自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!

荒星

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イザナギ学院一年生編

第37話 学園祭三日目。告白。

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 俺は今、名もなき地下墳墓に居た。

「ハァァァ!」

 俺はカースドミノタウロスを切り裂くと、背後から襲い掛かろうとするケルベロスを蹴り飛ばす。

 ――別段、主人公に取って変わろうと思ってたわけじゃない。

 蹴り飛ばしたケルベロスをカバーするように他のケルベロスが襲い掛かって来るが、ディメンジョンスラッシュで切り裂く。

 ――けど、間近で主人公補正てきなのを見るとさ。やっぱり主人公と俺みたいなモブとは違うなって思い知らされるよな。

「フッ!」

 そして、残り一体になったケルベロスが突撃してきたのを切り捨てる。

 ――モブでも良いさ。俺は強くなるだけだ、アイツらに降りかかる理不尽を打ち砕く為に。アイツらが死なないで済む未来を作るために。別段見返りが欲しくて助けるんじゃない、これは俺なりの恩返しなんだ。だから……。

「高望みしてんじゃねえよ、俺」

 俺は剣についた血を払うと、次の獲物へ向かった。




『学園祭三日目! 選抜戦Cブロック第準決勝、第一試合の選手たちの入場……だ……』

 俺はダンジョンから直行でこの特別競技場に来たせいで、血みどろのままだった。

『え、えーっと……そ、それでは選手紹介に移りたいと思いまーす……。鈴木選手、大丈夫ですか?』

 実況が心配そうな声で聞いてきたので、俺は大丈夫という意味を込めて手を振る。

『えー大丈夫そうですね。一回戦と二回戦で圧倒的な力を見せた、今や優勝候補筆頭! 何故か血まみれで現れた鈴木悠馬選手! 今回もその力を見せつけてくれるのでしょうか!』

 ――返り血なんでセーフ。いや、一部自分の血で汚れてる部分もあるけど……。

『続いてはこの人! C-2所属。剛力武君! 身長二メートル越えの巨漢にして、その巨体から繰り出される驚異的なパワーで対戦相手を粉砕してきたパワーファイター! その迫力満点の戦い方は必見です!』

「ウォー!!」

 紹介が終わると、剛力は雄たけびを上げた。

『それでは両選手、準備はよろしいでしょうか! 3,2,1! 試合開始!』

「お前、たまたま神からの加護を授かっただけで調子に乗ってるらしいな。生意気なんだよォ!」

 ――クソバカ力め!!

 その巨体に見合わず、俊敏な動作で襲い掛かってきた剛力の斧を受け止めるが。あまりの力に地面に膝をつく。

「このまま押しつぶしてやるゥゥゥ!!」

 ――だが!

 俺は疾風迅雷・真発動させ離脱すると、続けて神威も発動させた。

「ちょこまかとォ!」

「俺は今、お前と戦ってやれる気分じゃないんだ。だから悪いが一気に決めさせて貰う!!」

 そう言うと、俺は剛力の懐に飛び込んだ。

「ハァァ!」

「何ッ!?」

 懐に飛び込んだ後、イグニススラッシュで剛力を空中へ吹き飛ばす。

「ガハッ!?」

「フッ!」

 そして俺は紫電一閃・真を発動させると、剛力は全ての斬撃を叩き込むがバリアはまだ破れない。

 ――硬すぎだろ! だけどこれでッ!

「アウァリティア・バースト!」

 剛力が地面に叩きつけられるのと同時にバリアが破れる音が鳴り、剛力は動かなくなった。

『決まったァァ! まさかのワンサイドゲーム! その圧倒的な力を見せつけ、勝利をもぎ取ったのは鈴木選手だッ!!』



 試合終了後、特別競技場でシャワーを浴びながらこの後の事を考えていた。

 ――この後はどうしようか……。

 俺はボーっと虚ろな目で空中を見つめる。

 ――ダンジョン……。いや、流石に連続はキツイ。……そういや今日は夜に花火大会があるんだったな。

「とりあえず、アイツらに合わないように校舎の屋上で花火でも見るか……」

 ――そうと決まれば移動するか……。

 俺はアイテムバックから着替えを取り出し着替えた後、校舎の屋上へと移動した。




「ボッチで花火大会とは、前世ですらしたことなかったな」

 俺は屋上の壁に寄りながら苦笑いする。

 ――正直言って、明日のCブロック決勝に出る意味もないんだよな。寧ろ……。

 もう既に俺が介入したせいで滅茶苦茶だが、原作になるべく近い方が良い。その方がイベントも予測しやすい。ならば、原作通り交流戦メンバーには龍斗が選ばれた方が良い。

「棄権するか、明日の決勝戦」

 ――さて、後はどうやってソフィア達の前からフェードアウトするかだな……。

 その時だった。

「やっと見つけた!」

 屋上の扉が開く音がして、背後からソフィアの声がした。

 ――なんでソフィアがここに……。

「どうした? こんな所まで来て」

 近づいてくるソフィアに、俺は振り向かず問う。

「どうしたも何もないよ! 家に帰ってこないし、皆心配してるんだから!」

「俺は大丈夫だ。だから、龍斗のところにでも行って来い」

「……ねえ悠馬。最近の悠馬、何処かおかしいよ」

「別段おかしくなんて……」

「じゃあどうして私達の事を避けるの? 何か悩み事があるなら話してよ……じゃなきゃわかんないよ!」

 ――どうして俺に構うんだ……。

「悩み事なんてねえよ。それに俺みたいな邪魔者、お前にとっても居ない方が良いだろ? もう良いだろ? だからさっさと……」

 俺が立ち上って振り返りそう言った瞬間、頬に痛みが走る。

「ソフィ……ア?」

 ソフィアは振り上げた手を下げた後胸元で両手を握り、泣きながら叫ぶ。

「噓……だったらそんなに辛そうな顔してるはずない! それに、どうして私にとって悠馬が邪魔者だって決めつけるのッ!? わかんない……悠馬の考えてる事、全然わかんないよ!」

 ――俺がどれだけ……!

 俺はソフィアに叫び返す。

「お前が俺の事を分からなくても、俺は分かってんだよ! お前や他の皆の事も全部! だから、お前らの邪魔にならないように消えようとしてるだけじゃねえか! その方が皆幸せだろ!! これのどこが気に入らないんだ!!」

「勝手に私の、私達のことを決めつけないで! それに悠馬がどうしてそう思うのか、話してくれなきゃわからないよ! 悠馬のバカッ!」

 ――このッ!

「……じゃあお望み通り話してやるよ! 全部!」

 前世の事、ラスティアの事。そしてラスティアでのソフィア達がどのような道を辿ったのか。
 話したらマズいと自分では分かっているのに、気づくと俺は全てを吐き出していた。

「分かっただろ? お前にとっては眉唾もんの話なのは分かってる。だけど本当のことなんだ、だから……んむッ!?」

 ――なッ!?

 自虐的な笑みを浮かべた瞬間、花火が打ちあがるのと同時に俺はソフィアに唇を奪われた。

「何をッ!?」

「ねえ悠馬、私は悠馬の事が好き」

 ――意味が分からない……俺の事をからかってるのか? 今の話からどうしてそうなる!?

「なんでそうなるんだ!? 俺は今話したよな? お前が龍斗に惹かれてる事を知ってるって事も、俺の中身はホントはおっさんだって事も。そして、情けなくてどうしようもない冴えない俺の前世の事も! ……俺はそんな自分自身が嫌いで仕方なかった! なのにどうして!」

「悠馬こそ、どうしてそうなるの!? 別の世界の私のことなんて知らない! 私は私だよ! 私をあの時、自分の身すら顧みずに身を挺して守ってくれたのは、別世界の龍斗や死んでしまった悠馬でも、この世界の龍斗でもない! 私を守ってくれたのは、私が好きなのは悠馬だよ!」

 ――何を……。

 ソフィアはうるんだ瞳で俺を見てくる。

「悠馬の前世は私には分からないし、悠馬自身は自分の事を情けなくて嫌いだって思ってるのかもしれない。だけど悠馬は、傷だらけになっても私を救ってくれた。あんなの、普通は怖くてできないよ。それに悠馬はその先がどんなに危なくても、困ってる人に手を差し伸べる事ができる人。だから、私はそんな勇敢で優しい貴方の事を愛しています」

 そう言うと、ソフィアは再びキスしてきた。

 ――好意を向けられるのなんて生まれて初めてだから、どう反応していいのかわかんねえな……。

「なあソフィア」

「ん?」

「俺は体に精神を引っ張られてるとはいえ、中身はおっさんなんだぞ?」

「知ってる」

「本当の俺は情けなくって、何一つ取り柄もなくて。自分を変えたいって思っていても、自分を変えるための一歩は怖くて踏み出せなかった。そんなダメ人間なんだぞ?」

「悠馬はダメなんかじゃないよ。大切なものの為なら、どれだけでも体を張れる凄い人だよ」

「俺は龍斗と違ってモブで、本当なら……」

「そんなの関係ない。ねえ悠馬。私の人生は私の人生。悠馬の人生は悠馬の人生なんだよ? ここはゲームの世界でもないし、悠馬はモブなんかじゃない。悠馬の人生の主人公は他の誰でもない、悠馬自身なんだから」

 ――そうか……そうだったな。ここはゲームじゃなくて現実で、自分の人生の主人公は自分自身……か。

「本当に、俺なんかで良いのか?」

「私は悠馬が良いの」

「ソフィア、俺は……」

 俺が口を開いた瞬間、ソフィアに手で口を塞がれた。

「ハイ、ストップ。今は答えをくれなくていいから、YESって貰っても勢いでゴリ押ししたみたいだし。NOって貰うには心の準備がまだだし。ついでに休戦協定破って抜け駆けしちゃったもん」

「なんだそりゃ」

「それに、悠馬にはまだやることがあるでしょ? だから全てが終わって皆を救い終わった後に、返事をくれると嬉しいな。私もこれからは手伝うから」

「全く……わかったよ」

「後、悠馬の事を大切に思ってる人は私以外にも沢山いるんだから! だから軽々しく目の前から消えるとか、自分の事を卑下したりするのはやめて。それで悲しむ人が居る事を忘れないで。約束だからね!」

「わかった、約束するよ」

 俺は、ソフィアと並んで花火を見上げながら呟く。

「ありがとな……ソフィア」

「こちらこそ、だよ。悠馬が居なければ、今の私はここに居ないんだから」

「あ! やっと見つけた!」

 その時、後ろから声がした。

 俺達が屋上の扉の方を振り返ると、息を切らしながらこちらを見る冬香とエミリーヌ、姉さんの姿があった。

「一体どうして連絡一つ寄越さないんですの!」

「家にも帰ってこないから、心配したんだぞ!」

「ごめん、皆」

 そして皆と賑やかに花火を鑑賞しながら、俺は決意した。

 ――ここから始めるんだ、鈴木悠馬の。いや、俺の物語を! そして俺は俺自身の幸せもつかみ取りながら、絶対に皆を救ってみせる!

 ――それでこそ強欲の龍である、俺の契約者だ!

 ――我も手伝うぞ!

 ――ああ! やってやるさ! 俺は何一つ手放さない! 絶対にやり切ってみせる!!

 そして、いよいよ学園祭最終日。龍斗との決戦を迎える!
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