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なんでもかんでも混ぜればいいわけではない。2
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突如として起きた異変に対し、近くを歩いていた者は何事かとこちらを窺い始め、すぐ近くで品物を並べていた露天の主らしき人物は店をたたみはじめてしまった。
誰がどう見ても何かが起こりそうな雰囲気だ。
「な、なにかができそうですよ!」
「おめぇさんは馬鹿か! この反応は失敗した時のモンだ!」
「えぇ!? これ、失敗なんですか?」
「あぁ、くそ。話なんてしてる暇なんてないぞ! まずは火を消すんだ、急げ!」
「は、はいっ!」
シヴィーに指示されたとおりに火を消そうとした彼女。すぐさま水の入った容器を傾けて消火にあたったのだが……。
──ゴォォォォォッッ!!!
容器の中身は、水ではなく油だったようです。
「……アホなのか?」
「い、いえいえ! 間違えただけです。すぐに水を──」
「そんな暇はなさそうだ……」
油の注がれた火は勢いを増し、鍋を覆い尽くすほどの火柱を立てながらも加熱の速度を上げていく……!
先ほどまで賑わいを見せていた広場は騒然としており、避難する者から店を急いで片付ける者、仕舞いには泣き叫ぶ者まで現れ始めた。しかし、こんな状況に置かれているにも関わらず、彼女は鍋の傍から一向に離れる素振りを見せない。
「なにやってんだ! 早く離れるんだ!」
「ちょ、ちょっと引っ張らないでください! 何ができるのか見届けないと!」
「このまま出来上がるのは、おめぇさんの『焼死体』だぞ!?」
引っ張りながら後退しようにも、彼女は離れないで反応を見ようとするのだ。
「いいから、下がれって!」
「あ、もうちょっとで見れそうなんです! 私の初めての調合が……ッ!」
鍋の傍から無理やり引き剥がすことに成功したものの、鍋から立ち昇っていた煙は黒煙へと変わり、ボコボコと沸騰して弾けていた水しぶきは小さな爆発へと変化していく。一度『パンッ!』と爆ぜると、それに続くように二度、三度と終わりなきリズムを奏で始める。
「一体なにができるんですかね! ね!」
「落ち着け! それから離れろ!」
「えー、なんで離れなきゃいけないんですか? もうすぐ何か出来そうじゃないですか!」
「くそ、話が通じない相手ってのはこれだから──この貸しはでかいからなッ」
羽織っていた上着のポケットから取り出した『薄く発光した茜色』の液体が入った小さなビン。それを、シヴィーは自らの口へと運び、飲み干すと同時に彼女に覆い被さるように抱きついた。
「ちょ、ちょっとなにやって──」
腕の中で彼女が暴れ、シヴィーを引き剥がそうと腕を伸ばしたときだった。
──ドゴォォンッ!!!!
聴覚が一時的に麻痺するほどの破裂音が響き渡り、広場全体を駆け抜けていく衝撃波によって辺りの建物の窓ガラスが割れ、遠巻きに見ていた者たちは耐えるかのように姿勢を低くした。
「がはぁッ!?」
「きゃぁぁぁぁぁッ!!!」
他の誰よりも近くにいたふたりは、逆らうことができないほどの爆風に飲み込まれ、身体が浮き、波というよりももはや物理的な何かに押される感覚を覚えると同時に、シヴィーは顔を歪ませながら彼女と一緒に地面へと叩きつけられた。
砂煙が収まり、周囲からぽつりぽつりと声が聞こえ始めた。
彼女に覆いかぶさるように起き上がったシヴィー。身体を打ちつけた時に当たり所が悪かったのか、頭部から頬へと鮮血がたらりと垂れ、目を大きく見開いた彼女の頬に向かってぽつりぽつりと落ちていく。
「あ、あの……!」
「なにも言うんじゃねぇ。いいか、調合ってのは危険が付きまとうものなんだ。むやみやたらと素材ぶち込んで出来上がると思ったら大間違いだ」
「す、すいません……っ」
彼女が反省と謝罪を述べたのを確認すると、シヴィーは起き上がろうとした。だが、どうやら怪我をしたのは頭部だけではなかったようだ。
「──ッ!? 火傷、か……?」
その背中、服が焼け落ちて皮膚が露わとなっており、露出された肌は血を滲ませた黒き焦げ跡になってしまっていた。しかし、シヴィーは構わないように立ち上がり、その背中を撫でた。
「いててて、間一髪ってところか? おめぇさん、調合をするならちゃんと学んでからすることだ。いいな」
「背中が……す、すいません。私の……せい、ですね……」
調合の失敗による爆発騒動を聞きつけた者達が救援活動に入り始めた様子で、そこらへんから名前を呼ぶ声や安否を確かめる声が鮮明に聞こえ始め、シヴィーたちのもとへと鎧を来た男達がやってきた。
「この騒ぎの原因は君達か?」
先ほどまで鍋があった場所は、深くえぐられていて周りに置いてあった木箱や調合道具の数々は見当たらなくなっていた。声を掛けてきた男は「ひどいなこりゃぁ……」、と目を細めながら彼女を起き上がらせようと手を差し伸べていた。
「調合による失敗……か、これだから調合師ってのは困るんだ。君達も、こんな街中で調合するなんてどうかしてるぞ!」
「…………す、すいません」
どうかしているとまで言われてしまい、彼女は悔しそうに噛み締めると、爆発で飛び散ったであろう自分の足元に転がっていた私物の破片を見つめていた。
「調合したのは、俺一人だ。こっちの嬢ちゃんは関係ねぇよ」
「そうか、幸い怪我人はでてないようだったが……広場の整備や、建物の修理費用は君の元に請求がいくだろう。ここに今住んでるところと名前を」
俯いてしまった彼女の代わりに、シヴィーがこの騒ぎの中心人物だと名乗り出た。
誰がどう見ても何かが起こりそうな雰囲気だ。
「な、なにかができそうですよ!」
「おめぇさんは馬鹿か! この反応は失敗した時のモンだ!」
「えぇ!? これ、失敗なんですか?」
「あぁ、くそ。話なんてしてる暇なんてないぞ! まずは火を消すんだ、急げ!」
「は、はいっ!」
シヴィーに指示されたとおりに火を消そうとした彼女。すぐさま水の入った容器を傾けて消火にあたったのだが……。
──ゴォォォォォッッ!!!
容器の中身は、水ではなく油だったようです。
「……アホなのか?」
「い、いえいえ! 間違えただけです。すぐに水を──」
「そんな暇はなさそうだ……」
油の注がれた火は勢いを増し、鍋を覆い尽くすほどの火柱を立てながらも加熱の速度を上げていく……!
先ほどまで賑わいを見せていた広場は騒然としており、避難する者から店を急いで片付ける者、仕舞いには泣き叫ぶ者まで現れ始めた。しかし、こんな状況に置かれているにも関わらず、彼女は鍋の傍から一向に離れる素振りを見せない。
「なにやってんだ! 早く離れるんだ!」
「ちょ、ちょっと引っ張らないでください! 何ができるのか見届けないと!」
「このまま出来上がるのは、おめぇさんの『焼死体』だぞ!?」
引っ張りながら後退しようにも、彼女は離れないで反応を見ようとするのだ。
「いいから、下がれって!」
「あ、もうちょっとで見れそうなんです! 私の初めての調合が……ッ!」
鍋の傍から無理やり引き剥がすことに成功したものの、鍋から立ち昇っていた煙は黒煙へと変わり、ボコボコと沸騰して弾けていた水しぶきは小さな爆発へと変化していく。一度『パンッ!』と爆ぜると、それに続くように二度、三度と終わりなきリズムを奏で始める。
「一体なにができるんですかね! ね!」
「落ち着け! それから離れろ!」
「えー、なんで離れなきゃいけないんですか? もうすぐ何か出来そうじゃないですか!」
「くそ、話が通じない相手ってのはこれだから──この貸しはでかいからなッ」
羽織っていた上着のポケットから取り出した『薄く発光した茜色』の液体が入った小さなビン。それを、シヴィーは自らの口へと運び、飲み干すと同時に彼女に覆い被さるように抱きついた。
「ちょ、ちょっとなにやって──」
腕の中で彼女が暴れ、シヴィーを引き剥がそうと腕を伸ばしたときだった。
──ドゴォォンッ!!!!
聴覚が一時的に麻痺するほどの破裂音が響き渡り、広場全体を駆け抜けていく衝撃波によって辺りの建物の窓ガラスが割れ、遠巻きに見ていた者たちは耐えるかのように姿勢を低くした。
「がはぁッ!?」
「きゃぁぁぁぁぁッ!!!」
他の誰よりも近くにいたふたりは、逆らうことができないほどの爆風に飲み込まれ、身体が浮き、波というよりももはや物理的な何かに押される感覚を覚えると同時に、シヴィーは顔を歪ませながら彼女と一緒に地面へと叩きつけられた。
砂煙が収まり、周囲からぽつりぽつりと声が聞こえ始めた。
彼女に覆いかぶさるように起き上がったシヴィー。身体を打ちつけた時に当たり所が悪かったのか、頭部から頬へと鮮血がたらりと垂れ、目を大きく見開いた彼女の頬に向かってぽつりぽつりと落ちていく。
「あ、あの……!」
「なにも言うんじゃねぇ。いいか、調合ってのは危険が付きまとうものなんだ。むやみやたらと素材ぶち込んで出来上がると思ったら大間違いだ」
「す、すいません……っ」
彼女が反省と謝罪を述べたのを確認すると、シヴィーは起き上がろうとした。だが、どうやら怪我をしたのは頭部だけではなかったようだ。
「──ッ!? 火傷、か……?」
その背中、服が焼け落ちて皮膚が露わとなっており、露出された肌は血を滲ませた黒き焦げ跡になってしまっていた。しかし、シヴィーは構わないように立ち上がり、その背中を撫でた。
「いててて、間一髪ってところか? おめぇさん、調合をするならちゃんと学んでからすることだ。いいな」
「背中が……す、すいません。私の……せい、ですね……」
調合の失敗による爆発騒動を聞きつけた者達が救援活動に入り始めた様子で、そこらへんから名前を呼ぶ声や安否を確かめる声が鮮明に聞こえ始め、シヴィーたちのもとへと鎧を来た男達がやってきた。
「この騒ぎの原因は君達か?」
先ほどまで鍋があった場所は、深くえぐられていて周りに置いてあった木箱や調合道具の数々は見当たらなくなっていた。声を掛けてきた男は「ひどいなこりゃぁ……」、と目を細めながら彼女を起き上がらせようと手を差し伸べていた。
「調合による失敗……か、これだから調合師ってのは困るんだ。君達も、こんな街中で調合するなんてどうかしてるぞ!」
「…………す、すいません」
どうかしているとまで言われてしまい、彼女は悔しそうに噛み締めると、爆発で飛び散ったであろう自分の足元に転がっていた私物の破片を見つめていた。
「調合したのは、俺一人だ。こっちの嬢ちゃんは関係ねぇよ」
「そうか、幸い怪我人はでてないようだったが……広場の整備や、建物の修理費用は君の元に請求がいくだろう。ここに今住んでるところと名前を」
俯いてしまった彼女の代わりに、シヴィーがこの騒ぎの中心人物だと名乗り出た。
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