7 / 8
第一章・覚醒
第六話 復讐の電光
しおりを挟む
『二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。 一人は泥を見た。一人は星を見た。』
--フレデリック・ラングブリッジ
23個。天井のシミの数。89歩。看守の足音。一体何回数えただろう。
男、31歳。ここに収監されてから10年。収監される前、男は引きこもりだった。
『お前、ビリビリするんだよ!だからあっちいけ!』
『てめえ、いっつもパリパリうるせえんだよ!』
今でも昔の夢を見る。
『おい!触るなよ!ゲームが壊れるだろ!』
『ちょっと!あんたが近づいてきたからケータイ壊れちゃったんだけど!弁償しろよ!』
男にとって、いつものことだった。周囲に迷惑をかける。だから嫌われる。そこにいるだけなのに。だから引きこもった。誰にも迷惑をかけないように。
何週間ぶりか、部屋から出てきた。自分の苦労を知っている親からは何も言われない。でもこのままでいいのか?そう思ってもいた。
「お母さん?いる?」
返事はなかった。
「お父さん?桜蘭?」
リビングに入ると、ちゃんと三人、ソファーに座ってテレビを見ている。返事を返さなかったのは、テレビの音で聞こえなかったからか、それともいよいよ愛想を尽かされたからかと男は思った。
よく見ると、三人から黒い煙が上がっている。
「父さん……?」
恐る恐る父の前に出て、顔を見た。すると、顔は焼け爛れていて、白目をむいていた。
「あああっ!と、父さ、う、おええエッ!」
父は死んでいた。焼死体とは違う、これは、電気でやられたものだ。
妹も、母も、同じだった。
「まだいたのか……オラ!」
台所から声が聞こえた。男は反射的に体の周囲に電気を放つ。うまく相殺できたようだ。
「ほう?電気か。ククッ、丁度良い。俺はもう行くぜ。あばよ!」
誰かが台所に居て、男に攻撃をしたことしか男には分からなかった。
親は死んでしまった。妹もだ。男は悲しみ、家族を失ったこと、守れなかったこと。それを後悔しながら泣いた。
男は思い出した。自身の刑期が終身刑であることを。家族を殺した誰かに復讐をすることなく、何も成せないまま死んでいく。
男は脱獄を決意した。
半年に一度の定期検診。男のESP能力を封じている脳波矯正装置。それがほんの一瞬外れる時がある。
脳波検査。矯正装置による弊害を調べるために、一瞬だけ上にズリ上げ、脳波測定装置を入れる。
その瞬間は、絶対に逃さない。
「では脳波検査をします。」
装置が上げられる。男は力の限り暴れた。看守の手から脳波矯正装置が落ちる。それを見て、男は周囲に電撃を放った。
成功した。死者は出ていない。全員ショックで気絶しただけだ。男は喜び、外に向かって走り出す。
非常ベルが刑務所中に鳴り響く。脱獄がバレた。だが男は止まるつもりはなかった。
「居たぞ!あそこだ!」
前に看守が数人現れる。それを電撃で倒す。
それの繰り返しだ。楽勝だ。
外に出た。
刑務所の中庭だ。しかしあまり広くなく、壁も近い。
男は必死に壁を登った。普通なら看守が飛んできてすぐに降ろされるが、男にはESP能力がある。誰も脱獄しようとする男に近づけなかった。
刑務所の外に出る。
男は脱獄に成功した。
男の名は城戸 丈。復讐の旅が始まる。
「待ってろよ、絶対に復讐してやる。」
キドは誰もいない夜の街を、電気を放ちながら歩く。
その姿は、暗闇に輝く星のようだった。
To be continued…
--フレデリック・ラングブリッジ
23個。天井のシミの数。89歩。看守の足音。一体何回数えただろう。
男、31歳。ここに収監されてから10年。収監される前、男は引きこもりだった。
『お前、ビリビリするんだよ!だからあっちいけ!』
『てめえ、いっつもパリパリうるせえんだよ!』
今でも昔の夢を見る。
『おい!触るなよ!ゲームが壊れるだろ!』
『ちょっと!あんたが近づいてきたからケータイ壊れちゃったんだけど!弁償しろよ!』
男にとって、いつものことだった。周囲に迷惑をかける。だから嫌われる。そこにいるだけなのに。だから引きこもった。誰にも迷惑をかけないように。
何週間ぶりか、部屋から出てきた。自分の苦労を知っている親からは何も言われない。でもこのままでいいのか?そう思ってもいた。
「お母さん?いる?」
返事はなかった。
「お父さん?桜蘭?」
リビングに入ると、ちゃんと三人、ソファーに座ってテレビを見ている。返事を返さなかったのは、テレビの音で聞こえなかったからか、それともいよいよ愛想を尽かされたからかと男は思った。
よく見ると、三人から黒い煙が上がっている。
「父さん……?」
恐る恐る父の前に出て、顔を見た。すると、顔は焼け爛れていて、白目をむいていた。
「あああっ!と、父さ、う、おええエッ!」
父は死んでいた。焼死体とは違う、これは、電気でやられたものだ。
妹も、母も、同じだった。
「まだいたのか……オラ!」
台所から声が聞こえた。男は反射的に体の周囲に電気を放つ。うまく相殺できたようだ。
「ほう?電気か。ククッ、丁度良い。俺はもう行くぜ。あばよ!」
誰かが台所に居て、男に攻撃をしたことしか男には分からなかった。
親は死んでしまった。妹もだ。男は悲しみ、家族を失ったこと、守れなかったこと。それを後悔しながら泣いた。
男は思い出した。自身の刑期が終身刑であることを。家族を殺した誰かに復讐をすることなく、何も成せないまま死んでいく。
男は脱獄を決意した。
半年に一度の定期検診。男のESP能力を封じている脳波矯正装置。それがほんの一瞬外れる時がある。
脳波検査。矯正装置による弊害を調べるために、一瞬だけ上にズリ上げ、脳波測定装置を入れる。
その瞬間は、絶対に逃さない。
「では脳波検査をします。」
装置が上げられる。男は力の限り暴れた。看守の手から脳波矯正装置が落ちる。それを見て、男は周囲に電撃を放った。
成功した。死者は出ていない。全員ショックで気絶しただけだ。男は喜び、外に向かって走り出す。
非常ベルが刑務所中に鳴り響く。脱獄がバレた。だが男は止まるつもりはなかった。
「居たぞ!あそこだ!」
前に看守が数人現れる。それを電撃で倒す。
それの繰り返しだ。楽勝だ。
外に出た。
刑務所の中庭だ。しかしあまり広くなく、壁も近い。
男は必死に壁を登った。普通なら看守が飛んできてすぐに降ろされるが、男にはESP能力がある。誰も脱獄しようとする男に近づけなかった。
刑務所の外に出る。
男は脱獄に成功した。
男の名は城戸 丈。復讐の旅が始まる。
「待ってろよ、絶対に復讐してやる。」
キドは誰もいない夜の街を、電気を放ちながら歩く。
その姿は、暗闇に輝く星のようだった。
To be continued…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる