夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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33話「晴天と休息」

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 異世界に来て、旅に出たニケ。
 相棒の召還獣、シロと魔法の師匠ミーチェ・クリスタと共に馬車で村を後にした。

「ニケ。まずは、王都目指して長旅だ」

「ここから王都まで、どれくらい掛かるんだ?」

 シロを、撫でながらニケはミーチェに問いかけた。

「そうだな。途中資金調達や、宿泊などするから最低でも25日くらいだな」

「ここって、そんな辺境だったのか……」

「うむ。ビスク帝国の端の端だ」

 そんなところに転生したのかっと、ニケはつぶやいた。
 馬車は、布のようなもので屋根ができており。
 内装は特に目立つような装飾などはなく。人が座るであろう、突起と広々とした板の床くらいだ。
 そんな中、シロは馬車の後方の出入り口が気に入ったらしく、顔をだして間抜けな顔をしていた。

「シロは、呑気だな」

 ミーチェが、横目にシロを見ながらつぶやいた。それに対し、いつものことだろっとつぶやくニケ。
 村からでて、早1時間は経っただろうか。
 周囲の景色は変わらず、草木、山などが見える。

「旅か……」

「なんだ。不服か?」

 横目にニケを見ながら、ミーチェは問いかけた。

「いや、まさか異世界にきて旅をするとはなって」

「そういうことか、人間だれしも旅をする」

「そうだな、楽しい旅になるといいぜ」

 そういいながらニケは、寝転がり頭の上で手を組みシロを枕にした。
 シロは、何も反応することなく外を見ている。

「もうそろそろ川辺が見えるはずだ、そこで水を調達しておこう」

「何か入れ物あるの?」

「来るときに、調味料と別に空きビンを2、3個布袋に入れておいた」

「あ、調味料の布袋入れるの忘れた!」

「だろうな。そうだろうと思って先に、馬車に載せておいた」

「おぉ。流石師匠……」

「そこは謝るところだろう」

 呆れながら前を見るミーチェ。
 ニケは、笑いながらごめんとつぶやいた。
 のんびりと動く雲、照りつける太陽。
 旅をするには、心地よい天気だ。

「師匠。この世界に、季節とかってあるのか?」

「季節?あぁ、四季のことか。私たちの今いるダスク地方は、基本的に秋と、冬といったところか」

「春と、夏はないのか?」

「ダスク自体、涼しいからな。北に行けば雪国だが。こちらには、春と夏はない」

「そうなのか」

 枕となっているシロを撫でながら、ニケは答えた。
 馬車はのんびりと進んでいく。
 しばらくして、水の音が聞こえ始めた。

「師匠。水の音がする」

「ふむ。川が近くなってきたのか」

 ミーチェが座っているところに、ニケがやってきた。
 前方は、相変わらず草木が生い茂る森だった。
 いろんな種類の木々の間、草の生えていない道を進む馬車。
 わくわくしながら外を見るニケを、横目で見るミーチェ。

「楽しいか?」

「あぁ。俺のいた世界じゃ、こんなことなかったからな」

「そうか」

 前方に、石作りの端が見え始めた。
 横幅は4mほどだろう、馬車が一方通行でなら渡れる広さだ。

「ニケ。ビンを持って水を汲んできてくれないか?」

「わかった。シロ、降りるよ」

 ニケは布袋から、空きビンを取り出すと、気持ちよさそうに寝ているシロを起こした。
 川辺につくと、ニケは空き瓶を片手に水を汲みに川へ入った。
 シロは濡れるのがいやなのか、川岸でお座りしていた。

「シロもおいでよ、気持ちいいぞ?」

 そう呼ぶが、シロは伏せて上目遣いでこちらを見てくる。
 ビンいっぱいに水を入れると、ニケは川岸に上がった。
 呑気にあくびをするシロを横目に、馬車へと戻っていく。それをみてシロは、ニケの後についていく。
 馬車に近づくとミーチェが、馬を川に連れて行くところだった。

「こやつにも、水を飲ませてやらないとな。しばらくここで休憩するから、お主の休んでいるがよい」

 ミーチェはそう言い残すと、川岸へと向かっていった。

「わかった。その辺ブラブラしてるよ」

 ニケは、ミーチェに声をかけると馬車に水入りのビンを置きに行った。
 馬車の中にある布袋にビンを戻すと、馬車からおりて森のほうを見た。

「すこしなら、入ってもいいよね」

 ニケは、シロについてくるように言うと森へと入って行った。 
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