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一浪目

浪人生は決意する。

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「――――刃が、、、、ない、、????」

意味がわからない。えっと、まって。これは、どういう、、??これで戦うのか?化物と。どうやって?あぁ。最悪だ。よりによってこんな。こんなことってあるか。異世界でもうまくいかないのか。おれは。

アマンドと村長の二人は俺を慰める言葉を探しているのか、苦笑いしながら口をぱくぱくさせている。

「まぁ。その、なんだろう。こういうことって今までなくてさ。僕もどうしたらいいかわからないんだけど、新しい武器を産むことはできないから。うーん。えっと・・・・・・。」

村長が申し訳なさそうに言うが、俺には、はい!わかりました!この武器で頑張ります!なんて言えるわけもなく、俯いていた。

「・・・はい。ありがとうございます。今日は、、、もう帰ります。」

俺は俯いたままギリギリ相手に聞こえるくらいの声を出し、ガラクタを拾い上げて村長に一礼してアマンドの家の方向に足を進めた、。







――――――「ま、まぁ、そんなに落ち込むな。・・・そ、そうだ!俺が別の島で見つけて、拾っておいた短剣があるから。少し古いし、リーチも短く頼りないが、無いよりは幾分ましだろう。一応それで、・・・・・・、」

村長の家を後にして、帰り道でアマンドは俺にそういいながらなんとか励まそうとしていたが、俺が何も言わずに俯いて、ただ頷くことしかしなかったので何回か言葉をつまらせていた。




――――――「・・・・・・そう。そんなことがあったの、それで・・・」

エレナが帰ってくるなりベッドでうつぶせになった俺を心配して、アマンドから事情を聞いていた。

「うむ。俺もあんなのは始めてみたし、聞いたことなくてな、どうすることも出来なかった。」

「あなたが以前カルネラで見つけた古い短剣があったじゃない、あれを、」

「それは一応家に帰ってすぐ渡しておいたのだが、まぁ頼りないしな、、、」

「そうね、、、。」


俺はベッドでうつ伏せになりながらそんなふたりの会話を聞いていた。

最悪だ。武器も最悪だけど、こんなに心配してくれる人がいるのに不貞腐れてる俺が最悪だ。これじゃあ本当にただ、迷惑をかけているだけじゃないか。

俺はベッドからゆっくりと起き上がった。

エレナとアマンドの心配そうな顔が目に入った。なにか言おうとしていたが、それを遮るように俺は口を開いた。

「ちょっと、、、頭冷やしてきます。」

「え、、えぇ。気をつけて。」

エレナがそう言ったが俺は、無言で頷いて、アマンドたちの家から、少し肌寒い夜の村に出ていった。



――――――まだ薄暗い程度なので、人は結構うろついているみたいだ。生活必需品店や、農具工具店などのあちこちにある店は既にやっていなかったが、変わりにレストランや、いくつかある酒場、集会所の酒場やその周辺にはかなり多くの人がいるみたいだ。

俺はできるだけ人のいない、島の端の船着場あたりまで来た。

周りに人がいないことを確認してから腰を下ろす。

「ハァ、、。」

腹の中にたまっていたものを出すようにため息を吐く。

散々だよな。浪人が決まって、ようやく気持ちを切り替えようとしたのに、意味わかんない世界に飛ばされてさ、、。それでもここで頑張ろうって思うことが出来て、優しい人もいて、、これからって時に、、。

俺は鳥が産んだ『ガラクタ』を強く握りしめた。そのままぶん投げる体制に入ったが、投げることは出来なかった。全身の力を抜く。

「くそっっ!くっそ。かっこ悪い。。」

もう1度。今度は少し小さめのため息を吐いて目を閉じた。心を落ち着かせる。頭を冷やす。


――よくしてくれた人にあんな態度とって、子供だよなぁ、俺。少しでも力になればって短剣もくれたのに。帰ったらまず謝らないと。もう迷惑はかけられない。ひとりで生きて行かなきゃならない。生きていけるようにならなきゃいけない。

もう後悔はしたくない。後悔なんて現実だけで十分だ。俺は生きる。生きるために戦わなくちゃならない。もう「後悔」しないために。

――俺はゆっくり目を開けて、立ち上がる。さっきまで地面にあった視線をしっかりと前に向ける。変わらなくちゃ。

「・・・とりあえず、帰ってアマンドたちに謝らないとな。。あと、ちゃんと戦うことを伝えなきゃ。。」

俺は化物、いや、自分自身とも戦っていかなきゃならない。変わるんだ。変えるんだ。

そう決意した俺は足先をさっき来た道に返そうとした。


「さっきから、、何をブツブツ行っているのかわからないけど、そういうのは人のいないところでやってくれる?」

「へぁっ、、!?」

情けない声が出た。

だって誰かいるなんて思わないじゃないか。確認したのに。気づかなかったのか。でも、声のする方に視線をやると、いた。

暗くてよくわからないが、女の子だ。女の子と言っても、同い年くらいか。

切れ長の目に青い瞳。整った顔立ち。美人だ。青いロングヘアーが、風で揺れている。良く見ると地面には弓。背中には矢筒がくくりつけてあった。彼女もハンター?なのか??

――でも彼女は、どうしてこんなところにいるんだろうか。

「あ、あの。」

俺は勇気を振り絞って、彼女に近づき、口を開いた。













    
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