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第十五話
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放課後。学校帰り。
香奈姉ちゃんが待っているかと思って、いつもどおりに学校の校門前に行くと、そこには別の女の子がいた。
その女の子は、誰かに話しかける様子もなく立っていた。
その女の子の容姿はとても可愛らしく、女子校の生徒だったら、他の男子生徒たちにとっくにナンパされていただろう。
──そう。
彼女は、女子校の生徒じゃない。
制服こそ着てはいるが、女子校の制服ではない。
その女の子は、中学校の制服を着ていた。
誰なのかは、一目でわかる。花音だ。
なんで彼女が、男子校に来ているんだろう。
花音が通っている中学校とは、方向がまるで逆だというのに……。
花音は、僕の姿を確認すると、迷いなくこちらに近づいてきて、笑顔で僕の腕にしがみついてきた。
「やっと来たね、周防先輩。…さぁ、一緒に帰ろ」
「えっと……。き、君は、誰だい?」
僕は、あまりのことに戸惑ってしまい、そう言っていた。
別に惚けてしまったわけではない。
つい口をついて出てしまったのだ。
ちなみに、花音のことは男子校の生徒たちには言っていない。
これからも、言うつもりはないけれど。
しかし今回のことで、彼女が香奈姉ちゃんの妹だということがバレてしまいそうだ。
花音は、いかにも不満そうな表情で口を開く。
「誰って、私だよ。花音だよ。周防先輩ったら、私のことを忘れてしまったんですか?」
花音のその言葉に、周囲にいたある程度の男子生徒たちは騒然となる。
「あいつ。あんな可愛い女子中学生とも──」
「またあいつか⁉︎ 西田先輩だけじゃなくて、あんな子とも知り合いなのか。羨ましい──」
などなど。
なんていうか、男子生徒たちの言葉がそれとなく突き刺さってきて胸が痛いんだけど。
僕は、肩をすくめて言った。
「忘れてはいないけど……。急にやってくるから、僕としても、どうしたらいいのかわからないよ」
花音も花音で、自分が香奈姉ちゃんの妹だということを言うつもりはないらしい。
こんな時は、僕の方も香奈姉ちゃんのことは口に出さないでおくのが正解だ。
花音は、僕の唇に指を添えてきて、言ってくる。
「私たち、恋人同士でしょ? それなのにわからないの?」
「え……」
僕は、思わず硬直してしまう。
よくもまぁ、思ってもいないことを言えるよな。
僕と花音が恋人同士だなんて……。
たしかに花音は可愛いけれど、彼女にしたいかって訊かれたら『ノー』と答えちゃうかな。
周囲の男子生徒たちは、花音のその言葉に呆然となっている。
あまりのことに、言葉にできない感じなんだろう。
いくら一つ年下とはいえ、高校生が中学生と付き合っているというのは、普通に恥ずかしいことだし。
僕も、花音のことは妹のように思っているけど、恋愛対象としては見ていない。
「そうやって惚けるつもりなんだ。…だったら、こうしちゃえばどうかな?」
花音は、そう言うとさらに体を密着させてくる。
「お願いだから、やめてよ。僕は──」
僕がそう言いかけたところで、女子校の制服を着た女の子がやってきた。
その女の子は、そのまま僕の腕にしがみつき、無理矢理花音から引き剥がす。
「ちょっと⁉︎ 何やってるのよ、花音!」
しがみついてきたのは、言うまでもなく香奈姉ちゃんだ。
香奈姉ちゃんは、なぜだか焦っている様子だった。
ボソリと『間に合った』と言っていたのは、気のせいだろうか。
花音は、香奈姉ちゃんを見て小さく舌打ちする。
「もう! あと少しだったのに!」
「『あと少しだったのに』じゃないわよ! 一体、どこへ連れていくつもりだったのよ!」
「どこでもいいじゃない。お姉ちゃんには、関係ないでしょ!」
あ……。
花音自ら、妹だと宣言してしまったよ。
言わないつもりじゃなかったんだろうか。
「関係あるわよ。弟くんは、私の彼氏なのよ。なんの断りもなしに連れていかれたら、私が困るじゃない」
「それじゃ、北川先輩は? 北川先輩なら、楓を連れていってもいいの?」
「奈緒ちゃんは、私の親友だからいいのよ」
香奈姉ちゃんは、なぜか僕の方をチラリと見ると、すぐに花音の方に向き直り、言った。
なるほど。
奈緒さんなら、いいんだ。
まぁ、バンドメンバーだからね。
一緒に行動することくらいはある。
「それがエッチなことだったとしても、いいっていうんだ。お姉ちゃんは──」
「なにも、そこまでのことは……。奈緒ちゃんに限って、そんなことはしないでしょ」
「なるほどね。お姉ちゃんは、何も知らないんだ」
「知らないって……。何のことよ?」
「知らないんだったら、それでいいよ。私は、お姉ちゃんや北川先輩から奪うつもりで楓にアタックするから」
「そんなこと……。絶対にさせないんだから」
花音の言葉に、香奈姉ちゃんは僕の腕をギュッと抱き寄せる。
香奈姉ちゃんの大きめな胸が当たってるんだけど、それは敢えて言わないでおく。
花音はそのことを意識してるのか、恥ずかしげに自分の胸に手を添える。
自身の胸が香奈姉ちゃんほど成長していないことを、気にしているんだろうか。
勘違いしてもらっちゃ困るんだけど、僕は別に巨乳好きってわけじゃない。
たまたま香奈姉ちゃんのおっぱいが大きいから、それに甘えてるってだけだ。
女の子の基準が胸の大きさで決まるだなんてことはないと思っている。
花音は、どう思っているのかはわからないけれど。
「まぁ、いいよ。今は無理でも、絶対に私のことを好きにさせてみせるから」
そう言って花音は、笑顔でもう片方の腕にしがみついてきた。
そんな屈託のない笑顔を向けられても……。
正直、花音のことに対しては、恋愛感情すら湧かないんだけどな。
「好きにしなさい」
香奈姉ちゃんは、呆れた様子でそう言っていた。
香奈姉ちゃんが待っているかと思って、いつもどおりに学校の校門前に行くと、そこには別の女の子がいた。
その女の子は、誰かに話しかける様子もなく立っていた。
その女の子の容姿はとても可愛らしく、女子校の生徒だったら、他の男子生徒たちにとっくにナンパされていただろう。
──そう。
彼女は、女子校の生徒じゃない。
制服こそ着てはいるが、女子校の制服ではない。
その女の子は、中学校の制服を着ていた。
誰なのかは、一目でわかる。花音だ。
なんで彼女が、男子校に来ているんだろう。
花音が通っている中学校とは、方向がまるで逆だというのに……。
花音は、僕の姿を確認すると、迷いなくこちらに近づいてきて、笑顔で僕の腕にしがみついてきた。
「やっと来たね、周防先輩。…さぁ、一緒に帰ろ」
「えっと……。き、君は、誰だい?」
僕は、あまりのことに戸惑ってしまい、そう言っていた。
別に惚けてしまったわけではない。
つい口をついて出てしまったのだ。
ちなみに、花音のことは男子校の生徒たちには言っていない。
これからも、言うつもりはないけれど。
しかし今回のことで、彼女が香奈姉ちゃんの妹だということがバレてしまいそうだ。
花音は、いかにも不満そうな表情で口を開く。
「誰って、私だよ。花音だよ。周防先輩ったら、私のことを忘れてしまったんですか?」
花音のその言葉に、周囲にいたある程度の男子生徒たちは騒然となる。
「あいつ。あんな可愛い女子中学生とも──」
「またあいつか⁉︎ 西田先輩だけじゃなくて、あんな子とも知り合いなのか。羨ましい──」
などなど。
なんていうか、男子生徒たちの言葉がそれとなく突き刺さってきて胸が痛いんだけど。
僕は、肩をすくめて言った。
「忘れてはいないけど……。急にやってくるから、僕としても、どうしたらいいのかわからないよ」
花音も花音で、自分が香奈姉ちゃんの妹だということを言うつもりはないらしい。
こんな時は、僕の方も香奈姉ちゃんのことは口に出さないでおくのが正解だ。
花音は、僕の唇に指を添えてきて、言ってくる。
「私たち、恋人同士でしょ? それなのにわからないの?」
「え……」
僕は、思わず硬直してしまう。
よくもまぁ、思ってもいないことを言えるよな。
僕と花音が恋人同士だなんて……。
たしかに花音は可愛いけれど、彼女にしたいかって訊かれたら『ノー』と答えちゃうかな。
周囲の男子生徒たちは、花音のその言葉に呆然となっている。
あまりのことに、言葉にできない感じなんだろう。
いくら一つ年下とはいえ、高校生が中学生と付き合っているというのは、普通に恥ずかしいことだし。
僕も、花音のことは妹のように思っているけど、恋愛対象としては見ていない。
「そうやって惚けるつもりなんだ。…だったら、こうしちゃえばどうかな?」
花音は、そう言うとさらに体を密着させてくる。
「お願いだから、やめてよ。僕は──」
僕がそう言いかけたところで、女子校の制服を着た女の子がやってきた。
その女の子は、そのまま僕の腕にしがみつき、無理矢理花音から引き剥がす。
「ちょっと⁉︎ 何やってるのよ、花音!」
しがみついてきたのは、言うまでもなく香奈姉ちゃんだ。
香奈姉ちゃんは、なぜだか焦っている様子だった。
ボソリと『間に合った』と言っていたのは、気のせいだろうか。
花音は、香奈姉ちゃんを見て小さく舌打ちする。
「もう! あと少しだったのに!」
「『あと少しだったのに』じゃないわよ! 一体、どこへ連れていくつもりだったのよ!」
「どこでもいいじゃない。お姉ちゃんには、関係ないでしょ!」
あ……。
花音自ら、妹だと宣言してしまったよ。
言わないつもりじゃなかったんだろうか。
「関係あるわよ。弟くんは、私の彼氏なのよ。なんの断りもなしに連れていかれたら、私が困るじゃない」
「それじゃ、北川先輩は? 北川先輩なら、楓を連れていってもいいの?」
「奈緒ちゃんは、私の親友だからいいのよ」
香奈姉ちゃんは、なぜか僕の方をチラリと見ると、すぐに花音の方に向き直り、言った。
なるほど。
奈緒さんなら、いいんだ。
まぁ、バンドメンバーだからね。
一緒に行動することくらいはある。
「それがエッチなことだったとしても、いいっていうんだ。お姉ちゃんは──」
「なにも、そこまでのことは……。奈緒ちゃんに限って、そんなことはしないでしょ」
「なるほどね。お姉ちゃんは、何も知らないんだ」
「知らないって……。何のことよ?」
「知らないんだったら、それでいいよ。私は、お姉ちゃんや北川先輩から奪うつもりで楓にアタックするから」
「そんなこと……。絶対にさせないんだから」
花音の言葉に、香奈姉ちゃんは僕の腕をギュッと抱き寄せる。
香奈姉ちゃんの大きめな胸が当たってるんだけど、それは敢えて言わないでおく。
花音はそのことを意識してるのか、恥ずかしげに自分の胸に手を添える。
自身の胸が香奈姉ちゃんほど成長していないことを、気にしているんだろうか。
勘違いしてもらっちゃ困るんだけど、僕は別に巨乳好きってわけじゃない。
たまたま香奈姉ちゃんのおっぱいが大きいから、それに甘えてるってだけだ。
女の子の基準が胸の大きさで決まるだなんてことはないと思っている。
花音は、どう思っているのかはわからないけれど。
「まぁ、いいよ。今は無理でも、絶対に私のことを好きにさせてみせるから」
そう言って花音は、笑顔でもう片方の腕にしがみついてきた。
そんな屈託のない笑顔を向けられても……。
正直、花音のことに対しては、恋愛感情すら湧かないんだけどな。
「好きにしなさい」
香奈姉ちゃんは、呆れた様子でそう言っていた。
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