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第四十八話 殿下との仕事の始まり

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わたしはリデーヌさんに案内され、殿下の執務室に入った。

殿下は、自分の席で資料を読んでいたが、

「おはようございます。フローラリンデさん」

と微笑みながら、わたしに声をかけてくれた。

「おはようございます。殿下」

「昨日はよく眠れましたか? 疲れがとれてきているといいんですけど」

「おかげさまで、よく休むことができました。疲れもだいぶとれてきています」

「足は痛くないでしょうか?」

「まだちょっと痛みますが、大丈夫です」

「くれぐれも無理はなさらないでください。お体が一番大切ですから」

殿下のやさしいお言葉。

それだけで、わたしの心は熱くなってくる。

「ありがとうございます」

殿下は立ち上がると、

「ではこちらに座ってください」

とわたしを席に案内してくれた。

殿下は微笑みながらわたしの前に座る。

凛々しいお姿。

心が沸き立ってきた。

わたしは殿下と二人きりでここにいる。

今すぐ抱きしめてほしいという気持ちが強くなってくる。

しかし……。

今はその時ではない。

わたしはなんとか冷静になろうと努力する。

「これから一週間後に、わたしは正式にお父上より権限の多くを移譲されます。わたしたちが本格的に動き出すのはそれからになりますが、それを待っているわけにはいきません。あなたには、一週間ほどしか準備期間がなくて申し訳ありませんが、それまでにできるだけ、王国の問題点とその解決策を一緒にまとめていきたいと思っています。その為の資料は提供しますし、わたしからも今こちらで取り上げている問題点とその解決案について説明いたします。もちろん、一週間だと、細かいところまで対策を立てるのは難しいですが、大きな枠組みは作りたいと思います。よろしくお願いしたいと思います」

殿下はそう言った。

殿下の為に働く時がきたのだ。

「なるべく解決策までまとめられるように努力します。殿下の為に尽くしていきますので、よろしくお願いします」

わたしはそう言って頭を下げた。

「ありがとうございます。とにかくできるところまで作っていきたいと思います。それでは、まずわたしの方から説明いたしましょう」

殿下は、用意をしていた資料をわたしに配り、説明を始めた。

まずは、王国の状況についての内容把握。

これがすべての出発点だ。

殿下の説明はわかりやすく、今まで持っていなかった情報も把握することができ、今後の対策の為になるものだった。

それは、休憩をはさみながら、午前中一杯続いた。

充実した時間だった。

「それでは、昼食にいたしましょう。ちょっとお待ちください」

殿下はそう言った後、食事を部屋に運びこませた。

殿下と二人きりでとる初めての昼食。

緊張するけど、うれしい。

「殿下、昼食をご一緒にとってよろしいのでしょうか?」

「もちろんです。わたしは今まで、昼食は一人でとることが多く、寂しい思いをしていました。あなたのような素敵な方とこうして食事を一緒にとることができてうれしいです」

「そう言っていただけるとありがたいです。わたしも殿下と昼食をご一緒できてうれしいです」

「これからもなるべく昼食は、こうして一緒にとっていきたいと思っています」

そう言って殿下は、恥ずかしそうに微笑んだ。
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