最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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大迷宮ニクス・ヘル編

荒地へ

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夢を夢と認識することはできない。

それは言わば迷宮だ。

夢という名の迷宮へ入った者達は、それが夢であることに気づくことはない。

その中で迷い、苦しんだとしても、その夢から永遠に覚めることはないのだ。


____________________



ナイト・ガイのメンバーは南西にある町、アダン・ダルを目指していた。

この町がある地方は"荒地"という名に相応しく、作物は育たず、木々は枯れ果てている土地だ。

それでも鉱山や遺跡などの資源を発掘できる場所が多々あるため、人口は思いのほか減らずにいた。

ガイたちは砂の中、2日間歩き続け、アダン・ダルの手前の町に到着した。

この町はアダン・ダルほどの大きさは無く、冒険者ギルドもなかった。
ここで一泊して、次の日の夜には目的地に辿り着けるだろう。


夕刻、宿の前にガイとクロードがいた。
メイアが遅れて宿から出てきたが、そこにはローラの姿はない。

「ローラはダメそうか?」

「はい……かなり疲れたみたいで」

「まぁ、ここまで休まず来たからね。今日はゆっくり休ませてあげたらいい」

「俺たちはどうするんだ?」

「食事でもしに行くか。帰りにローラに何か買ってきてあげよう」

クロードの提案で町の酒場へと移動する。
その頃にはもう日は落ちて夜になっていた。

酒場はテーブルが多く並び、炭鉱の作業員のような男性たちが酒や食事をしながら談笑する。
冒険者はまばらにおり、見知らぬ者たちでも構わず酒を一緒に楽しんでいた。

ガイ達は酒場の空いている4人掛けのテーブルに向かい合ってつく。
ちょうど室内の角隅だった。

クロードが手を上げると、ウェイターらしき男性が席までやってきた。

「ご注文は?」

「彼らにはこの町で一番の食事を」

クロードの言葉にガイとメイアが驚く。
そんなにお金があるとは思えなかった。

「おいおい、大丈夫なのかよ」

「大丈夫だ。前回、コリンからもらった絵のモデルの報酬と合わせて、実はリリアンからも少し報酬をもらったんだ」

「知らぬ間にそんなことが……」

笑顔のクロードだが、ガイとメイアは苦笑いしていた。
結局2人はリリアンとはあまり会話ができずにフィラ・ルクスを出てきてしまったことが、少し心残りだった。

クロードはウェイターの男性に向き直ると、さらに注文を続けた。

「僕にはお酒を。あと、少し聞きたいことがあるんだが」

「なんでしょう?」

「彼らはアダン・ダルに行くのかな?」

"彼ら"とは他の席で酒を飲んでいる冒険者のことだとウェイターは察した。

「だと思いますよ。あそこにダンジョンが出現したって話ですから」

「ダンジョン?確か、強い魔物が出たって話だった気がするけど」

「ああ。僕がフィラ・ルクスで聞いた情報はそうだったが……」

ガイとクロードの会話にウェイターの表情が少し曇った。

「ダンジョンが現れる前の話だと思いますよ。町に出没した魔物を、ある冒険者が追い詰めたらしいのですが姿をくらましたみたいで。それからアダン・ダルの西にある遺跡が巨大な砂のダンジョンになったとか……」

「その魔物がダンジョンを作って……冒険者は追いかけたといったところか?」

「ええ。恐らくダンジョンの中に魔物がいるだろうと中に入って行ったらしいのですが、それからずっと出てこないと」

「それはいつの話だ?」

「半年くらい前かな」

「え!?それ絶対死んでるだろ……」

「そう……ですよね」

「それほどの魔物となれば、町の被害は酷かったんじゃないか?」

「いえ、それが家屋が少し壊されたくらいで死人は出てないみたいですよ」

クロードは眉を顰める。
"強い魔物が出現したという内容"と"被害が少なかったという内容"が矛盾しているように感じたのだ。

「誰か、その魔物の姿を見た者はいるのか?」

「それはわからないですね。まぁ、あなた達もアダン・ダルに行くなら、そこの住人に聞いてみたらいいですよ」

「そうだな……」

「だけど、行ったらもう終わってるかも」

「どういうことだ?」

「なんでも最近"S級冒険者"が町に行ったみたいですから。いやぁ俺も見てみたかったな。すごい美人だって噂だったので」

にやけ顔のウェイターはそれだけ言うと、カウンターの方へと戻っていった。

「S級冒険者って、確かこの国に2人しかいないっていう?」

「ああ。まぁ確かにどちらも美人だが……"明るいほう"か"暗いほう"か……」

「それは一体、なんの話ですか?」

「どっちにしても会いたくないという話さ」

ガイとメイアは顔を見合わせて首を傾げる。
そんな中でもクロードは思考を重ねていた。

「恐らくアダン・ダルで起こっている出来事は単純な討伐依頼ではないだろう」

「え?どういうことですか?」

「まだわからないが……相当厄介な事件だということは確かだな」

そう言うとクロードはニヤリと笑った。
その表情は、この状況を楽しんでいるが如くに見える。

魔物は強いのに被害がほぼない町。
その魔物を追い詰めた冒険者。
アダン・ダルの西の遺跡に出現したダンジョン。

謎が多い中、ナイト・ガイのメンバーは翌日、荒地のアダン・ダルへと入ることになる。
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