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第十話 「黒歴史は成長したから自覚できるもの」
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「いいけど、どんなパーティーゲームなの?」
そう燐が聞くと、麗子は胸を張って答えた。
「ジェンガだ」
「……ジェンガ? 普通じゃない」
「本当にそうかな? 取り敢えずやってみようじゃないか」
嶺二達は、炬燵の上にジェンガを積み終え、今はじゃんけんで順番を決めようとしていた。
「「「最初はグー! じゃんけんぽん!」」」
「あ、私が最初ね」
どうやら、一番手は燐のようだ。
「それにしてもなんかありそうに言ってたけど……半透明なだけで普通のジェンガじゃない」
燐の言った通り確かに、自信満々に出してきたものにしては、何の変哲もないただの半透明ジェンガだった。
「フフッ、本当にそうかな? 試しに一つ引いてみると良い」
何故かジェンガには参加せず、少し離れたところで椅子に座ってPCをいじりながら麗子が言った。
「まぁ良いわ、それじゃあ最初だしちょっと攻めた所に行かせてもらうわ。よっと」
そう言って燐がブロックを抜いた瞬間、燐が引き抜いたブロックが光った。
嶺二達は気が付くと、何故か校舎の廊下に居た。
嶺二達がきょろきょろとあたりを見渡すと、嶺二の隣にも燐が居るにも関わらず、もう一人燐が正面から歩いてきた。
「え? え? 何!? 私のドッペルゲンガー??」
嶺二の隣の燐が目を白黒させながらそう言っていると、もう一人の燐の方向へと女子生徒が大声で呼びかけていた。
「おーい、こっちこっち!」
「どうしたの? 私に何か用?」
もう一人の燐は、声を掛けてきた女子生徒に声を掛けた。
「は、花園先輩!? い、いえ、ごめんなさい。その、呼んでたのは花園先輩の後ろに居た彼氏にで……すいません、失礼します!?」
そう言って女子生徒は顔を真っ赤にして、件の彼氏の方へと走り去った。
その間、自分が呼ばれたと勘違いしていたことに気がついたもう一人の燐は、顔を真っ赤にしてうつむいていた。
嶺二達がいたたまれない気分になり、こちらの燐も顔を赤くして手で顔を覆っていた。そんな状態が10秒ほど続いていると辺りが一瞬真っ暗になり、気が付くと嶺二達は元の状態でジェンガを囲っていた。
「なななな、なによこれぇ!」
燐が顔を赤くしたまま麗子に詰め寄ると、麗子はあっけらかんとした表情で答えた。
「とあるマンガにインスピレーションを受けて、その中で出てきた罰ゲームジェンガを私なりにアレンジしてな。このジェンガは罰ゲームが書かれている代わりに、ブロックを抜いたプレイヤーの恥ずかしい記憶を再生するようになっている」
「貴方に人の心はないんですか」
嶺二がそう麗子に聞いたが、麗子は口を閉ざした。
「あー、ごめんね。この子、今まで研究ばっかりで人付き合いが苦手な上に、人見知りで、親しい間柄じゃないとまともに話せないのよ。特に男の子相手は。無口でクールビューティーな天才少女とか言われてるのはそのせいね。ホントはただの中二病マッドサイエンティストよ」
ーー知りたくなかったなぁ……
と、嶺二が思っていると。雪菜が顔を引きつらせながら、炬燵から離れようとした。
「わ、悪いけど私は降りさせてもらうわよ! 後はお三方でどうぞ……あれ?」
雪菜は、炬燵から出ようと踏ん張ったり体を捻ったりするがびくともしない。
「どうなってるの!?」
「ああ、ちなみに逃亡防止用に逃げられないようにする機能も搭載してある。私にも止められないようにしてあるんだ……だからこっちを睨むのはやめてくれ!」
ーーこの人は悪魔か……
嶺二が、麗子の所業に戦慄していると、雪菜が叫んだ。
「じゃあ最後までやるしかないんですか!?」
「そういう事みたいね……」
「や、やってやろうじゃない! そうだ! わざと崩せば……」
「ちなみに、負けるとその人物の人生で一番恥ずかしい記憶が流れるようになっている」
その瞬間、嶺二達の己の尊厳をかけた戦いが始まった。
「……じゃあ、私の番ね」
雪菜がそう言ってブロックを拭きぬこうとした瞬間、嶺二は雪菜に猫だましをした。
「ぴっ!」
だが、雪菜は危なげなくも無事にブロックを引き抜く。その瞬間、雪菜の記憶が再生された。
「お腹……空いた……」
どうやら何処かの空き地の様だ、そこで今よりも少し幼い雪菜は仰向けに倒れていた。
「今日まだ何も食べてないな……」
お腹を抑えながら空腹をこらえていると雪菜は、目の前にタンポポがあることに気が付いた。
「タンポポって確か食べられるって何処かで聞いたし、大丈夫よね」
そう言うと、雪菜はタンポポを口の中へ運ぶ。
その瞬間、嶺二は元の場所に戻っていた。
「殺して……」
雪菜は顔を真っ赤にして懇願した。
「だれか私を一思いに殺して!!」
「いや、その。雪菜、今度なんか奢るよ。なんならさ、困った時は家に来てくれれば何時でも食べ物分けてあげるから……」
「同情なんていらないわよ!! ……でも、食べ物は欲しいです」
次はカレンの番だ。カレンはにこやかな顔のまま、ブロックを引き抜いた。
「こ、ここは……」
嶺二がそう呟くと、小さい子供たちが嶺二の方へ走ってきて嶺二をすり抜けた。どうやらここは幼稚園の中らしい。
「ねえ、あれ。小さい頃のカレンさんじゃない?」
雪菜の指さした方向を見ると、幼いながらも途轍もなく可愛らしい子供が、じゃれ合う子供たちを物陰から見ていた。
ーーほほう、仲間に入れて! って言えなかったパターンか。それを今でも恥ずかしがってるなんて、カレンさんは可愛いな。
そう思いながら、嶺二が小さい頃のカレンに近づくとブツブツと何かを言っているのが聞こえた。
「ん?」
ーー仲間に入れてってお願いする練習かな?
「やっぱりやまと君が攻めで、気弱そうなれん君が受け。いや、だけどイメージとは逆のれん君攻めやまと君受けもいいかも……」
それを聞いた瞬間、嶺二は真顔になった。
「カレンさん?」
「恥ずかしいわ。この頃はまだあんまり周りを警戒せずに、思った事口に出しちゃってたもの」
「カレン……小・中学校で男子同士のじゃれあい見て妄想してたのは知ってたけど、まさか幼稚園の頃から……」
そして、嶺二達は元の場所に戻ってきた。次はいよいよ、嶺二の番である。
嶺二は、意を決してブロックを引き抜こうとした。しかし、先ほどの猫だましの仕返しをしようとした雪菜の蹴りが、嶺二の股間にクリーンヒットした。
「おうふ」
「あ、ごめん……」
悶絶しながら、それでも嶺二はブロックを抜き切った。
そして、嶺二の記憶が再生された。
「ん? ここは?」
「……僕の部屋だよ」
嶺二が股間の痛みに耐えながら言った。
雪菜達が周りを見渡すと、黒づくめの格好をした幼い嶺二が、鏡の前に居ることに気が付いた。
「ヘルフレイム! いや、違うな。ヘルフレイムッ! こうか! ヘルッフレイム! よし、これで良い!」
雪菜は何となく悟りながらも、嶺二に問いかけた。
「ねえ、嶺二? あれは何をしているの?」
「自分で考えたカッコイイ必殺技ポーズの練習です」
そう言うと、嶺二はうずくまって絶叫した。
「どうして! どうしてなんだ! カレンさんは兎も角、他のみんなは普通に恥ずかしいエピソードだったじゃないか! 僕だけどうしてこんな! 他にも服を裏表逆のまま外出したり、メントスコーラしてみたら大惨事になったり……もっとこう他にもあるって!? よりにもよってどうして!」
「ふむ、次はスター〇-スト〇リームの練習だな。行くぞ! スターバースト……」
「ヤメロォ!」
その瞬間、嶺二の恥ずかしい記憶は終わった。
「ねえ、雪菜。僕、無事に終わったらオーストラリアに家を買って住もうと思うんだ。白くて綺麗な大きな家を……」
雪菜は、嶺二の肩に手を置いて言った。
「大丈夫よ嶺二、こんな事誰にだってある。私はアンタの味方よ」
カレンもその雪菜の言葉に頷いた。
「うんうん、そうだよ。嶺二君、気にすることないよ」
「カレンさん……雪菜……」
「そ、そうよね。大丈夫よ、嶺二君! 男の子ですもの、そういう時期があっても……フフッ」
「とか言いながら思いっきり笑ってるじゃないですか! 燐さん! チクショウ、どうしてこんなことに!」
そう言ったっきり、嶺二は顔を伏せて動かなくなった。
数十分後。嶺二達は色々なものを失いながら、いよいよ戦いに決着がつく時が来た。
「く、クソ! 僕はまだ生きてたいんだ! 死んでたまるか!?」
嶺二はそう言って自分を鼓舞しているが、もう既にギリギリで何処を抜いても崩れそうだ。
嶺二はカッと目を見開き、抜くブロックに狙いを定めた。
「ココだぁーーー!」
嶺二がブロックを引き抜いた瞬間、ジェンガの塔は崩れ去った。
「やめろッ! やめてくれ! 他の事なら何でもする! だからッッ!」
その瞬間、辺りは光に包まれた。
『俺の名前は香月嶺二! 神に選ばれし勇者で全能神だ!
「嶺二、ちょっと待ってよ!」
今俺の事を呼んだのは旅の仲間で大切な幼馴染の香織、よくわからないけど事あるごとに俺にくっついてくる。
「嶺二の腕ゲット!」
「抜け駆けは許せませんわ!」
そう言って俺の片方の腕に引っ付いてきたのはエミリーヌ。この国の王女様で、こちらも俺の大切な仲間だ!
「嶺二は私のだもん!」
「いいえ、嶺二様は他でもない私のモノですわ!」
「「嶺二(様)はどっちを選ぶの!」」
「やれやれ」
二人には仲良くしてほしいんだけどな、どうして事あるごとに喧嘩をするんだろう。そう思いながらも俺たちは史上最凶最悪の敵、レギオンを倒す為に旅を……』
「あぁぁぁぁぁぁ!!!???」
その後、嶺二達は元凶たる麗子にお仕置きをし、このジェンガを封印する事に決めた。
苦楽を共にした彼らには、一種の仲間意識が芽生えていたそうだ。尚、嶺二は麗子に中二病仲間と認定された。
そう燐が聞くと、麗子は胸を張って答えた。
「ジェンガだ」
「……ジェンガ? 普通じゃない」
「本当にそうかな? 取り敢えずやってみようじゃないか」
嶺二達は、炬燵の上にジェンガを積み終え、今はじゃんけんで順番を決めようとしていた。
「「「最初はグー! じゃんけんぽん!」」」
「あ、私が最初ね」
どうやら、一番手は燐のようだ。
「それにしてもなんかありそうに言ってたけど……半透明なだけで普通のジェンガじゃない」
燐の言った通り確かに、自信満々に出してきたものにしては、何の変哲もないただの半透明ジェンガだった。
「フフッ、本当にそうかな? 試しに一つ引いてみると良い」
何故かジェンガには参加せず、少し離れたところで椅子に座ってPCをいじりながら麗子が言った。
「まぁ良いわ、それじゃあ最初だしちょっと攻めた所に行かせてもらうわ。よっと」
そう言って燐がブロックを抜いた瞬間、燐が引き抜いたブロックが光った。
嶺二達は気が付くと、何故か校舎の廊下に居た。
嶺二達がきょろきょろとあたりを見渡すと、嶺二の隣にも燐が居るにも関わらず、もう一人燐が正面から歩いてきた。
「え? え? 何!? 私のドッペルゲンガー??」
嶺二の隣の燐が目を白黒させながらそう言っていると、もう一人の燐の方向へと女子生徒が大声で呼びかけていた。
「おーい、こっちこっち!」
「どうしたの? 私に何か用?」
もう一人の燐は、声を掛けてきた女子生徒に声を掛けた。
「は、花園先輩!? い、いえ、ごめんなさい。その、呼んでたのは花園先輩の後ろに居た彼氏にで……すいません、失礼します!?」
そう言って女子生徒は顔を真っ赤にして、件の彼氏の方へと走り去った。
その間、自分が呼ばれたと勘違いしていたことに気がついたもう一人の燐は、顔を真っ赤にしてうつむいていた。
嶺二達がいたたまれない気分になり、こちらの燐も顔を赤くして手で顔を覆っていた。そんな状態が10秒ほど続いていると辺りが一瞬真っ暗になり、気が付くと嶺二達は元の状態でジェンガを囲っていた。
「なななな、なによこれぇ!」
燐が顔を赤くしたまま麗子に詰め寄ると、麗子はあっけらかんとした表情で答えた。
「とあるマンガにインスピレーションを受けて、その中で出てきた罰ゲームジェンガを私なりにアレンジしてな。このジェンガは罰ゲームが書かれている代わりに、ブロックを抜いたプレイヤーの恥ずかしい記憶を再生するようになっている」
「貴方に人の心はないんですか」
嶺二がそう麗子に聞いたが、麗子は口を閉ざした。
「あー、ごめんね。この子、今まで研究ばっかりで人付き合いが苦手な上に、人見知りで、親しい間柄じゃないとまともに話せないのよ。特に男の子相手は。無口でクールビューティーな天才少女とか言われてるのはそのせいね。ホントはただの中二病マッドサイエンティストよ」
ーー知りたくなかったなぁ……
と、嶺二が思っていると。雪菜が顔を引きつらせながら、炬燵から離れようとした。
「わ、悪いけど私は降りさせてもらうわよ! 後はお三方でどうぞ……あれ?」
雪菜は、炬燵から出ようと踏ん張ったり体を捻ったりするがびくともしない。
「どうなってるの!?」
「ああ、ちなみに逃亡防止用に逃げられないようにする機能も搭載してある。私にも止められないようにしてあるんだ……だからこっちを睨むのはやめてくれ!」
ーーこの人は悪魔か……
嶺二が、麗子の所業に戦慄していると、雪菜が叫んだ。
「じゃあ最後までやるしかないんですか!?」
「そういう事みたいね……」
「や、やってやろうじゃない! そうだ! わざと崩せば……」
「ちなみに、負けるとその人物の人生で一番恥ずかしい記憶が流れるようになっている」
その瞬間、嶺二達の己の尊厳をかけた戦いが始まった。
「……じゃあ、私の番ね」
雪菜がそう言ってブロックを拭きぬこうとした瞬間、嶺二は雪菜に猫だましをした。
「ぴっ!」
だが、雪菜は危なげなくも無事にブロックを引き抜く。その瞬間、雪菜の記憶が再生された。
「お腹……空いた……」
どうやら何処かの空き地の様だ、そこで今よりも少し幼い雪菜は仰向けに倒れていた。
「今日まだ何も食べてないな……」
お腹を抑えながら空腹をこらえていると雪菜は、目の前にタンポポがあることに気が付いた。
「タンポポって確か食べられるって何処かで聞いたし、大丈夫よね」
そう言うと、雪菜はタンポポを口の中へ運ぶ。
その瞬間、嶺二は元の場所に戻っていた。
「殺して……」
雪菜は顔を真っ赤にして懇願した。
「だれか私を一思いに殺して!!」
「いや、その。雪菜、今度なんか奢るよ。なんならさ、困った時は家に来てくれれば何時でも食べ物分けてあげるから……」
「同情なんていらないわよ!! ……でも、食べ物は欲しいです」
次はカレンの番だ。カレンはにこやかな顔のまま、ブロックを引き抜いた。
「こ、ここは……」
嶺二がそう呟くと、小さい子供たちが嶺二の方へ走ってきて嶺二をすり抜けた。どうやらここは幼稚園の中らしい。
「ねえ、あれ。小さい頃のカレンさんじゃない?」
雪菜の指さした方向を見ると、幼いながらも途轍もなく可愛らしい子供が、じゃれ合う子供たちを物陰から見ていた。
ーーほほう、仲間に入れて! って言えなかったパターンか。それを今でも恥ずかしがってるなんて、カレンさんは可愛いな。
そう思いながら、嶺二が小さい頃のカレンに近づくとブツブツと何かを言っているのが聞こえた。
「ん?」
ーー仲間に入れてってお願いする練習かな?
「やっぱりやまと君が攻めで、気弱そうなれん君が受け。いや、だけどイメージとは逆のれん君攻めやまと君受けもいいかも……」
それを聞いた瞬間、嶺二は真顔になった。
「カレンさん?」
「恥ずかしいわ。この頃はまだあんまり周りを警戒せずに、思った事口に出しちゃってたもの」
「カレン……小・中学校で男子同士のじゃれあい見て妄想してたのは知ってたけど、まさか幼稚園の頃から……」
そして、嶺二達は元の場所に戻ってきた。次はいよいよ、嶺二の番である。
嶺二は、意を決してブロックを引き抜こうとした。しかし、先ほどの猫だましの仕返しをしようとした雪菜の蹴りが、嶺二の股間にクリーンヒットした。
「おうふ」
「あ、ごめん……」
悶絶しながら、それでも嶺二はブロックを抜き切った。
そして、嶺二の記憶が再生された。
「ん? ここは?」
「……僕の部屋だよ」
嶺二が股間の痛みに耐えながら言った。
雪菜達が周りを見渡すと、黒づくめの格好をした幼い嶺二が、鏡の前に居ることに気が付いた。
「ヘルフレイム! いや、違うな。ヘルフレイムッ! こうか! ヘルッフレイム! よし、これで良い!」
雪菜は何となく悟りながらも、嶺二に問いかけた。
「ねえ、嶺二? あれは何をしているの?」
「自分で考えたカッコイイ必殺技ポーズの練習です」
そう言うと、嶺二はうずくまって絶叫した。
「どうして! どうしてなんだ! カレンさんは兎も角、他のみんなは普通に恥ずかしいエピソードだったじゃないか! 僕だけどうしてこんな! 他にも服を裏表逆のまま外出したり、メントスコーラしてみたら大惨事になったり……もっとこう他にもあるって!? よりにもよってどうして!」
「ふむ、次はスター〇-スト〇リームの練習だな。行くぞ! スターバースト……」
「ヤメロォ!」
その瞬間、嶺二の恥ずかしい記憶は終わった。
「ねえ、雪菜。僕、無事に終わったらオーストラリアに家を買って住もうと思うんだ。白くて綺麗な大きな家を……」
雪菜は、嶺二の肩に手を置いて言った。
「大丈夫よ嶺二、こんな事誰にだってある。私はアンタの味方よ」
カレンもその雪菜の言葉に頷いた。
「うんうん、そうだよ。嶺二君、気にすることないよ」
「カレンさん……雪菜……」
「そ、そうよね。大丈夫よ、嶺二君! 男の子ですもの、そういう時期があっても……フフッ」
「とか言いながら思いっきり笑ってるじゃないですか! 燐さん! チクショウ、どうしてこんなことに!」
そう言ったっきり、嶺二は顔を伏せて動かなくなった。
数十分後。嶺二達は色々なものを失いながら、いよいよ戦いに決着がつく時が来た。
「く、クソ! 僕はまだ生きてたいんだ! 死んでたまるか!?」
嶺二はそう言って自分を鼓舞しているが、もう既にギリギリで何処を抜いても崩れそうだ。
嶺二はカッと目を見開き、抜くブロックに狙いを定めた。
「ココだぁーーー!」
嶺二がブロックを引き抜いた瞬間、ジェンガの塔は崩れ去った。
「やめろッ! やめてくれ! 他の事なら何でもする! だからッッ!」
その瞬間、辺りは光に包まれた。
『俺の名前は香月嶺二! 神に選ばれし勇者で全能神だ!
「嶺二、ちょっと待ってよ!」
今俺の事を呼んだのは旅の仲間で大切な幼馴染の香織、よくわからないけど事あるごとに俺にくっついてくる。
「嶺二の腕ゲット!」
「抜け駆けは許せませんわ!」
そう言って俺の片方の腕に引っ付いてきたのはエミリーヌ。この国の王女様で、こちらも俺の大切な仲間だ!
「嶺二は私のだもん!」
「いいえ、嶺二様は他でもない私のモノですわ!」
「「嶺二(様)はどっちを選ぶの!」」
「やれやれ」
二人には仲良くしてほしいんだけどな、どうして事あるごとに喧嘩をするんだろう。そう思いながらも俺たちは史上最凶最悪の敵、レギオンを倒す為に旅を……』
「あぁぁぁぁぁぁ!!!???」
その後、嶺二達は元凶たる麗子にお仕置きをし、このジェンガを封印する事に決めた。
苦楽を共にした彼らには、一種の仲間意識が芽生えていたそうだ。尚、嶺二は麗子に中二病仲間と認定された。
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