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34話「森の嫌われ者と第二の主従契約」
しおりを挟む森へと足を踏み入れる、ニケとシロ。
ミーチェの住んでいた森とは、また違った雰囲気だ。針葉樹が多く、開けた場所の多い森である。
森を進むと、足元の枝を踏む音、落ち葉を踏む音が聞こえる。
少し歩いて、開けた場所に出た。
「特に何も……あった」
目の前には、赤く大きな花があった。
突如シロが、唸り始める。どうやら魔物のようだ。
かなり大きく、横幅は3mほどだろうか高さも3mほど。
警戒をしているが、なんの行動もない。
「本当に魔物なのか?」
ニケは、下に落ちていた石を拾い上げ、花へと全力投球する。
「これが俺の魔球だぁぁぁぁッッッ!!!!」
石は風を切る音と共に、花へと打撃を与える。
花に当たると、花はぴくぴくと動き出した。突然花が、開花した。
こちらに向け、開花した花の中心部には、口のようなものがあった。
「これ、まずいかも」
花は咆哮を上げた。
「っく!」
咆哮は強く、後方の草木が暴れるほどだ。
身を守るように手で咆哮を防ぐニケ。シロは、その場で踏ん張っていた。
咆哮が止むと同時に、花の根元から太い『触手』のようなものが生えた。
後ろから足音がする。だが、今振り向いたら危ないと本能が告げる。
「ニケ!何をしている!」
どうやら足音の主は、ミーチェだったようだ。
ミーチェは隣に来ると、赤い花を見てため息をついた。
「なぜ、オーガ・リックに手をだした」
「こいつ、ガーリックって言うのか?」
「オーガ・リックだ!森の嫌われ者、ゴブリンでさえ丸呑みにする食人草だ」
ミーチェはそういうと、ニケに退くように促す。
だが、ニケはそれを無視してミーチェが驚くことを言い出した。
「俺、あいつと契約したい」
「馬鹿者!あやつは、お主の手には負えない!諦めて馬車へ戻るんだ!」
必死に静止するミーチェを横目に、ニケは左手に魔力を流し込んだ。
左手が光を帯びる、左手と右手を地面につける。
左手の光が、オーガ・リックの根元へと移動する。そして手を離すニケ。
「召還獣ゲットと洒落込もうぜ!」
「あーもう、どうなっても知らぬぞ!」
光から一刀の大きい刀が地面から生成され、オーガ・リックの真下からその大きな身体を突く。
オーガ・リックは暴れ始めると同時に、花を閉じ触手でこちらに攻撃をしてきた。
触手は、4方向から1本ずつ生えていた。
触手をかわすニケと、ミーチェ。
ニケは、左手に魔力を流し込み、刀を練成した。
「いくぜぇぇぇぇッッ!!!!」
触手による連撃をかわしながら、触手を切り上げるニケ。
「″闇の力よ。我、力を求める者なり。汝、その力を持って、敵と共に爆ぜろ″ネクロボム!」
オーガ・リックの側面に魔方陣が展開された。
魔法が発動し、蒼い炎が出現する。
それを見たニケは、右手に刀を持ち替え双線を引く。
「やっば!綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の大咆哮!」
左手に大きな魔方陣が練成される。
触手をかわしつつ、懐へともぐり込む。
ネクロボムの炎が小さくなり始めた。
「間に合えぇぇぇぇッッッ!!!」
オーガ・リックの側面に左手が触れると同時に飛び上がる。
魔法が展開される。
強い衝撃と共に、オーガ・リックの花は『くの字』に変形する。
衝撃を受けニケは、後方へと吹き飛ばされた。
直後、ネクロボムが発動。
ドォォォォォォォォォンッッッ!!!!!!!!!!
転がりながらも、その大きな爆音が聞こえる。
即座に立ち上がろうとするが、地響きがしており思うように立てない。
「やったのか?」
「いや、あやつは魔法防御力が高くてな。これで、倒せたら苦戦はせぬ」
紫色の煙がなくなると、ほぼ無傷の状態で佇むオーガ・リック。
「こりゃ、またやばいやつに手を出しちまったな」
シロがそばにきた。
「あぁ、やってやるさ。シロ咆哮だ!触手を弾け!」
小さく咆えるとシロは、その場に構えた。足を広げ大きく息を吸い、一気に咆哮を放つ。
咆哮の間をすり抜け、近接戦に持ち込むニケ。そこに、後方の2本の触手が襲い掛かる。
「隙はないのかよッッッ!!!」
飛び避けると同時に、身体をまわしながら刀で斬撃を与える。
触手にダメージが入ると、オーガ・リックが花を開いた。
「まずい!避けろ!」
花の中心部から、液体のようなものが吹き出る。
ニケは、転がり際に駆け出しバランスの保ちにくい低姿勢で、オーガ・リックの周囲を駆ける。
「どこか、弱点ないのかよッッ!!!」
触手の連撃は止まない、次々と触手を振り下ろしたり、なぎ払ってきたり、時には突いてくる。
ニケは、触手をかわし剣で受け流し、切り上げてさえいた。
「こりゃ、不味いかもな……」
そういいながらも駆けるニケ。
シロが咆哮をやめると、4本同時に連撃を与えてくる。
即座に左手に魔力を流しこみ、小太刀を練成する。
「手数には手数で勝負ってねッッ!!!!」
右から薙ぎ払われる触手を右に回転しながら、切り落とす。
上から振り下ろされてきた触手を、刀と小太刀をクロスして受け止める。
「っしま……!!」
左からの薙ぎ払い。徐々にスローモーションの世界に入っていく。
刀を押し上げながら、切りつけると同時に右に回転をかけながら身体を飛び上がらせる。
半回転すると、目の前を触手がかすめる。着地すると同時に、元の速度へと戻る。
「あぶねぇだろッッッ!!!!」
駆け出すニケ、横目にシロが障壁を展開して触手から、ミーチェを守っているのが見える。
長期戦は不味い、ニケは直感でそう思った。
「外が硬いなら、狙うは中身ッ!!!」
ニケを止めようと、直進してくる触手を飛び上がり際に受け流す。
ニケは、刀を花の中央に向けて投げた。
中央の口のような部分に刀が刺さると、紫色の液体が噴き出た。
「これがあいつの血か」
左から再度薙ぎ払われる触手を、小太刀で受け止める。
「っぐ、ああああああああッッ!!!」
受け流せず、そのまま吹き飛ばされるニケ。
「ニケ!」
ミーチェの横を勢いよく叩きつけられ、転がっていくニケ。
「はは、痛いじゃんかよッッ!!!」
ニケは両手を開くと同時に、双線、魔線を同時に引く。
「綴る!″我、水の癒しを求めるもの。汝、我が願いを聞き届け、我に癒しを与えよ”ミストヒール!」
「綴る!″我、光の力を求めるもの。射抜け、その光と共に″ライトニードリング!」
別々の魔法による、多重詠唱。
右手に魔方陣が展開されると同時に、魔法が発動。魔方陣から、霧が噴き出すとニケの身体を包んだ。
青い発光と共に、ニケの傷を癒し始めた。
左手には、大きな魔方陣が展開された。
そのまま右手で、魔線を引き始めた。
「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」
右手に、魔方陣が展開される。
ミーチェが駆け寄ってきた。
「大丈夫か?」
「あぁ、傷はたいしたことないみたい」
そういいながら、オーガ・リックに向かって駆け出すニケ。
「無茶だけはするなよ!」
ミーチェの声が聞こえた気がした。
だが、ニケは止まらない、止まれない。
再度寄ってくる敵に対し、オーガ・リックは残った3本の触手を振るう。
3方向から同時に、左、右、真上、確実に叩き潰すように。
だが、それでもお構いなしにニケは駆ける。
3本の触手が、ニケを叩き潰そうと迫る。
ニケは正面に右手を向けると、雷電の咆哮を放つ。
触手は3本とも同時に吹き飛ばされる。
その場で踏ん張りながら、再度駆けるニケ。
右手で魔線を引きなら……。
「綴る!″我、光の力を求めるもの。射抜け、その光と共に″ライトニードル!」
魔方陣が展開されると同時に、思い切り飛び跳ねる。
何mだろうか、少なくとも5m以上は飛んでいる。
ある程度上がると浮力を失い、真下に降下し始める。
落ちる先は……オーガ・リックの花の中心部。
さぁ来いと言うかのように、口をあけるオーガ・リック。
「お前が食うのは!これだッッ!!!」
両手を真下に向け、魔法を発動する。
左手からは、太く長い光の矢が複数放たれる。
右手からは、細長い光の矢が複数放たれた。
放たれた光の矢は、案の定オーガ・リックの口に降り注ぐ。
複数の光の矢が口の中に刺さると、オーガ・リックは暴れてから萎れ始めた。
口の真横に着地したニケは、その場を離れオーガ・リックに向け主従契約の詠唱を始める。
「“汝、我を主人と認めることをここに契約せよ“」
オーガ・リックの真下に大きな魔方陣が展開される。
「“我が名はニケ・スワムポール”」
右手を前に出す、するとオーガ・リックは触手を力なくふらふらとその手に『添えた』。
魔方陣が光を増す。次の瞬間、オーガ・リックは光に包まれた。
「ま、眩しい……ッッ!!!」
両手で目を覆うニケ。
オーガ・リックを包む光が消えると、そこには緑色の葉の形をしたネックレスが落ちていた。
ミーチェが、シロと共にこちらに向かってきた。
「まさか、野生の魔物と契約するとはな……しかもあのオーガ・リックと……」
ミーチェは驚きながら、右手で口元を隠しながら話しかけてきた。
ネックレスを拾うと、ニケは首に掛けながら戻ってきた。
「一応、持ってきた本に書いてあったんだ。野生の魔物との契約方法」
「あの本の内容は、デタラメではなかったのか」
なるほどっと、右手で顎を撫でながらミーチェはつぶやいていた。
「とりあえず、馬車へ戻ろうか。どこぞの馬鹿のせいで、夕方になってしまった」
見上げる空は、オレンジ色に染まっていた。
「ご、ごめんなさい……」
シロは、足元に来るとネックレスが気になるのか、鼻をヒクヒクさせていた。
「さて、戻って夕食だな」
「夕食だぁ!!!」
両手を挙げ、喜ぶニケを横目にミーチェはお主も手伝うのだぞっと声を掛けた。
無事に契約を果たし、森を後にする一同。
一方、ニケは魔力の激しい消耗のしすぎでうなだれていたのは言うまでもない。
一同は、夕食の準備に取り掛かるのであった……。
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