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32話「旅立ち」
しおりを挟むやっと昼食だ、そう言ったのはニケだった。
ミーチェが、厨房で飯を作る間、ニケはシロをわしゃわしゃして遊んでいた。
「なぁシロ。なんでお前は、小さいんだ?」
シロは、首を傾げた。
「いや、師匠がさ。シロは、もともと大きいって言うからさ」
そういいながら、あごなどをいじって遊ぶニケ。
しばらくしてからミーチェが、料理を持ってきた。
「家のなかまでは、荒らされてなくてよかった。食材は無事だったから、たくさん食べるがいい」
そういいながら、料理を机の上に並べるミーチェ。
大きい皿には野菜が盛りつけられており、横の皿には野菜炒めが盛り付けられていた。
1cmほどに切り分けられた、食パンのようなパンに野菜炒めを盛り付け食べるニケ。
「今日は味が薄くないだろう?」
ひじを着きながら、感想を聞いてくるミーチェ。
「確かに、美味しい」
野菜炒めをパンに挟むとはっと、ニケは言いながらも食べていた。
異世界の飯は、これが普通なのだろうか。
「食べ終わったら、ギルドあたりから資金を調達しよう」
「それって泥棒じゃ?」
「だれも使わないのだ、いただいても構わないだろう。それに、村人がいなくなったとわかると盗賊の類が漁りに来る。それでなくとも、森からゴブリンなどが来て、住まう可能性もあるからな」
「なるほど」
早めに食べ終わったミーチェは、先に席を立った。
「食器はそのままでもよいからな」
そういい残すとミーチェは、外へ出て行った。
ひとり、野菜を食べるニケ。
「シロも食べるか?野菜」
シロは、興味がなさそうに頭を掻いている。
相変わらず、なにも興味を示さないようだ。
「さてと、お腹もいっぱいだ。師匠のところにいくかシロ」
そういいながらニケは、家を出た。
シロは、背伸びをしてからニケの後を追った。
「そういえば、ギルドに行くって言ってたな」
ギルドに向けて足を進める。
ギルドの扉が開いており、中にいるのだろうとニケも中に入る。
だが、ミーチェの姿はなかった。
かわりに、ゴブリンが中を漁っていた。
「あ、お邪魔しました」
ニケは、そういい残すとギルドを出た。
バン!と扉を強くあける音と共にゴブリンが襲い掛かってきた。
「え、そこ追いかけてくるの!」
魔物にツッコミをしながらも、刀を練成するニケ。
ゴブリンは、素手でニケに襲い掛かってきたため、ニケの刀を防ぐ術がない。
「見逃してくれよなッ!!!」
掴みかかってくるゴブリンの、腕をかわしそのまま腹部へ刀を刺し込む。
急所に入ったのか、ゴブリンは動かなくなった。
「お、重い……」
ゴブリンの身体を、放り投げるニケ。
刀は、ゴブリンの身体が地面に転がると同時に光となり消えていった。
「もう入り込んできたのか」
布袋を背負いながら、こちらに歩いてきた。
ニケは、ゴブリンをしばらく見てから、ミーチェの方へと向いた。
「なんか、ギルドの中にいたのが出てきたんだよ」
やれやれと手を上げるニケ。
「そうなのか。あとは、ギルドの資金をいただくだけだ」
「その布袋に、何入れてきたの?」
ギルドの扉を開けながらニケは、ミーチェの背負う布袋の中身を聞いた。
「ん?隣の家から、パンなどを頂戴してきたのだ」
「食料か、旅には大事だもんな」
ギルドの中央までくると、ミーチェがカウンターのほうへと向かった。
ガチャガチャと金属音がする。
「師匠。なにしてるの」
「ここに鍵の掛かった木箱があってな、この中に、店の売り上げなどを入れているのだ」
「鍵、開かないの?」
「うむ、これは開けれそうにないな」
「師匠。ちょっとどいて」
ニケは、歩きながらハンマーを練成した。
おぉっとミーチェは、歓声をあげながら横に避けた。
「よいしょっとッッ!!!」
思い切り、ハンマーを振り下ろす。
バァンっと木箱は見事に粉砕された。
ニケがよけると、ミーチェが中身を確認した。
「そこそこ入っておるな」
小さな布袋を持ち上げると、中を覗き込むミーチェ。
「11ゴールドと、20シルバーだ。2週間は大丈夫だな」
日本円で11万2000円だ。
まだ買い物をしていない、ニケにとってはどれぐらいなのか検討もつかない。
異世界の時点で金銭感覚が違うので、どう反応すればいいのかわからないのだ。
「さて、参るか」
ミーチェは、扉へと歩き始めた。
ニケも扉へと向かった。
外に出ると、シロが暇そうにあくびをしていた。
「お主の召還獣は本当に神獣なのか?」
ミーチェは笑いながら、ニケに話かけた。
「強者の余裕ってやつだろ」
「ただ、暇なだけじゃないのか?」
ふふっと笑うと、ミーチェは広場の反対側へと歩き始めた。
「暇なのか?シロ」
シロに質問を投げかけるが、シロは首を傾げるだけだった。
「まぁいっか。行くよ、シロ」
シロは、小さく咆えるとニケの後に続いた。
少し歩いてから、小さな小屋と馬車がいくつか並んでいるところに出た。
小屋の中からミーチェが出てきた。
「馬は無事だったようだ。ここにある馬車で、旅にでるとしようか」
「俺、馬の扱いとかわからないぜ?」
「馬車は私が転がそう」
そういいながら、ミーチェは小屋に入り馬を連れてきた。
馬車に馬を繋ぐと、小屋の隣にあった布袋を馬車に載せる。
「ニケ。早く馬車に乗れ、参るぞ」
「わかった!シロ、馬車に乗って」
シロは、馬車に飛び乗るとすぐに転がって眠そうにあくびをした。
「ほんと、神獣なのか?シロ……」
呑気に寝転がるシロを見ながら、ニケも馬車に乗り込んだ。
「乗ったな。さぁ、旅の始まりだ」
ミーチェは、そう言うと馬を歩かせた。
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