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紀ノ國光輝

脅迫

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「おい、ちょっと面かせよ」
 放課後、大樹は一人になった光輝に声をかけた。
「なんすか?」
 面倒くさそうな顔をする彼に向かって大樹は拳を突き出す。
「負けたまんまってわけにもいかねぇ。今日は徹底的にぶちのめさせてもらうぜ」
「ああ、そういうことっすか」
 大樹の言葉に、光輝は納得したように言う。
「別にいいっすよ。ちょうど暇だったし」
「はっ、余裕ぶっこきやがって」
 大樹は鼻を鳴らすと、そのまま体育館裏まで移動する。そこにはすでに3人の男子生徒が待ち構えていた。ょっと面かせよ」
 放課後、大樹は一人になった光輝に声をかけた。
「なんすか?」
 面倒くさそうな顔をする彼に向かって大樹は拳を突き出す。
「負けたまんまってわけにもいかねぇ。今日は徹底的にぶちのめさせてもらうぜ」
「ああ、そういうことっすか」
 大樹の言葉に、光輝は納得したように言う。
「別にいいっすよ。ちょうど暇だったし」
「はっ、余裕ぶっこきやがって」
 大樹は鼻を鳴らすと、そのまま体育館裏まで移動する。そこにはすでに3人の男子生徒が待ち構えていた
 全員、大樹より体格の良い生徒ばかりだ。これではいくらなんでも分が悪いのではないかと思うのだが、光輝は平然としている。
「よし、始めろ」
「ああ」
 大樹の命令に、待っていた三人は一斉に光輝へと襲い掛かった。
「お、おい……」
 あまりにも一方的な展開に思わず声を上げる。だが、三人の生徒の攻撃はすべてあっさりとかわされていた。
「おらっ!!」
「せぇいっ!」
「ふんっ!」
 その後も攻撃を続けるが、光輝はそれらをすべて避け続けている。
「はあっ!」
「ぐっ!」
 ついに一人の生徒が光輝の蹴りを食らい、地面に倒れこむ。
「くそっ!」
「まだだっ!」
 二人はすぐに立ち上がり、再び光輝に攻撃を仕掛けるが、結果は同じ。結局、最後まで一方的に攻め続けたにもかかわらず、彼らは光輝に触れることすらできなかった。
「ちくしょう……」
「こんな奴に……」
 最後の一人が悔しそうにつぶやく。
「これで終わりですか?」
「「「……」」」
 光輝の言葉に、三人とも何も言わなかった。
「じゃあ、俺帰りますね」
「待て」
 帰ろうとする光輝を、大樹は呼び止める。
「……なんですか?」
「お前、本当に強いのか?」
「はい?どういう意味ですか?」
「そうやってしっぽ巻いて帰るってことは、本当は弱いんじゃねえのかって言ってんだよ!」「……」
 大樹の言葉に、光輝は何も答えない。
「おい、なんとか言えよ」
「……」
 それでも黙ったままの光輝を見て、大樹は舌打ちをする。
「ちっ。だんまりかよ」
「……なんか勘違いしてません?」
「は?」
「俺はただ単にあんたらみたいな雑魚に興味がないだけですよ」
「て、てめえ……!」
 光輝の言葉に、大樹の顔が怒りに染まる。
「もう一度勝負しろ!」
「嫌ですよ。めんどくさい」
「ふざけんなよ!?」
「だってそうじゃないですか。今戦えば俺が勝つのは目に見えてる。そんな戦いに付き合う義理はないですからね」
「この野郎……。なめやがって……。いいだろう。そこまで言うなら望み通りぶっ飛ばしてやるよ!」
 その言葉に、大樹は拳を振り上げる。
「来いよ」
「上等だ!!……やっちまえ!!」
「おうっ!!!」
 3人は同時に光輝に殴りかかる。
「……」
 しかし、光輝は微動だにせず、それをじっと見つめている。
(馬鹿がっ!)
 光輝は避ける気すらないようだった。
 これはチャンスだ。
 そう思った大樹はニヤリと笑う。
 そして次の瞬間、彼の視界から光輝の姿が消えた。
「え?」
 直後、大樹は強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされた。
「がっ……」
 何が起こったのか理解できない。
 ただ、光輝に殴られたことだけはわかった。
「あー……大丈夫か?」
「……」
 大樹は起き上がると、無言で光輝を睨みつける。
「まだやる気なら相手になるけど」
「……」
「……じゃあ、俺行きますね」
「……」
 光輝はそのまま立ち去ろうとしたが、大樹はそれを引き留める。
「待ってくれ。最後に一つ聞きたいことがあるんだが」
「?」
「俺が負けたのはわかる。でも、どうして他の二人も気絶してるんだ?」
「さっきの一発だけです」
「は?」
「だから、殴ったのは最初の一人だけですよ。残りは急所を蹴ったり、顔面をぶん殴ってやったら勝手に倒れたんです」
「……嘘だろ」
 大樹は唖然とする。「ま、信じなくていいです。それじゃ」

「おい、ちょっと面かせよ」
 放課後、大樹は一人になった光輝に声をかけた。
「なんすか?」
 面倒くさそうな顔をする彼に向かって大樹は拳を突き出す。
「負けたまんまってわけにもいかねぇ。今日は徹底的にぶちのめさせてもらうぜ」
「ああ、そういうことっすか」
 大樹の言葉に、光輝は納得したように言う。
「別にいいっすよ。ちょうど暇だったし」
「はっ、余裕ぶっこきやがって」
 大樹は鼻を鳴らすと、そのまま体育館裏まで移動する。そこにはすでに3人の男子生徒が待ち構えていた。 光輝はそれだけ言うと、そのまま去っていった。
「あいつ……一体何者なんだ……」
 大樹はしばらくその場に立ち尽くしていた。
「ふぅ」
 光輝は小さく息をつく。
(まさか、あんなところで絡まれるとは思わなかったな……)
 大樹たちは、光輝が自分よりはるかに格下だと思い込んで絡んできたのだ。
(ったく、どうしてああいうやつらは暴力でしか解決できねえのかねえ。……つったって、俺がどうこう言えた立場じゃねえんだろうけど……)
「待ってくれ、光輝っ!」
 背後から翔太の声が聞こえてくる。またか。うんざりしながら光輝が振り返ると、案の定、そこには翔太がいた。
「先生……」
「頼む!君しかいないんだ!」
(こいつ、マジかよ……)
 頭を下げる翔太に対し、光輝は呆れ果てていた。
「あのなあ、先生……」
「じゃないとこれ、ネットに流すしかなくなっちゃうんだよ!」
 そう言って差し出されたのは、一つの動画だ。そこには、大樹たちが光輝に殴られた時の様子が写っていた。
「……」
 写真を見た光輝の表情が変わる。
「これを流されると困るのは、君も同じだと思うんだけどね」
 勝ち誇るように、翔太はニヤリと笑った。
「……」
光輝は無言のまま、翔太を睨む。
「お、おい。どうしたんだよ?怖い顔して」
「……わかりましたよ」
光輝はため息をつく。
「引き受けてくれるのかい?」
「はい」「よかったぁ!助かったよ!」
嬉しそうな声を上げる翔太だったが、光輝は冷めた目で彼を見る。
「ただし、条件があります」
「え?じょ、条件ですと?」
「ええ。このことは誰にも言わないでください。もちろん、生徒にも、親御さんにだって」
「そ、それは……」
「約束してくれないと、協力はできないですね」
「わ、わかった。黙っておくよ」
「……ありがとうございます」
 光輝は礼を言うが、その目は笑ってはいなかった。
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