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第三十八話 わたしはお父様を説得する
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「大丈夫か? また気分が悪くなったのか? 気分が悪いのなら、少し休んだ方がいい気がするのだが?」
心配をするお父様。
わたしは、
「また少し気分が悪くなってしまいました。ご心配をおかけして申し訳ありません」
と言った後、今まで頭をおさえていた手を戻した。
そして、
「お父様、申し訳ありません。わたしは、やはり、オディナティーヌに婚約者候補の座を譲るべきだと思いました。わたしにそれだけの品性がなく、改善の見込みもないのということが大きな理由ではありますが、それだけではございません。先程、お父様は、わたしの今のお母様とオディナティーヌのことは気にしなくてもいいとおっしゃいましたが、そのことを考慮したということも少しあるのでございます」
少しどころか、それが最大の理由なのだけれど、それは継母に心を奪われているお父様に行っても反発をされるだけだろう。
今まで話をしていた時は、このことに触れること自体も避けたかったのだけれど、お父様自身が話題にしてきたので、触れざるをえなかった。
いずれにしても、もうそろそろわたしの申し出を受け入れてほしかった。
ボードリックス公爵家内は、リディテーヌが「悪役令嬢」的な存在になってきていたので、継母・オディナティーヌの方の勢力が強くなってきている。
ただ、ルシャール殿下の婚約候補の話については、お父様が強力に推進してきた為、いくらこの二人の勢力が強くなっても、リディテーヌの優位は動かないままだ。
しかし、既に二人の勢力は大きくなってきているので、この後、お父様がこの世を去ることになった場合には、この婚約の話もオディナティーヌ優位に一気に変わってしまう。
ゲームのルシャール殿下ルートでは実際、そういう形で推移する。
オディナティーヌはともかく、継母は、今までのリディテーヌの性格と比べてたいして変わりはない。
ただ、さすがに人生経験の差があるので、継母は意外とボードリックス公爵家の人たちとは普通に接している。
リディテーヌには、自分の嫁ぎ先の家の家格の高さを自慢し、見下していた。
この婚約者候補のことも、リディテーヌには、
「お前の方が、家格が下なのだから、婚約者候補の座はオディナティーヌに譲りなさい!」
と会う度に言っていた。
リディテーヌはその度に、
「わたしこそがボードリックス公爵家としての婚約者候補にふさわしいのです、そして、お父様以外のこの家の中でもっとも格が高いのはわたしです!」
と言い返していた。
ボードリックス公爵家の人たちにも、家格の高さを自慢することはある。
しかし、なるべく自重をするように努力はしているのは、わたしにも感じることはできた。
そこはたいしたものだと思う。
お父様を夢中にさせ、この王国で五本の指に入るほどの美人であるということと、家格の高さの自慢も自重しているので、継母のボードリックス公爵家内での人気は結構あると言っていい。
そこが、リディテーヌとの人気の差となり、それが勢力の差にまでつながっていた。
わたしがここでオディナティーヌに婚約者候補の座を譲れば、喜ぶ人の方が多いはずだ。
わたしリディテーヌが転生一度目で、婚約破棄・処断されてしまったのは、ボードリックス公爵家でも人望がこの二人に比べてなかったというのも大きな理由の一つだ。
お父様が生きていれば、一番よかった。
婚約破棄の動きを途中で抑えてくれたと思う。
しかし、ゲームでのお父様は、主人公がどのルートに進んだとしても、わたしが婚約破棄をされる前の今から一か月後に、この世を去ることになる。
今の時点でもお父様の体調は良くないが。ゲームではこの後、急速に体調が悪化していく。
お父様を尊敬するわたしとしては、このままずっと長生きをしてほしい。
今、わたしは、オディナティーヌにルシャール殿下との婚約を譲り、今までの自分から生まれ変わる努力をし始めようとしている。
これによって、わたしの周囲の動きもいい方向に変わることを期待していた。
そして、お父様の運命もいい方向に変わり、長生することを期待していた。
ゲームでのルシャール殿下ルートでは、お父様がこの世を去った後、ボードリックス公爵家の人々はすべて継母・オディナティーヌ側についた。
そして、継母を中心としたボードリックス公爵家の人々は、ルシャール殿下とわたしの婚約破棄を行ってオディナティーヌを婚約者にし、わたしをボードリックス公爵家から追放しようとする動きを推進し始めた。
酷い話だとは思うけれど、それだけリディテーヌは憎まれていたのだろう。
誰もわたしのことを助けなかったどころか、むしろ、それを推進するような動きをボードリックス公爵家の人たちはしていたのだ。
既にルシャール殿下ルートに入ってしまっているわたし。
しかし、オディナティーヌがルシャール殿下の婚約者候補になり、婚約者になれば、わたしが婚約破棄されることはなくなる。
ボードリックス公爵家追放の動きも弱まるはずだ。
わたしはそうしたことをお父様に伝えることができなかったのがもどかしかった。
でも、ここまで断ってきているのだから、きっとわたしが婚約者候補の座をオディナティーヌに譲りたいということを認めてくれると思っていた。
お父様は、再び腕を組んで考え出す。
悩んでいるようだ。
こうして悩んでいるということは、わたしの願いを入れる可能性が強くなってきていることだと思う。
わたしは一生懸命、この願いをお父様が聞き届けてほしいと願った。
心配をするお父様。
わたしは、
「また少し気分が悪くなってしまいました。ご心配をおかけして申し訳ありません」
と言った後、今まで頭をおさえていた手を戻した。
そして、
「お父様、申し訳ありません。わたしは、やはり、オディナティーヌに婚約者候補の座を譲るべきだと思いました。わたしにそれだけの品性がなく、改善の見込みもないのということが大きな理由ではありますが、それだけではございません。先程、お父様は、わたしの今のお母様とオディナティーヌのことは気にしなくてもいいとおっしゃいましたが、そのことを考慮したということも少しあるのでございます」
少しどころか、それが最大の理由なのだけれど、それは継母に心を奪われているお父様に行っても反発をされるだけだろう。
今まで話をしていた時は、このことに触れること自体も避けたかったのだけれど、お父様自身が話題にしてきたので、触れざるをえなかった。
いずれにしても、もうそろそろわたしの申し出を受け入れてほしかった。
ボードリックス公爵家内は、リディテーヌが「悪役令嬢」的な存在になってきていたので、継母・オディナティーヌの方の勢力が強くなってきている。
ただ、ルシャール殿下の婚約候補の話については、お父様が強力に推進してきた為、いくらこの二人の勢力が強くなっても、リディテーヌの優位は動かないままだ。
しかし、既に二人の勢力は大きくなってきているので、この後、お父様がこの世を去ることになった場合には、この婚約の話もオディナティーヌ優位に一気に変わってしまう。
ゲームのルシャール殿下ルートでは実際、そういう形で推移する。
オディナティーヌはともかく、継母は、今までのリディテーヌの性格と比べてたいして変わりはない。
ただ、さすがに人生経験の差があるので、継母は意外とボードリックス公爵家の人たちとは普通に接している。
リディテーヌには、自分の嫁ぎ先の家の家格の高さを自慢し、見下していた。
この婚約者候補のことも、リディテーヌには、
「お前の方が、家格が下なのだから、婚約者候補の座はオディナティーヌに譲りなさい!」
と会う度に言っていた。
リディテーヌはその度に、
「わたしこそがボードリックス公爵家としての婚約者候補にふさわしいのです、そして、お父様以外のこの家の中でもっとも格が高いのはわたしです!」
と言い返していた。
ボードリックス公爵家の人たちにも、家格の高さを自慢することはある。
しかし、なるべく自重をするように努力はしているのは、わたしにも感じることはできた。
そこはたいしたものだと思う。
お父様を夢中にさせ、この王国で五本の指に入るほどの美人であるということと、家格の高さの自慢も自重しているので、継母のボードリックス公爵家内での人気は結構あると言っていい。
そこが、リディテーヌとの人気の差となり、それが勢力の差にまでつながっていた。
わたしがここでオディナティーヌに婚約者候補の座を譲れば、喜ぶ人の方が多いはずだ。
わたしリディテーヌが転生一度目で、婚約破棄・処断されてしまったのは、ボードリックス公爵家でも人望がこの二人に比べてなかったというのも大きな理由の一つだ。
お父様が生きていれば、一番よかった。
婚約破棄の動きを途中で抑えてくれたと思う。
しかし、ゲームでのお父様は、主人公がどのルートに進んだとしても、わたしが婚約破棄をされる前の今から一か月後に、この世を去ることになる。
今の時点でもお父様の体調は良くないが。ゲームではこの後、急速に体調が悪化していく。
お父様を尊敬するわたしとしては、このままずっと長生きをしてほしい。
今、わたしは、オディナティーヌにルシャール殿下との婚約を譲り、今までの自分から生まれ変わる努力をし始めようとしている。
これによって、わたしの周囲の動きもいい方向に変わることを期待していた。
そして、お父様の運命もいい方向に変わり、長生することを期待していた。
ゲームでのルシャール殿下ルートでは、お父様がこの世を去った後、ボードリックス公爵家の人々はすべて継母・オディナティーヌ側についた。
そして、継母を中心としたボードリックス公爵家の人々は、ルシャール殿下とわたしの婚約破棄を行ってオディナティーヌを婚約者にし、わたしをボードリックス公爵家から追放しようとする動きを推進し始めた。
酷い話だとは思うけれど、それだけリディテーヌは憎まれていたのだろう。
誰もわたしのことを助けなかったどころか、むしろ、それを推進するような動きをボードリックス公爵家の人たちはしていたのだ。
既にルシャール殿下ルートに入ってしまっているわたし。
しかし、オディナティーヌがルシャール殿下の婚約者候補になり、婚約者になれば、わたしが婚約破棄されることはなくなる。
ボードリックス公爵家追放の動きも弱まるはずだ。
わたしはそうしたことをお父様に伝えることができなかったのがもどかしかった。
でも、ここまで断ってきているのだから、きっとわたしが婚約者候補の座をオディナティーヌに譲りたいということを認めてくれると思っていた。
お父様は、再び腕を組んで考え出す。
悩んでいるようだ。
こうして悩んでいるということは、わたしの願いを入れる可能性が強くなってきていることだと思う。
わたしは一生懸命、この願いをお父様が聞き届けてほしいと願った。
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