サギソウ

花言葉

薬品の匂いとホコリの匂いが混じったこの教室はとても静かだ。窓を開けると風に乗った暖かさが肌に張り付いた髪の毛を 揺らしてくれる。腰近くまである真っ直ぐな黒い髪の毛は母親譲りで風が吹く度、ゆらゆらと揺れる。とても邪魔な時もあるけれど、それ以上に思い出があるからあまり短くしたくない。

なんて事を思っていたらドアが開いた。少し驚いたようなだけど、悲しいような表情をした先生がいた。横を通る先生からほんのりのシトラスの香りが鼻を刺激する。

「生徒には香水禁止なのに先生達はいいってずるいですよね」
少し皮肉っぽく、だけど、疑問だったことをぶつけた。

「そうだな。大人ってずるいよな。」そう言い作業を始める先生を見つめていた。

ふと窓の外を眺めると大きな鳥が自由に空を飛んでいた。その姿はまるで空を泳いでいるようだった。手を伸ばしたくても自由は簡単に手に入らないこの世界がとても窮屈で退屈で嫌いだった。

「自由になれたらいいのに」
静かに呟いたはずだった。
急に頭に重みを感じて隣を見れば頭をぽんぽんと触られまるで、大丈夫と言われてるようだった。

少し驚いたけれど、その温かさが温もりがとても嬉しくて居心地が良かった。
「先生、ありがとう」






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作業が一段落した先生と今は軽くお茶してる。といっても、自販機で買ってきた飲み物を飲みながらお話してるだけだけど。
「先生、一つ気になってたんだけどその栞、先生の趣味？」
机の上に置いてあった赤と青紫のアネモネが描かれた栞があった。
「あぁ、これは前に知り合いにプレゼントで貰ったんだ」
そう言って、先生は栞を見せてくれた
「そうなんだ。先生は花言葉とか知らなさそうだから花が好きとか言われたら気持ち悪いって思ってたんだよね」
「お前、時々どストレートに言うよな。確かに花言葉は興味無いけどな。」
(やっぱり)そう思いながら冷たい麦茶が喉の乾きを癒してくれる。

「そんな先生に教えてあげる」そう言って俺の顔を見たあいつは自信満々に呟いた。
「赤のアネモネは君を愛する。そして、青紫はあなたを待っています。って意味なんだよ。これあげた人、先生の事とても大切なんだね」そう微笑んだ顔は少しだけ悲しそうに見えた。




あいつが帰った後、仕事の片付けをしてると栞に手が触れた。2種類のアネモネが描かれた栞。今まで花言葉とかに興味がなくて意味を知らなかったけどここであいつに教えてもらうとは思わなかった。意味を知った後でどうする事も出来ないがあいつの気持ちが知れたから嬉しいようなそんな感情が渦まく。