僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

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第十七話

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香奈姉ちゃんの誕生日の後はクリスマスだから、当然だけどその準備をしなくてはならない。
香奈姉ちゃんの誕生日が比較的質素な理由は、その4~5日後にはクリスマスパーティーがあるからである。
どちらかというと、クリスマスが本命と言った方が正しい。

「ねぇ、楓。クリスマスの準備は、もう始めてるの?」

学校帰り。
香奈姉ちゃんは、いつもと変わらない笑顔でそう訊いてきた。
僕は、微笑を浮かべて答える。

「うん。一応ね」
「そっか。それなら、手伝いに行かないとね」
「毎年、助かります」
「いえいえ。いつもの事ですから──」

香奈姉ちゃんは、上機嫌な様子でそう言った。
家族ぐるみでの付き合いがある周防家と西田家は、クリスマスパーティーをやる時はいつも周防家と別室で行っているのだ。
毎年恒例の行事なので、香奈姉ちゃんや花音が手伝いに来る。
これも、香奈姉ちゃんのお母さんに対する配慮だ。

「そういえば、花音はどうしてるの? 最近、僕に絡んでこないけど──」
「私にも、よくわからないのよね。自分の部屋にはいるみたいだけど……」
「そうなんだ」

まぁ、クリスマスの飾り付けとかの手伝いはしてくれるからいいんだけど。
もちろん花音には、クリスマスプレゼントは用意してある。
誕生日プレゼントは贈ったことはないけど、クリスマスプレゼントは欠かしたことはない。

「やっぱり気になるの? 花音のこと──」
「そりゃあね。香奈姉ちゃんの妹のことだし。気にならないっていう方がおかしいでしょ」
「まぁ、ね。気にならない方がおかしいよね。うん」

香奈姉ちゃんは、苦笑いをして曖昧に頷いた。
その表情は、心配ではあるものの、花音から何か言われたっぽい感じだ。
どうせ香奈姉ちゃんには関係ないとか、そういったところだろうか。
そんな時に、花音に絡んでもろくな事がないので、これ以上聞くのはやめておこう。

「でもまぁ、花音のことだから放っておいても大丈夫なんだろうけどさ」
「そうだね。女の子同士の話みたいだから、問題はないと思うんだけど……」
「そっか」

僕は、そう相槌をうつ。
何か困ったことがあったら、さすがに言ってくるだろうし、今のところは放置かな。
香奈姉ちゃんも、同じみたいだ。

家に帰ってくると、兄と母がクリスマスの飾り付けをやっていた。
もうクリスマスの3日前なので、当たり前のようにツリーの飾り付けをやっている。
花音の姿がないところを見ると、まだ家に帰ってきてはいないみたいだ。

「ただいま」

僕が一言そう言うと、兄と母がこちらを振り向いた。

「おかえり、楓」
「楓か。帰ってきて早々、悪いんだけど手伝ってくれないか?」
「わかった。とりあえず、着替えてからでもいいかな?」
「おう。なるべく早く来てくれ」
「うん」

僕は、そう返事して急ぎ足で二階にある自分の部屋に向かう。
とりあえず、飾り付けとかをすると制服が汚れるから、ルームウェアに着替えてからだな。

ルームウェアに着替えて居間に戻ると、兄と母に加えて香奈姉ちゃんと花音が居間やツリーの飾り付けをやっていた。
僕は、驚いてしまい口を開く。

「あれ? 香奈姉ちゃんに花音? いつの間に──」
「楓が着替えている間にね。楓ってば、時間かかりすぎ──」
「あ、楓。手伝いに来たよ。一緒に飾り付けをやっちゃおう」

香奈姉ちゃんは、笑顔で僕のもとに駆け寄ってきて、手を握ってくる。

「うん。そうだね」

僕は、香奈姉ちゃんと花音がいることに安堵の息を吐いてそう言っていた。

「ふんっ」

花音は、兄の前だとツンケンしてしまうのは仕方のないことだと思うのだが。
あんまりツリーの上の方に行くと、下着が見えてしまうよ。
ただでさえ、花音が履いてるスカートは短いのに……。
妹みたいな存在の花音の下着なんか見たってなんにも起きないんだけど、それでも見てしまうのは気が引ける。

「楓には、ツリーの下の方の飾り付けをお願いできる?」
「え、あ…うん。任せて」

僕は、気を取り直して飾り付けに取り掛かった。
花音には、気づかれてはいないようだ。
一応、見ないようにはしてるけど、このアングルからだと丸見えだということに。
香奈姉ちゃんも、その事に気づいていないのか居間の方の飾り付けをやっていた。
うん。
この際だから、見なかったことにしよう。
誰もイチゴ柄の可愛い下着なんか見ていない。
中学生だから、しょうがないよね。

ある程度飾り付けを終えると、僕と香奈姉ちゃんは台所に立っていた。
台所に来たのは、言うまでもなく夕飯作りのためだ。
母も台所に来たがっていたんだが、飾り付けの中にはどうしても大人の人の手が必要なものがあったので、今回ばかりはしょうがない。
──さて。
今日の夕飯は、何にしようか。
香奈姉ちゃんや花音もいるから、テキトーなものだと不満が飛んできそうだ。
唐揚げは、論外だし……。

「何、作ろうか?」

香奈姉ちゃんは、なんだか嬉しそうな様子でそう訊いてくる。
僕としては、緊張してしまうんだけど。

「とりあえず、あり合わせのもので作ろうかなって──」
「そっか。それなら、私も手伝うよ」
「ありがとう」

僕は、冷蔵庫の中からテキトーに肉やら野菜やらの食材を取り出した。
いずれの食材も、母が作る予定の料理のヒントが含まれている。
キャベツに豚肉か。
あとは塩や胡椒などの香辛料や砂糖、醤油などが置いてある。
何を作るつもりなのかはわからないが、これを豪華に魅せる料理はこれしかないだろう。
香奈姉ちゃんも、食材を見て口を開く。

「キャベツに豚肉か……。これはもう、アレしかないね」
「うん。あとは出汁を取るために昆布を下に敷いて…かな」
「そうだね」

どうやら香奈姉ちゃんも、作るものは僕と同じみたいだ。
というわけで、作るものは決まった。
後は、兄たちがこれを気にいるかどうかだ。
僕と香奈姉ちゃんは、さっそく準備に取り掛かった。
やっぱり二人で料理を作ると、効率がいいな。

出来上がったのは、ロールキャベツだった。
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