよ」
「さあな、末端の俺には教えてもらえない重要機密だからな」
話してる間に、タケミナがいないことに気付く。
「おい、ヤツがいない!」
「あ~、フワさん、送られましたか?」
「うん。任務完了。じゃあ帰るよ。乗って乗って。」
ふと後ろを見ると、ヤクザ達がどこにもいない。
「彼らは事務所に戻ったよ。彼らのことが気になるかい?でもこの後のことはぼく達は関与できない。そういうルールだからね」
『任務中、私達は目的達成まではどの様な手段を用いても構わない。そして目的を達成したならばすぐに帰投し、その後の事は一切関与しない。いいな?』
司令官さんの言葉が頭によぎる。それを了承して参加したんだ。守らないといけないな。
大きな青い光が光った。それを背後に、俺達は血の海と化した戦場を後にする。
こうして、俺のたった10分の初任務が終わった。
数日後、新聞の地元欄に小さく『暴力団組員多数死亡、内輪揉めか?』と見出しがあった。俺達のことは一切書かれていない。
社会の影で暗躍し、闇の正義を実行する。それはとても血なまぐさく、誰にも褒められることのない、汚い仕事だ。
それでも、俺達はやらなければならない。普通の人間では対応できない『新人類』、人型の殺戮兵器を相手にできるのは、同じ『新人類』しかいないからだ。
To be continued…
フワさんが一歩前に出て、剣を構える。あの構えは……確か八相の構え。
「かっこつけやがってよ……無様に殺してやるぜ!」
タケミナが剣先をこちらに向けると、糸がついているかのように床に散らばった銃弾が周囲に浮かぶ。
「てめえだけじゃねえ。後ろのガキ共もだ!」
剣を横薙ぎすると、周囲に浮かぶ銃弾が飛来してきた。しかしそれをフワさんが手に持つ剣で打ち落とす。
「これで終わりかな?」
「終わらねえに決まってんだろ!むしろ今ので死ななくてよかったぜ!」
叫びながら向かってくるタケミナ。
「直にぶった斬らなきゃおさまんねえよ!この怒りはなあ!!」
「二人とも、もっと下がって」
剣と剣がぶつかる。それと同時に、打ち落とした銃弾が再び浮かび上がった。
「タマが!」
「何かあると思ったけど……こういうことか」
「その何かでてめえは死ぬんだよ!」
「厄介だね。……ハアッ!」
タケミナを弾き返し、距離を置いた。フワさんも何かしそうだ。
「チッ……食らえ!」
タケミナがまるで指揮をするように剣を振る。すると浮いている銃弾がフワさんに向かって飛んでいく!三階でのことを思い出し、俺は思わず目を閉じてしまう。
凄まじい金属音が事務所に鳴り響く。目を開けると、フワさんは無傷、逆に何発か弾き返したようで、タケミナは脚と肩から血を流している。
「あぶないあぶない。ここまで厄介なESP持ちだとは思わなかったけど、用意してきててよかった。これからは本気出すよ」
フワさんの足元を見ると、剣が四本刺さっている。こんなものあったか?
「宮本流剣術・五業剣、免許皆伝・不破九郎人。参る」
目つきが変わり、声が重くなる。
戦闘は屋外に移動し、二人の剣士が斬りあっている。しかし、タケミナは怪我をしているためか、フワさんのほうが優勢だ。
独特な剣術だ。五本の剣を振り回し、投げ飛ばし、蹴り飛ばし、剣を持って飛び回る。背後から飛んでくる銃弾も見えてるかのように打ち落とす。
「ハアッ!クソッタレ!どうなってんだよその動きはよお!」
「見切られないことを目的とした技だよ」
一際大きな金属音。空中で回転する三本の剣、そして両手に持った二本の剣でガードを崩した音だ。
倒れ込むタケミナ、そして周りに突き刺さった三本の剣。
勝負アリだ。事務所から出てきたヤクザ達も戦意を喪失しているみたいだ。
「きみのESP、変わってるね。もう勝てないってことは分かっただろうし、教えてくれないかな?」
「ハア?」
「教えてくれたら逃がしてあげるよ。上にも逃げられたって報告する。でも教えないなら、もっと酷いことが待ってる。どうする?」
なんだそれ!?ここまでやっておいてコイツを逃がすのか!?
「嘘だろ。てめえ、オレ達より腐った目してやがる」
「心外だな」
「いいだろう、冥土の土産に教えてやらァ」
ESPの説明を聞くと、磁力を操っていると思っていたがそうではなく、触れた鉄を自在に操作できるらしい。後でまとめておこう。
「ありがとう。きみの言う通り、ぼくは嘘をついた。きみを捕縛するよ」
タケミナは頭に変なものを被せられ、大人しく捕まる。これで終わりなのか?隣ではハヅキが端末を取り出し、誰かと喋っている。
「任務完了。ターゲットは捕縛。ESP能力は説明を受け、実際に戦闘で使ったものと同じだと確認しました。ではこれから座標を送ります」
言い終わるとハヅキはこっちを向いた。
「おいカイ、コイツが連行されたら帰るぞ。忘れ物はないか?小便チビっちまったか?」
んなわけあるか!
「ところで連行ってよ、ここに警察でも来るのかよ?」
「NSFの本部がスイスにあるのは知ってるよな?そこにテレポートのESP能力を持ってる奴がいる。世界のどこかにあるらしい『新人類』専門のムショに、アホ共をテレポートしてもらうことを連行って呼んでるんだ」
「どこかってどこだよ」
「さあな、末端の俺には教えてもらえない重要機密だからな」
話してる間に、タケミナがいないことに気付く。
「おい、ヤツがいない!」
「あ~、フワさん、送られましたか?」
「うん。任務完了。じゃあ帰るよ。乗って乗って。」
ふと後ろを見ると、ヤクザ達がどこにもいない。
「彼らは事務所に戻ったよ。彼らのことが気になるかい?でもこの後のことはぼく達は関与できない。そういうルールだからね」
『任務中、私達は目的達成まではどの様な手段を用いても構わない。そして目的を達成したならばすぐに帰投し、その後の事は一切関与しない。いいな?』
司令官さんの言葉が頭によぎる。それを了承して参加したんだ。守らないといけないな。
大きな青い光が光った。それを背後に、俺達は血の海と化した戦場を後にする。
こうして、俺のたった10分の初任務が終わった。
数日後、新聞の地元欄に小さく『暴力団組員多数死亡、内輪揉めか?』と見出しがあった。俺達のことは一切書かれていない。
社会の影で暗躍し、闇の正義を実行する。それはとても血なまぐさく、誰にも褒められることのない、汚い仕事だ。
それでも、俺達はやらなければならない。普通の人間では対応できない『新人類』、人型の殺戮兵器を相手にできるのは、同じ『新人類』しかいないからだ。
To be continued…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる