最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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雷髪

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薄暗い洞窟の中、抱き合うガイとローラがいた。
壁にもたれかかる、白骨した遺体を見つめている。

2人が気になったのは、"頭蓋骨に空いた丸い穴"と遺体の持つ"白銀の剣"だった。

「この遺体って……デレクなのか?」

ガイはローラを落ち着かせると、1人、遺体に近寄った。
頭の丸く空いた陥没跡を見る。

「これが致命傷かな?服には少し切られた跡があるけど」

「切られた跡はシザーマンティスでしょ。でも頭に空いた穴って……」

この時点でわかることは、デレクと思われる遺体の死因は頭に何かが当たったことだということだ。

そして遺体が持つ剣。
明らかに普通の武具には見えない。
異様な雰囲気を放つ剣だった。

「その剣はなんなの?」

「これって、もしかして……」

ガイはクロードが言っていたことを思い出していた。

盗賊団の狙いは"ロイヤル・フォース"

この遺体がデレクだとするなら、ギルドマスターの家族を殺害した後、ロイヤル・フォースを奪って逃走し、ここまで来たとなれば辻褄は合う。

だが、わからないことが2つあった。

「ちょっと待てよ。誰がこいつを、どうやって殺したんだ?」

「さっき通って来た道は狭すぎて大人は通れないと思うけど、波動を使って飛び道具か何かで殺めたのかしら?」

「だとしても、こいつはどうやってここに入ったんだ?」

「波動石を見るに、この人は土の波動の使い手ね。入った後に洞窟の形状を自分で変えたんだと思う」

「なるほど。やったのは依頼を受けた冒険者かな?」

「冒険者はこんなことしないと思うわ。だって、殺したら報酬が無くなっちゃうし」

「確かに。じゃあ誰がやったんだ?」

「少なくても依頼を受けた冒険者じゃない。もしかして……」

「心当たりあるのか?」

「ええ。私の当初の目的よ」

「ああ、こいつの仲間か……だけど、なんで?」

「どちらかの裏切り……とかかしら?とにかく一旦ここを出てギルドに報告した方がいいと思う」

「そうだな。この剣はどうする?」

「持っていきましょう。この事件の手がかりかも」

ガイはローラの言葉に頷き、剣に手を伸ばして、グリップを掴むと遺体から引き離した。
遺体は糸の切れた人形のように地面に倒れ込むと、バラバラになってしまった。

「すまない……」

「……」

悲しげなガイとローラだったが、感傷に浸っている暇はない。

2人は安全を確認しつつ、洞窟の入り口を目指すのだった。


____________



ガイとローラが洞窟から外に出ると、湿地帯の霧はすっかり晴れていた。
周囲を見渡してもシザーマンティスの姿は無い。

霧が晴れたことで、この場所がある程度、広くひらけた場所であることがわかった。
相変わらず木々はまばらで、地面は湿っている。

そして正面を見ると、数十メートル先に"大きな荷馬車"が停車しており、それを見た2人は顔を見合わせた。

御者は黒髪でポニーテール、体に合っていないぴちぴちの服が印象的な女性、セリーナだった。

「な、なんなのよ、あの格好は……」

唖然としているローラ。
ガイは二度目の出会いで、さほど驚かなかった。

数メートル先、2人に気づいたセリーナは笑みを溢すと、荷馬車を降りて近づいてくる。

「あら、少年君。また会ったわね。それにもう一人も……少年君?」

「失礼ね!!私は女よ!!」

「それは失礼したわね」

ニコニコと笑顔を見せるセリーナ。
ガイは、そのやり取りに構うことなく周囲を警戒していた。

「それよりも、シザーマンティスは?この辺に沢山いたと思うけど」

「ああ。私が倒したわよ。十匹くらいいたかしら?」

「十匹!?」

ガイとローラは同時に驚くが、無理もない。
2人は一匹も倒せず、洞窟に逃げ込んだのだから。

「さすが王宮騎士団ってことかな。騎士って、そんなに強いのか」

「は?騎士?この人、騎士じゃないでしょ」

「え?」

ローラの言葉にガイは困惑した。
一方、セリーナは無表情になり、すぐに口を開いた。

「なぜそう思うのかしら?」

「だって、その首から下げたもの……」

目をやったのは、セリーナの胸の辺りだった。
首から下げているのは波動石と思われるが、大きな胸の谷間に落ちたそれは、色が確認できない。

「波動石だけど、それがどうかした?」

「王宮騎士は波動石を首から下げないのよ。そもそも騎士になると波動石を持たない」

「……なぜ、わかるの?」

「私の姉は第一王宮騎士団の副団長。そして……」

ローラは自分が首から下げた波動石を手に取ってセリーナに見せた。
それは"濃い青色"の波動石だ。

「この波動石の本当の持ち主。姉が王宮騎士団に入る時に私にくれたもの。騎士は着けないと言ってね」

「……」

「そもそも、冒険者が波動石を身につける理由は、自分のパーティの属性による弱点を補うための仲間選びのためだし。騎士にはそんな必要は無いのよ」


「なるほど……まさか騎士様は波動石を持たないなんて……勉強不足だったわね」

「あんた、何者なんだ?」

その言葉に反応するようにセリーナは不気味な笑みを浮かべた。

「何者でもない……名も無き、ただの"黒いうさぎ"よ」

「黒い……兎?」

「ええ。ここで死にたくなければ、その"剣"をこちらに渡して。私、結構あなたのこと気に入ってるから」

「この剣がなんなのか知ってるのか?なんで、この剣を……」

「ええ。もちろん知ってるわよ。私の"ボス"が欲しがってるから」

「お前がデレクの仲間の盗賊団員なのか!!」

「デレク?んー。まぁ否定はしないでおきましょう」

セリーナはそう言うと、結っていたポニーテールを両手で解いた。
すると両手に髪の毛が絡みつきはじめる。
それが真っ黒なグローブのようになり、爪の先端は鋭利にとがって、爪のような形状に変化した。

同時に、髪と両腕にバチバチと雷撃が走る。

「おしゃべりはここまで。さぁ、どうする?」

「クソ……」

「決められないのなら……」

セリーナの足元に雷撃が起こる。
それは地面を伝って、瞬く間にガイの背後にいるローラの足元へ伸びた。

雷撃を纏う黒い何かがローラの足に巻きつくと、一気にセリーナの方へと戻る。
ローラは倒れ、セリーナの方へと数十メートルもの距離を引きずられていった。

「いやぁぁぁ!!」

「ローラ!!」

ローラはセリーナに辿り着く。
足に絡みついた雷撃を纏った黒い何かは解け、今度はそれがローラの首に巻き、セリーナの目の前で吊るすような形になる。
足をパタパタさせ、苦悶の表情のローラは巻きつく何かを剥がそうと首元を引っ掻くがびくもしなかった。

「切れないわよ。これでも髪の毛のケアはしっかりしてるの」

「お前……なんで、こんなことを?」

「ただ殺してもつまらない……私は、そんなんじゃ興奮しないから」

「なんだと?」

「女の子の苦しむ顔を眺める。さらに、それを見て苦しむ仲間の姿をまた眺める。この状況、最高!!」

顔を赤らめ、強く片胸を揉む動作をするセリーナの姿は、さらに不気味さを引き立たせた。
明らかにこの女性はイカれている……そうガイは思った。

「……」

「どうしたの?もっとあなたの苦しむ表情が見たいわ」

ローラは涙を流していた。
苦しむ表情はだんだんと弱くなり、それは死が近づいていることを示すようだった。

その状況を見ていられず、俯くガイ。

「さぁ、私にもっと見せて。あなたの苦しむ顔を!!」

「あんたは許さねぇ」

「……ん?なんなの、その髪の色は!?それに、その剣の色!!」

セリーナは息を呑んだ。
ガイの髪の色は赤く発光し、目の色も灼熱の炎の如く赤くなった。
さらに左手に握っている白銀の剣の色が真っ赤に染まっていく。

「まさか、あなた……ワイルド・ナイン!!」

ガイは剣を腰に構えた。
その瞬間、剣は大きく真紅の炎で包まれる。
力強く剣のグリップを握ると、一気に引き抜いた。

「"サラマンダー"!!」

地面を抉るように抜剣されたレイピア。
剣が振り抜かれると炎がセリーナへ向けて高速で一直線に走った。

「なんなの!?」

セリーナは腕を前に出し、吊るしたローラを移動させて盾にした。
だが、炎は二つに分かれるとローラをかわし、地面から突き上がる。
2本の炎柱えんちゅうはクロスしてセリーナの腕を燃やした。

「がああああああ!!」

ローラは地面に落ちて倒れた。
完全に意識を失っているようだ。

セリーナは悲痛な表情を浮かべ、燃やされた腕を押さえる。
正面を睨むと、数十メートル離れていたはずのガイは目の前にいた。
大きく飛び跳ね、振り上げられた両手持ちの剣は炎を纏う。

「"瞬炎絶走しゅんえんぜっそう"」

目を見開き、息を呑むセリーナは次の行動を瞬時に思考した。
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