190 / 380
第十六話
14
しおりを挟む
とりあえず、お風呂には私が先に入った。
楓と一緒に入ろうと思ってたんだけど、よっぽどの意気地なしなのか、楓はいくら説得してもダメだった。
今も、おそらくは手前の脱衣室にいるだろうと思う。
遠慮なんか、しなくてもいいのに……。
私は、お風呂場の出入り口に顔を出した。
「ねぇ、楓。一緒に入ろうよ」
お風呂場を出てすぐの場所の脱衣室には、案の定、楓がいる。
私が、『入らないのなら、せめてここにいて』と言ったおかげで、楓はじっとここで待っているのだ。
ちなみに、背を向けている。
ガン見はできないってことなんだろうな。
「僕は、後でいいよ。香奈姉ちゃんがゆっくり入れるようにここで待っているから」
「そんなところで待っていても退屈でしょ? だから、一緒に入って暖まろうよ」
そう言って、私は楓に手を差し伸べる。
楓のことが好きだからこそ、そう言えるのだけど……。
楓は、私と一緒にお風呂に入るのには抵抗があるみたいで、そこから動こうとしない。
「それは、さすがに……。遠慮しておこうかな。僕は、香奈姉ちゃんが『待ってて』って言ったから待ってるだけだし……」
「もう! そういうことに対しては律儀なんだから。この場合は、ただ待つんじゃなくて、楓の方からガンガン行くべきだと思うなぁ」
「さすがに、僕から行くのはちょっと……。それに、香奈姉ちゃん。そこから顔を出す時は、せめて胸は隠そうよ」
「私のおっぱいなんて、何度も見てるでしょ。楓に隠したところで、意味がないよ」
私は、堂々とした態度でその場に立つ。
実際、隆一さんに見られてるのなら、慌てて隠したくもなるけど、楓に見られるくらいなら大したことはない。
しかし、楓の態度を見ていると……。
今さら感が半端ないのは、私だけだろうか。
もうエッチなことをした仲なんだし、背を向けたって無意味なんじゃないかと思うんだけど……。
私は、裸のまま楓に近づいて、そのまま楓の手を取った。
「さぁ、楓。そういうことだから、一緒に入ろう」
「あの……。その……」
楓は、恥ずかしそうに顔を赤面させて私の方を見ようとはしない。
う~ん……。
これでもダメか。それなら──
私は、思い切ってギュッと楓に抱きついた。
「──ほら。行くよ」
「う、うん。香奈姉ちゃんが、良いのなら……」
楓は、渋々といった感じで頷く。
やっぱり、楓を説得するには裸で迫らないとダメなのかな。
お風呂に入る時は一緒って、約束したはずなのに……。
「ダメなわけないじゃない。私と楓の仲なんだし…ね」
「やっぱり一緒にお風呂とかは、やめにしない? その方が香奈姉ちゃんにとって、いいかと──」
「何言ってるの。私との約束は『絶対』なんだからね。拒否は許さないよ」
「それなら、仕方ないか……。僕が間違えて、香奈姉ちゃんのおっぱいを揉んでしまうかもしれないけど……。それも、仕方ないことだよね?」
「揉むのは構わないけど……。優しくしてよね。激しくされたら、声をあげちゃうからね」
私は、恥ずかしくなって腕で胸を隠す。
たしかに無断でおっぱいを揉まれたら、嫌かもしれないけど。
楓にされるんだったら、嫌じゃないかも。
「構わないんだ……」
楓は、そう言いながら服を脱いでいく。
なんだか私と一緒にお風呂に入るのが、嬉しくなさそうだ。
やっぱり見慣れてしまったのかな。でも……。
私は、裸になった楓をお風呂場に引っ張っていく。
「さぁ、はやく一緒に入ろう。私の方は、なんだか湯冷めしちゃったみたい」
「あ……。香奈姉ちゃん。ちょっと待って……」
「待ちません」
楓が何を言っても無駄だ。
私は、約束を反故にしたりしない。
──さて。
ホントに湯冷めしちゃったみたいだから、再度お風呂に入って暖まろうかな。
ちなみに、お風呂に入っている最中に、楓が私のおっぱいを揉んでくることはなかった。
あんなに見せびらかしていたのに、ちょっと残念だったな……。
お風呂から上がると、楓はさっそく台所に行き、冷蔵庫の中から漬けておいた肉を取り出した。
楓はタッパーの蓋を開けて、中に漬けてある肉の様子を確認する。
どうなんだろうか。
時間的には、一時間半くらいは漬けておいたはずだけど。
「どう? お肉、ちゃんと漬かってるかな?」
私は、楓に訊いてみる。
漬かり具合は、どうなんだろうか。
ちゃんと漬かっていればいいんだけど。
楓は、しばらくお肉を確認した後、大丈夫と言わんばかりに一度頷いた。
「うん。多分、大丈夫だと思う」
ホントなら、相当な時間を漬け込むんだろうな。
楓が作る唐揚げの醤油タレの作り方は私にもわからないので、こればかりは楓に任せるしかない。
出来上がった唐揚げは、本当に美味しそうだった。
楓が作る唐揚げはお弁当の中にも入っているけど、こうして出来立てを見るのも、なんとなく嬉しい気分になる。
「やっぱり楓の唐揚げは、美味しそうだなぁ」
「よかったら、一つ食べてみるかい?」
「それは、やめておこうかな。夕飯の時の楽しみに──」
と、私がそう言った矢先、いつの間にかそこにいた花音が、唐揚げを爪楊枝で二つ取っていった。
「ありがとう、楓。それじゃ、遠慮なく一つずつ貰うね」
「え……。花音? いつの間に……」
私は、あまりのことに呆然となってしまう。
「あらら。花音がいたのか……。それは、ちょっと意外だったな」
楓は、驚いた様子で台所を去っていく花音を見ていた。
びっくりしていたのは、私だけじゃなかったみたいだ。
花音がいるってことは、隆一さんもいるってことだろう。
これだと、楓の家でスキンシップはできそうにないな。
かといって、別室が使えるわけでもないし。
夕飯を食べ終わったら、私の家に誘おう。
「ねぇ、楓。夕飯を食べ終わったら、私の家に行こうか?」
「香奈姉ちゃんの家に? どうして?」
案の定、楓は思案げな表情で訊いてくる。
私は、楓とイチャつきたいっていう本心をひた隠して口を開く。
「バンドの練習があるじゃない。楓は、他のメンバーたちよりも日が浅いし練習不足だから、練習が必要なんだよ」
「いや……。今日は、さすがに……。遊園地でのデートは、さすがに疲れたし……」
楓は、そう言って軽く息を吐く。
これはやる気がないとかじゃなくて、本当に疲れたって感じだ。
だけど私とのスキンシップは、まだ終わりじゃない。
私は、楓の肩をガシッと掴む。
「練習…必要だよね?」
きっとこの時の私の表情は、笑顔だったけど、内面には鬼が宿っていたに違いない。
その証拠に、楓はひきつったような笑みを浮かべていた。
「うん……。練習は大事だね」
楓は、私に逆らうことはできないんだろうな。きっと──
楓が味噌汁を作り終えるのを見て、私は言った。
「とりあえず、夕飯もできたみたいだし。食べよっか」
「そうだね」
楓は、そう言って頷く。
お手伝いしようと思ったけど、何もできなかったな。
でも、楓と一緒にいられるのなら、それでもいいか。
私は、茶箪笥の中から箸と食器を取り出した。
多分、隆一さんと花音もやってくるだろうから、一応、二人の分も用意しておこう。
楓と一緒に入ろうと思ってたんだけど、よっぽどの意気地なしなのか、楓はいくら説得してもダメだった。
今も、おそらくは手前の脱衣室にいるだろうと思う。
遠慮なんか、しなくてもいいのに……。
私は、お風呂場の出入り口に顔を出した。
「ねぇ、楓。一緒に入ろうよ」
お風呂場を出てすぐの場所の脱衣室には、案の定、楓がいる。
私が、『入らないのなら、せめてここにいて』と言ったおかげで、楓はじっとここで待っているのだ。
ちなみに、背を向けている。
ガン見はできないってことなんだろうな。
「僕は、後でいいよ。香奈姉ちゃんがゆっくり入れるようにここで待っているから」
「そんなところで待っていても退屈でしょ? だから、一緒に入って暖まろうよ」
そう言って、私は楓に手を差し伸べる。
楓のことが好きだからこそ、そう言えるのだけど……。
楓は、私と一緒にお風呂に入るのには抵抗があるみたいで、そこから動こうとしない。
「それは、さすがに……。遠慮しておこうかな。僕は、香奈姉ちゃんが『待ってて』って言ったから待ってるだけだし……」
「もう! そういうことに対しては律儀なんだから。この場合は、ただ待つんじゃなくて、楓の方からガンガン行くべきだと思うなぁ」
「さすがに、僕から行くのはちょっと……。それに、香奈姉ちゃん。そこから顔を出す時は、せめて胸は隠そうよ」
「私のおっぱいなんて、何度も見てるでしょ。楓に隠したところで、意味がないよ」
私は、堂々とした態度でその場に立つ。
実際、隆一さんに見られてるのなら、慌てて隠したくもなるけど、楓に見られるくらいなら大したことはない。
しかし、楓の態度を見ていると……。
今さら感が半端ないのは、私だけだろうか。
もうエッチなことをした仲なんだし、背を向けたって無意味なんじゃないかと思うんだけど……。
私は、裸のまま楓に近づいて、そのまま楓の手を取った。
「さぁ、楓。そういうことだから、一緒に入ろう」
「あの……。その……」
楓は、恥ずかしそうに顔を赤面させて私の方を見ようとはしない。
う~ん……。
これでもダメか。それなら──
私は、思い切ってギュッと楓に抱きついた。
「──ほら。行くよ」
「う、うん。香奈姉ちゃんが、良いのなら……」
楓は、渋々といった感じで頷く。
やっぱり、楓を説得するには裸で迫らないとダメなのかな。
お風呂に入る時は一緒って、約束したはずなのに……。
「ダメなわけないじゃない。私と楓の仲なんだし…ね」
「やっぱり一緒にお風呂とかは、やめにしない? その方が香奈姉ちゃんにとって、いいかと──」
「何言ってるの。私との約束は『絶対』なんだからね。拒否は許さないよ」
「それなら、仕方ないか……。僕が間違えて、香奈姉ちゃんのおっぱいを揉んでしまうかもしれないけど……。それも、仕方ないことだよね?」
「揉むのは構わないけど……。優しくしてよね。激しくされたら、声をあげちゃうからね」
私は、恥ずかしくなって腕で胸を隠す。
たしかに無断でおっぱいを揉まれたら、嫌かもしれないけど。
楓にされるんだったら、嫌じゃないかも。
「構わないんだ……」
楓は、そう言いながら服を脱いでいく。
なんだか私と一緒にお風呂に入るのが、嬉しくなさそうだ。
やっぱり見慣れてしまったのかな。でも……。
私は、裸になった楓をお風呂場に引っ張っていく。
「さぁ、はやく一緒に入ろう。私の方は、なんだか湯冷めしちゃったみたい」
「あ……。香奈姉ちゃん。ちょっと待って……」
「待ちません」
楓が何を言っても無駄だ。
私は、約束を反故にしたりしない。
──さて。
ホントに湯冷めしちゃったみたいだから、再度お風呂に入って暖まろうかな。
ちなみに、お風呂に入っている最中に、楓が私のおっぱいを揉んでくることはなかった。
あんなに見せびらかしていたのに、ちょっと残念だったな……。
お風呂から上がると、楓はさっそく台所に行き、冷蔵庫の中から漬けておいた肉を取り出した。
楓はタッパーの蓋を開けて、中に漬けてある肉の様子を確認する。
どうなんだろうか。
時間的には、一時間半くらいは漬けておいたはずだけど。
「どう? お肉、ちゃんと漬かってるかな?」
私は、楓に訊いてみる。
漬かり具合は、どうなんだろうか。
ちゃんと漬かっていればいいんだけど。
楓は、しばらくお肉を確認した後、大丈夫と言わんばかりに一度頷いた。
「うん。多分、大丈夫だと思う」
ホントなら、相当な時間を漬け込むんだろうな。
楓が作る唐揚げの醤油タレの作り方は私にもわからないので、こればかりは楓に任せるしかない。
出来上がった唐揚げは、本当に美味しそうだった。
楓が作る唐揚げはお弁当の中にも入っているけど、こうして出来立てを見るのも、なんとなく嬉しい気分になる。
「やっぱり楓の唐揚げは、美味しそうだなぁ」
「よかったら、一つ食べてみるかい?」
「それは、やめておこうかな。夕飯の時の楽しみに──」
と、私がそう言った矢先、いつの間にかそこにいた花音が、唐揚げを爪楊枝で二つ取っていった。
「ありがとう、楓。それじゃ、遠慮なく一つずつ貰うね」
「え……。花音? いつの間に……」
私は、あまりのことに呆然となってしまう。
「あらら。花音がいたのか……。それは、ちょっと意外だったな」
楓は、驚いた様子で台所を去っていく花音を見ていた。
びっくりしていたのは、私だけじゃなかったみたいだ。
花音がいるってことは、隆一さんもいるってことだろう。
これだと、楓の家でスキンシップはできそうにないな。
かといって、別室が使えるわけでもないし。
夕飯を食べ終わったら、私の家に誘おう。
「ねぇ、楓。夕飯を食べ終わったら、私の家に行こうか?」
「香奈姉ちゃんの家に? どうして?」
案の定、楓は思案げな表情で訊いてくる。
私は、楓とイチャつきたいっていう本心をひた隠して口を開く。
「バンドの練習があるじゃない。楓は、他のメンバーたちよりも日が浅いし練習不足だから、練習が必要なんだよ」
「いや……。今日は、さすがに……。遊園地でのデートは、さすがに疲れたし……」
楓は、そう言って軽く息を吐く。
これはやる気がないとかじゃなくて、本当に疲れたって感じだ。
だけど私とのスキンシップは、まだ終わりじゃない。
私は、楓の肩をガシッと掴む。
「練習…必要だよね?」
きっとこの時の私の表情は、笑顔だったけど、内面には鬼が宿っていたに違いない。
その証拠に、楓はひきつったような笑みを浮かべていた。
「うん……。練習は大事だね」
楓は、私に逆らうことはできないんだろうな。きっと──
楓が味噌汁を作り終えるのを見て、私は言った。
「とりあえず、夕飯もできたみたいだし。食べよっか」
「そうだね」
楓は、そう言って頷く。
お手伝いしようと思ったけど、何もできなかったな。
でも、楓と一緒にいられるのなら、それでもいいか。
私は、茶箪笥の中から箸と食器を取り出した。
多分、隆一さんと花音もやってくるだろうから、一応、二人の分も用意しておこう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる