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第二十五話
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学校の中での楓って、どんな感じなんだろう。
一緒に登下校をしていても、そういった細かいところは見せてくれないから、ちょっと心配だ。
もしかして、クラスで孤立していたりするのかな?
「どうしたの、香奈姉ちゃん? 僕の顔になにかついてる?」
楓は、思案げな表情でそう訊いてくる。
どうやら、じっと楓の顔を見ていたみたいだ。
意識していたわけではないんだけど……。
「ううん。なんでもないよ。ちょっとね」
私は、少しだけ含みを持たせた返答をした。
最近、風見君と一緒に帰ったりしてないのは、私たちが原因なのはよくわかっている。
だからこそ、心配なのだ。
友達付き合いがうまくいってないのではと……。
杞憂ならいいんだけど。
季節は夏だ。
制服も夏のものになって、女子校ではより一層、積極的になっている。色んな意味で──
そんなこともあり、私自身も楓と一緒に帰ったりするのは仕方のない事だ。
なにより、楓には夏の制服を着た私の姿も見てほしいから。
「ねぇ、弟くん」
「なに? 香奈姉ちゃん」
「今日から夏服になったけど。感想とかってないのかな?」
「う~ん。香奈姉ちゃんの素足がとても綺麗だなって思うくらいだけど。いつも見てるからなぁ」
「いつもそんなところを見てるんだね? やっぱり弟くんって、脚フェチだったりするんだ」
「べ、別にそういうわけじゃなくて……。なんとなくブラウスのところを見ると、胸が大きいなって思って──」
「そっかそっか。おまけに私のおっぱいが大好きなんだ」
「そんな言われ方をされたら、どこを見てどう言えばいいのかわからなくなってしまうんだけど……」
「もっとこう、何かあるでしょ? 例えば、『今日の制服姿はとっても可愛いね』とか──」
私は、スカートの裾を指で摘んで少しだけたくし上げる。
見えるか見えないかのギリギリまでたくし上げたが、たぶん見えてはいないと思う。
女子校の制服はスカートの丈はもちろん短いが、夏物のブラウスもそれなりに薄手だ。
それこそ、ちょっとでも水なんかを浴びてしまったら、中に着用している下着なんかが透けて見えてしまうくらい。
今の状態でも、太陽の光などで透けて見えてしまっているんじゃないかと心配している。
どうやら楓は純白の下着が好みらしいので、なるべくその色を着用しているけど……。
これはさすがに意識しすぎかとも思えるが、楓にとっては良い刺激になるだろう。
「たしかに香奈姉ちゃんの夏の制服姿は可愛いけど……。それを言わせたら、女子校に通っているみんなに当てはまってしまうような気がするし……」
楓は、そう言って近くを歩いていた他の女子生徒を見やる。
私と同じ女子校に通っている女子生徒だ。
たしかに夏服を着ているのは私だけではない。
その女の子も、普通に夏の制服を着こなしている。
基本的に女子校の制服は白のブラウスにチェックのスカートというしっかりとした印象の中にも、オシャレさも出るようにできているから、ごく普通の女の子でも可愛く見えたりはするんだろう。
私も、その子と同じくらいなのかな?
私はちょっとだけムッとなり、楓の腕にギュッとしがみついた。
「こら! 私と一緒に歩いている時に他の女の子を見ちゃダメでしょ!」
「わかってるけど……。香奈姉ちゃんが、変なことを言うから……」
「でも『可愛い』って思ってるのは、ホントのことでしょ?」
「自分でそれを言っちゃうんだ……。さすが香奈姉ちゃんだね」
楓は、なにやら言いたげな表情で私のことを見てくる。
そんな顔をするんだ。なるほどね。
それなら、私にも考えがある。
私は、楓の唇にそっとキスをした。それも、かなりディープなものだと私自身にも判断できる。
その間、楓は呆然としていたと思う。
ホントは、公衆の面前ではなく家でゆっくりこういうことをしたかったんだけど……。
楓が変なことを言うから、しなきゃダメだなって思ったのだ。
「私は、弟くんのことを誰よりもカッコいいって思っているよ」
「あ。うん……。ありがとう」
さすがの楓も、これ以上は何も言えない様子だった。
きっと恥ずかしいんだと思う。
キスをしてしまった私も、かなり恥ずかしいから。
「さぁ、はやく帰ろっか? 今日は、私が夕飯を作ってあげるから」
「香奈姉ちゃんが? いいの?」
「もちろん! 弟くんには、いつも負けっぱなしだからね。たまには私が勝たないと──」
「勝ち負けの問題なのかな……。これって……」
楓は、ボソリと呟くようにそう言っていた。
聞こえてるんだけどな。
たしかに勝ち負けの問題ではない。
これは私の好意がどこまで楓に届くのかっていう、一種のお試しみたいなものだ。
まず好きな男の子のことを自分のものにしたいのなら、胃袋を掴めってよく言うし。
「と、とにかく。今日は、私の料理で弟くんを満足させてあげるからね。楽しみにしていなさい」
そう言って、私は楓を引っ張っていく。
多少、強引なのは許してくれるとは思う。
まったく。
他の女の子を見るくらいだったら、私のことをしっかりと見てほしいな。
私だって、一応頑張っているんだから。
「うん。わかった。楽しみにしておくよ」
楓は、そう言って微笑を浮かべていた。
とりあえず、今日の予定を言っておかないと。
楓はいつも、勝手に安請け負いをして、私との約束を反故にしてしまうからダメなのだ。
制服にしても、楓のために気合いを入れてきたっていうのに……。
「絶対だよ! 私との約束を反故にしたら許さないんだから! その場合は、容赦なくセッカンだからね!」
「セッカンかぁ……。それはちょっとキツイな……」
「キツイのなら、そうならないように気をつけなさい」
「うん。気をつけるね」
楓は聞き分けがいいから、私の言うことは大抵聞いてくれる。
そこが隆一さんとは違うところなんだよなぁ。
私は、穏やかな表情を浮かべている楓を見て、ちょっとした安心感を覚えていた。
一緒に登下校をしていても、そういった細かいところは見せてくれないから、ちょっと心配だ。
もしかして、クラスで孤立していたりするのかな?
「どうしたの、香奈姉ちゃん? 僕の顔になにかついてる?」
楓は、思案げな表情でそう訊いてくる。
どうやら、じっと楓の顔を見ていたみたいだ。
意識していたわけではないんだけど……。
「ううん。なんでもないよ。ちょっとね」
私は、少しだけ含みを持たせた返答をした。
最近、風見君と一緒に帰ったりしてないのは、私たちが原因なのはよくわかっている。
だからこそ、心配なのだ。
友達付き合いがうまくいってないのではと……。
杞憂ならいいんだけど。
季節は夏だ。
制服も夏のものになって、女子校ではより一層、積極的になっている。色んな意味で──
そんなこともあり、私自身も楓と一緒に帰ったりするのは仕方のない事だ。
なにより、楓には夏の制服を着た私の姿も見てほしいから。
「ねぇ、弟くん」
「なに? 香奈姉ちゃん」
「今日から夏服になったけど。感想とかってないのかな?」
「う~ん。香奈姉ちゃんの素足がとても綺麗だなって思うくらいだけど。いつも見てるからなぁ」
「いつもそんなところを見てるんだね? やっぱり弟くんって、脚フェチだったりするんだ」
「べ、別にそういうわけじゃなくて……。なんとなくブラウスのところを見ると、胸が大きいなって思って──」
「そっかそっか。おまけに私のおっぱいが大好きなんだ」
「そんな言われ方をされたら、どこを見てどう言えばいいのかわからなくなってしまうんだけど……」
「もっとこう、何かあるでしょ? 例えば、『今日の制服姿はとっても可愛いね』とか──」
私は、スカートの裾を指で摘んで少しだけたくし上げる。
見えるか見えないかのギリギリまでたくし上げたが、たぶん見えてはいないと思う。
女子校の制服はスカートの丈はもちろん短いが、夏物のブラウスもそれなりに薄手だ。
それこそ、ちょっとでも水なんかを浴びてしまったら、中に着用している下着なんかが透けて見えてしまうくらい。
今の状態でも、太陽の光などで透けて見えてしまっているんじゃないかと心配している。
どうやら楓は純白の下着が好みらしいので、なるべくその色を着用しているけど……。
これはさすがに意識しすぎかとも思えるが、楓にとっては良い刺激になるだろう。
「たしかに香奈姉ちゃんの夏の制服姿は可愛いけど……。それを言わせたら、女子校に通っているみんなに当てはまってしまうような気がするし……」
楓は、そう言って近くを歩いていた他の女子生徒を見やる。
私と同じ女子校に通っている女子生徒だ。
たしかに夏服を着ているのは私だけではない。
その女の子も、普通に夏の制服を着こなしている。
基本的に女子校の制服は白のブラウスにチェックのスカートというしっかりとした印象の中にも、オシャレさも出るようにできているから、ごく普通の女の子でも可愛く見えたりはするんだろう。
私も、その子と同じくらいなのかな?
私はちょっとだけムッとなり、楓の腕にギュッとしがみついた。
「こら! 私と一緒に歩いている時に他の女の子を見ちゃダメでしょ!」
「わかってるけど……。香奈姉ちゃんが、変なことを言うから……」
「でも『可愛い』って思ってるのは、ホントのことでしょ?」
「自分でそれを言っちゃうんだ……。さすが香奈姉ちゃんだね」
楓は、なにやら言いたげな表情で私のことを見てくる。
そんな顔をするんだ。なるほどね。
それなら、私にも考えがある。
私は、楓の唇にそっとキスをした。それも、かなりディープなものだと私自身にも判断できる。
その間、楓は呆然としていたと思う。
ホントは、公衆の面前ではなく家でゆっくりこういうことをしたかったんだけど……。
楓が変なことを言うから、しなきゃダメだなって思ったのだ。
「私は、弟くんのことを誰よりもカッコいいって思っているよ」
「あ。うん……。ありがとう」
さすがの楓も、これ以上は何も言えない様子だった。
きっと恥ずかしいんだと思う。
キスをしてしまった私も、かなり恥ずかしいから。
「さぁ、はやく帰ろっか? 今日は、私が夕飯を作ってあげるから」
「香奈姉ちゃんが? いいの?」
「もちろん! 弟くんには、いつも負けっぱなしだからね。たまには私が勝たないと──」
「勝ち負けの問題なのかな……。これって……」
楓は、ボソリと呟くようにそう言っていた。
聞こえてるんだけどな。
たしかに勝ち負けの問題ではない。
これは私の好意がどこまで楓に届くのかっていう、一種のお試しみたいなものだ。
まず好きな男の子のことを自分のものにしたいのなら、胃袋を掴めってよく言うし。
「と、とにかく。今日は、私の料理で弟くんを満足させてあげるからね。楽しみにしていなさい」
そう言って、私は楓を引っ張っていく。
多少、強引なのは許してくれるとは思う。
まったく。
他の女の子を見るくらいだったら、私のことをしっかりと見てほしいな。
私だって、一応頑張っているんだから。
「うん。わかった。楽しみにしておくよ」
楓は、そう言って微笑を浮かべていた。
とりあえず、今日の予定を言っておかないと。
楓はいつも、勝手に安請け負いをして、私との約束を反故にしてしまうからダメなのだ。
制服にしても、楓のために気合いを入れてきたっていうのに……。
「絶対だよ! 私との約束を反故にしたら許さないんだから! その場合は、容赦なくセッカンだからね!」
「セッカンかぁ……。それはちょっとキツイな……」
「キツイのなら、そうならないように気をつけなさい」
「うん。気をつけるね」
楓は聞き分けがいいから、私の言うことは大抵聞いてくれる。
そこが隆一さんとは違うところなんだよなぁ。
私は、穏やかな表情を浮かべている楓を見て、ちょっとした安心感を覚えていた。
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