共学の学校にもしも男子が1人しかいなくなったら?

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6.休日の再会

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週末。春の陽射しが心地よく、校門の重たい空気とは違って、町の空気は軽やかだった。

涼は久しぶりに一人で駅前の商店街を歩いていた。母親に頼まれた買い物ついでに、少しだけ気分転換に寄り道をしていたのだ。最近は、学校で過ごす時間が長く感じるようになっていた。それは苦しいという意味ではなく、むしろ充実している証だった。

それでも、一人で歩いていると、かつての自分が顔を出す。

(本当に俺、変わってきたのかな…)

ふと、書店の前を通り過ぎたときだった。聞き覚えのある声がした。

「――ねえ、それって、涼じゃない?」

立ち止まって振り返ると、そこに立っていたのは中学時代の同級生、**蓮(れん)**だった。背が高く、相変わらず落ち着いた雰囲気を持つ少年。涼にとっては、中学で唯一の“男友達”だった。

「蓮…?」

「やっぱり。久しぶり。元気してた?」

蓮は涼に近づくと、自然な笑みを浮かべて話しかけてきた。

「う、うん…。久しぶり。こんなところで会うなんて。」

「俺、この近くの高校通ってるんだ。駅から歩きで帰ってる途中。」

「あ、そうなんだ…。」

涼は、どこか気まずいような、懐かしいような気持ちを抱えていた。中学では蓮と過ごす時間が多かったが、高校が分かれてからは一度も会っていなかった。

「ところで、涼はどこ行ってるんだっけ? 女子ばっかのとこじゃなかった?」

「ああ…うん。共学だけど、男子は俺一人だけ。」

「マジか。それ、逆にすごいな。」

蓮は目を丸くしたが、すぐにクスッと笑った。

「…でも、なんか、お前なら大丈夫そうって思ったわ。」

「え…?」

「昔からさ、周りの空気ちゃんと読めるし、人に合わせるの得意だったじゃん。お前って、強くはないけど、ちゃんと周りと馴染もうとするんだよな。俺、ちょっと羨ましかったよ。」

思いがけない言葉だった。涼は、中学時代の自分を「弱くて、自分を出せないやつ」だと思っていた。だけど蓮の目には違って見えていたらしい。

「今はどう? 女子ばっかってやっぱり大変?」

「うーん…最初は正直、ちょっと怖かった。でも、最近は――少しだけ、居場所ができた気がする。」

そう言うと、蓮は満足そうに頷いた。

「よかったじゃん。無理すんなよ。俺たちは“男子一人”で違う道に行ったけど、何かあったら、また連絡くれよな。」

「うん。ありがとな、蓮。」

その日の帰り道、涼はなぜか少しだけ胸が熱くなっていた。自分のことをちゃんと見てくれていた友達がいたという事実は、思っていた以上に心強かった。

学校では頑張って笑顔を作って、気を張っていた自分。でも、蓮と話すことで、その緊張がふっと緩んだ。

もう「一人で戦ってる」わけじゃない。

そんなことを思いながら、涼はゆっくりと夕暮れの道を歩いて帰った。
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