夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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18話「死霊術」

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 一同は広場の井戸の影に隠れていた。

「あれは...ウィッチだ...ッ!!」

「ウィッチ?」

 ニケは、頭を傾げながらゲームのウィッチを思い出した。

「ウィッチって、あれだろ?魔法使って浮遊してるアンデットの」

「あぁ。だがこいつはまずい...」

 ミーチェは、周りを伺いつつ言った。

「死霊術の多くのものは、死体を利用するものが多い」

「そうだな。この状況で、ウィッチを召喚されたとなると...」

「ど、どうなるんだ?」

「俺の知ってる死霊術だと、召喚された魔物が死体をアンデットに変えるんだ」

「え、それって」

 ニケは、額に汗を滲ませながら後ろを伺った。

「あぁ。この死体まみれの村は、もうすでにアンデットの村ってわけだな。やってくれたな教会よ」

 ミーチェは落ち着きながらも、周囲に警戒をしながら言った。

「このままでは、囲まれる。一旦避難して体制を立て直そう」

「おいおい、避難するってどこにだ?」

「村長の家が、村の向かい側の丘にある。あそこなら立てこもるに最適だ」

「師匠。村長の家までの距離は?」

 ミーチェは、しばらく黙り込んでいた。
 ニケは、ミーチェが黙り込むときはめちゃくちゃやばい状況だと、男と話しをしていた。

「坊主、お前は確か魔法も使えるんだよな」

「ん?使えるけど、まだ未熟者だから初期の魔法しか使えないぜ?」

 3人とも黙り込んでしまった。
 それもそのはず、なにせボスを前にしてアンデットたちが村中にあふれかえっているのだから。

「それにしても、隠れたところが悪かったようだ」

 ミーチェは、井戸の後ろのほうを見ながら言った。

「師匠。それはどういうことだ?」

「ウィッチがボスなら、アンデットたちは取り巻き。つまりボスの下へ、集結しはじめるってことだ」

「幸い、ウィッチには見つかってないのが救いだな」

「やっぱ正面突破するしかないのかな」

「それしかないだろう」

 広場の構図は、ニケたちが入ってきた北口、銀髪の男が来た南口、残りは西口の3つだ。
 井戸の場所は、北口と西口の間にある。

「村長の家は南口が最短なのだが」

「そこにはウィッチがいるってことか」

「俺も、兄ちゃんもさっきの戦闘で消耗してるから。いきなりボスってのは厳しい」

「それはわかっておる」

「となると、西口からでて村長の家に向かうのか?」

 それしかないだろうと言い、南口のほうを見るミーチェ。

「なら西口からいこうぜ」

 ニケは立ち上がった。

「俺が、先頭で走るよ。兄ちゃんは師匠を援護してくれ」

「わかった」

「おい、勝手に決めるでない」

「師匠。グダグダ言ってる間に、集まってきてるぜ?」

 北口はすでにアンデットが行進をしていた。
 南口からも、アンデットが迫ってきている。

「そうだな、いこう」

 ミーチェがうなずく。
 一同は立ち上がり、西口へと走った。
 ニケは、左手に魔力を注ぎ刀を練成した。
 刀を右手にもつと、今度は小太刀を練成した。

「上達したものだな」

「一度、練成したものはすぐできるようになったんだ」

「これが異能ってやつなのか」

 西口に辿り着いた。
 奥側からアンデットがわんさかやってくる。

「それじゃぁアンデット狩りと洒落込みますかぁッッ!!!!」

 ニケは、一目散に走り始める。
 その後ろを、シロが追いかけた。

「相変わらず、足だけは速いものだ」

「俺たちも、行きますかね」

 その後を、ミーチェと男が続いた。

 先頭を走るニケと、シロ。
 アンデットたちの動きは遅く、簡単に処理できそうだ。
 前方を歩くアンデットに対して、ニケは飛び上がり頭上から二刀による斬撃を食らわせた。
 ニケが体勢を立て直す間に、シロが先行しアンデットの首に腕を振り下ろす。
 再度走り始めたニケは、奥側からやってくるアンデットに、二刀を合わせた回転切りを浴びせる。
 その間を走り抜けるシロ、ニケに襲い掛かるアンデットに対し、体当たりからの首元への噛み付き。

「あやつらの連携はすごいな...」

「関心してないで走ってくれ」

「おっと、すまない」

 ニケと、シロの連携に目を惹かれるミーチェ。
 ミーチェの援護をしながら走る男は、目の前の光景になんも言うことがないようだ。

「にしても、あっけなく倒していくなあいつら」

「そうだな、見ていて爽快だな」

 ミーチェは、嬉しそうに笑った。

 先頭組みが、露店市にでる。
 奥行きのある、テントばかりの道には居酒屋のようなみせから、冒険者ギルドと書かれた看板の建物が並んでいた。

「ここに、冒険者ギルドがあったのか」

 悔しそうに看板を見ながらも、斬撃を止めないニケ。
 足をつかまれこけそうになる。

「こいつ...離せッ!」

 しがみついてくるアンデットに対し、蹴りを入れているとシロがアンデットの顔面を跳ね上げた。
 血を噴出しながら転がっていく顔。
 ニケは、顔に浴びた返り血をふき取りながらも走り始めた。

「ニケ!冒険者ギルドの次の路地を右だ!」

「わかった!」

 ミーチェの言うとおり、冒険者ギルドの次の路地に入った。
 一方通行の細い路地だった。

「やっぱ、ここにもいますよね」

 ニケは、二刀を捨てた。
 左手を構え、双線をだす。

「綴る! ″我、光の力を求めるもの。射抜け、その光と共に″ライトニードル!」

 そのまま、左手を銃の形にする。
 人差し指を伸ばし、照準を定める。

「この一方通行なら、避けれないよなッ!」

 まずは一発、魔法が展開された。
 複数の光の矢は、こちらに歩いてくるアンデットに対し複数の風穴を開けた。
 その奥には、もう一体のアンデットが見える。
 だが、この距離だと命中率が悪い。
 ニケは、走り始めた。
 アンデットは、こちらに気づき両手を上げて捕まえよとしてくる。
 目の前まで走り、捕まえようと伸ばされた手をしゃがんで避け、アンデットの腹部に右ストレートを食わせた。
 殴られたアンデットはよろめきながら2歩3歩と下がる。

「これで終わりだッ!」

 左手を構え、魔法を発動させる。
 複数の光の矢が、アンデットに穴を開けた。
 開いた穴から、臓器などが飛び散った。

「師匠。こっちは片付いたよ!」

「わかった。お主、先に行くがよい」

「すまない、先に通らせてもらう」

「シロ!入り口で、師匠の援護を!」

 シロは咆えると、ミーチェの後ろに回った。

「すまない、シロ」

 謝りながら、路地に入るミーチェ。
 一同が通り抜けたあと、シロが走ってきた。
 村長の家は、路地を通り抜けた先にある丘の上の緑の屋根の家だった。

「あそこまで、急ぐぞ」

 ミーチェを先頭に、丘の道を登る一同。
 ニケと、シロは後方の警戒をしながらそれに続いた。
 家の前まで着いた。 
 周囲には、アンデットはいないようだ。

「中に入ろう」

 扉をあけようとするが、鍵がかかっているようだ。

「ニケ、裏口を見てきてくれ」

「わかった。シロ、師匠のそばにいてくれ」

 シロは、小さく咆えた。
 裏口に回るニケ。

「こっちも開いてなかったらどうするんだ...?」

 恐る恐る、裏口の扉を開けるニケ。
 扉は開いたが、中から嫌な気配がした。

「師匠、こっち開いてる!」

「わかった!すぐ向かう!」

 ニケは、一足先に入り中の安全確認を始める。
 裏口から入ってすぐに台所、奥に玄関が見える。
 右手にリビング、その奥に扉が2つあった。
 左の扉からは、何も感じなかった。
 となると右の扉...。
 ニケは、右の扉を思いっきり開けた。
 そこには...。
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